労務手続きソフトの比較|社会保険の届出をシステムで進めるときの選び方

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

はじめて人を雇うと、社会保険と雇用保険の届出が一気にやってきます。紙で書いて窓口や郵送で出すこともできますが、人数が増えるほど「誰の書類を出したか」が分からなくなりがちです。この記事では、社会保険の手続きをソフトで進めるときに、どの順番で何を比べればいいかを整理します。

この記事の結論

  • 社会保険の手続きソフトは、まず「電子申請に対応しているか」「給与計算とデータがつながるか」「従業員本人に情報を入力してもらえるか」の3点から比べると絞り込みやすくなります。
  • 入社手続きのSaaSは、従業員がスマホで自分の氏名・住所・マイナンバー・扶養情報などを入力し、その情報をもとに資格取得届などの電子申請データを作る流れが中心です。
  • 社労士に手続きを委託している会社は、社労士側が使っているシステムと合わせられるかを先に確認すると、二重入力を避けやすくなります。

そもそも社会保険の手続きはオンラインでできるのか

健康保険・厚生年金保険の資格取得届や資格喪失届、雇用保険の被保険者資格取得届といった主要な手続きは、行政の電子申請の仕組みを通じてオンラインで提出する方法が用意されています。窓口に行かずに済み、提出した記録がデータで残るのが利点です。

ただし、電子申請を直接使うには電子証明書やアカウントの準備が必要で、はじめての人には入口がやや分かりにくい面があります。労務手続きソフトの多くは、この電子申請の部分を代行する形で、画面に入力すれば申請データが作られるようになっています。

どの手続きが電子で完結し、どれが紙や別ルートになるかは制度改正でも変わります。対象範囲は日本年金機構やハローワークなど所管官庁の最新資料を確認しつつ、ソフト側の対応手続き一覧と照らし合わせてください。

比較の順番①:電子申請にどこまで対応しているか

最初に見るのは、自社でよく発生する手続きが、そのソフトから電子申請できるかどうかです。ひとり社長や数人の会社であれば、入社時の資格取得、退職時の資格喪失、扶養の追加や削除、住所や氏名の変更、年に一度の算定基礎届あたりが中心になります。

対応手続きの一覧は各社が公式サイトで公開していることが多いので、自社で発生しそうなものが含まれているかを見てください。労災や助成金の申請まで手を広げると対応状況が分かれやすいので、そこまで必要かどうかも合わせて考えます。

もうひとつ確認したいのが、申請した後の状況が画面で追えるかです。「送信済み」「受付済み」「公文書を受け取った」といった状態が見えると、提出漏れに気づきやすくなります。

比較の順番②:給与計算・勤怠とデータがつながるか

社会保険の手続きは給与計算と切り離せません。入社時に登録した氏名・生年月日・住所・報酬額といった情報は、そのまま給与計算でも使います。労務ソフトと給与ソフトが別々だと、同じ情報を二度入力することになり、片方だけ直して食い違う事故が起きやすくなります。

判断の順番としては、すでに給与計算ソフトを使っているなら、そのシリーズの労務機能や、公式に連携が案内されているサービスから見ると早いです。これから両方そろえるなら、給与・勤怠・労務が同じアカウントで扱えるものを候補に入れると、初期設定の手間が一度で済みます。

一方、給与計算を税理士や社労士に任せている場合は、社内で持つのは従業員情報の入口だけにして、そこからデータを書き出して渡せるかを見る、という組み方もあります。自社でどこまでやるかを決めてから機能を選ぶと、余計な比較に時間を取られません。

比較の順番③:従業員に入力してもらえるか(入社手続きSaaSの要点)

入社手続きのクラウドサービスの本体は、実は電子申請そのものより「従業員から正確な情報を集める部分」です。入社予定者にメールやリンクを送り、本人がスマホから氏名・住所・銀行口座・扶養家族・マイナンバーなどを入力する形が一般的で、担当者が紙を回収して転記する手間が減ります。

ここで見ておきたいのは、入力項目を自社に合わせて足せるか、本人確認書類や通勤経路の申請などを一緒に集められるか、未提出の人を一覧で追えるか、という点です。人を採用するたびに同じ案内を手作業で送るのはかなりの負担になります。

