発起人とは|株式会社設立での役割と法人が発起人になる場合
「発起人」という言葉は、会社をつくろうと調べはじめた人が最初につまずくところです。社長のことなのか、出資者のことなのか、何人必要なのか。この記事では、発起人が設立手続きのなかで実際に何をするのか、誰がなれるのか、法人を発起人にする場合に何が増えるのかを、手続きの順番に沿って説明します。
この記事の結論
- 発起人とは、定款を作成して会社設立を企画し、設立時発行株式を引き受けて出資する人のことで、株式会社は発起人1人だけでも設立できます。
- 発起人には個人のほか法人もなることができ、法人が発起人になる場合は定款認証や登記の際に、その法人の登記事項証明書など法人の実在と意思を示す書類が求められます。
- 発起人だけが株式を引き受けて設立する発起設立では創立総会は開かれず、発起人以外から株主を募集する募集設立の場合に創立総会が必要になります。
発起人とは?株式会社設立で何をする人か
発起人とは、会社をつくろうと企画し、定款を作成して署名(または電子署名)し、設立時に発行する株式を引き受けて出資するひとのことです。会社法上、定款に発起人として氏名または名称と住所が記載され、設立時発行株式を1株以上引き受けた人が発起人にあたるとされています。つまり「発案した人」という日常語ではなく、書面上の役割として定義されている点が特徴です。
発起人が設立手続きのなかで担う中心的な仕事は、大きく三つです。ひとつ目は定款の作成と公証人による認証を受けること、ふたつ目は出資金の払込みを行うこと、三つ目は設立時取締役など設立時役員を決めることです。これらが終わってはじめて、設立登記の申請ができる状態になります。
よくある誤解は「発起人=社長」というものです。発起人はあくまで設立を企画して出資する立場で、設立後にその会社の取締役になるかどうかは別の話です。実務上、ひとり社長の会社では同じ人が発起人・出資者・代表取締役を兼ねることが多いため、区別があいまいになりがちですが、書類の上では別々の役割として扱われます。
株式会社設立の最低人数は?発起人は1人でもよい
株式会社設立の最低人数は、発起人1人・取締役1人、つまり同一人物であれば実質1人です。かつては複数の発起人が必要でしたが、現在の会社法では1人での設立が認められています。これから独立する方が、自分ひとりを発起人として設立するのは一般的なかたちです。
一方で、共同創業や親族・取引先と一緒に会社をつくる場合は、発起人を複数にすることになります。発起人を複数にするかどうかは「一緒に出資して、最初から株主として名前を残すかどうか」で判断してください。設立時に出資せず、後から株式を譲り受けたり増資に応じたりする方法もあります。
判断の順番としては、まず「設立時点で出資する人は誰か」を決め、次に「その人を株主名簿に載せてよいか」を確認し、最後に「持株比率をどう配分するか」を決めます。株式は議決権であり、あとから回収するのが簡単ではないため、人数を増やす前に持株比率の意味を理解しておくことをおすすめします。比率と経営権の関係に不安があれば、司法書士や弁護士に相談しておくと安心です。
法人が発起人になる場合に増える手続き
発起人になれるのは個人だけではありません。法人も発起人になることができ、親会社が子会社を設立する場合や、既存の会社が新規事業を別会社で立ち上げる場合によく使われます。この場合、定款には発起人として法人の商号・本店所在地を記載し、その法人の代表者が法人を代表して署名・記名押印します。
法人が発起人になるときに増えるのは、その法人が実在し、意思決定をしていることを示す書類です。具体的には、発起人となる法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)や、代表者の印鑑証明書が求められるのが通常です。公証役場や法務局によって求められる書式が異なることがあるため、事前に問い合わせて確認してください。
また、親会社側で「子会社を設立し、出資する」という意思決定(取締役会決議など)が必要になることがあります。事業目的が親会社の定款の範囲に収まるか、グループ内の規程上どの手続きが必要かも合わせて確認しておくと、後戻りが減ります。実質的支配者の申告(後述)でも、法人が発起人の場合は誰が最終的にその法人を支配しているかを遡って示すことになります。
定款認証は発起人が行う|複数人・法人の場合の進め方
株式会社の定款は、公証役場で公証人の認証を受けてはじめて効力を持ちます。認証を嘱託する(お願いする)のは発起人で、この立場を「嘱託人」と呼びます。発起人が複数いる場合は、全員が嘱託人となるのが原則ですが、全員がそろって公証役場に行く必要は必ずしもなく、他の発起人に委任状を出して一人が代表して手続きすることもできます。
