インボイスの発行義務と罰則|交付を求められたときの対応

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「インボイスって出さないといけないの?」「出さなかったら罰則があるの?」——取引先から交付を求められて、はじめて慌てて調べる方は少なくありません。結論から言うと、発行義務があるのは登録した事業者だけで、登録していない事業者に交付義務は生じません。ただし「義務がない=何も起きない」わけではなく、取引上の判断は別に発生します。この記事では、義務の範囲、罰則が想定される場面、交付を求められたときの返し方を、順を追って整理します。

この記事の結論

  • インボイス(適格請求書)の交付義務は、税務署に登録した適格請求書発行事業者が、課税事業者である取引先から求められた場合に生じるもので、登録していない事業者には交付義務はありません。
  • 登録していないこと自体に罰則は想定されていませんが、登録事業者でない者が適格請求書と誤認されるような書類を交付する行為などには、消費税法上の罰則が定められています。
  • インボイスを求められて交付できない場合は、「登録していない」旨を早めに伝え、消費税相当分の取扱いを含めて取引先と条件を確認することが実務上の対応になります。

インボイスの発行義務は誰にある? まず自社の立場を確認する

インボイス制度(適格請求書等保存方式)でいう交付義務は、税務署に申請して登録を受けた「適格請求書発行事業者」に生じます。登録事業者が、課税事業者である取引の相手方から適格請求書の交付を求められたときは、原則としてこれを交付し、写しを保存することとされています。

逆に言えば、登録していない事業者には交付義務はありません。免税事業者のままでいる、あるいは課税事業者だが登録していない、という場合、インボイスを出せないこと自体が制度違反になるわけではない、という整理です。

まずは自社がどちらなのかを確認してください。登録の有無は、通知書(登録番号が記載された書面や電子通知)と、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認できます。設立直後の法人で「登録したつもりだったが申請が済んでいない」というケースは実際にありますので、番号の実在まで見ておくと安心です。

「インボイス制度は強制なのか」——登録は任意、ただし取引上の判断は別

登録するかどうかは、事業者の選択に委ねられています。制度として一律に登録を強制する仕組みにはなっていないため、「非対応のままでいる」という選択肢自体は残されています。

一方で、買い手側から見ると、インボイスがない仕入れは仕入税額控除の計算に影響します(経過措置の適用がある期間の扱いを含め、詳細は国税庁の資料をご確認ください)。そのため、取引先が課税事業者で、かつ原則課税で申告している場合は、登録の有無を確認されることが増えます。

判断の順番としては、①主な取引先が課税事業者か消費者・免税事業者か、②取引先が簡易課税や2割特例など仕入税額控除の影響を受けにくい方法かどうか、③登録した場合に生じる消費税の申告・納税と事務負担、の順に見ていくと整理しやすくなります。取引先が一般消費者中心であれば、登録しない選択が実務上不利になりにくい場面もあります。判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

インボイス制度の罰則はどこにある? 想定される場面を分けて考える

「登録していないこと」への罰則は想定されていません。罰則が問題になるのは、主に交付する書類の内容が偽られている場面です。登録を受けていない事業者が、適格請求書であるかのように誤認させる書類を交付する行為や、登録事業者が虚偽の記載をした適格請求書を交付する行為については、消費税法上の罰則が定められています。

実務で怖いのは、悪意のない「うっかり」です。たとえば、以前使っていた請求書テンプレートに他社の登録番号が残っていた、登録申請中なのに番号欄を埋めてしまった、といったケースです。番号は公表サイトで照合できるため、取引先側で気づかれることもあります。

また、罰則とは別に、記載事項に不備があるインボイスは、買い手側で仕入税額控除の要件を満たさないと判断されることがあります。結果として取引先に修正依頼や追加負担が生じ、信頼関係に響くという意味では、こちらのほうが日常的なリスクです。具体的な罰則規定の内容や適用範囲は、国税庁の公表資料を確認し、判断に迷うときは税理士に確認してください。

取引先から交付を求められたときの対応手順

登録している場合は、求められた時点で、記載事項がそろった請求書等を交付します。一般に必要とされるのは、発行者の氏名または名称と登録番号、取引年月日、取引内容(軽減税率対象である旨を含む)、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額等、交付先の氏名または名称です。交付した書類の写しは保存対象になります。

