法人口座のキャッシュカード・デビットカード|複数枚発行と使い分け

・法人口座・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

法人口座を開いたあと、「カードは何枚まで作れるのか」「社員に持たせていいのか」で迷う方は多いはずです。個人口座と違い、法人口座のカードは種類ごとに使える範囲も、複数枚発行の可否も、金融機関ごとにかなり差があります。この記事では、法人口座に付くカードの種類を整理したうえで、どういう会社ならどのカードを選ぶか、複数枚持つときに何を決めておくべきかを、判断の順番で説明します。

この記事の結論

  • 法人口座に付くカードは大きく「キャッシュカード(入出金用)」「デビットカード(決済用)」「入金専用カード」の3種類に分かれ、目的が違うため役割で使い分けます。
  • キャッシュカードを複数枚発行できるかは金融機関によって異なり、発行できる場合も名義や暗証番号の管理ルールを先に決めておく必要があります。
  • 現金をほとんど扱わない会社は、キャッシュカードを発行せずネットバンキングとデビットカード・法人クレジットカードだけで運用する選択もあります。

法人口座のキャッシュカードとデビットカードは何が違う?

キャッシュカードは、ATMで現金を引き出したり預け入れたりするためのカードです。店舗やネットでの支払いには使えず、あくまで口座の現金を動かすための鍵だと考えると分かりやすいです。法人口座では、通帳と並ぶ「現金を動かせる手段」なので、社内での保管場所と持ち出しルールが重要になります。

デビットカードは、支払いのたびに口座から即時に引き落とされる決済用のカードです。クレジットカードのように後払いではないため、残高の範囲内でしか使えず、使いすぎが起きにくいのが特徴です。金融機関によっては、デビットカードにATMでの入出金機能が付いていて、実質的にキャッシュカードを兼ねるタイプもあります。

入金専用カードは、その名のとおりATMでの預け入れだけができるカードです。店舗の売上金を毎日入金するような業種で、引き出し権限を持たせずに入金作業だけを任せたいときに使われます。取り扱いの有無は金融機関によって違うため、口座を開く前に確認しておくと安心です。

法人口座のキャッシュカードは複数枚発行できる?

結論から言うと、複数枚発行できる金融機関もあれば、原則1口座1枚という金融機関もあります。まず自社の口座がどちらなのかを、金融機関の法人向けページか窓口で確認してください。ネット銀行では、キャッシュカード自体を発行しない、あるいは1枚のみという設計が比較的多く見られます。

複数枚発行できる場合でも、注意点があります。カードの名義は法人名になりますが、誰がどのカードを持っているかを金融機関が把握しているとは限らないため、社内で「カード番号の末尾と保管者」を対応させた一覧を作っておく必要があります。暗証番号を共有してしまうと、誰が引き出したか追えなくなります。

支店が複数ある、店舗ごとに現金を扱うといった事情がなければ、無理に複数枚を持つ必要はありません。枚数が増えるほど紛失・不正利用のリスクと、突合作業の手間が増えます。まずは「本当に現金を動かす必要がある拠点はいくつか」から考えるのが順番です。

社員にカードを持たせるなら、どの種類を選ぶ?

社員に持たせる前提で考えるなら、キャッシュカードよりデビットカードや法人クレジットカードのほうが管理しやすい場面が多いです。デビットカードは利用のたびに通知や明細が残り、何にいくら使ったかが後から追えます。現金を引き出せるキャッシュカードは、使途の記録が残りにくいぶん、経費精算の突合が重くなりがちです。

判断の順番としては、まず「その社員は現金が必要か、支払いができれば足りるか」を見ます。備品購入や出張費の支払いだけなら、支払手段があれば足ります。次に「立替精算で回せないか」を見ます。回せるなら、カードを渡さず後日精算にするのがいちばんシンプルです。

どうしても現金の取り扱いが必要な場合は、入金専用カードで引き出し権限を切り離す、小口現金の上限額を決める、といった形でリスクを絞ります。カードの貸与は社内規程に「誰に、どの範囲で、どう返却するか」を書いておくと、退職時のトラブルを防ぎやすくなります。

法人口座をキャッシュカードなしで運用できる?