マイナンバーを扱う機能がある場合は、誰が閲覧できるかの権限設定と、保管や削除の扱いがどうなっているかを確認してください。取扱いのルールは社内規程としても整える必要があるため、判断に迷う場合は社会保険労務士に相談すると整理しやすくなります。

会社の状況別に、どのタイプを選ぶか

従業員が自分ひとりだけ、または家族のみという会社なら、手続きの件数自体が少ないため、給与計算ソフトに付いている範囲の労務機能で足りることが多いです。まずは会社設立時の新規適用や自身の資格取得を済ませ、専用ソフトの導入は人を雇う段階で考えても遅くありません。

数人〜十数人でアルバイトやパートの入退社がある会社は、入社手続きのオンライン収集と電子申請がセットになったタイプが向きます。入退社の頻度が高いほど、従業員に入力してもらえる仕組みの効果が出ます。

社労士に顧問を依頼している会社は、順番を変えて、先に社労士へ「どのシステムなら連携しやすいか」を聞くのが近道です。会社側と社労士側で別々のシステムを使うと、結局メールで書類をやり取りすることになり、せっかくの電子化が中途半端になります。

導入するときの進め方と、つまずきやすいところ

進め方としては、まず無料で試せる期間に、実際の入社を1件通して動かしてみるのが確実です。従業員情報の登録、本人への入力依頼、申請データの作成、送信、公文書の受け取りまでを一度体験すると、自社に合うかどうかがはっきりします。試用の条件や料金は各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

つまずきやすいのは、電子申請に必要なアカウントや電子証明書の準備です。ここは行政側の手続きが絡むため日数がかかることがあり、入社日直前に始めると間に合わないおそれがあります。人を雇うと決めた時点で先に済ませておくと安心です。

また、ソフトを入れても、社会保険の加入対象になるかどうかの判断や、賃金・労働時間の取り決め自体は自動では決まりません。要件の判断に不安がある場合は、そのまま進めて後から訂正するより、社会保険労務士に確認したうえで登録するほうが手戻りが少なくなります。

迷ったときは専門家に相談を

労務手続きのソフトは、機能の多さより「自社で発生する手続きが、無理なく回るか」で選ぶほうが失敗しにくいです。電子申請の対応範囲、給与計算との連携、従業員からの情報収集、この3点を順に見て、候補を2〜3に絞ってから試すとよいでしょう。

加入要件の判断、扶養の認定、雇用契約や就業規則との整合など、システムだけでは決められない部分は必ず残ります。判断に迷う点や、自社の体制に合った運用の組み方については、社会保険労務士に相談してください。給与計算や年末調整と絡む論点は、税理士にもあわせて確認すると安心です。

よくある質問

社会保険の手続きは、ソフトを使わずオンラインだけで完結できますか

行政が用意している電子申請の仕組みを直接使う方法もあり、主要な届出はその範囲で進められることがあります。ただし電子証明書やアカウントの準備、入力様式への慣れが必要なため、件数が増えてきたら市販のソフトを挟むほうが運用は楽になります。対象手続きの範囲は所管官庁の最新資料を確認してください。

入社手続きのクラウドサービスを入れると、社労士は不要になりますか

入力や提出の作業は減らせますが、加入対象かどうかの判断や、例外的なケースの扱いまでは自動では決まりません。ソフトは作業を効率化する道具と考え、判断が必要な場面は社会保険労務士に確認する形が現実的です。

ひとり社長でも労務手続きソフトは必要ですか

自分ひとりだけであれば手続きの件数が少ないため、当面は給与計算ソフトに付いている機能で対応する会社も多いです。人を雇う予定が出てきた時点で、入社時の情報収集と電子申請に対応したサービスを検討すると無駄がありません。

紙で提出してきましたが、途中から電子に切り替えても差し支えありませんか

提出方法を途中から変えること自体は一般的に行われています。切り替え時は、電子申請用のアカウント準備に日数がかかる点と、過去分の記録をどう保管するかを先に決めておくとつまずきにくくなります。手続きごとの取扱いに不安があれば社会保険労務士にご確認ください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。