請求書作成ソフトの比較|インボイス・見積書対応での選び方
請求書作成ソフトは種類が多く、「どれもインボイス対応と書いてある」ので、かえって選びにくくなっています。ただ、比べる軸を3つに絞ると判断はかなり単純になります。インボイスの記載項目と控えの保存、見積書から請求書への流れ、そして会計ソフトとのつながりです。この記事では、ひとり社長や小さな会社が、自分の請求のしかたに合うソフトをどの順番で見ていけばいいかを整理します。
この記事の結論
- 請求書作成ソフトは、①適格請求書の記載項目と控えの保存、②見積書・納品書からの変換、③会計ソフトへの連携、の順に確認すると絞り込めます。
- 毎月の発行枚数が少なく取引先も固定なら無料で使える範囲のツールで足りることが多く、発行枚数や担当者が増えるほど会計ソフト一体型が向きます。
- 弥生やソリマチのように会計ソフトを提供している会社の請求書機能は、すでに同じ会社の会計ソフトを使っている場合に候補として優先しやすくなります。
請求書作成ソフトは何を基準に比較すればいいですか
最初に押さえたいのは、比較の軸を増やしすぎないことです。機能一覧を横に並べると差がつきにくく、どれも似て見えてしまいます。小さな会社が実際に困るのは、インボイスの記載漏れ、見積書を作り直す手間、月末に会計へ転記する作業の3つに集約されます。
そこで、①適格請求書として必要な項目が入力・表示できるか、②見積書や納品書から請求書へ引き継げるか、③会計ソフトや口座の情報とつながるか、という順で見ていきます。この3つを満たしたうえで、スマホアプリの有無、送付方法(メール・PDF・郵送代行)、権限管理といった項目を足していくと迷いにくくなります。
料金は最後に比べます。先に料金表を見ると、安い順に並べたくなり、必要な機能が抜け落ちたまま契約してしまいがちです。なお各社の料金や提供プランは変更されることがあるため、金額は各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
インボイス対応の請求書ソフトはどこを見ればいいですか
インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、請求書に登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額などの記載が求められます。ソフト選びでまず見るのは、これらの項目が定型のフォーマットとして最初から用意されているかどうかです。自由記述の備考欄に自分で書き足す形だと、毎回の入力漏れが起きやすくなります。
次に、税率が混在する取引を扱うかどうかで見方が変わります。飲食料品や定期購読物など軽減税率の対象を扱うなら、明細ごとに税率を選べて、税率区分ごとの合計が自動で出る仕様かを確認します。標準税率のみの取引しかないなら、この点はそれほど重くは効きません。
さらに、発行した請求書の控えをソフト側で保存・検索できるかも見ておきます。電子的にやり取りした請求書の保存については電子帳簿保存法の考え方が関わるため、日付・取引先・金額で検索できるかといった点が実務では効いてきます。制度の要件そのものは更新されることがあるので、国税庁の資料や所管官庁の案内で最新の内容をご確認ください。判断に迷う場合は税理士にご確認ください。
見積書と請求書をまとめて作れるソフトを選ぶべきですか
見積書を出してから受注し、納品して請求する、という流れが毎回発生する業種なら、見積書から請求書へ変換できるソフトを優先します。建設、制作、士業、受託開発などが典型です。同じ内容を二度入力する手間がなくなるうえ、金額の食い違いも起きにくくなります。
逆に、月額のサービス提供で毎月同じ金額を請求するだけなら、見積書機能よりも「定期請求(繰り返し発行)」の機能を重視したほうが実感が大きくなります。毎月1日に自動で下書きが作られる、前月分を複製できる、といった作りです。
判断の順番としては、まず直近3か月に自分が作った書類を数えてみてください。見積書が請求書と同じくらいの枚数あるなら見積対応を必須条件に、ほとんど請求書だけなら定期請求と取引先管理を必須条件に置きます。納品書や領収書まで必要かは、取引先から求められた実績があるかで決めれば十分です。
無料の請求書作成ソフトで足りるのはどんな場合ですか
無料で使える範囲があるサービスは多く、発行枚数や登録できる取引先数、ユーザー数などに上限が設けられていることが一般的です。上限の内容は各社で異なり、変更されることもあるため、利用前に公式サイトで条件をご確認ください。
無料の範囲で足りやすいのは、請求書の発行が月に数枚で、取引先も固定、経理を自分ひとりで見ている場合です。設立直後のひとり会社はここに当てはまることが多く、まず無料の範囲で始めて、枚数が増えてから有料へ移るという進め方は現実的です。
