雇用契約書の試用期間の書き方|期間・賃金・本採用の記載例

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

初めて人を雇うとき、「とりあえず3か月は様子を見たい」と考える方は多いと思います。その「様子を見る期間」が試用期間です。ただ、契約書に何も書かないまま口頭で「最初の3か月は試用ね」と伝えるだけだと、あとで賃金や本採用の扱いをめぐって話がこじれやすくなります。この記事では、雇用契約書に試用期間をどう書くか、どこまで書けばよいか、研修期間や「試用期間のみ」の契約とどう違うのかを、記載例つきで整理します。

この記事の結論

  • 試用期間を設けるなら、雇用契約書に「期間の長さ」「延長の有無」「試用期間中の労働条件」「本採用しない場合の判断」の4点を書いておくのが基本です。
  • 試用期間中でも労働契約は成立しているため、労働時間・賃金・社会保険などのルールは通常の労働者と同じように適用されるのが原則です。
  • 試用期間中に賃金を下げる場合は、その金額と本採用後の金額を契約書に明記し、最低賃金を下回らないか毎年確認します。

そもそも試用期間とは何か、契約書に書く必要はあるのか

試用期間は、採用した人の適性や勤務態度を一定期間見たうえで、本採用に進むかどうかを判断するための期間です。法律で「試用期間を設けなければならない」と決まっているわけではなく、設けるかどうかは会社の判断になります。一方で、設けるのであれば労働条件の一部として本人に示しておく必要があります。

試用期間中も労働契約はすでに成立しています。つまり、試用期間だから労働時間の上限が緩くなる、残業代を払わなくてよい、といった扱いにはなりません。社会保険や雇用保険の加入も、要件を満たせば試用期間の初日から対象になるのが一般的です。

書面に残す理由は単純で、あとから「聞いていない」という食い違いを避けるためです。雇用契約書か労働条件通知書のどちらかに、試用期間の有無と内容を書いておきます。多くの会社は「労働条件通知書兼雇用契約書」として1枚にまとめ、双方が署名・記名押印する形をとっています。

試用期間は何か月にするか、延長はどう書くか

期間の長さに一律の法的な上限はありませんが、実務では3か月または6か月を設定する会社が多く見られます。判断材料としては、その職種の仕事を一通り任せて評価するのにどれくらいかかるかです。定型業務中心で月単位のサイクルが見えやすい職種なら3か月、繁忙期や決算期をまたいで見たい職種、あるいは裁量の大きい職種なら6か月、という順で考えると決めやすくなります。

極端に長い試用期間は、労働者を不安定な立場に長く置くものとして、争いになった際に有効性を問われることがあります。「1年」「2年」といった設定を検討している場合は、その必要性が説明できるかを一度立ち止まって考え、社会保険労務士や弁護士に相談してください。

延長の可能性を残したいときは、契約書に延長の条項をあらかじめ入れておきます。書いていない延長を後から一方的に行うのは、トラブルの元になりやすい部分です。条項例としては「試用期間は、勤務成績その他により会社が必要と認めた場合、本人に通知のうえ最長◯か月を限度として延長することがある」といった形が一般的で、延長の上限と通知することを明記しておくと運用しやすくなります。

試用期間の記載例|そのまま使える文例と埋め方

雇用契約書の「その他の労働条件」や独立した条項として、次のような形で記載します。まず基本形です。「試用期間 有(◯年◯月◯日から◯年◯月◯日まで/◯か月間)。試用期間中の労働条件は本契約に定めるとおりとし、試用期間満了後、本採用とする。」——これが最もシンプルな書き方です。

試用期間中の賃金を本採用後と変える場合は、金額を分けて書きます。「試用期間中の基本給 月額◯◯円/本採用後の基本給 月額◯◯円」のように、両方の金額を契約書の賃金欄に併記します。通勤手当や食事補助などの扱いが試用期間中だけ異なるなら、その点も同じ欄に書き添えます。

本採用に関する条項は、判断基準とセットにしておくと運用しやすくなります。「試用期間中または試用期間満了時に、勤務成績、勤務態度、健康状態、経歴の申告内容その他により、従業員として不適格と会社が判断した場合は、本採用しないことがある。」といった形です。就業規則がある会社は、就業規則の解雇事由や試用期間の条項と内容がずれないよう突き合わせてください。

なお、試用期間中に有給休暇が発生するかどうかは入社日からの勤続期間で数えるのが原則で、試用期間だから勤続にカウントしない、という扱いにはなりません。この点も誤解が多いので、社内で認識をそろえておくと安心です。

試用期間中の賃金を下げてよいか、研修期間との違い

試用期間中の賃金を本採用後より低く設定すること自体は、実務上行われています。ただし条件があります。ひとつは、その金額が都道府県ごとの最低賃金を下回らないこと。最低賃金は毎年改定されるため、採用のたびに、また改定時期に、現在の金額を厚生労働省や都道府県労働局の公表資料で確認してください。もうひとつは、契約書で本人に示し、合意を得ておくことです。後から一方的に下げる運用は避けます。

