マイクロ法人の決算・確定申告|自分でやる流れと税理士に頼む場合

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

売上が少なく、取引もほとんど自分ひとり。そんなマイクロ法人でも、法人である以上は毎年決算を締め、法人税などの申告をする必要があります。「この規模なら自分でできるのでは」と考える方は多く、実際に自分で申告している社長もいます。一方で、法人の申告は個人の確定申告とは別物で、つくる書類の種類も提出先も増えます。この記事では、決算日から申告までの流れを時間順に整理し、自分でやる場合に何が必要か、税理士に頼むならどこを境に判断すればよいかを具体的にまとめます。

この記事の結論

  • マイクロ法人の決算・申告は、決算日の翌日から原則2か月以内に、法人税・地方法人税を税務署へ、法人住民税・法人事業税を都道府県と市区町村へ、消費税の課税事業者なら消費税の申告も行います。
  • 自分でやるかどうかは「取引の種類が少ないか」「資産や在庫、借入、役員貸付などの論点がないか」「期限に間に合う時間が取れるか」の3点で判断し、どれか一つでも不安があれば税理士への相談が現実的です。
  • 国の税金の申告はe-Tax、地方税の申告はeLTAXが窓口で、法人は電子申告が基本の流れになっているため、会計ソフトで帳簿を作り、決算書から申告データを作る順番で進めます。

マイクロ法人の決算・確定申告とは何をすることか

法人の「決算」とは、定款で決めた事業年度が終わったあと、1年分の帳簿を締めて貸借対照表・損益計算書などの決算書類をつくる作業です。そのうえで、決算の数字をもとに税額を計算し、税務署などへ提出するのが「法人の確定申告」です。個人の確定申告が1〜3月の年次イベントであるのに対し、法人は自社で決めた決算日を起点に動きます。

提出先は一つではありません。法人税と地方法人税は税務署、法人住民税と法人事業税(特別法人事業税を含む)は都道府県税事務所と市区町村、消費税の課税事業者であれば消費税・地方消費税も税務署へ、という具合に複数に分かれます。売上がゼロでも、法人住民税の均等割のように所得と関係なく発生する部分があるため、「赤字だから何も出さなくてよい」とはなりません。

マイクロ法人だから手続きが簡略化される、という制度は基本的にありません。規模が小さいぶん書く数字は少ないですが、つくる書類の種類は大きな会社とほとんど同じです。ここを最初に理解しておくと、後述の「自分でやるか」の判断がしやすくなります。

決算日から申告までのスケジュール|いつ何をするか

原則として、申告と納税の期限は決算日の翌日から2か月以内です。3月31日決算なら5月31日、12月31日決算なら翌年2月末が目安になります。土日祝の関係で期限が動くことがあるため、その年の期限は国税庁の案内で確認してください。

時間順に並べると、まず決算日までに帳簿の入力を追いつかせます。次に決算日以後、預金残高・売掛金・買掛金・未払費用・棚卸資産などを実際の資料と突き合わせ、帳簿の残高を確定させます。ここで減価償却費の計上や、決算月の経費の未払計上といった決算整理を入れ、貸借対照表と損益計算書を確定させます。

決算書が固まったら、株主総会(ひとり社長でも決算の承認手続きは必要です)で承認し、その数字をもとに法人税などの申告書を作成します。最後にe-Tax・eLTAXで送信し、納税します。逆算すると、決算日から2〜3週間で帳簿を締め、残りの期間を申告書作成に充てるのが無理のない配分です。

なお、申告期限の延長の特例など期限に関する制度もありますが、納税の取り扱いを含めて条件があります。間に合いそうにないと感じた段階で、税務署または税理士に早めに相談するのが安全です。

マイクロ法人の帳簿と青色申告|そろえるべき資料

申告書は帳簿の上に成り立っています。まず必要なのは、日々の取引を記録した総勘定元帳と、その根拠となる証憑です。通帳(またはネットバンキングの明細)、請求書、領収書、契約書、クレジットカードの明細、役員報酬の支給記録などを、月ごとにまとめておきます。法人は複式簿記が前提なので、現金出納帳だけでは足りません。

青色申告の承認を受けている法人は、欠損金の繰越しなどの取り扱いが認められる一方、帳簿書類の備付けと保存が条件になります。設立時に青色申告の承認申請書を出しているかどうかを、まず確認してください。出し忘れていると白色扱いになり、扱いが変わります。申請の期限や必要な帳簿の詳細は、国税庁の資料で確認するか税理士にご確認ください。

電子取引で受け取った請求書や領収書の保存方法は、電子帳簿保存法の考え方に沿って整える必要があります。メールやWeb上で受け取ったデータをどう保存するかは、一般に検索や日付・金額などで探せる形にしておく方向で整理されていますが、要件の詳細は所管官庁の資料を確認してください。マイクロ法人は取引が少ないぶん、最初にルールを決めてフォルダ構成を固定すると運用が楽になります。

帳簿づくりは、法人向けの会計ソフトを使うのが現実的です。銀行明細やカード明細を連携できるものが多く、仕訳の手間が減ります。ソフトの料金や機能は変わるため、各社の公式サイトで最新の料金と対応範囲を確認してください。

自分でやる場合の流れ|e-Taxとeltaxの使い分け

自分でやると決めたら、順番はこうなります。①会計ソフトで期中の仕訳を完成させる、②決算整理を入れて決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表)をつくる、③勘定科目内訳明細書と事業概況説明書を用意する、④法人税の申告書と別表をつくる、⑤地方税の申告書をつくる、⑥電子申告で送信し納税する、という流れです。

