代表者住所を登記簿で非公開にする|制度の条件と申出の手順

・住所・オフィス・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社を登記すると、代表取締役の住所は登記事項として記録され、登記事項証明書を取得した人が見られる状態になります。自宅を本店にしているひとり社長なら、「自宅住所が誰でも見られるのは不安」と感じるのは自然なことです。現在は、株式会社の代表取締役等の住所について、登記事項証明書での表示を一部にとどめる取り扱いが用意されています。この記事では、どんな場合に使えるのか、いつ・何を用意して・どこに出すのか、そして非公開にしたあとに起こりうる不便までを、判断の順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人の住所は、法務局への申出により、登記事項証明書上で市区町村までの表示にとどめる取り扱いを求めることができます。
  • 申出は会社設立の登記や役員変更などの登記と同時に行うのが基本で、申出書のほか、住所を証明する書面などの添付が必要になる場合があります。
  • 住所を非表示にすると金融機関の審査や不動産取引などで追加の疎明を求められることがあるため、非公開の必要性と実務上の手間を比べて決めるのが現実的です。

そもそも法人登記で代表者住所はどこまで公開されるのか

株式会社の登記事項には、代表取締役の氏名と住所が含まれます。登記事項証明書は、手数料を払えば誰でも取得できる仕組みなので、代表者の住所は「請求すれば第三者が見られる情報」という位置づけです。自宅を本店所在地にしている場合は、本店住所としても同じ住所が記録されます。

一方で、取締役や監査役など代表権のない役員については、氏名のみが登記され、住所は登記されません。つまり「役員全員の住所が公開される」わけではなく、公開されるのは代表権を持つ人の住所です。この違いを押さえておくと、どこを手当てすればよいのかが見えてきます。

また、登記情報提供サービスなどインターネット経由で登記情報を確認する仕組みもあるため、実務上は「取りに行かないと見られない情報」ではありません。ここが、住所の公開を気にする人が多い理由です。

代表者住所を非公開にできる制度の条件は?

株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人については、法務局に申出をすることで、登記事項証明書に記載される住所を市区町村(東京23区なら区)までにとどめる取り扱いを求めることができます。登記簿そのものから住所がなくなるのではなく、証明書として外部に出る形を絞る、という考え方です。

ここで大事なのは、対象が「代表権を持つ人の住所」であり、本店所在地は対象外という点です。自宅を本店にしている場合、代表者住所を非表示にしても本店住所として同じ住所が登記事項証明書に出てきます。自宅住所そのものを見せたくないのであれば、本店をどこにするかという別の検討が必要になります。

一般社団法人や合同会社など、株式会社以外の法人形態については、代表者住所の取り扱いが株式会社と同じとは限りません。一般社団法人の代表理事、合同会社の代表社員など、法人形態ごとに登記事項と申出の可否が異なるため、自分の法人でどこまで使えるかは、管轄の法務局や司法書士に確認するのが確実な進め方です。

申出はいつ・何を用意して・どこに出すのか

タイミングは、原則として登記の申請と一緒です。会社を設立するときの設立登記、代表取締役が変わるときの役員変更登記、代表者が引っ越したときの住所変更登記など、代表者住所に関わる登記のタイミングで同時に申出をするのが基本の流れになります。すでに登記が終わっている状態から単独で申出ができるかどうかは、ケースにより扱いが分かれるので、事前に管轄の法務局へ確認してください。

用意するものは、申出書と、申出人である会社・代表者を特定できる書面です。実務では、代表者の住所を確認できる書面(住民票の写しなど)や、郵便物の受取先として会社の実在性を示す書面の添付を求められることがあります。何が必要かは登記の種類や申出の内容で変わるため、法務局が公開している申出書の様式と記載例を先に取り寄せて、そこに挙がっている添付書面をそろえる順番が効率的です。

提出先は、会社の本店所在地を管轄する法務局です。登記申請と同時に出す場合は、登記申請書と一緒に窓口・郵送・オンラインのいずれかで提出します。オンライン申請を使う場合の添付方法は登記の種類ごとに扱いが異なるので、司法書士に依頼するか、法務局の手引きに沿って進めると迷いにくくなります。

非公開にすると何が不便になるか(先に知っておくこと)

