年末調整後の納付書の書き方|超過額の充当と繰越、納期の特例

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

年末調整が終わると、次に待っているのが源泉所得税の納付書(所得税徴収高計算書)の記入です。ふだんは給与の税額を書いて納めるだけですが、年末調整のあった月だけは「年末調整による不足税額」「年末調整による超過税額」という見慣れない欄を使います。ここでつまずくと、納めすぎたり、逆に納付もれになったりします。この記事では、超過額の充当と繰越、不足額の書き方、納期の特例を使っている場合の注意点を、記入する順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 年末調整後の納付書は、まず各欄に通常どおり支払額と税額を書き、そのうえで年末調整で生じた超過額を「年末調整による超過税額」欄、不足額を「年末調整による不足税額」欄に記入して、本税を計算します。
  • 超過額が当月の税額より大きく引ききれない場合は、引ける分だけをその月に充当し、残りは摘要欄に繰越額を記して翌月以降の納付書で順に充当していきます。
  • 納期の特例の承認を受けている場合、年末調整の精算は7月から12月までの分をまとめた納付書で行い、その納付書の提出・納付は翌年1月に行うのが一般的な流れです。

年末調整後の納付書はどこが違う? まず欄の役割を確認する

給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)には、「俸給・給料等」「賞与」「退職手当等」「税理士等の報酬」といった支払区分ごとの欄があり、それぞれに支払年月日・人員・支給額・税額を書きます。ふだんの月はここまでを埋めて、税額を合計したものが本税になります。

年末調整のあった月だけ登場するのが、「年末調整による不足税額」と「年末調整による超過税額」の2つの欄です。年末調整の結果、従業員から追加で徴収した分は不足税額、還付した分は超過税額として、ここに集計額を書きます。

つまり納付書の構造は、「その月に預かった源泉税」+「年末調整の不足分」-「年末調整の超過分」=「本税」というかたちです。この引き算をどこでするのかが分かれば、記入はぐっと楽になります。まずは自社の給与ソフトが出す年末調整の集計表(過不足税額の一覧)を手元に用意してください。

手順:年末調整の月の納付書を、どの順で書くか

書く順番は、①支払区分ごとの支給額と税額、②年末調整による不足税額、③年末調整による超過税額、④本税、⑤合計額、⑥摘要欄、の順にすると迷いません。①は年末調整の影響を入れる前の、その月に本来預かるべき税額をそのまま書くのがポイントです。ここに還付後の金額を書いてしまう間違いがよくあります。

②と③は、年末調整の集計表から拾います。年末調整で追加徴収になった人の金額の合計が不足税額、還付になった人の金額の合計が超過税額です。従業員ごとにプラスとマイナスが混在していても、納付書ではそれぞれの合計を別々の欄に書くのが基本的な考え方です。

④の本税は、支払区分の税額合計に②を足し、③を引いた金額です。⑤の合計額は本税に延滞税等があればそれを加えた金額で、通常は本税と同額になります。金額の頭には「¥」を付けて記入します。最後に、超過額を引ききれずに繰り越す場合などは⑥の摘要欄に書き添えます。

超過額の充当:どの税額から、どの順に引くか

年末調整で従業員に還付した超過額は、会社がいったん立て替えたあと、その月に納めるはずだった源泉所得税から差し引いて回収します。これが「充当」です。まずはその月の給与(俸給・給料等)の税額から充当し、それでも引ききれなければ、同じ納付書の賞与の税額、税理士等の報酬の税額など、他の区分の税額からも順に充当していく、という考え方が一般的です。

注意したいのは、給与所得・退職所得等の徴収高計算書に含まれる税額の範囲で充当する点です。報酬・料金等(デザイン料や原稿料など)の納付書は別の様式で、そちらの税額と混ぜて相殺することは想定されていません。どの納付書に載る税額なのかを先に確認してください。

納付書の記入としては、充当した金額を「年末調整による超過税額」欄に書きます。当月の税額をすべて食いつぶして本税がゼロになることもあり、その場合は本税欄・合計額欄に「0」と書いて、納付はせずに納付書(徴収高計算書)だけを所轄税務署に提出するのが通常の扱いです。提出を忘れると、こちらが納付を怠っているように見えてしまうため、ゼロでも出しておきましょう。

不足額と超過額が両方出たときの書き方

従業員が複数いれば、還付になる人と追加徴収になる人が同時に出るのが普通です。この場合、「差額だけを片方の欄に書く」のではなく、不足税額の合計と超過税額の合計を、それぞれの欄に分けて記入するのが基本です。納付書は年末調整の精算内容が分かるように作られているため、両建てで書いても差し支えありません。

本税の計算では結果的に差し引きされるので、納める金額は同じになります。ただし、片方に寄せて書いてしまうと、あとから見返したときに何がいくらだったのか分からなくなり、翌月以降に繰り越す超過額の計算も追いにくくなります。集計表の数字をそのまま転記するのが安全です。

