文字起こしの整文とケバ取りをAIでやる手順|読める議事録に直す方法
会議を録音してAIに文字起こしさせたものの、出てきたテキストが「えー」「あの」だらけで読めない。そんな状態で止まっている方は多いはずです。実は文字起こしの生データを議事録に変えるのは、ケバ取り→整文→要約という決まった順番の作業で、そのほとんどをAIに任せられます。この記事では、どの段階で何をAIにやらせ、どこだけ人が目で見るのかを、実際の手順に沿って整理します。
この記事の結論
- 文字起こしの生データは、ケバ取り(不要語の削除)→整文(読める文への調整)→要約(議事録化)の順に処理すると、AIに渡す指示が短くなり精度も安定します。
- ケバ取りと整文はAIにまとめて任せられますが、固有名詞・数字・日付・決定事項の4点だけは、必ず人が元の音声かタイムスタンプ付きの原文と照らして確認します。
- AIに整文させるときは「意味を変えない」「発言者の区別を残す」「分からない箇所は[聞き取り不明]と残す」の3つを指示に含めると、勝手な創作を減らせます。
文字起こしの整文とケバ取りは何が違うのか
ケバ取りとは、「えー」「あのー」「まあ」といった意味を持たない音や、言い直し・重複した語を取り除く作業です。録音をそのまま文字にしたデータは話し言葉のままなので、この段階を通すだけで文字数がかなり減り、画面上で追えるようになります。
整文は、ケバ取りの後に残った文を「読める文章」に直す作業です。倒置された語順を整える、主語が抜けた文に主語を補う、一文が長すぎるものを分ける、話し言葉特有の言い回しを書き言葉に寄せる、といった調整が含まれます。
そしてその先に、議事録としてまとめる要約があります。この3つを一度にAIへ頼むと、要約に引っ張られて発言内容が削られたり、逆に整文だけで終わって長いままだったりと、結果が安定しません。段階を分けて指示するのが、遠回りに見えて結局は早い進め方です。
手順1:整文の前に、元データを扱いやすい形にする
作業を始める前に用意するものは3つです。ひとつは文字起こしの生テキスト(できればタイムスタンプ付き)、もうひとつは元の音声ファイル、最後に会議に出てきた固有名詞のメモです。社名、人名、製品名、社内でしか使わない略語を、会議前後に箇条書きしておくと後の修正が一気に楽になります。
次に、生テキストを一度ざっと眺めて、発言者の区別が付いているかを確認します。話者分離が効いていない場合は、AIに整文させる前に「話者A」「話者B」程度でも区切っておくと、後で誰の発言かが分からなくなる事故を防げます。
長い会議のテキストをそのままAIに投げると、途中が要約されたり抜け落ちたりすることがあります。議題ごと、あるいは10〜15分程度の塊ごとに分割してから渡すと、抜けが起きにくくなります。分割の目印にはタイムスタンプか、議題の切り替わりを使ってください。
手順2:AIにケバ取りと整文をまとめて指示する
ケバ取りと整文は性質が近いので、AIには一度の指示でまとめて頼んで構いません。指示文に入れるべき要素は、①やってほしいこと(ケバ取りと整文)、②やってはいけないこと(要約・意訳・情報の追加)、③出力の形(発言者名+発言、の形式を維持)の3点です。
たとえば「以下は会議の文字起こしです。フィラー(えー、あのー等)と言い直しを削除し、読みやすい書き言葉に整えてください。ただし発言の意味を変えず、要約や情報の追加はしないでください。発言者の区別はそのまま残し、聞き取れていないと思われる箇所は[要確認]と付けてください」といった形です。この[要確認]を付けさせる一文が、後の見直し作業の効率を大きく変えます。
出力が返ってきたら、いきなり全文を読まず、まず元テキストと文字数を比べます。極端に短くなっていれば、整文ではなく要約されてしまった可能性が高いので、指示を出し直します。ここで気づかずに先へ進むと、削られた発言に後から気づけなくなります。
手順3:AIに任せず人が見る4カ所
AIによる整文は、文脈から「もっともらしい言葉」を補うことがあります。だからこそ、間違っていると実害が出る箇所だけは人が確認します。優先順位の高い順に、固有名詞、数字、日付・期限、決定事項と担当者の4つです。
固有名詞は、事前に作った用語メモと突き合わせます。同じ社名が表記ゆれしているケースも多いので、テキストエディタの置換機能で一括修正すると早いです。数字と日付は、該当箇所のタイムスタンプを頼りに音声を聞き直すのが確実で、ここだけは手間を惜しまない方が結果的に安全です。