登記事項証明書に住所の一部しか出なくなると、住所を根拠に本人確認をしている相手方から、追加の書類を求められることがあります。たとえば金融機関の口座開設や融資の審査、不動産の賃貸借契約、取引先の与信管理など、「登記事項証明書を見れば代表者の住所が分かる」という前提で運用している場面です。

この場合は、住民票の写しや印鑑証明書など、別の書類で住所を示すことになります。手続きが止まるというより、そのつど疎明の手間が増える、と考えておくとよいでしょう。特に創業直後で口座開設や事務所契約を控えている場合は、そのスケジュールと申出のタイミングを合わせて考えると混乱が少なくなります。

判断の順番としては、①誰にどこまで見られるのが困るのかを言葉にする、②本店を自宅にしているかどうかを確認する、③直近1年で予定している契約・審査を書き出す、の3つを見ます。②が自宅のままなら、代表者住所の非表示だけでは目的を達しにくいため、バーチャルオフィスや別拠点を本店にする選択と合わせて検討する流れになります。

住所を見せたくない場合のほかの選択肢

自宅住所を登記に載せたくない、というニーズに対しては、本店所在地を自宅以外にするという方法があります。レンタルオフィスやバーチャルオフィスの住所を本店として登記できるかは、提供元が登記利用を認めているかどうかで変わります。契約前に「本店登記に使えるか」「郵便物の転送や来訪対応はどうなるか」を確認してください。費用や条件は各社の公式サイトで最新の情報を確認するのが安全です。

代表者住所については、住民票の住所と生活実態が一致していることが前提になります。登記のために実態のない住所を届け出るような対応は、後日の手続きで問題になることがあるため避けてください。判断に迷う場合は、司法書士や税理士に状況を伝えて整理してもらうほうが早く進みます。

なお、法人形態を変えることで住所の公開範囲が大きく変わるわけではありません。一般社団法人でも代表理事の住所が登記事項となる扱いがあり、「法人形態を選べば非表示になる」という発想では解決しないことが多いです。制度の詳細は法務省・法務局が公開している資料で最新の内容を確認してください。

迷ったら誰に相談するか

登記の申請と同時に申出をする形になるため、実務の中心は登記のプロである司法書士です。設立登記をこれから行うなら、設立の依頼と合わせて「代表者住所の申出も一緒に出したい」と伝えると、必要書類の案内まで含めてスムーズに進めやすくなります。すでに登記済みで単独申出の可否を知りたい場合も、管轄法務局への照会を含めて任せられます。

本店を自宅にするか別住所にするかは、事業所の実態や経費の扱いにも関わるため、税理士の視点も役立ちます。自宅の一部を事務所として使う場合の費用の扱いは、状況によって判断が分かれることがあるので、税理士にご確認ください。

そのうえで、制度の条件や添付書面の詳細は、法務省・法務局が公表している最新の資料に沿って確認してください。個別の事情がある場合は、司法書士に相談し、登記のスケジュールと合わせて計画を立てることをおすすめします。

よくある質問

すでに設立済みの会社でも、代表者住所を非公開にできますか。

申出は登記申請と同時に行うのが基本の流れで、既存の登記について単独で申出ができるかはケースにより扱いが分かれます。次回の役員変更や住所変更の登記に合わせて出す方法も含め、管轄の法務局か司法書士に確認してください。

本店の住所も一緒に非表示にできますか。

この申出の対象は代表権を持つ人の住所で、本店所在地は対象外と考えられます。自宅を本店にしている場合は、本店住所としてその住所が登記事項証明書に出てくるため、本店を別の住所にするかどうかを合わせて検討することになります。

一般社団法人でも代表者の住所を非表示にできますか。

法人形態によって登記事項や申出の取り扱いが異なります。一般社団法人の代表理事についてどこまで使えるかは一律ではないため、管轄法務局や司法書士に個別に確認するのが確実です。

非公開にすると銀行口座は作れなくなりますか。

作れなくなるわけではありませんが、登記事項証明書だけでは代表者の住所が分からないため、住民票の写しなど別の書類を求められることがあります。口座開設や事務所契約の予定がある時期は、申出のタイミングを調整しておくと手続きが進めやすくなります。

あわせて読みたい

「住所・オフィス」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。