就業規則の作成ツール比較|クラウド・AI作成でできることの違い

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

就業規則は「作って終わり」ではなく、作る・届け出る・周知する・改定し続ける、という4つの工程があります。ツール選びで迷うのは、たいていこの工程のどこを助けてほしいのかがはっきりしていないからです。この記事では、テンプレート型・クラウド労務型・AI型という3つの分類に整理し、どの会社がどれから手をつけるとよいかを、判断の順番で説明します。

この記事の結論

  • 就業規則のツールは「ひな形を埋めるテンプレート型」「届出・周知・改定管理までつなぐクラウド労務型」「文案づくりと社内問い合わせ対応を助けるAI型」の3つに分けて考えると選びやすくなります。
  • はじめて就業規則をつくる段階ではテンプレート型かクラウド労務型が中心で、AIによる作成は下書きと論点出しの補助として使い、最終確認は社会保険労務士など専門家に依頼する進め方が現実的です。
  • NotebookLMのような資料に根拠を紐づけて答えるツールやRAGの仕組みは、作成よりも「作ったあとの社員からの質問対応」と「ネット閲覧できる形での周知」に効きます。

就業規則の作成ツールは3タイプ|まずどこを助けてほしいかで分ける

就業規則まわりのツールは大きく3タイプに分かれます。ひとつめはテンプレート型で、厚生労働省のモデル就業規則や各社が用意するひな形をもとに、自社の情報を埋めていく形式です。ふたつめはクラウド労務型で、入退社手続きや勤怠・給与と同じ画面の中で規程を保管し、改定履歴や社員への周知状況まで扱えるものがあります。

みっつめがAI型です。生成AIに条文の下書きをさせたり、自社の規程PDFを読み込ませて「有給はいつから使えるのか」といった質問に答えさせたりする使い方が広がっています。作成支援と、運用後の問い合わせ対応では必要な機能が違うので、同じ「AI」でも分けて考えたほうが失敗しません。

選ぶ順番はシンプルです。まだ規則そのものが無いならテンプレート型かクラウド労務型、すでに規則はあるが社員が読んでいない・問い合わせが多いならAI型と社内ポータル、という順に見ます。両方の悩みがあるなら、先に本文を確定させてから閲覧環境を整えるほうが手戻りが少なくなります。

テンプレート型とクラウド労務型、どちらから始めるか

従業員がまだ数名で、初めて就業規則を整える段階なら、テンプレート型から入るのが手堅い進め方です。国が公開しているモデル就業規則は解説付きで、どの条文が法令に関わるのか、どこが会社の裁量で決める部分なのかが読み取りやすくなっています。まず自社で「決めなければいけない項目」を洗い出す目的で使うと、後の相談もスムーズです。

一方、すでに勤怠や給与のクラウドサービスを使っている会社は、クラウド労務型に寄せると管理が楽になります。規程本体をクラウド上に置いておくと、改定時にどのバージョンが最新か迷わず、社員が自分のアカウントから閲覧できる仕組みを持つサービスもあります。導入済みのサービスに規程管理の機能があるかを、まず契約中のプラン内容と公式サイトで確認してみてください。

判断に迷ったら、この順に見ます。(1)就業規則が無い、または何年も更新していない→まず本文づくりが先。(2)本文はあるが紙やファイルサーバーに眠っている→保管と周知の仕組みが先。(3)どちらも一応あるが改定が追いつかない→改定履歴を残せる仕組みが先。費用は各社で異なるため、機能の比較と合わせて公式サイトで最新の料金を確認してください。

就業規則のAI作成でできること・任せないほうがよいこと

生成AIに就業規則を作らせる使い方は、下書きのスピードという点では有効です。「飲食業で従業員10名、シフト制」といった前提を伝えれば、章立てや条文の候補、検討が漏れやすい論点を並べてもらえます。社内で議論するためのたたき台としては十分に役立ちます。

ただし、任せないほうがよい部分もはっきりしています。労働時間や休憩、割増賃金、休職や解雇の手続きなど、法令や判例の解釈が関わる部分は、AIの出力が古い前提や他社向けの条件を混ぜてしまうことがあります。そのまま採用すると、実際の運用と規程が食い違い、トラブル時に会社側の説明が苦しくなることも考えられます。最終的な内容は社会保険労務士に確認する前提で使うのが安全です。

実務的なおすすめの使い方は、条文を書かせるより「質問させる」ことです。自社の働き方を説明したうえで、「就業規則に定めておくべき事項で、まだ決めていないものを挙げて」と頼むと、抜け漏れのチェックリストとして機能します。決めるのは人、整理するのはAI、という分担にすると扱いやすくなります。

NotebookLMやRAGは「作る」より「調べる・答える」に効く

NotebookLMのように、アップロードした資料の中から答えを探し、どこに書いてあるかを示してくれるツールは、就業規則の運用と相性がよい領域です。自社の就業規則、賃金規程、育児介護休業規程などをまとめて読み込ませておけば、「慶弔休暇は何日か」「副業の申請はどの規程か」といった質問に、該当箇所を示しながら答えてもらえます。

