管理監督者・時短勤務・継続雇用の労働条件通知書|記載のポイント
労働条件通知書のひな形は、フルタイムで時間どおり働く正社員を前提につくられていることがほとんどです。ところが実際の会社には、管理監督者として扱う部長、育児で1日6時間に短縮している社員、定年後に嘱託として働き続ける社員がいます。ひな形の欄をそのまま埋めると、実態とずれた書類ができあがってしまう。この記事では、そうした「ひな形からはみ出す働き方」について、どの欄をどう直すか、どの順に考えるかを整理します。
この記事の結論
- 管理監督者に該当する人でも労働条件通知書の交付は必要で、時間外・休日の割増が対象外と整理される場合でも、深夜労働の割増や休憩・年次有給休暇の扱いは別に考える必要があります。
- 育児や介護による短時間勤務では、短縮後の始業・終業時刻と所定労働時間を明示し、いつまでの措置かという適用期間を書き添えると認識のずれが起きにくくなります。
- 定年後の継続雇用は、定年前とは別の有期契約を結び直すのが一般的で、契約期間・更新の基準・業務内容・賃金を新しく明示し直します。
まず共通の前提:どの働き方でも明示すべき項目は変わらない
管理監督者でも、時短勤務でも、定年後の再雇用でも、労働者である以上は労働条件の明示が必要です。契約期間、就業の場所と従事すべき業務、始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩・休日・休暇、賃金の決定や計算・支払の方法と締切・支払時期、退職に関する事項。この骨格はどの働き方でも共通です。
つまり「管理職だから通知書は不要」「再雇用は継続だから前のままでよい」という整理にはなりません。特殊な働き方で変わるのは、明示する項目そのものではなく、各欄に何を書くかと、追加で書き添えたほうがよい事項です。
2024年4月以降、就業場所・業務の変更の範囲などの明示事項が追加されています。自社のひな形が古いままになっていないか、この機会に最新の様式と見比べておくと安心です。最新の様式や記載例は厚生労働省の公開資料で確認できます。
労働条件通知書で管理監督者をどう書くか
まず押さえたいのは、役職名と法律上の管理監督者は別物だという点です。課長・部長という肩書きがあっても、職務内容や権限、勤務時間の裁量、待遇などから実態を見て判断されます。この判断を誤ると、後から時間外割増の支払いを求められる形で問題になることがありますので、該当するかどうかの見立てが不安な場合は社会保険労務士に確認してください。
書き方としては、始業・終業の時刻は原則どおり記載したうえで、「業務の性質上、始業・終業時刻は本人の裁量に委ねる」といった趣旨を備考に添える運用がよく見られます。時間外労働の有無の欄は、管理監督者として整理する場合でも空欄にせず、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用関係がどうなるかを文章で書いておくほうが、後の説明がしやすくなります。
見落としやすいのが深夜労働と年次有給休暇です。管理監督者と整理される場合でも、深夜の時間帯の割増賃金や年次有給休暇の付与は別の話として扱われます。手当に深夜分を含める設計にするなら、何時間分が深夜相当かを賃金欄で切り分けて書いておくと、給与計算でも説明しやすくなります。
時短勤務(短時間勤務)の労働条件通知書の書き方
時短勤務には大きく2種類あります。ひとつは育児・介護を理由とする短時間勤務措置で、もうひとつは本人の希望や職務内容による恒常的な短時間勤務です。前者は法令や就業規則に基づく一時的な措置、後者は契約そのものが短時間、という違いがあります。どちらなのかをまず決めてから書き始めてください。
育児等の措置として短縮する場合は、既存の契約は維持したまま、短縮後の始業・終業時刻、休憩、1日および週の所定労働時間、適用期間(例:お子さまが一定年齢に達する日まで)を書面で示す形が一般的です。賃金の取扱い(短縮時間分をどう控除するか、固定手当をどう扱うか)も併せて書いておくと、給与明細を見たときの疑問が減ります。
最初から短時間で採用する場合は、通常の労働者と比べて所定労働時間が短い「短時間労働者」に当たり、昇給・退職手当・賞与の有無と、相談窓口についても明示が求められます。記入例としては、「賞与 有(支給する場合は通常の労働者の所定労働時間に比例した額)」「相談窓口 総務担当 〇〇」のように、有無を書いたうえで基準を一言添える形が分かりやすいでしょう。
継続雇用制度(定年後再雇用)の労働条件通知書
