税務調査で用意する書類|法人が準備する帳簿と資料の一覧

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

税務署から調査の連絡が入ると、多くの社長がまず困るのが「何を出せばいいのか分からない」という点です。実際のところ、調査で見られる書類はある程度決まっていて、日ごろの経理で作っている帳簿と、その裏づけになる証憑が中心になります。この記事では、法人が税務調査の当日までにそろえる書類を区分ごとに整理し、連絡が来てからの準備の順番、そろわない書類が出てきたときの考え方までをまとめます。

この記事の結論

  • 法人の税務調査で用意する書類は、決算書・申告書などの「申告関係」、総勘定元帳や仕訳帳などの「帳簿」、請求書・領収書・契約書などの「証憑」、給与や源泉徴収の「人に関する資料」、議事録や稟議書などの「会社の意思決定を示す資料」の5区分で考えると整理しやすくなります。
  • 調査対象になりやすいのは直近の数事業年度分であることが多いため、連絡を受けたらまず対象期間を確認し、その期間の帳簿と証憑を年度ごと・月ごとにそろえる順で準備します。
  • 帳簿書類の保存期間は法人税法などで定められており、原則として一定年数の保存が求められるため、紛失した書類は取引先への再発行依頼や通帳の記録で代替できないかを確認し、対応の可否は税理士に相談するのが安全です。

税務調査の連絡が来たら、まず何を確認するか

税務調査は、顧問税理士がいる場合は税理士経由、いない場合は会社に直接、電話で連絡が入ることが一般的です。このとき確認しておきたいのは、調査の日程、調査に来る人数と所属、そして「対象となる事業年度」と「対象となる税目」です。法人税だけでなく、消費税や源泉所得税もあわせて対象になることがあります。

対象期間が分かると、そろえる書類の範囲が決まります。多くの場合は直近の数事業年度分が対象になりますが、期間は事案によって異なるため、電話で聞いた内容はその場でメモに残しておきましょう。日程についても、決算期や繁忙期と重なる場合は相談できることがあります。

顧問税理士がいるなら、連絡を受けた時点ですぐ共有してください。立会いの依頼、事前の打ち合わせ、当日の受け答えの整理など、税理士側の準備にも時間が必要です。税理士がいない場合は、この段階でスポット対応をしてくれる税理士を探すという選択肢もあります。

法人の税務調査で用意する書類の一覧(5つの区分)

まず「申告関係」です。対象期間の法人税・消費税の申告書一式、決算報告書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書などが該当します。控えがどこにあるか分からないときは、税理士または申告を行った際の電子申告データを確認します。

次に「帳簿」です。総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、預金出納帳、売掛金元帳・買掛金元帳、固定資産台帳、棚卸表などが中心になります。総勘定元帳は税務調査でもっともよく確認される資料のひとつで、気になる仕訳から証憑へとたどる出発点になります。会計ソフトを使っているなら、年度ごとに出力またはデータで取り出せる状態にしておきます。

三つめが「証憑」です。売上と仕入の請求書、納品書、見積書、注文書、領収書、レシート、預金通帳、クレジットカードの利用明細などです。四つめが「人に関する資料」で、賃金台帳、給与明細、源泉徴収簿、扶養控除等申告書、年末調整関係書類、タイムカードや出勤簿、社会保険関係の届出控えなど。五つめが「会社の意思決定を示す資料」で、株主総会・取締役会の議事録、定款、稟議書、社内規程(旅費規程・慶弔見舞金規程など)、契約書一式が含まれます。

総勘定元帳・請求書・納品書は、どう整えておくか

総勘定元帳は、対象期間の全期分を、年度ごとに分けて出せる状態にしておきます。紙で出力するか、データで用意するかは調査官の希望を当日確認すればよいのですが、必要な場面ですぐ表示・印刷できるようにパソコンと会計ソフトの動作を事前に確かめておくと安心です。前任者が担当していた期がある場合は、ログイン情報やデータの所在も先に確認しておきます。

請求書・納品書・領収書は、月ごと・取引先ごとにまとまっていれば十分です。きれいにファイリングし直す必要はありませんが、「元帳のこの仕訳の証憑を見せてください」と言われたときに、探すのに何十分もかかる状態は避けたいところです。ファイルの背表紙に年度と月を書いておくだけでも当日の進行はかなり変わります。

