法人の税務調査の流れ|連絡が来たときの初動と当日までの準備
「税務署から電話があった」という一本の連絡で、頭が真っ白になる社長は少なくありません。税務調査は、悪いことをした会社だけに来るものではなく、申告内容の確認のために行われる手続きです。この記事では、連絡が来た日にやること、当日までの準備、調査当日から終わったあとまでの流れを、順番どおりに整理します。
この記事の結論
- 法人の税務調査は、原則として事前通知(日程・対象税目・対象期間などの連絡)から始まり、当日の実地調査、指摘事項のやり取り、修正申告または更正・是認という流れで進みます。
- 税務署から連絡が来たら、その場で日程を即答せず、顧問税理士に連絡し、税理士を窓口にして日程調整するのが基本の初動です。
- 当日までに用意するのは、対象期間の総勘定元帳・決算書・申告書控え・請求書や領収書・通帳・契約書・給与関係の書類など、日々の経理の裏づけになる資料です。
税務調査はどんな会社に来る? 来る理由の考え方
税務調査は、申告内容が正しいかどうかを確認するために行われる手続きです。不正を疑われているから来る、とは限らず、一定期間申告が続いている会社や、売上・利益・経費の動きが前年と大きく変わった会社などに対して、確認のために行われることがあります。設立して数年の会社に来ることも、長く調査がなかった会社に来ることもあります。
「うちは小さいから来ない」と考えるのは早計です。規模にかかわらず対象になり得ますし、消費税の申告をしている法人や、源泉徴収・給与の扱いが複雑な会社は、確認したい論点が増えやすい傾向があります。個人事業主の場合も考え方は同じで、何年に一度という決まった周期があるわけではありません。
大切なのは「来ないようにする」ことではなく、「来たときに説明できる状態にしておく」ことです。帳簿と証憑(請求書・領収書・契約書)が結びついていて、お金の流れを説明できれば、調査そのものは淡々と進みます。
連絡が来た日の初動|この順番で動く
まず、電話を受けた人がその場で日程を確定させないことです。「担当者(顧問税理士)に確認して折り返します」と伝えて、相手の所属署名・担当者名・連絡先・調査の対象税目・対象期間・希望日程をメモします。これだけ控えておけば、あとの対応が格段に楽になります。
次に、顧問税理士に連絡します。税務代理権限証書を提出している税理士がいる場合、税理士側にも連絡が入る、あるいは税理士を窓口に調整が進むのが一般的です。顧問税理士がいない場合は、この段階で税務調査の立ち会いに対応している税理士を探すことを検討してください。調査日の直前より、通知を受けた直後に相談したほうが準備の時間を確保できます。
日程は、通知された候補日どおりに受けなければならないものではなく、業務の都合や決算期などの事情を伝えて調整を相談できます。ただし、引き延ばし続ける対応は印象面でも実務面でもよい結果になりにくいので、現実的な範囲で早めに固めるのが無難です。
事前通知から調査後までのスケジュール
一般的な流れは、①事前通知(日程・場所・対象税目・対象期間・調査の目的などの連絡)、②当日までの準備、③実地調査(多くは会社の事務所で、1〜数日間)、④調査官からの質問・追加資料の依頼、⑤指摘事項の説明、⑥修正申告または更正、あるいは指摘なしで終了、という順です。③から⑥までに数週間〜数か月かかることもあります。
対象期間は、直近の事業年度だけでなく複数年分になることがあります。事前通知で示された期間を確認し、その期間の帳簿・証憑を通しで用意しておきましょう。
なお、現金商売など一部のケースでは事前通知なしで調査が行われることがあるとされています。その場合でも、まず税理士へ連絡し、立ち会いを依頼したい旨を伝えるという初動は変わりません。手続きの詳細な要件は、国税庁が公表している税務調査手続に関するQ&Aなどの資料を確認してください。
当日までに準備する書類と、社内の段取り
用意するのは、対象期間の総勘定元帳・仕訳帳、決算書、法人税・消費税の申告書控え、請求書・領収書・納品書、預金通帳、契約書、給与台帳や源泉徴収関係の書類、棚卸表などです。電子で保存しているものは、その場ですぐ画面に出せるか、印刷できるかを事前に確認しておくと当日あわてません。