登録していない場合は、まず「当社は適格請求書発行事業者の登録をしていないため、適格請求書は交付できません」と早めに、できれば書面やメールなど記録の残る形で伝えます。そのうえで、請求書には登録番号を書かず、消費税相当額の表示をどうするか(内税・外税・総額表示)を取引先と確認します。

次に、今後の取引条件を話し合います。買い手側の負担が増えることを理由に一方的に価格を引き下げたり、取引を打ち切ったりする行為は、独占禁止法や下請法の観点から問題となる場合があるとされています。押し切られそうな場合は、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口、弁護士への相談も選択肢になります。

記載ミスに気づいたときは、修正した適格請求書を交付するのが原則です。買い手側が勝手に訂正することはできない扱いのため、連絡を受けたら速やかに差し替えてください。

インボイス未対応・非対応のままで進めるときに整えておくこと

登録しない方針を選ぶ場合でも、請求書の様式は整えておきます。登録番号欄を削除し、消費税の扱いを社内で統一して、担当者が変わっても同じ書式が出るようにしておくと、誤交付を防げます。

取引先への案内文を一つ作っておくのも有効です。「登録の有無」「今後の予定」「請求金額の考え方」を数行でまとめておけば、問い合わせのたびに文面を考えずに済みます。

将来の登録に備えて、課税売上の推移は把握しておきましょう。基準期間の課税売上高によっては課税事業者となる場合があり、そのタイミングで登録を検討する事業者も多くあります。登録すると消費税の申告義務が生じ、経理の手間も変わるため、切り替え時期は事前に見積もっておくと慌てません。

登録している場合に見落としやすい実務ポイント

交付義務とセットで、写しの保存義務があります。紙で発行したものはその控え、メールやシステムで電子的に送ったものは、電子帳簿保存法の考え方に沿った保存が求められる場合があります。保存方法の要件は改正が重なっている分野なので、国税庁の最新資料を確認してください。

小売業や飲食業など、不特定多数を相手にする業種では、記載事項を一部簡略化した書類の交付が認められる取扱いがあります。自社の業種が当てはまるかどうかで、レジや請求システムの設定が変わります。

また、返品や値引きがあった場合の書類、少額な取引の取扱いなど、例外的な取扱いがいくつかあります。自社の取引パターンに合わせて、どの書類を、誰が、いつ出すのかを一度フローに落としておくと、担当者が増えたときに引き継ぎやすくなります。

迷ったら専門家に相談を

インボイスの登録は、消費税の納税額、価格の決め方、取引先との関係が絡み合う判断です。とくに「登録したほうがよいか」「登録後の申告方法をどうするか」は、売上構成や取引先の属性によって結論が変わります。

罰則や記載事項の詳細、電子保存の要件については、国税庁の公表資料を確認したうえで、自社の事情に当てはめる部分は税理士にご相談ください。取引条件の一方的な変更や取引停止を持ちかけられた場合は、弁護士や公的な相談窓口に相談する方法もあります。

早めに確認しておけば、請求書の書式を直すだけで済むことがほとんどです。求められてから慌てるより、今の自社の立場を一度整理しておくことをおすすめします。

よくある質問

インボイスを発行しないと罰則がありますか?

登録していない事業者には交付義務がないため、発行しないこと自体への罰則は想定されていません。ただし、登録を受けていないのに適格請求書と誤認されるような書類を交付する行為などには消費税法上の罰則が定められていますので、登録番号の記載には注意してください。

インボイス制度への登録は強制ですか?

登録は事業者の選択によるもので、一律に強制される仕組みにはなっていません。ただし課税事業者の取引先にとっては仕入税額控除の計算に影響するため、取引上の要請として登録を確認されることがあります。

取引先にインボイスを求められましたが、登録していません。どう伝えればよいですか?

「適格請求書発行事業者の登録をしていないため、適格請求書は交付できません」と、メールなど記録の残る形で早めに伝えるのが実務的です。そのうえで、請求金額や消費税相当額の扱いをどうするか、取引条件を確認しましょう。

発行したインボイスに間違いがあった場合はどうしますか?

買い手側が訂正することはできない扱いのため、発行した側が修正した適格請求書を交付し直すのが原則です。交付した書類の写しは保存対象になりますので、修正版も含めて残しておいてください。

あわせて読みたい

「会計・税務」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。