保管期間については、法人税法上、帳簿書類は原則として一定年数(欠損金が生じた事業年度などで扱いが異なる場合があります)保存することとされています。納品書などの証憑も帳簿書類の一部として保存対象に含まれる扱いがあるため、「請求書があるから納品書は捨ててよい」と自己判断せず残しておくのが無難です。具体的な年数や電子データでの保存要件は、国税庁の資料を確認するか、税理士にご確認ください。

議事録・契約書など、忘れられがちな資料

役員報酬の金額や改定、役員退職金、重要な資産の取得や売却などは、会社の意思決定として株主総会や取締役会の決議を経ているかが確認されることがあります。そのため議事録は、決算書や元帳と同じくらい聞かれやすい資料です。作っていなかった期がある場合は、まず状況を税理士に伝えて相談してください。後から体裁だけ整えることはトラブルのもとになります。

契約書も見落とされがちです。売上・仕入の基本契約、業務委託契約、賃貸借契約、リース契約、借入の金銭消費貸借契約、外注先との契約などを、対象期間に効力があったものを中心にまとめておきます。関係会社や役員個人との取引がある場合は、その契約書と取引の流れが説明できるかがポイントになります。

このほか、社内規程も用意しておくとよい資料です。出張旅費や日当、社宅、慶弔見舞金などは、規程の有無と運用の実態が問われることがあります。規程はあるが実際の運用と違う、という状態は説明が難しくなるため、この機会に見直しておくと今後に役立ちます。

当日までの準備の順番と、当日の進め方

連絡から当日までは、次の順で動くと漏れが出にくくなります。①対象期間と税目を確認する、②申告書・決算書の控えをそろえる、③その期間の総勘定元帳を出力またはデータで用意する、④元帳の金額と突き合わせられるよう証憑を年度・月ごとに並べる、⑤給与関係と議事録・契約書を追加する、⑥足りない書類をリスト化して再発行や代替資料を手配する、という流れです。

場所の準備も実務的には大切です。調査官が座って書類を見られる机と椅子、必要に応じて別室、コピーを取れる環境を用意します。当日は業務を止めきれないことも多いので、対応する人(社長と経理担当、税理士)をあらかじめ決めておくと社内が混乱しません。

当日、質問に対しては分かることを正確に答え、分からないことは推測で答えず「確認して後日回答します」と伝えるのが基本です。資料の提出やデータの預かりを求められた場合も、その場で慌てて判断せず、税理士に相談したうえで対応してかまいません。

書類が見つからない・作っていなかったときは

領収書や請求書が一部見つからない場合は、取引先に再発行を依頼できないか、預金通帳やカード明細、メールの送受信履歴、納品時のやり取りなど、取引の実態を示せる記録が残っていないかを確認します。証憑が欠けていても、取引そのものの説明ができるかどうかで話の進み方は変わります。

帳簿や議事録を作っていなかった期がある場合、隠すより先に現状を整理して税理士に共有するほうが結果的に対応しやすくなります。指摘を受けた内容によっては修正申告や追加の納税が必要になることがありますが、どう対応するかは事実関係によって異なります。

税務調査は、内容によって判断が分かれる場面が多い手続きです。帳簿の不足、役員との取引、消費税の取扱いなど、判断に迷う点が一つでもあるなら、当日を迎える前に税理士に相談し、立会いを依頼することをおすすめします。労務関係の資料に不安がある場合は社会保険労務士、契約や係争が絡む場合は弁護士など、内容に応じた専門家に早めに確認しておくと安心です。

よくある質問

税務調査では何年分の書類を用意すればよいですか。

対象となる事業年度は調査の連絡時に伝えられることが一般的で、直近の数事業年度分となる場合が多いとされています。事案によって期間が延びることもあるため、連絡の際に必ず確認し、伝えられた期間の帳簿と証憑をそろえてください。

納品書は請求書があれば捨ててよいですか。

納品書も帳簿書類の一部として保存が求められる扱いがあるため、自己判断で処分しないほうが安全です。保存期間や電子データでの保存要件は国税庁の資料を確認するか、税理士にご確認ください。

会計データをパソコンで見せるだけでも大丈夫ですか。

画面での確認を求められることも、出力した帳簿の提示を求められることもあります。どちらにも対応できるよう、会計ソフトが問題なく動くことと、必要な期間を印刷できることを事前に確かめておくとよいでしょう。

税理士の立会いは必要ですか。

立会いは義務ではありませんが、帳簿の内容や税務上の取扱いについて質問されることが多いため、顧問税理士がいる場合は同席を依頼するのが一般的です。顧問がいない場合も、スポットで立会いに対応する税理士に相談する方法があります。

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