なお、年末調整をやり直した場合(扶養控除等申告書の内容が後から変わった、保険料控除証明書が遅れて出てきた、など)は、やり直した月の納付書で精算するのが一般的です。年をまたいで修正が必要になるケースは扱いが分かれるため、税理士に確認しながら進めると安心です。

引ききれない超過額は翌月以降へ繰り越す

還付額が大きく、その月の税額だけでは引ききれないことがあります。人数の少ない会社や、年の途中で入社・退職が多かった年に起こりやすい状況です。この場合は、その月に引ける分だけを充当して本税をゼロにし、残りを翌月以降の納付書で順次充当していきます。

繰り越すときは、摘要欄に「年末調整未済分(繰越超過額)¥◯◯◯」のように残額を書いておくと、翌月の担当者が迷いません。翌月の納付書では、前月から繰り越した金額を「年末調整による超過税額」欄に書いて、その月の税額から差し引きます。これを残額がなくなるまで繰り返します。

繰越で回収するのに時間がかかりそうなときは、会社が立て替えた超過額について税務署から還付を受ける手続き(源泉所得税の年末調整過納額還付請求)を選べる場合があります。必要書類や判断の基準は状況によって異なるため、どちらの方法を取るかで迷う場合は、顧問税理士や所轄税務署に相談すると安心です。

納期の特例を使っている場合の書き方と期限

給与の支払を受ける人が常時10人未満で、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して承認を受けている場合は、毎月ではなく半年分をまとめて納めます。1月から6月までの分は7月、7月から12月までの分は翌年1月が納期です。年末調整の精算は、後半期(7月〜12月)分の納付書の中で行うことになります。

納期の特例用の納付書では、支払年月日の欄に「7月〜12月」のように期間を書き、人員は延べ人数、支給額と税額はその期間の合計を書きます。そのうえで「年末調整による不足税額」「年末調整による超過税額」の欄に年末調整の集計額を入れ、本税を計算します。半年分の税額から引くため、毎月納付の会社より超過額を吸収しやすいのが特徴です。

半年分でも引ききれない場合は、次の期(1月〜6月分、納期は7月)の納付書に繰り越して充当していきます。納期の特例は年の途中で承認されることもあり、その年の適用範囲を間違えると納付もれにつながります。期限や適用の範囲は国税庁の資料や所轄税務署の案内で最新の内容を確認してください。

提出前のチェックと、迷ったときの相談先

提出前に見ておきたいのは次の点です。支払区分ごとの税額が年末調整前の金額になっているか、不足税額・超過税額の合計が集計表と一致しているか、本税の引き算が合っているか、繰越がある場合は摘要欄に残額を書いたか、本税がゼロでも納付書を提出する段取りになっているか。この5点を順に確認すれば、大きな間違いはかなり防げます。

納付はe-Taxのダイレクト納付やインターネットバンキング、金融機関・税務署の窓口などから選べます。電子で納付する場合も、入力する欄の構成は紙の納付書と同じ考え方です。年末年始は金融機関の営業日が限られるため、納期の特例を使っている会社はとくに早めに準備しておくと安心です。

年末調整のやり直し、退職者への還付、繰越と還付請求のどちらを選ぶかといった判断は、会社の状況によって扱いが変わることがあります。金額が大きい場合や前年分にさかのぼる訂正が絡む場合は、自己判断で進めず、顧問税理士や所轄の税務署に相談することをおすすめします。給与計算と社会保険の処理が連動している場合は、社会保険労務士にもあわせて確認しておくと、月次の流れ全体を整理しやすくなります。

よくある質問

年末調整で還付が多く、その月の納付額がゼロになりました。納付書は出さなくてよいですか。

本税がゼロになった場合でも、納付書(所得税徴収高計算書)は所轄税務署に提出するのが通常の取り扱いです。本税欄・合計額欄に「0」と記入し、摘要欄に繰り越す超過額があればその金額を書き添えます。提出方法や期限は国税庁の案内で確認してください。

不足額と超過額が両方あるとき、差額だけ書いてもよいですか。

納付書には「年末調整による不足税額」と「年末調整による超過税額」の欄が別に用意されているため、それぞれの合計を分けて記入するのが基本の書き方です。納める金額自体は差し引き後の本税で同じになりますが、後から内容を確認しやすくするためにも両建てで記入しておくと安心です。

繰越した超過額は、いつまでに使い切らないといけませんか。

翌月以降の納付書で順に充当していくのが一般的な流れですが、回収に時間がかかる場合は税務署へ還付を請求する方法が選べることもあります。どちらを選ぶかは会社の状況によって異なるため、金額が大きいときは税理士や所轄税務署に相談してから決めるとよいでしょう。

納期の特例を使っています。年末調整の精算はいつの納付書で行いますか。

7月から12月までの分をまとめた納付書の中で、年末調整による不足税額・超過税額を記入して精算するのが一般的です。その納付書の納期は翌年1月で、半年分の税額から超過額を差し引く形になります。期限や適用条件は所管官庁の資料で最新の内容を確認してください。

あわせて読みたい

「会計・税務」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。