一方で、次のどれかに当てはまるなら、最初から有料の機能まで含めて検討したほうが後が楽です。請求書の発行が月に何十枚もある、発行する人と承認する人を分けたい、会計ソフトに自動で取り込みたい、入金消込まで管理したい。こうした要件は無料の範囲では対応しきれないことが多く、途中で乗り換えるとデータ移行の手間が発生します。
弥生やソリマチなど会計ソフト系の請求書機能はどう位置づけますか
弥生やソリマチのように会計ソフトを提供している会社は、請求書の作成機能や関連サービスもあわせて提供しています。すでにその会社の会計ソフトで記帳しているなら、同じ会社の請求書機能を最初の候補に置くのが素直です。売上計上や取引先のデータを行き来させる手間が減りやすいためです。
逆に、会計は税理士事務所が別のソフトで処理している、という場合は、請求書ソフト単体の使いやすさを優先してもかまいません。その際は、CSVなどで書き出して会計側に渡せるか、税理士事務所が指定する形式に合わせられるかを、契約前に税理士へ確認しておくと安全です。
どちらを選ぶにせよ、各社の製品構成・対応範囲・料金は改定されることがあります。「インボイス対応」と書かれていても、どの項目が自動計算され、どこは手入力なのかは製品によって差があるため、機能の詳細と最新の料金は各社の公式サイトでご確認ください。無料お試し期間があるサービスなら、実際の取引先1社分を入力してみると判断が早くなります。
導入と乗り換えは何から手をつければいいですか
導入の手順は、①自社情報の登録、②取引先の登録、③請求書テンプレートの調整、④テスト発行、の順が進めやすいです。自社情報には会社名・住所・振込先口座のほか、適格請求書発行事業者の登録番号を登録する欄が用意されていることが一般的です。登録番号は国税庁の公表サイトで自分の番号を確認できます。
テスト発行では、自分宛てにPDFを送って印刷し、取引先が見る形で崩れていないかを確かめます。ここで押さえたいのは、登録番号が載っているか、税率ごとの区分と消費税額が表示されているか、振込先と支払期限が正しいかの3点です。
他社ソフトから乗り換えるときは、月をまたぐタイミングで切り替えます。月の途中で移すと、同じ月の請求書が2つのソフトに分かれて集計が面倒になります。旧ソフトで発行した請求書の控えは、解約前にPDFやCSVで手元に保存しておきます。解約後はデータを取り出せなくなることがあるため、保存が済んでから解約手続きに進んでください。
迷ったときの判断の順番
最後に、ここまでの内容を順番に並べます。まず、軽減税率の対象を扱うかを確認します。扱うなら、明細ごとの税率設定と税率区分別の自動集計を必須条件にします。扱わないなら、この条件は外して次へ進みます。
次に、見積書の枚数を数えます。請求書と同程度なら見積書からの変換を必須に、ほとんどないなら定期請求と取引先管理を必須にします。続いて、会計ソフトを何で使っているかを確認します。自社で記帳しているなら同じ会社の製品や連携実績のあるサービスを優先し、税理士事務所に任せているなら書き出し形式を事前に相談します。
ここまでで候補が2〜3に絞れたら、無料お試しで実際の取引先1社分を入力し、PDFの見た目と入力の手数を比べます。そのうえで各社の公式サイトで最新の料金と提供条件を確認し、決めてください。なお、インボイス制度の記載要件や電子帳簿保存法の保存方法の扱いは個別の事情で判断が分かれることがあり、消費税の処理を誤ると後から修正が必要になる場合もあります。自社の取引にどう当てはまるか不安がある場合は、顧問の税理士や最寄りの税理士にご相談ください。
よくある質問
請求書作成ソフトは無料のものでも大丈夫ですか
発行枚数が月に数枚で、取引先も固定、経理を一人で見ている段階なら、無料で使える範囲で回せることが多いです。ただし枚数や登録できる取引先数に上限が設けられているのが一般的なので、条件は公式サイトでご確認ください。承認フローや会計連携が必要になった時点で有料の機能を検討するとよいでしょう。
手書きやExcelの請求書からソフトに変えるべきですか
適格請求書の記載項目を毎回手作業で入れている場合、記載漏れや税額計算のずれが起きやすくなります。ソフトにすると項目が定型化され、控えの検索もしやすくなるため、発行枚数が増えてきたら切り替えを検討する価値があります。切り替えは月初など区切りのよいタイミングがおすすめです。
スマホアプリだけで請求書を作っても差し支えありませんか
外出先で少量の請求書を発行する用途であれば、アプリ中心の運用も選択肢になります。ただしPDFの体裁確認や一括発行、CSVの書き出しはパソコンのほうが扱いやすいため、アプリとブラウザの両方から同じデータを使えるサービスだと安心です。
登録番号を請求書に載せ忘れたらどうすればいいですか
取引先が仕入税額控除を行う際に必要な情報が欠けている状態になるため、正しい内容の請求書を再発行して差し替えるのが一般的な対応です。どこまで修正が必要か、過去分の扱いをどうするかは状況によって判断が分かれますので、税理士にご確認ください。