現金の入出金がほとんどない会社であれば、キャッシュカードを発行せずに運用することは十分に可能です。振込や振替はネットバンキングで完結し、支払いはデビットカードや法人クレジットカードで行い、現金が必要な場面だけ役員が立て替えて精算する、という形です。カードがなければ紛失や不正引き出しの心配も減ります。

一方で、現金商売や、取引先から現金で受け取ることがある業種では、入金手段がないと困ります。この場合はキャッシュカードか入金専用カードのどちらかを用意します。「引き出しは経理担当だけ、入金は店舗担当も可」というように、権限を分けられる構成にしておくと運用が安定します。

なお、ネット銀行と店舗を持つ銀行では、ATMの使いやすさや窓口対応の考え方が異なります。ATMの利用条件や手数料は金融機関ごとに違い、改定もあるため、各金融機関の公式サイトで最新の内容を確認してください。

カードを申し込むときの流れと、決めておくこと

申し込みのタイミングは、口座開設と同時が基本です。多くの金融機関では、法人口座の開設申込書にカードの発行希望欄があり、そこで種類と枚数を指定します。後から追加する場合は、別途カード発行の申込手続きが必要になり、届出印や代表者の本人確認書類を求められることが一般的です。

申し込み前に社内で決めておきたいのは、次の3点です。1つ目は保管場所と鍵の管理者、2つ目は暗証番号を誰が知るか、3つ目は紛失時に誰がどこへ連絡するか。特に3つ目は、金融機関の紛失受付の連絡先を、カードとは別の場所にメモしておくと安心です。

カードが届いたら、利用明細やネットバンキングの取引履歴を月次で確認する運用をセットにします。デビットカードの利用分は、そのまま経費の記録として使える形に整えておくと、帳簿づけが楽になります。電子データでの保存の扱いは制度上の要件があるため、詳細は国税庁の資料や顧問税理士に確認してください。

どう選ぶ?会社のタイプ別の考え方

現金をまったく扱わないひとり社長やオンライン中心の事業なら、ネットバンキング+デビットカード(または法人クレジットカード)で足り、キャッシュカードは無しでも回せることが多いです。支払いの記録が自動で残るぶん、記帳の手間も軽くなります。

店舗があり日々の売上入金がある会社は、入金専用カードがあるかをまず確認します。あるなら店舗側は入金専用、本部側にキャッシュカード、という分け方がすっきりします。取り扱いがない場合は、キャッシュカードの複数枚発行が可能かを次に確認します。

社員の経費支払いが多い会社は、枚数を増やす対象をデビットカードか法人クレジットカードに寄せ、キャッシュカードは経理の1枚に絞る形が管理しやすいです。いずれの場合も、発行可否・枚数・機能は金融機関ごとに異なるため、候補を2〜3行に絞ったうえで公式サイトの法人向けページを見比べてください。

迷ったら専門家に相談を

カードの使い分けは、経費の記録方法や、社員に持たせる場合の社内規程とセットで考える必要があります。経費計上の扱いや証憑の保存方法については税理士に、カードの貸与ルールや退職時の返却を規程に落とし込むときは社会保険労務士に相談すると、実務に沿った形に整えやすくなります。

「この使い方で経費として扱えるか」「この管理方法で足りるか」といった判断は、事業の内容や規模によって変わります。自己判断で進めず、顧問税理士や社会保険労務士に一度確認したうえで、社内ルールとして文書にしておくことをおすすめします。

よくある質問

法人口座のキャッシュカードは何枚まで作れますか?

金融機関によって異なり、原則1枚のところもあれば、複数枚の発行に対応しているところもあります。枚数の上限や追加発行の手続きは各金融機関の法人向けページで確認してください。複数枚持つ場合は、保管者と暗証番号の管理ルールを先に決めておくと安全です。

法人デビットカードは社員名義で複数枚発行できますか?

追加カードとして社員用に発行できる仕組みを用意している金融機関もありますが、対応の有無や条件はさまざまです。発行できる場合も、利用限度額の設定や明細の確認方法を合わせて確認しておくと管理しやすくなります。

入金専用カードはどんなときに使いますか?

店舗の売上金など、引き出しは不要で預け入れだけを任せたい場面で使われます。引き出し権限を切り離せるため、現金を扱う担当者に渡すカードとして選ばれることがあります。取り扱いの有無は金融機関ごとに違います。

キャッシュカードを作らないと不便ですか?

現金の入出金がほとんどない会社であれば、ネットバンキングと決済用カードだけで運用できることが多く、大きな不便は生じにくいです。現金を受け取る機会がある業種では、キャッシュカードか入金専用カードのいずれかを用意しておくほうが安心です。

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