「研修期間」という言葉を使う会社もありますが、試用期間と研修期間は本来別の概念です。試用期間は本採用の可否を判断する期間、研修期間は業務を覚えるための教育期間を指します。契約書で「研修期間」とだけ書いていると、本採用しない判断の根拠として使えるのかが曖昧になります。適性を見て本採用を判断したいのであれば、「試用期間」という言葉で書くほうが意図が伝わります。

また、研修中であっても会社の指揮命令のもとで拘束されている時間は労働時間として扱われるのが原則です。入社前の研修や、業務時間外の自主参加とされる勉強会の扱いは判断が分かれやすいところなので、運用を決める前に社会保険労務士に相談することをおすすめします。

「試用期間のみ」の契約書は作れるのか

「まず試用期間だけの契約を結び、よければ本契約を結び直したい」という相談はよくあります。ここは分けて考える必要があります。一般的な試用期間付きの雇用契約は、期間の定めのない契約の最初の一定期間を試用にあてるもので、契約そのものは入社時点から続いています。本採用のときに契約を結び直す必要はありません。

一方、最初から「◯か月の有期雇用契約を結び、その後の更新で無期に切り替える」という設計にすることもあります。ただしこの形は、契約期間満了で終わらせる意図があるのか、実質的に試用期間なのかで扱いが変わってくる領域です。書面上は有期契約でも、実態として試用期間と評価されることがあります。

どちらの設計にするかで、契約書の書き方も、期間満了時の手続きも変わります。「試用期間のみの契約書」という言い方で検討している場合は、自社がどちらを意図しているのかを整理したうえで、弁護士または社会保険労務士に文案を見てもらうのが安全です。

本採用しない・試用期間中に辞めてもらう場合の考え方

試用期間中だから自由に辞めてもらえる、というわけではありません。試用期間中の解約は、通常の解雇より広い範囲で認められる余地があるとされる一方で、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められる点は変わらないと理解されています。「なんとなく合わない」だけを理由にするのは難しいと考えてください。

実務で大事なのは記録です。指導した内容、改善を求めた日付、本人の反応をメモや面談記録として残しておくと、判断の根拠を説明しやすくなります。試用期間の途中で気になる点が出たら、満了直前ではなく早い段階で面談し、期待する水準を具体的に伝える。この順番を守るだけで、こじれ方がかなり変わります。

また、入社後14日を超えて雇用している人を解雇する場合は、解雇予告または予告手当の取扱いが関わってきます。本採用を見送る方向で検討を始めた段階で、手続きの進め方を社会保険労務士や弁護士に確認しておくと、判断を誤りにくくなります。

作成の手順と、専門家に相談するタイミング

手順としては、内定を出すと決めた時点で契約書の作成に取りかかります。用意するのは、労働条件通知書兼雇用契約書の様式(厚生労働省のモデル様式が公開されています)、就業規則がある会社は就業規則、賃金額を決めるための最低賃金の最新情報です。記載する項目は、契約期間、就業場所、業務内容、始業終業時刻、休憩・休日・休暇、賃金、退職に関する事項、そして試用期間に関する条項です。

完成したら、入社日より前に本人に交付し、内容を説明したうえで署名・記名押印をもらいます。会社と本人が1部ずつ保管します。電子交付を行う場合は、本人が希望し、出力して書面にできる方法で行うといった要件があるため、所管官庁の資料で最新の取扱いを確認してください。

試用期間の条項は、短い文章のわりに、賃金・解雇・就業規則との整合など複数の論点がからみます。自社で文案を作ること自体はできますが、初めて人を雇うとき、あるいは試用期間中の本採用見送りを具体的に検討しているときは、社会保険労務士に契約書と就業規則をセットで見てもらうことをおすすめします。解雇に関する判断が絡む局面では、弁護士に相談してください。賃金や社会保険の税務・保険料の扱いで迷う点は、税理士にもあわせて確認すると安心です。

よくある質問

雇用契約書に試用期間を書き忘れた場合、あとから設定できますか。

試用期間は労働条件の一部にあたるため、入社後に会社が一方的に追加するのは難しいと考えられています。書き忘れに気づいた時点で本人と話し合い、合意のうえで覚書を交わす方法が考えられますが、扱いが難しい場面なので社会保険労務士にご相談ください。

試用期間中でも社会保険に加入させる必要がありますか。

加入要件を満たしていれば、試用期間中であっても入社日から被保険者として扱われるのが原則です。「試用期間が終わってから加入」といった運用は認められにくいため、手続きの時期は年金事務所やハローワークの案内で確認してください。

試用期間を3か月から6か月に延ばしたいのですが、可能ですか。

契約書にあらかじめ延長の条項があり、その範囲内であれば延長できる場合があります。条項がない場合は本人の同意が必要になると考えられ、理由の説明も求められます。延長を検討する段階で専門家に相談すると進めやすくなります。

試用期間中の人が自分から辞めたいと言った場合はどうなりますか。

試用期間中であっても、本人からの退職の申し出は通常の労働者と同じ考え方で扱われます。就業規則に退職の申出時期を定めている場合はその内容を確認し、退職日と最終出勤日、貸与物の返却、社会保険の資格喪失手続きを順に進めてください。

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