内定通知書とオファーレターの作り方|労働条件通知書との使い分け

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

はじめての採用で「内定通知書を出せばいいのか、労働条件通知書もいるのか」で手が止まる方は多いです。結論から言えば、内定通知書とオファーレターは採用する意思を伝える書面、労働条件通知書は労働条件を明示するための書面で、役割が違います。この記事では、それぞれの位置づけと作り方、1枚にまとめる場合の考え方、内定から入社までの渡す順番を、実務の流れに沿って整理します。

この記事の結論

  • 内定通知書・オファーレターは「採用する意思を伝える書面」、労働条件通知書は「労働条件を明示するための書面」で、目的が異なります。
  • 労働条件の明示事項をすべて盛り込めば、内定通知書が労働条件通知書を兼ねる形で交付する運用も一般的に行われています。
  • 労働条件の明示は遅くとも入社日までに済ませるのが実務の基本で、内定通知と同時か、内定承諾後すみやかに渡す会社が多いです。

内定通知書・オファーレター・労働条件通知書の違いは?

内定通知書は、選考の結果として「あなたを採用します」という会社の意思を伝える書面です。オファーレターはその英語圏での呼び方が広まったもので、外資系やスタートアップでは内定通知書と同じ意味で使われることが多く、給与や役職など条件面を併記する形が一般的です。呼び方の違いに厳密な決まりはなく、社内でどちらの名称を使うかは会社の運用次第です。

一方、労働条件通知書は、労働者を雇い入れるときに賃金や労働時間などの条件を明示するために交付する書面です。明示すべき事項は法令で定められており、書面で示すべきものと口頭でもよいものが分かれています。採用の意思表示ではなく、条件を伝えるための書面という点が決定的に違います。

整理すると、内定通知書・オファーレターは「採る/採られる」の合意を形づくる書面、労働条件通知書は「どんな条件で働くか」を明らかにする書面です。前者だけを出して後者を出さないという運用は、明示義務の観点から問題になり得ますので、両方の役割が満たされているかを確認してください。

内定通知書は労働条件通知書と兼ねられる?判断の順番

兼ねられるかどうかは、次の順で見ると迷いません。第一に、明示が必要な事項が書面にすべて入っているか。第二に、内定時点で条件が確定しているか。第三に、入社までに条件が変わる可能性がどれくらいあるか。この3つがそろえば、1枚にまとめる運用がしやすくなります。

たとえば、入社日・配属・職種・賃金・勤務地がすでに決まっている中途採用なら、内定通知書に労働条件を盛り込み「労働条件通知書兼内定通知書」として交付する形が取りやすいです。逆に、新卒採用で入社が半年以上先、配属先が未定というケースでは、内定通知書は採用意思の伝達にとどめ、条件が固まった段階で労働条件通知書を別に交付するほうが整理しやすくなります。

分けるか兼ねるかで悩んだら、まずは「分ける」を基本に考えるのが安全です。分けておけば、内定後に配属や手当が変わっても、労働条件通知書の側だけを最新の内容で作り直せます。1枚にまとめた書面を後から差し替えると、採用の意思表示まで撤回したかのような誤解を招くおそれがあります。

内定通知書・オファーレターに書く項目と書き方

内定通知書に最低限入れたいのは、宛名(本人氏名)、発行日、会社名と代表者名、採用する旨、入社予定日、雇用区分(正社員・契約社員など)、職種や役職、回答期限、提出してほしい書類、問い合わせ先です。オファーレターとして条件面も伝えるなら、ここに想定年収や月額賃金、就業場所、勤務時間の概要を加えます。

あわせて書いておきたいのが、内定取消しの事由です。経歴や提出書類の内容に重大な事実と異なる点があった場合、健康上の理由で就労が難しい場合、資格取得や卒業が条件となっている場合など、あらかじめ前提を明記しておくと、後のトラブルを避けやすくなります。ただし、内定にも一定の法的な拘束力があると扱われることがあり、会社の都合で自由に取り消せるわけではありません。取消し事由の書き方は弁護士や社会保険労務士に確認しておくと安心です。

文面は難しくする必要はありません。「厳正なる選考の結果、貴殿を当社社員として採用することに決定いたしましたのでお知らせします」といった本文に、条件を箇条書きで並べる形で十分です。回答期限は一方的に短く切らず、本人が検討できる期間を確保し、承諾書の書式や返送方法もあわせて案内します。

労働条件通知書に書く内容と、内定後に渡すタイミング

労働条件通知書では、契約期間、期間の定めがある場合の更新の基準、就業場所と従事する業務、始業終業の時刻や休憩・休日・休暇、賃金の決定・計算・支払方法と締切日・支払日、退職に関する事項(解雇の事由を含む)などを明示します。さらに、就業場所・業務の変更の範囲を示すなど、近年の改正で明示事項が追加されています。様式は厚生労働省がモデルを公開していますので、最新版を所管官庁のサイトで確認してから使ってください。

