会社設立費用の勘定科目|創立費・開業費の経費処理と立替の扱い

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

登記が終わってひと息ついたところで、手元に残った領収書の束を見て「これ、会社の経費にできるのかな」と思った方は多いはずです。設立前に使ったお金は、個人のお金で払っているのに会社の費用にできる、という少し不思議な扱いになります。この記事では、創立費と開業費の分け方、社長が立て替えた分をどう会社から戻すか、領収書は誰の名前で取っておけばよいかを、設立直後にやる順番で整理します。

この記事の結論

  • 会社設立にかかった費用は、登記が完了するまでの費用を「創立費」、設立後から事業を始めるまでの費用を「開業費」として処理するのが一般的です。
  • 創立費・開業費はいったん繰延資産として計上し、任意のタイミングで償却できる扱いが認められているため、黒字が出た期にまとめて費用化するという選択もできます。
  • 社長が個人のお金で立て替えた設立費用は、領収書を残したうえで「役員借入金」または精算払いとして会社に請求する形で処理します。

会社設立の費用は経費にできる?まず押さえる考え方

会社ができる前に使ったお金なので、一見すると会社の経費にはできないように思えます。ただ、会社を立ち上げるために必要だった支出は、設立後の会社の費用として取り込む処理が一般に認められています。これが「創立費」と「開業費」という勘定科目です。

ポイントは、支払った人が誰かではなく、何のための支出かで判断することです。設立前は会社の銀行口座がないため、ほとんどの場合は発起人や社長個人が立て替えています。それでも会社の設立・開業のための支出であれば、会社の帳簿に取り込んだうえで、立て替えた個人に返す(または借入金として残す)という流れになります。

逆に、会社の設立とは関係のない個人的な支出を混ぜてしまうと、後から役員賞与などと扱われることがあります。判断に迷う支出は、領収書にメモを残しておき、後で税理士に確認できるようにしておくのが安全です。

創立費と開業費、どちらの勘定科目になるか

迷ったら、まず「登記が完了した日」を基準線に置いてください。この日より前の支出は創立費、この日より後で営業を開始するまでの支出は開業費、というのが基本的な分け方です。設立日は登記申請日になるのが通常なので、法務局に申請した日を手帳に控えておくと後が楽になります。

創立費に入りやすいのは、定款の認証にかかった費用、登記のための登録免許税、司法書士や行政書士への報酬、設立にあたって使った印鑑の作成費用、発起人が集まって打ち合わせた際の費用などです。会社という器を作るためにかかったお金、とイメージすると分かりやすいと思います。

開業費に入りやすいのは、営業を始める準備として使った広告宣伝費、名刺やウェブサイトの制作費、取引先へのあいさつ回りの費用、市場調査や研修にかかった費用などです。ただし、開業前に買ったパソコンや机などは金額によって資産計上(固定資産)になることがあり、仕入れた商品は棚卸資産になります。開業費に何でも入れられるわけではない点に注意してください。

仕訳はどうする?繰延資産としての扱いと償却の考え方

創立費・開業費は、支出した期に全額を費用にする方法のほか、繰延資産として資産に計上し、後から償却していく方法があります。税務上は任意償却といって、好きなタイミングで好きな額を償却できる扱いが認められているため、設立1期目が赤字なら償却せず据え置き、利益が出た期に償却して費用化する、という選択が取れます。

仕訳のイメージとしては、社長が立て替えた設立費用を会社に取り込む場合、借方に「創立費」または「開業費」、貸方に「役員借入金」を立てます。会社の口座から社長へ返金したときに、借方「役員借入金」、貸方「普通預金」と処理します。会社の口座からその場で払った分は、貸方が普通預金になるだけです。

償却する期には、借方「創立費償却」「開業費償却」、貸方「創立費」「開業費」という仕訳になります。会計ソフトによっては繰延資産の登録画面から処理する形になっているので、最初に1期目の申告を任せる税理士と、どちらの方法で処理するかを決めてから入力すると二度手間になりません。

社長が立て替えた費用の精算はどうする?

