株式会社設立時の役員と機関設計|取締役の人数と一人で設立する場合

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくろうと定款のひな形を開くと、いきなり「取締役会を置くか」「監査役を置くか」といった選択に出会います。専門用語が並びますが、これから設立する小さな会社が決めることは、実はそれほど多くありません。この記事では、取締役の人数の決め方、一人で設立する場合の形、代表取締役をどう定めるか、任期をどう設定するかを、判断の順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 株式会社は取締役1人から設立でき、一人で設立する場合は「取締役1名・取締役会なし・監査役なし」という形が一般的な出発点になります。
  • 取締役会を置く場合は取締役が3名以上必要になり、あわせて監査役などの設置も求められるため、身内だけの小さな会社では取締役会を置かない選択が多く見られます。
  • 取締役の任期は原則2年ですが、株式の譲渡に会社の承認が必要な会社では定款で最長10年まで伸ばすことができ、伸ばすほど登記の手間は減る一方で交代しにくくなります。

株式会社の設立に役員は何人必要? 最少は取締役1人

株式会社は、取締役が1人いれば設立できます。出資する人(発起人)と取締役が同じ人でも構いませんので、自分ひとりで出資して自分が取締役になる、という形が成り立ちます。いわゆる「ひとり社長」の会社です。

監査役や会計参与は、設置するかどうかを会社が選べる機関です。取締役会を置かない小さな会社であれば、設置しないまま設立するケースが多く見られます。逆に、取締役会を置くと取締役は3名以上必要になり、監査役などの設置も原則として求められます。

つまり「何人必要か」の答えは、置く機関によって変わります。まず機関設計(取締役会を置くか)を決め、その結果として必要な人数が決まる、という順番で考えると迷いません。

機関設計はこの順に決める|取締役会を置くか置かないか

最初に見るのは「取締役会を置くか」です。置かない場合、必要な機関は株主総会と取締役だけで済みます。取締役が2名以上いても、取締役会を置かない構成にすることはできます。

取締役会を置くかどうかの判断基準は、株主と経営者が分かれているかどうかです。出資者が自分(と家族)だけで、経営判断も自分がするなら、取締役会を置く実益は小さくなります。外部から出資を受けていて、株主の代表を役員に入れる、重要な決定は合議で残したい、といった事情があるなら取締役会が選択肢に入ります。

取締役会を置くと、重要な財産の処分や多額の借財などを取締役会で決議し、議事録を残す運用が必要になります。人数を揃えられても、実際に会議体として動かせるかを含めて考えてください。将来必要になった段階で、定款を変更して取締役会を設置することもできます。

一人で株式会社を設立する場合の形と注意点

一人で設立する場合、「発起人1名・取締役1名・取締役会なし・監査役なし」が典型的な出発点です。取締役が1人しかいないときは、その人が当然に会社を代表しますので、あえて代表取締役を定めない設計も可能です。ただし対外的な呼称として「代表取締役」を使いたい場合は、定款や設立時の決定で代表取締役を定めておくとよいでしょう。

注意したいのは、意思決定の記録です。一人しかいなくても、株主総会の決議や取締役の決定は、議事録や決定書の形で残しておく必要が出てきます。役員報酬の額を決めるときなどは、後から税務上の確認を求められることがありますので、日付入りで保存しておくと安心です。

もうひとつ、会社と自分個人との取引(自分の持ち家を会社事務所として借りる、自分に会社が貸付をするなど)は、利益相反として手続きが必要になる場面があります。判断が分かれる論点ですので、該当しそうなら税理士や司法書士に確認してください。

代表取締役はどう決める? 共同代表と持株比率の考え方

取締役が2名以上いる会社では、誰が会社を代表するかを決めます。取締役会を置かない会社なら、定款で定める、定款の定めに基づく取締役の互選で決める、株主総会の決議で決める、といった方法があります。設立時は、定款に代表取締役の氏名を書いてしまうか、発起人が設立時代表取締役を選定する形が一般的です。