国の税金(法人税・地方法人税・消費税)はe-Tax、地方税(法人住民税・法人事業税)はeLTAXが窓口です。どちらも事前に利用者情報の登録が必要で、電子証明書(法人の場合は商業登記に基づく電子証明書やマイナンバーカードなど)と、ICカードリーダまたは対応機器の準備が前提になります。この初期設定に時間がかかりがちなので、決算期を待たずに済ませておくと安心です。

申告書の作成では、法人税の別表の記入がつまずきやすい部分です。会計上の利益と税務上の所得は同じではなく、交際費や租税公課、減価償却の差異などを別表で調整します。市販の法人税申告ソフトや、e-Taxソフトの手引きを見ながら進めることになりますが、判断に迷う項目が出たら自己流で埋めずに確認してください。

納税は、電子納税やクレジットカード納付、金融機関窓口など複数の方法があります。赤字でも法人住民税の均等割の納付が必要になるケースが一般的なので、資金を残しておく前提でスケジュールを組んでください。

自分でやるか税理士に頼むか|判断の順番

迷ったら、この順に見てください。第一に「取引の種類」です。売上先が数社、経費もカードと口座に集約されていて、在庫がない。この状態なら、自分で組み立てる余地があります。逆に、売上の計上時期が期をまたぐ、前受金や工事のような進行中の案件がある、といった場合は判断が増えます。

第二に「論点の有無」です。固定資産の購入や売却、借入金、役員貸付金・借入金、消費税の課税事業者かどうか、インボイス制度への対応、社会保険との関係、個人事業と法人を並行している場合の経費の分け方。これらのどれかに当てはまるなら、税務上の扱いが分かれやすい領域です。取り扱いを誤ると後年の修正につながることもあるため、税理士に確認したほうが結果的に早いことが多いです。

第三に「時間」です。申告書の作成は、初年度はどうしても調べ物に時間を取られます。本業の繁忙期と決算期が重なるなら、決算日そのものを見直す(事業年度の変更)という選択もあります。変更には手続きが必要なので、検討するなら余裕のある時期に相談してください。

現実的な折衷案として、日々の記帳は自分で行い、決算と申告書の作成だけ税理士に依頼する形もあります。逆に、初年度だけ依頼して型を見せてもらい、2年目以降を自分で回す進め方もあります。依頼範囲によって費用は変わるため、見積もりの際に「記帳まで含むか」「決算のみか」「年末調整や償却資産申告を含むか」を明確にして比較してください。

よくあるつまずきと、その前にやっておくこと

もっとも多いのは、事業用と個人用のお金が混ざっていることです。法人の口座とカードを事業専用にし、社長個人の支出を通さない。これだけで決算の手間と、後の説明の負担が大きく変わります。混ざってしまった分は、役員貸付金・立替金として整理することになりますが、扱い方に注意が必要な論点なので税理士にご確認ください。

次に多いのが、役員報酬の決め方です。法人の役員報酬は支給のルールに制約があり、期の途中で自由に増減させると、税務上の取り扱いが変わることがあります。設立後や事業年度の開始後、どのタイミングまでに決める必要があるかを含め、早めに確認しておくのが安全です。

届出の出し忘れも起こりがちです。青色申告の承認申請、給与支払事務所等の開設届出、源泉所得税の納期の特例、消費税に関する各種届出など、法人には設立時・期首時点で出しておくべき書類があります。設立時の控えをファイルにまとめ、何を出したかが一覧で分かる状態にしておくと、決算のときに迷いません。

そして、決算は「終わり」ではなく次の期の始まりでもあります。決算書ができたら、来期の資金の見通しと、納税のタイミングをカレンダーに入れておく。ここまでやって、ようやく一巡です。

税務・労務の取り扱いは、会社の状況や年度によって判断が分かれます。この記事は一般的な流れの整理にとどまるため、実際の申告内容や役員報酬・消費税の判断については税理士に、社会保険や役員・従業員の手続きについては社会保険労務士に、事業年度変更などの登記が伴う手続きについては司法書士にご相談ください。

よくある質問

マイクロ法人の決算・確定申告は自分でできますか。

取引の種類が少なく、在庫や借入、固定資産などの論点がなければ、会計ソフトと申告ソフトを使って自分で進めている社長もいます。ただし法人税の別表の調整や消費税の判断は迷いやすいため、初年度だけ税理士に依頼して型をつくる進め方も検討してください。

売上がゼロや赤字でも申告は必要ですか。

法人は所得がなくても申告が求められ、法人住民税の均等割のように所得と関係なく発生する部分もあります。休業状態でも扱いが変わるとは限らないため、自社のケースは所轄の税務署や自治体、税理士にご確認ください。

申告期限はいつですか。

原則として決算日の翌日から2か月以内に、申告と納税を行います。期限日が土日祝に当たる場合の取り扱いや延長の特例もあるため、その年の具体的な期限は国税庁の案内で確認してください。

e-TaxとeLTAXはどう違いますか。

e-Taxは法人税・地方法人税・消費税といった国の税金、eLTAXは法人住民税・法人事業税などの地方税の窓口です。どちらも利用者登録と電子証明書の準備が必要なので、決算期の前に初期設定を済ませておくと当日に慌てません。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。