書類は「年度ごと・種類ごと」にまとめ、どこに何があるかを説明できる状態にしておきます。探すのに時間がかかると、その分だけ調査が長引きます。逆に言えば、整理されているだけで当日の負担はかなり減ります。
社内の段取りとしては、①調査官が使う部屋を決める、②対応する担当者を決める(社長と経理担当の2名程度)、③他の社員には「聞かれたことに正確に答える、分からないことは担当者に回す」と共有しておく、の3点です。推測で答えると、あとで訂正が必要になり話が複雑になります。
当日の進み方と、聞かれたときの答え方
当日は、事業内容や業務の流れについての質問から始まることが多く、その後に帳簿と証憑の確認に入ります。調査官が資料のコピーや預かりを求めることもあります。預けるときは、何を預けたかの控えを残しておくと、後の確認が楽になります。
答え方の基本は、「分かることは正確に、分からないことは分からないと言って後日回答する」です。その場で取り繕った説明をすると、記録と食い違って追加の確認が増えます。金額や日付があいまいなら、帳簿を見てから回答すると伝えれば差し支えありません。
税理士が立ち会っている場合は、税務的な解釈が絡む質問は税理士に振るのが無難です。会社側が答えるべきなのは「事実」、税理士が答えるべきなのは「その事実をどう処理したか」という役割分担だと考えると整理しやすくなります。
指摘を受けたらどうする? 修正申告と不服申立ての分かれ道
調査の結果、申告内容に誤りがあると指摘された場合、内容に納得できるなら修正申告を行います。修正申告をすると、本税に加えて加算税や延滞税といった負担が生じることがあります。金額や計算は個別事情で変わるため、税理士に試算してもらってください。
指摘に納得できない場合は、修正申告をせずに税務署の処分(更正)を受け、その後に再調査の請求や審査請求といった不服申立ての手続きを取る道もあります。修正申告をしてしまうと不服申立てができなくなる点は、判断の前に押さえておきたいところです。どちらを選ぶかは、指摘の内容・根拠資料・今後の実務への影響を見て決めることになります。
指摘なしで終わる場合は、その旨の通知が出されます。いずれの結果でも、指摘された論点は翌期以降の経理ルールに反映させておくと、次回の備えになります。
税務調査に強い会社になるための、ふだんの備え
調査で困るのは、金額そのものより「この支出が何なのか説明できない」状態です。領収書に用途と相手先をメモする、経費精算に目的欄を設ける、役員や親族との取引は契約書と入出金の記録を残す。この3つを習慣にしておくだけで、説明の手間は大きく変わります。
帳簿や証憑の保存方法についても、電子で受け取った請求書の扱いなど、対応が必要な範囲を一度確認しておきましょう。要件の詳細は改正されることがあるため、国税庁の資料や顧問税理士の案内で最新の内容を確認してください。
税務調査の対応は、法人の状況や指摘の内容によって最適な進め方が変わります。事前通知を受けた段階、あるいは指摘内容の判断に迷った段階で、顧問税理士または税務調査の立ち会いに対応している税理士にご相談ください。労務や契約に関する論点が絡む場合は、社会保険労務士や弁護士への相談も併せて検討するとよいでしょう。
よくある質問
税務調査の連絡が来たら、その電話で日程を決めないといけませんか。
その場で確定させる必要はなく、「担当者に確認して折り返します」と伝えて構いません。相手の署名・担当者名・連絡先・対象税目・対象期間を控え、顧問税理士に連絡してから日程を調整するのが落ち着いた進め方です。
顧問税理士がいない場合、税務調査に一人で対応しても大丈夫ですか。
対応自体はできますが、税務的な解釈が絡む質問が多いため、立ち会いに対応している税理士へ早めに相談することをおすすめします。調査日の直前より、事前通知を受けた直後のほうが準備の時間を確保できます。
税務調査は何年分をさかのぼって見られますか。
事前通知で示される対象期間は複数年分になることがあります。通知された期間の帳簿・証憑を通しで用意し、期間や範囲について疑問があれば税理士を通じて確認してください。
指摘を受けたら、必ず修正申告をしなければなりませんか。
内容に納得できる場合は修正申告を行いますが、納得できない場合は処分を受けたうえで不服申立ての手続きを取る道もあります。修正申告をすると不服申立てができなくなるため、選択の前に税理士に相談してください。