産休・育休の社会保険手続き|保険料免除と育児休業延長の届出

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

社員から「産休に入ります」と伝えられたとき、会社が出す社会保険の書類は一つではありません。産休の保険料免除、育休の保険料免除、育休を延長したときの再提出、生まれた子を健康保険の扶養に入れる手続き、さらに復職後の給与が下がったときの届出まで、場面ごとに別々の様式があります。この記事では、いつ・何を・どこに出すかを時系列で整理し、迷いやすいポイントの判断基準もあわせて説明します。

この記事の結論

  • 産休の社会保険料免除は「産前産後休業取得者申出書」、育休の免除は「育児休業等取得者申出書」を、それぞれ休業期間中に日本年金機構(健康保険組合加入なら組合にも)へ提出します。
  • 保険料免除は本人負担分と会社負担分の両方が対象で、免除期間中も被保険者資格は続き、将来の年金額の計算では保険料を納めた期間として扱われる仕組みが設けられています。
  • 保育所に入れないなどの理由で育児休業を延長する場合は、延長後の終了予定日で「育児休業等取得者申出書(延長)」を出し直し、あわせて雇用保険の育児休業給付の延長手続きも必要になります。

産休・育休で会社が出す社会保険の手続きは全部で何がある?

まず全体像をつかむと、その後の作業がぐっと楽になります。産休・育休にまつわる手続きは、大きく「社会保険(健康保険・厚生年金)」「雇用保険」「税・住民税」の三つの窓口に分かれます。この記事の中心は社会保険ですが、実務では雇用保険の育児休業給付とセットで動くため、担当者はどちらも把握しておく必要があります。

社会保険側で発生する主な届出は、①産前産後休業取得者申出書、②育児休業等取得者申出書、③育休延長時の申出書の再提出(または変更届)、④出産手当金・出産育児一時金に関する書類、⑤生まれた子を健康保険の被扶養者にする届出、⑥復職後の養育期間の特例や随時改定に関する届出、といったところです。産休と育休は連続していても、届出は別々に出すのが基本です。

雇用保険側では、育児休業給付金の受給資格確認と支給申請をハローワークに出します。社会保険料の免除と育児休業給付は別制度で、片方を出せばもう片方も処理されるわけではありません。「年金事務所(または健保組合)に出すもの」と「ハローワークに出すもの」を、社内のチェックリストで分けて管理しておくと漏れにくくなります。

産休中の社会保険料免除は、いつ・どこに出す?

産前産後休業期間中の健康保険料・厚生年金保険料は、会社が申出をすることで本人負担分・会社負担分ともに免除される仕組みになっています。使う様式は「産前産後休業取得者申出書」で、提出先は日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)です。健康保険組合に加入している会社は、組合にも同様の届出が必要になるため、組合の案内を確認してください。

提出のタイミングは、産前産後休業の期間中です。休業に入る前や、休業が終わってからまとめて出すことはできない扱いになっているため、「休業が始まったら出す」と覚えておくと安全です。実務では、産休開始日が確定した時点で様式を用意し、開始日を過ぎたらすぐ提出する流れにしておくと抜けにくくなります。

記載に必要なのは、被保険者の氏名・生年月日・基礎年金番号(またはマイナンバー)、出産予定日、産前産後休業の開始日と終了予定日などです。出産が予定日とずれた場合は、実際の出産日にあわせて期間が変わるため、「産前産後休業取得者変更(終了)届」で修正します。予定日より早く生まれた/遅く生まれたケースは頻繁に起きるので、出産報告を受けたら日付を必ず突き合わせる運用にしておきましょう。

育児休業の保険料免除はどう申し出る?期間の数え方に注意

産休が終わって育児休業に入ったら、今度は「育児休業等取得者申出書」を提出します。こちらも提出先は日本年金機構で、健康保険組合加入の場合は組合にも提出します。産休の申出書を出していても育休分は自動では処理されないため、続けて出す前提でスケジュールを組んでください。