渡すタイミングは、遅くとも入社日までに、というのが実務の基本です。入社初日に雇用契約書と一緒に交付する会社もありますが、賃金や勤務地が本人の想定と違った場合に入社直前で揉めるリスクがあります。条件が固まっているなら、内定通知と同時、あるいは内定承諾を受けた後すみやかに渡すほうが、双方にとって安全です。

雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる「労働条件通知書兼雇用契約書」を使い、会社と本人が署名・押印して1通ずつ保管する運用もよく見られます。明示義務は会社からの一方的な通知でも満たせますが、双方が署名する形にすると、条件に合意した記録が残るという利点があります。

メールやPDFで送ってもいい?電子交付の注意点

労働条件の明示は書面の交付が原則ですが、本人が希望した場合には、メールやSNSなど出力して書面を作成できる方法での送信が認められています。ポイントは「本人が希望したこと」と「受け取った側が印刷して保存できる形式であること」です。会社側の都合だけで電子化する運用にならないよう、希望の確認は記録に残しておいてください。

実務上は、応募者に電子交付でよいかを選考の最終段階で確認し、承諾の返信をもらってからPDFを添付して送る流れが取りやすいです。本文に「添付のPDFが労働条件通知書です」と明記し、到達の確認として受領の返信を依頼しておくと、後から「見ていない」という行き違いを防げます。

内定通知書やオファーレターについては、法令上の交付方法の定めがあるわけではないため、メールでの送付も広く行われています。ただし、採用の意思表示という重要な書面ですので、送信先アドレスの誤りや、本文だけで条件を伝えて添付を忘れるといったミスには注意してください。電子契約サービスを使う場合は、対応している書類の種類や保存方法を各社の公式サイトで確認しましょう。

入社までに用意しておく書類と、社内の段取り

内定承諾を受けたら、入社日までに揃える書類を一覧にして本人に案内します。一般的には、入社承諾書、身元保証書(必要とする会社の場合)、マイナンバーの提供に関する書類、扶養控除等申告書、年金手帳や基礎年金番号がわかるもの、雇用保険被保険者証、前職がある場合の源泉徴収票などです。会社によって必要なものは異なりますので、自社の就業規則や社会保険の手続きに合わせて整理してください。

社内側では、入社日が決まった時点で社会保険・雇用保険の資格取得手続きの準備、給与計算ソフトへの登録、勤怠の設定、備品やアカウントの用意を並行して進めます。ひとり社長の会社ではじめて人を雇う場合は、労働保険の成立手続きや就業規則の要否など、採用前に済ませておくべき論点もあります。

書式づくりでは、厚生労働省のモデル労働条件通知書をベースにして、自社の就業規則の条文番号を差し込む形にしておくと、更新のたびに作り直す手間が減ります。内定通知書のひな形も一度作っておけば、次回以降は入社日と条件を差し替えるだけで使い回せます。

迷ったら専門家に相談を

内定取消しの可否、試用期間の扱い、有期契約の更新基準の書き方、労働条件の変更手続きなどは、個別の事情によって判断が分かれる領域です。書面の文言ひとつで解釈が変わることもあるため、自己流で作り込む前に確認しておくと安心です。

労働条件通知書や就業規則、入社時の社会保険手続きについては社会保険労務士に、内定取消しや採用に関する紛争リスク、身元保証書などの契約面については弁護士に相談するのが一般的です。はじめての採用でひな形を整えるタイミングは、あわせて相談する良い機会になります。最新の明示事項や様式は、厚生労働省など所管官庁の資料もあわせて確認してください。

よくある質問

内定通知書だけで、労働条件通知書は出さなくてもいいですか?

労働条件の明示は会社の義務とされているため、内定通知書だけで済ませる運用は避けたほうがよいと考えられます。内定通知書に明示事項をすべて盛り込んで兼ねるか、別途労働条件通知書を交付するかのどちらかで対応してください。判断に迷う場合は社会保険労務士にご確認ください。

オファーレターと内定通知書は違うものですか?

実務上はほぼ同じ意味で使われ、呼び方の違いにとどまることが多いです。オファーレターは条件面を詳しく書く形が一般的ですが、名称そのものに法令上の定義があるわけではありません。社内でどちらの名称を使うかを決め、記載内容を統一しておくとよいでしょう。

内定後、労働条件通知書はいつ渡せばいいですか?

遅くとも入社日までに交付するのが実務の基本です。条件が確定しているなら、内定承諾を受けた後すみやかに渡すほうが、入社直前の食い違いを防ぎやすくなります。入社初日に雇用契約書と同時に交付する会社もあります。

労働条件通知書はメールで送ってもいいですか?

本人が希望した場合は、出力して書面を作成できる方法での電子交付が認められています。本人の希望を確認した記録を残し、PDFなど印刷可能な形式で送るのが安全です。詳しい要件は厚生労働省の資料を確認してください。

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