年末調整の改正と変更点|基礎控除・扶養の見直しへの対応

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

年末調整は毎年のように様式や控除の扱いが少しずつ変わります。特にここ数年は基礎控除や扶養に関する見直し、いわゆる「年収の壁」をめぐる議論が続き、「今年は何が変わったのか」を毎年確認し直す必要が出てきました。この記事では、改正内容そのものを追いかけるより先に、変更点を自社でどう確認し、申告書の回収と計算にどう落とし込むかという実務の順番を整理します。

この記事の結論

  • 年末調整の変更点は、国税庁が毎年公開する年末調整関連のページと、その年分の申告書様式・手引きを見比べるところから確認すると誤りが少なくなります。
  • 基礎控除や扶養に関する見直しがあった年は、申告書の記入欄そのものが変わることがあるため、前年の様式を流用せず、その年分の最新様式で回収します。
  • いわゆる「年収の壁」は税金・社会保険・会社の手当で基準が異なるため、扶養の判定は税法上の扶養と社会保険上の扶養を分けて確認します。

今年の年末調整で何が変わったかは、どこで確認する?

年末調整の改正内容は、毎年秋ごろに国税庁がその年分の年末調整に関するページと手引き、申告書の様式を公開します。改正があった年は、手引きの冒頭や「改正のあらまし」といった資料に変更点がまとめられることが多く、ここを起点にすると情報の取り違えが起きにくくなります。

SNSや解説記事は理解の助けになりますが、施行時期や対象者の範囲が省略されていることがあります。「この改正はその年分の年末調整から適用されるのか、翌年分の源泉徴収から適用されるのか」は実務上の分かれ目になるため、公式資料で適用時期を必ず読み合わせてください。

確認する順番としては、①その年分の申告書様式が前年と変わっているか、②控除額や判定基準の数値が変わっているか、③給与計算ソフトが最新様式に対応済みか、の3点です。この順に見ると、社内でやるべき作業が具体的に見えてきます。

基礎控除や扶養の見直しがあった年に、まず見るのはどこ?

基礎控除は、所得金額に応じて控除額が変わる仕組みが採られています。見直しがあった年は、控除額そのものだけでなく、所得区分の区切り方が変わることがあります。この場合、従業員に書いてもらう「基礎控除申告書」の記入欄や選択肢が変わるため、前年の様式をコピーして使い回すと、必要な情報が集まらないことがあります。

扶養に関する見直しでは、扶養親族として認められる所得の上限や、特定の年齢層についての控除の扱いが論点になりやすい部分です。変更があった場合、これまで扶養に入れていなかった家族が対象になったり、その逆が起きたりします。従業員に「去年と同じでいいですか」と聞くのではなく、その年分の様式に沿って改めて記入してもらうのが安全です。

なお、控除額や所得基準の具体的な数値は、その年分の国税庁の資料で確認してください。金額は改正のたびに変わる可能性があり、古い記事の数字をそのまま使うと計算誤りにつながります。

「年収の壁」は年末調整でどう扱えばいい?

いわゆる「年収の壁」と呼ばれるものは、実際には複数の基準が重なっています。大きく分けると、本人に所得税がかかり始める基準、配偶者や親族の税法上の扶養から外れる基準、社会保険の被扶養者から外れる基準、そして会社独自の家族手当の支給基準です。年末調整で扱うのはこのうち税法上の部分だけで、社会保険の扶養判定は別の制度で動いています。

従業員から「扶養の範囲で働きたい」と相談を受けたときは、まず「税金の話か、社会保険の話か、手当の話か」を切り分けてください。税金の話であれば、配偶者控除・配偶者特別控除や扶養控除の要件をその年分の資料で確認します。社会保険の話であれば、加入している健康保険の基準と勤務先の労働時間が関係するため、年末調整の書類だけでは結論が出ません。

会社としては、年末調整の説明時に「税と社会保険は基準が違うこと」を一言添えておくと、後からの問い合わせが減ります。個別の判定が難しいケースは、税理士や社会保険労務士に確認するのが確実な進め方です。

いつ・何を集めて・どこに出す?