決定事項と担当者は、議事録の中でもっとも後から参照される部分です。「〜する方向で」「〜を検討」といった曖昧な表現が、整文の過程で断定的に書き換えられていないかを確認します。契約条件や金額に関わる発言が含まれる会議では、この確認を別の出席者にも回してダブルチェックにする運用が向いています。
手順4:整った文から議事録の形に要約する
整文が終わったテキストを、あらためてAIに渡して要約させます。このとき「短くまとめて」とだけ頼むと使えない要約が返ってくるので、出力の型を先に決めて指示します。実務でよく使われるのは、①決定事項、②未決事項と次のアクション(担当者・期限付き)、③論点ごとの議論の要旨、という3ブロック構成です。
要約を作った後は、決定事項とアクションの行だけを整文済みテキストと照らし合わせます。要旨の部分は多少ニュアンスが違っても後から原文を見れば追えますが、アクションの抜けは会議そのものを無駄にしてしまうためです。
配布用には要約だけ、保管用には整文済みの全文も一緒に、という二段構えにしておくと、後で「あの話、誰が言ったんだっけ」となったときに遡れます。全文を残しておく運用は、認識の食い違いが起きたときの拠りどころにもなります。
ツールをどう選ぶか、録音と文字起こしで気をつけること
文字起こしから要約までを一本で行えるサービスもあれば、文字起こし専用のツールと汎用のAIを組み合わせる方法もあります。判断の順番としては、まず「会議の録音に社外秘や個人情報が含まれるか」を見ます。含まれるなら、入力データの取り扱いや学習利用の有無が規約で確認できるものに絞るのが先で、機能比較はその後です。
次に「毎週定例で回すのか、単発なのか」を見ます。定例で回すなら、出力形式を固定できるか、過去の議事録を検索できるかが効いてきます。単発なら、手元の文字起こしを汎用AIに貼り付けて整文・要約する方法でも十分まかなえることが多いです。料金や提供内容は変わるため、各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。
そして地味に効くのが、録音そのものの質です。マイクを話者に近づける、複数人がいる会議では席を離しすぎない、冒頭で出席者が名乗る、というだけで文字起こしの精度は変わります。整文で苦労している場合、原因がAI側ではなく録音側にあることも珍しくありません。
議事録を整えるときに、判断に迷ったら
議事録は社内の記録であると同時に、後から契約内容や労務上のやり取りを確認する材料にもなります。とくに取締役会の記録や、従業員との面談記録などは、作成や保存の扱いが一般的な会議メモとは異なると扱われることがあります。
また、会議の録音データや議事録に個人情報が含まれる場合、その保管方法や共有範囲について社内ルールを決めておく必要があります。AIサービスへ入力してよいデータの範囲も、あわせて整理しておくと迷いが減ります。
株主総会や取締役会の記録の要否・記載事項については司法書士や弁護士に、従業員との面談記録の扱いや労務上の取り扱いについては社会保険労務士に、経費や契約に関わる記録の保存については税理士に、それぞれご確認ください。制度の要件は改正されることがあるため、所管官庁の最新資料もあわせて確認することをおすすめします。
よくある質問
AIに整文させると、発言の内容が変わってしまうことはありますか
文脈から言葉を補う形で、元の発言と微妙にニュアンスが変わることがあります。指示文に「意味を変えない」「要約や情報の追加はしない」と明記し、固有名詞・数字・日付・決定事項だけは人が原文や音声と照らして確認する運用にしておくと安全です。
ケバ取りと要約を、AIに一度に頼んでもよいですか
一度に頼むこともできますが、要約に引っ張られて発言が削られたり、整文だけで終わったりと結果が安定しにくくなります。ケバ取り・整文をまず済ませ、整ったテキストをあらためて要約にかける二段階の方が、修正の手間は少なく済む傾向があります。
文字起こしの精度が低くて整文でも直しきれません。どうすればよいですか
まず録音側を見直してください。マイクと話者の距離、冒頭で各自が名乗ること、発言をかぶせないことで精度は変わります。そのうえで、会議に出てくる社名・人名・略語を事前にメモしておき、整文後に一括置換で直す流れにすると修正が速くなります。
議事録の元になった録音データは、どのくらい残しておくべきですか
一律の答えはなく、会議の性質や社内ルールによって判断が分かれます。個人情報や社外秘を含む場合は保管場所と共有範囲を決めておく必要があるため、取り扱いに迷う場合は弁護士や社会保険労務士にご確認ください。