提出は育児休業の期間中に行います。育休開始日と終了予定日を記載しますが、終了予定日は「子が1歳になる日の前日まで」など、その時点で予定している日付を書きます。あとで延長した場合は、後述のとおり出し直しが必要です。

免除の対象期間の考え方には、月末時点で育休中かどうか、同じ月の中で一定期間以上休業したかどうか、といった判定のルールがあります。賞与に係る保険料の免除にも別の考え方が置かれています。この判定は復職日の設定によって結果が変わることがあるため、復職日を月初にするか月末にするかで迷う場合は、日本年金機構の資料を確認するか、社会保険労務士に相談しておくと安心です。会社の都合だけで日付を決めず、本人にも影響を説明したうえで決めるのが望ましい進め方です。

育児休業を延長するとき、社会保険の手続きはどう変わる?

保育所に入所できないなどの事情で育児休業を延長する場合、社会保険側では「育児休業等取得者申出書」を延長後の終了予定日で出し直します(様式上は延長の欄に記載します)。前に出した申出書の内容が自動で伸びることはないため、延長が決まったら速やかに提出してください。提出先は最初の申出と同じく日本年金機構、健保組合加入なら組合にも提出します。

延長には段階があり、一般に子が1歳6か月まで、さらに2歳までという区切りが設けられています。それぞれの段階で、延長できる事由や必要な証明書類が定められています。よくあるのは保育所の入所不承諾(保留)通知書ですが、入所申込みの時期が要件に合っているかどうかで扱いが変わることがあります。

あわせて、雇用保険の育児休業給付金の延長手続きも必要です。こちらはハローワークへの申請で、社会保険の免除とは別に書類をそろえます。判断に迷う事案(入所申込みのタイミング、事情の証明方法など)は、社会保険労務士に相談しておくと安心です。また、パパ・ママ育休プラスや、出生時育児休業(産後パパ育休)を使う場合は期間の数え方が変わるため、制度の要件は厚生労働省の資料で確認してください。

生まれた子の社会保険手続き(扶養追加)はいつまでに?

子が生まれたら、健康保険の被扶養者にする手続きを行います。様式は「健康保険被扶養者(異動)届」で、協会けんぽ加入の会社は日本年金機構(事務センター・年金事務所)経由、健康保険組合加入なら組合に提出します。出生の事実を確認できる情報が必要になるため、本人から出生日・氏名・マイナンバーなどを受け取ります。

提出は出生後すみやかに行うのが原則です。届出が遅れると、子の保険証の交付が遅れ、乳児健診や受診のときに立て替えが発生することがあります。社内では「出産報告を受けたら扶養届の案内をセットで送る」と決めておくと、手続きが滞りません。

共働きで夫婦それぞれが被保険者の場合、どちらの扶養に入れるかは収入などをもとに判断する考え方が示されています。年収が近いケースや、どちらか一方が育休中で一時的に収入が下がっているケースは判定が難しいため、加入している健康保険の窓口に確認してください。あわせて、出産育児一時金(直接支払制度を使うかどうか)や、産休中の出産手当金の申請についても、本人に案内しておくとスムーズです。

復職後にやること|保険料の見直しと養育期間の特例

復職したら、まず育児休業等取得者申出書に記載した終了予定日どおりに復帰したかを確認します。予定より早く復職した場合は「育児休業等取得者終了届」の提出が必要になるため、復職日が動いたら必ず届出を見直してください。予定どおりなら、原則として終了の届出は不要とされています。

復職後は、時短勤務などで給与が下がることがあります。このとき、通常の随時改定(月額変更届)とは別に、育児休業等終了時の改定という仕組みが用意されており、要件を満たせば早めに標準報酬月額を下げられる場合があります。保険料が下がるのは本人にとって助かる一方、将来の年金額に影響しうるため、次の特例とセットで考えます。