スケジュールの目安は、10月から11月にかけて従業員へ申告書と案内を配布し、11月中に回収、12月の給与計算で年末調整を反映、というのが一般的な流れです。証明書の再発行には時間がかかるため、回収期限は12月の給与計算日より2週間ほど前に置いておくと余裕が生まれます。

従業員から集める主な書類は、扶養控除等(異動)申告書、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除の申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除の申告書(該当者のみ)です。あわせて、生命保険料や地震保険料の控除証明書、国民年金保険料の控除証明書、小規模企業共済等掛金の証明書、住宅ローンの年末残高証明書など、控除を受けるための添付・提示書類が必要になります。

計算が終わったら、従業員へ源泉徴収票を交付し、市区町村へ給与支払報告書を、税務署へ法定調書合計表と必要な支払調書を提出します。提出期限は年明け1月が目安ですが、その年の暦によって変わるため、税務署と市区町村の案内で日付を確認してください。電子での提出が求められる場合もあるため、自社がどちらに当たるかを事前に確認しておくと慌てずに済みます。

ひとり社長や小さな会社が、改正年につまずきやすいところ

ひとつ目は、給与計算ソフトの様式対応です。改正があった年は、ソフト側の更新が入るまで新しい申告書の入力欄が表示されないことがあります。更新の案内が来ていないか、年末調整の作業に入る前にサービスの公式サイトやお知らせを確認しておいてください。料金や機能の条件は各社で異なるため、詳細は公式サイトで最新情報をご確認ください。

ふたつ目は、役員報酬しかない会社でも年末調整が必要になる点です。社長ひとりの会社でも、役員報酬が給与として支払われていれば源泉徴収と年末調整の対象になります。自分の分の申告書も、従業員と同じ様式で作成・保管します。

みっつ目は、書類の保管です。回収した申告書は一定期間の保存が求められます。電子データで受け取る場合は、電子帳簿保存法の考え方が関係することがあるため、要件の詳細は国税庁の資料を確認し、判断に迷う場合は税理士に相談してください。

迷ったときの判断の順番と、専門家への相談

作業中に判断に迷ったら、①その年分の国税庁の手引きで該当箇所を読む、②それでも分からなければ税務署の相談窓口か顧問税理士に聞く、③社会保険の扶養や労働時間が絡むなら社会保険労務士に聞く、という順で進めると整理しやすくなります。従業員の家庭事情に関わる判定を担当者の独断で決めてしまうと、後から修正が必要になることがあります。

年末調整は誤りがあっても後から修正できますが、源泉徴収票の再交付や従業員本人の確定申告が必要になるなど、手間が増えます。年内の早い段階で不明点を洗い出しておくほうが、結果として作業は軽くなります。

基礎控除や扶養の見直しは、給与計算の設定や毎月の源泉徴収にも影響することがあります。自社の給与体系や扶養の状況に照らした具体的な取り扱いについては、税理士に、社会保険の扶養や労働時間の設計については社会保険労務士にご相談ください。

よくある質問

年末調整の変更点は、どこを見れば分かりますか。

その年分の国税庁の年末調整に関するページと、申告書の様式・手引きを見比べるのが基本です。改正があった年は「改正のあらまし」などの資料に変更点が整理されていることが多く、公式情報から確認すると誤りが少なくなります。

前年の申告書様式をそのまま使ってもよいですか。

控除の見直しがあった年は記入欄や選択肢が変わることがあるため、その年分の最新様式で回収するのが安全です。古い様式では必要な情報が集まらず、再度記入をお願いすることになる場合があります。

「年収の壁」は年末調整で全部判断できますか。

年末調整で扱うのは税法上の扶養に関する部分で、社会保険の被扶養者の判定は別の制度で決まります。手当の支給基準は会社ごとに異なるため、税・社会保険・手当を分けて確認し、判断に迷う場合は社会保険労務士にご相談ください。

社長ひとりの会社でも年末調整は必要ですか。

役員報酬を給与として支払っていれば、源泉徴収と年末調整の対象になります。従業員と同じ様式で申告書を作成し、源泉徴収票の交付や法定調書の提出も行います。取り扱いに迷う場合は税理士にご確認ください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。