定年で一度契約が終了し、あらためて有期の嘱託契約を結び直す、という設計が一般的です。そのため通知書は定年前のものを流用せず、新規の契約として作り直します。契約期間、更新の有無と更新の判断基準、通算契約期間や更新回数の上限の有無を、この段階で明示しておきます。
業務内容や責任の範囲が定年前から変わるなら、その変更点を具体的に書いてください。「役職を解き、〇〇業務の担当とする」といった書き方です。賃金が変わる場合も、変わった後の金額の決め方をきちんと書きます。定年前後で仕事の内容・責任が同じなのに待遇だけ下げると、不合理な待遇差として争いになることがありますので、業務と待遇のセットで見直すのが順序です。
勤務日数や時間を減らす再雇用では、社会保険の加入要件や、年金・雇用保険の給付との関係が気になる方が多いところです。ここは個々の事情で結論が変わりますので、通知書を作る前に年金事務所やハローワーク、社会保険労務士に確認しておくと、後から条件を変えずに済みます。
「時間外労働の有無」欄で迷ったときの判断順
この欄は、所定労働時間を超える労働をさせる可能性があるかどうかを書くところです。可能性があるなら「有」とし、ないなら「無」とします。実際にはほとんど残業がない職場でも、繁忙期に発生しうるなら「有」としておくほうが実態に合います。
「有」とする場合は、その前提として時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)の締結と届出が必要です。協定がないのに「有」とだけ書いてある状態は、あとから指摘を受けやすいところなので、通知書と協定はセットで確認してください。
時短勤務者では、所定労働時間を超えるが法定労働時間内、という時間帯が生まれます。ここをどう扱うか(割増なしの時間単価で支払うのか、所定外は命じないのか)を決めて、備考に書いておくと給与計算の判断が安定します。育児・介護で所定外労働の免除を申し出ている社員については、「無」と明記しておくと現場にも伝わります。
作成から交付までの進め方
進め方は、①就業規則・賃金規程で該当する働き方の定めを確認する、②最新のモデル労働条件通知書を用意する、③変わる欄(所定労働時間、時間外労働の有無、賃金、契約期間、業務内容)を洗い出して埋める、④短時間労働者なら追加明示事項を足す、⑤本人に内容を説明して交付する、という順です。口頭の説明だけで済ませず、書面か、本人が希望する場合は電子メール等での交付にして、控えを会社側にも残します。
交付のタイミングは、働き始める前です。継続雇用なら定年到達日より前に、時短勤務なら短縮を始める前に手渡せるよう、申出から交付までの社内の流れを決めておくと慌てません。育児の短時間勤務のように期間が決まっている措置は、終了予定日をカレンダーに入れておき、終了前に元の条件に戻すか延長するかを確認します。
なお、管理監督者に該当するかの判断、定年後の待遇差の合理性、社会保険の加入要件といった論点は、会社ごとの事情で結論が変わります。ひな形を埋める作業の前に、社会保険労務士に自社の設計を一度見てもらい、必要に応じて就業規則の側も併せて整えておくことをおすすめします。労働契約の有効性や紛争リスクが絡む場面では、弁護士への相談も検討してください。
よくある質問
管理監督者にも労働条件通知書は必要ですか。
はい、労働者である以上は明示が必要です。時間外・休日の割増の扱いが通常の社員と異なる場合でも、始業・終業時刻や賃金、休日などは記載します。該当するかどうかの判断は実態で見られるため、不安があれば社会保険労務士にご確認ください。
育児の時短勤務は、契約書を新しく結び直す必要がありますか。
就業規則に基づく短時間勤務措置として運用する場合は、契約自体は維持したまま、変更後の所定労働時間や賃金の取扱い、適用期間を書面で示す形が一般的です。最初から短時間で採用するときは、短時間労働者として追加の明示事項も加えて通知書を作成します。
定年後の再雇用で、労働条件通知書は定年前のものを使い回せますか。
一度契約を終了して新たに有期契約を結ぶ形が一般的なため、作り直すほうが整理しやすいです。契約期間、更新の基準、業務内容、賃金を新しく明示し、定年前と仕事の内容や責任が同じなら待遇差の説明がつくかも併せて見直してください。
残業がほぼない会社でも、時間外労働の有無は「有」にすべきですか。
繁忙期などに発生する可能性があるなら「有」としておくほうが実態に合います。その場合は36協定の締結と届出が前提になりますので、通知書と協定を併せて確認してください。