立替の処理は、次の順に進めるとすっきりします。まず、領収書を設立日の前後で並べ替えます。次に、日付・支払先・金額・内容を一覧にした精算書を1枚作ります。最後に、会社の口座が開設できた後に、その合計額を社長の個人口座へ振り込みます。振込にしておくと、通帳に記録が残るので説明がしやすくなります。

会社にまだ資金の余裕がないときは、すぐに返金せず「役員借入金」として貸借対照表に残しておく方法もあります。役員借入金は将来返済すればよいため、設立直後のキャッシュを温存できます。ただし残高が長く積み上がると、相続などの場面で論点になることがあるため、定期的に残高を確認しておくとよいでしょう。

なお、役員借入金に利息をつけるかどうか、つけた場合の扱いは状況によって判断が分かれます。金額が大きくなりそうなときは、処理を決める前に税理士に相談してください。

領収書の宛名と保管はどうすればいい?

設立前は会社が存在していないため、領収書の宛名が個人名になっていることがあります。宛名が個人名でも、設立のための支出であることが説明できれば、創立費として取り込む処理をしている会社は多いです。会社名が決まった後の支出は、可能なかぎり会社名で受け取っておくと説明の手間が減ります。

何の費用かが領収書だけでは分からないものは、裏面や付箋に「定款認証の際の交通費」「開業のあいさつ回り」など一言メモを残しておきます。半年も経つと本人でも思い出せなくなるので、その場で書くのが確実です。クレジットカード払いの場合は、利用明細だけでなく店舗の領収書やレシートも合わせて保管しておきます。

保管方法は紙でも電子でも構いませんが、電子データで受け取った請求書や領収書には電子帳簿保存法の定めが関わります。保存の要件は改正が重ねられているため、国税庁の資料で最新の内容を確認するか、顧問税理士に保存方法を確認したうえで、設立初年度からのルールを決めておくと後戻りがありません。

よくある迷いどころと、税理士に相談したいタイミング

迷いやすいのは、設立前に購入した高額な機材、設立前に払った事務所の敷金や前払家賃、設立準備中に発生した人件費などです。これらは開業費に入れず、固定資産や前払費用、給与として別の科目で処理するのが一般的です。科目を間違えると、償却の方法や税金の計算にも影響します。

また、設立費用の総額が大きいときは、いつ償却するかで1期目・2期目の利益の出方が変わります。任意償却が認められているとはいえ、資金繰りや将来の見通しと合わせて考えるべき論点なので、自己判断で決め切らないほうが無難です。

設立費用の科目分け、立替精算の方法、償却のタイミングは、1期目の決算・法人税申告に直結します。領収書の整理が終わった段階で一度、税理士に資料を見てもらい、処理方針を決めておくことをおすすめします。登記や定款の内容そのものに関わる疑問は司法書士、従業員を雇う予定があるなら社会保険労務士にも早めに相談しておくと、設立直後の手続きがまとめて片づきます。

よくある質問

会社設立の費用は、どの勘定科目で処理しますか。

登記が完了するまでにかかった定款認証費用や登録免許税、専門家報酬などは「創立費」、設立後から営業開始までの広告費やあいさつ回りの費用などは「開業費」で処理するのが一般的です。どちらも繰延資産として計上し、後から償却する方法が取れます。

社長が個人のお金で払った設立費用は、会社に請求できますか。

会社の設立・開業のための支出であれば、精算書と領収書をそろえたうえで会社から支払いを受ける形が一般的です。すぐに返金しない場合は「役員借入金」として残しておく方法もあります。

領収書の宛名が個人名でも、会社の経費にできますか。

設立前は会社が存在しないため個人名の領収書になることがあり、設立のための支出だと説明できれば創立費として取り込んでいる会社が多いです。会社名が決まった後は、できるだけ会社名で受け取り、用途のメモを添えて保管してください。

創立費や開業費は、設立した期に全額を費用にしなければいけませんか。

税務上は任意償却が認められているため、償却するタイミングを選べる扱いになっています。1期目が赤字なら据え置き、利益が出た期に償却するという選択もできますので、具体的な判断は税理士にご確認ください。

あわせて読みたい

「会計・税務」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。