進め方は次の順です。まず定款案をつくり、公証役場に事前にデータや原稿を送って内容をチェックしてもらいます。次に、認証日を予約し、当日に発起人(または代理人)が本人確認書類と印鑑証明書などを持参して認証を受けます。電子定款にする場合は電子署名が必要で、認証手数料のほかに紙の定款で必要な収入印紙の扱いが変わりますが、費用の詳細は日本公証人連合会や各公証役場の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
定款認証では、あわせて「実質的支配者となるべき者の申告」が求められます。これは会社の背後にいる自然人を明らかにするための手続きで、法人が発起人の場合はその法人の株主構成まで遡って記載することになります。書式や記載方法は公証役場の案内に従ってください。認証後は、原則として発起人全員の同意がなければ定款を変更できない点にも注意が必要です。
創立総会が必要なのはどんなとき?発起設立と募集設立
株式会社の設立方法には、発起設立と募集設立の二つがあります。発起設立は、設立時に発行する株式のすべてを発起人が引き受ける方法です。募集設立は、発起人が一部を引き受け、残りを発起人以外から募集する方法です。小規模な会社の設立では、手続きが簡単な発起設立が選ばれることがほとんどです。
創立総会が必要になるのは、募集設立の場合です。創立総会とは、株式を引き受けた人(設立時株主)が集まり、設立の経過報告を受け、設立時取締役などを選任する会議です。発起設立では、この役割を発起人の決定(発起人が複数なら発起人の議決権の過半数による決定など)が担うため、創立総会は開かれません。
どちらを選ぶかの判断は単純で、「出資するのは発起人だけか、それ以外からも集めるか」です。設立時点で発起人以外から資金を集める予定がなければ発起設立で進め、外部から出資を受けるなら、そもそも設立後の増資という形にできないかも含めて検討してください。募集設立は書類も期日管理も増えるため、司法書士に依頼する前提で考えたほうが現実的です。
発起人が決まってからの流れと、迷ったときの相談先
発起人が決まったら、設立までの流れは次の順に進みます。①商号・本店・事業目的・資本金額・発行株式数などの基本事項を決める、②定款を作成し公証役場で認証を受ける、③発起人名義の口座に出資金を払い込み、通帳の写しなどで払込証明書を作る、④設立時取締役を選任し就任承諾書を用意する、⑤法務局に設立登記を申請する、という流れです。登記申請日が会社の成立日になります。
用意する書類は、一般に定款、発起人の決定書(複数人の場合)、就任承諾書、払込みを証する書面、印鑑証明書、印鑑届書などです。法人が発起人なら、その法人の登記事項証明書も加わります。細かい様式は法務局の公式サイトに記載例があるので、申請予定の法務局の案内を確認しながら準備してください。
発起人の構成は、設立後の株主構成そのものです。あとから変えるには株式譲渡や増資といった手続きが必要になり、税務上の評価が問題になることもあります。共同創業で持株比率を決めるとき、法人を発起人にして親子関係をつくるとき、出資と経営を分けたいときなどは、登記まわりは司法書士に、出資や役員報酬にかかわる税務は税理士に、早めに相談しておくと後の修正が少なくて済みます。
よくある質問
発起人と取締役の違いは何ですか?
発起人は会社設立を企画して定款をつくり、設立時発行株式を引き受けて出資する人で、設立手続き上の立場です。取締役は設立後の会社を経営する役員で、両者は別の役割です。ひとりで設立する場合は同じ人が両方を兼ねることが一般的ですが、発起人が取締役にならないという選択もできます。
発起人が複数いる場合、定款認証には全員で行く必要がありますか?
発起人全員が嘱託人となりますが、他の発起人から委任状をもらえば、代表者一人や代理人が公証役場に出向いて手続きすることもできます。必要な委任状の書式や本人確認書類は公証役場によって案内が異なるため、事前に問い合わせて確認してください。
法人が発起人になるとき、どんな書類が必要ですか?
一般には、発起人となる法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)や代表者の印鑑証明書などが求められます。あわせて、実質的支配者の申告でその法人を支配する自然人まで遡って示すことになります。求められる書類は公証役場や法務局で異なることがあるため、事前確認をおすすめします。
発起人は設立後に変更できますか?
発起人は設立手続き上の立場なので、会社成立後に「発起人を変える」という手続きはありません。実質的に構成を変えたい場合は、株式の譲渡や増資といった別の手続きになり、税務上の取扱いが問題になることもあります。実行前に税理士や司法書士にご確認ください。