RAG(検索して見つけた文書をもとに回答を生成する仕組み)を社内チャットに組み込む方法も同じ発想です。ポイントは、参照元が自社の規程に限定されていること。一般的な生成AIが一般論で答えてしまうのに対し、RAGは自社の条文を根拠にできるため、回答のズレが小さくなります。それでも回答は補助であり、最終的な判断は原本を確認する運用にしておくべきです。

導入前に決めておきたいのは3点です。読み込ませる規程の最新版を誰が差し替えるか、給与テーブルなど社外に出したくない情報を含めるか、そして人事以外の社員にどこまで使わせるか。個人情報や機密の扱いは、利用するサービスの規約とセキュリティ方針を必ず自社で確認したうえで判断してください。

社内ポータルでネット閲覧できるようにする|周知の実務

就業規則は作成・届出だけでなく、従業員がいつでも内容を確認できる状態にしておくことが求められます。掲示、書面の交付のほか、社内のパソコンやスマートフォンから閲覧できるようにする方法も認められる考え方が示されていますが、要件の詳細は厚生労働省や所轄の労働基準監督署の資料を確認してください。

実装としては、既存の社内ポータルサイトやグループウェアに規程のページを作る、クラウド労務サービスの規程閲覧機能を使う、共有ドライブに専用フォルダを置く、といった選択肢があります。選ぶ基準は、全従業員がアカウントを持っているか、パート・アルバイトを含めて誰でもアクセスできるか、スマートフォンから開けるかの3点です。パソコンを持たない現場スタッフがいる会社では、ここでつまずきがちです。

運用のコツは、置き場所をひとつに決めることです。ファイルサーバーとポータルの両方に古い版が残っていると、どれが有効か分からなくなります。最新版のPDFを1か所に置き、改定日と改定履歴を同じページに書いておく。この形にしておけば、AIに読み込ませるときも、監督署や社員に示すときも同じ資料を使えます。

改定を続けられる体制にする|年1回の見直しとツールの役割

就業規則は法改正や社内制度の変更に合わせて見直しが必要です。ツールを選ぶときは、作るときの使いやすさより、改定を続けられるかで見たほうが長く使えます。改定履歴が残る、いつ誰が承認したか分かる、旧版も参照できる。この3つがあると、数年後に「なぜこの条文にしたのか」をたどれます。

現実的な運用としては、年に1回、決算や年度替わりのタイミングで見直し日を固定してしまう方法があります。その際、AIに「前回の版と今回の案の差分と、その影響を受ける手続き」を整理させると、社内説明の資料づくりが早くなります。変更内容によっては従業員代表の意見書を添えて所轄の労働基準監督署へ届け出る手続きが必要になるため、進め方は事前に確認しておきましょう。

ツールはあくまで作業を軽くする道具で、内容の妥当性を保証するものではありません。労働時間制度の設計、休職や退職に関する定め、割増賃金の計算方法など、個別の事情が絡む部分は社会保険労務士に相談し、必要に応じて弁護士の確認も受けながら整えていくことをおすすめします。まずは自社の規程の最終改定日を確認するところから始めてみてください。

よくある質問

就業規則はAIだけで作っても大丈夫ですか。

章立てや論点の洗い出し、下書きの作成にはAIが役立ちますが、労働時間や賃金、休職・退職に関する条文は法令や個別事情の解釈が関わるため、出力をそのまま使うのは避けたほうがよいと考えられます。たたき台として使い、最終的な内容は社会保険労務士に確認する進め方が現実的です。

NotebookLMを就業規則に使うとき、何に気をつければよいですか。

アップロードする資料が最新版かどうかと、誰がその差し替えを担当するかを決めておくことが重要です。また、賃金テーブルなど社外に出したくない情報を含める場合は、利用するサービスの規約とセキュリティ方針を自社で確認したうえで判断してください。

就業規則を社内ポータルで閲覧できるようにすれば、紙の掲示はやめてよいですか。

従業員がいつでも内容を確認できる状態であることが前提で、電子的な方法も認められる考え方が示されていますが、要件の詳細は厚生労働省の資料や所轄の労働基準監督署で確認してください。パソコンを持たない従業員がいる場合は、スマートフォンからの閲覧や掲示の併用を検討するとよいでしょう。

従業員が少ない会社でも作成ツールを入れる意味はありますか。

従業員が10人未満で作成義務がない段階でも、労働条件を書面で整理しておくと採用や手続きの場面で役立ちます。まずは無料で入手できるモデル就業規則で必要項目を把握し、人数が増えて改定が発生するようになった時点でクラウド型を検討する、という順番でも遅くありません。

あわせて読みたい

「採用・労務」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。