3歳未満の子を養育している期間について、標準報酬月額が下がっても、従前の水準で年金額を計算する取扱いを申し出られる仕組みがあります(養育期間標準報酬月額特例)。申出は本人の申出を受けて会社が届出をする形で、戸籍や住民票などの添付が求められることがあります。時短勤務に入る社員がいたら、この特例の存在を案内しておくと親切です。制度の要件や添付書類の詳細は日本年金機構の案内を確認してください。

手続きを取りこぼさないための社内の進め方

産休・育休の手続きは、期間が長く、イベント(出産、育休開始、延長、復職)ごとに書類が発生するのが特徴です。そこでおすすめしたいのは、社員ごとに「日付の表」を一枚作る方法です。出産予定日、産休開始日、産休終了日、育休開始日、育休終了予定日、延長後の終了予定日、復職日を並べ、それぞれに対応する届出と提出先、提出済みかどうかを書き込みます。

次に、本人との連絡ルールを決めておきます。出産したらいつまでに会社へ連絡するか、保育所の結果が出たらどう共有するか、復職日の相談はいつまでに行うか。これを産休前の面談で伝えておくと、延長の届出が後手に回るリスクが下がります。連絡窓口を一人に固定しておくのも有効です。

最後に、社会保険(年金事務所・健保組合)、雇用保険(ハローワーク)、社内(給与計算・住民税)の三つを、同じ表の上で管理します。保険料が免除されても住民税の徴収は続くため、休業中の納め方(本人納付か、復職後にまとめて控除するか)を事前に決めておく必要があります。給与がゼロになる月の控除のしかたは、給与計算の実務で最もトラブルになりやすいところなので、就業規則や労使の取り決めを確認しておきましょう。

判断に迷ったら専門家へ相談を

ここまで届出の流れを整理してきましたが、実務では「その社員のケースにあてはめるとどうなるか」で判断が分かれる場面が出てきます。復職日を何日にすると保険料免除がどう変わるか、育休延長の事由として認められる書類は何か、共働き世帯で子をどちらの扶養に入れるか、時短勤務後の標準報酬をどう扱うか——いずれも個別事情によって答えが変わります。

こうした判断は、社会保険労務士に相談すると安心です。手続きの代行だけでなく、就業規則の育児休業に関する規定が現行の法令に沿っているか、社内の運用が制度と食い違っていないかも含めて見てもらえます。給与計算や住民税の取扱いで税務が絡む部分は、顧問の税理士にも確認しておくとよいでしょう。

制度の要件や様式は改正されることがあります。最新の様式・提出先・記載例は、日本年金機構や厚生労働省、加入している健康保険組合、管轄のハローワークの公式サイトで確認してください。判断に迷う点は自己流で処理せず、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

よくある質問

産休・育休中の社会保険料は本人負担分だけ免除されるのですか?

産前産後休業・育児休業期間中の保険料免除は、本人負担分と会社負担分の両方が対象とされています。免除中も被保険者の資格は続き、健康保険は通常どおり使えます。免除を受けるには会社からの申出が必要で、自動では適用されません。

育休を延長したら、社会保険の手続きも出し直しが必要ですか?

はい、延長後の終了予定日で育児休業等取得者申出書を提出し直す必要があります。最初の届出が自動で延長されることはありません。あわせて、雇用保険の育児休業給付金の延長手続きもハローワークへ行います。

社会保険の手続きは、いつまでに出せばよいですか?

産休・育休の保険料免除の申出は、それぞれの休業期間中に提出するのが原則です。休業が終わってからまとめて出すことはできない扱いのため、休業開始後すみやかに提出してください。子の扶養追加も、出生後すみやかに行うと保険証の交付が遅れにくくなります。

社員が予定より早く復職した場合はどうすればよいですか?

届け出た育児休業の終了予定日より早く復職したときは、育児休業等取得者終了届の提出が必要になります。復職日によって保険料免除の対象月が変わることがあるため、日付が動いたら必ず届出内容を見直してください。判断に迷う場合は社会保険労務士に確認しておくと安心です。

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