代表取締役を2人置く(いわゆる共同代表)ことも可能です。対外的な信用や、実務上どちらでも契約できる利便性はありますが、意見が割れたときに動けなくなるリスクもあります。友人同士や夫婦で設立する場合は、代表を分けること以上に、持株比率をどうするかのほうが後々効いてきます。

持株比率が5割ずつだと、意見が割れたときに株主総会で何も決められなくなることがあります。役割分担と出資割合は分けて考え、誰が最終決定するのかをあらかじめ話し合っておくことをおすすめします。株式の買い取りルールを株主間で書面にしておく方法もありますので、弁護士に相談する価値のある場面です。

取締役の任期は何年にする? 2年と10年の比較

取締役の任期は原則2年(監査役は4年)ですが、株式の譲渡に会社の承認を要する旨を定款で定めている会社(非公開会社)では、定款で最長10年まで伸ばせます。設立時の定款で何年にするかを決めます。

任期が満了したら、同じ人が続けるとしても「重任」の登記が必要です。任期を10年にすれば登記の回数は減り、そのたびの費用と手間は軽くなります。一方で、任期途中に役員を辞めさせる場合、正当な理由がないと損害賠償の問題になることがあります。

判断の目安としては、ひとり社長や家族だけの会社なら長めの任期、外部の人を役員に迎える予定があるなら短めの任期、と考えると整理しやすくなります。なお任期を長くしても、役員変更の登記を忘れてよいわけではありません。登記を長期間放置すると過料の対象になることがありますので、満了日はカレンダーに入れておいてください。

設立時の役員を決める手順と、そのあとの届出

手順としては、①発起人と出資額を決める、②機関設計(取締役会の有無、監査役の有無)を決める、③取締役の人数と氏名、代表取締役、任期を決める、④定款に反映して公証役場で認証を受ける、⑤出資金を払い込む、⑥法務局に設立登記を申請する、という流れになります。役員に関する書類としては、就任承諾書や印鑑証明書などを用意するのが一般的です。必要書類は法務局の案内で最新のものを確認してください。

登記が完了したら、税務署・都道府県・市区町村への設立の届出と、役員報酬を支払うなら源泉徴収に関する手続きが出てきます。社長ひとりの会社でも、報酬を支払う形であれば社会保険の加入対象になることがありますので、年金事務所の案内を確認するか社会保険労務士に相談してください。

役員報酬の額と、いつから支払うか(決定のタイミング)は、法人税の取り扱いに影響することがあります。設立の直後は判断材料が少なく決めにくい部分ですので、顧問を依頼する予定の税理士がいれば、登記前の段階で一度相談しておくとスムーズです。機関設計や任期の設計、登記書類の作成は司法書士、株主間のルールづくりは弁護士が相談先になります。

よくある質問

株式会社は一人でも設立できますか。

発起人1名・取締役1名で設立することができます。取締役会や監査役を置かない構成が一般的で、この場合その取締役が会社を代表することになります。一人でも株主総会や取締役の決定の記録は残しておいてください。

設立時に監査役は置かなければいけませんか。

取締役会を置かない小さな会社であれば、監査役を置かずに設立することができます。取締役会を設置する場合は、監査役などの設置が原則として求められます。自社の設計で必要かどうかは、司法書士に確認すると確実です。

取締役の任期は10年にしておけば安心ですか。

非公開会社であれば定款で最長10年まで伸ばせ、重任登記の回数は減ります。ただし任期途中で役員を交代させにくくなるため、外部の方を役員に迎える予定があるなら短めの設定も検討してください。

代表取締役を2人にすることはできますか。

可能です。対外的に両者が契約できる利便性がある一方、意思決定が割れたときに動けなくなる懸念もあります。代表の人数以上に、持株比率と最終決定のルールを先に決めておくことをおすすめします。

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