パート・アルバイトの雇用契約書|書き方と扶養・シフトの記載例
はじめてパートやアルバイトを雇うとき、多くの人が「正社員と同じ契約書でいいのか」「シフトで勤務時間が毎週変わる場合はどう書くのか」で止まります。結論から言うと、書くべき項目の骨格は正社員と同じで、そこにパート・アルバイト特有の項目と、シフト制ならではの書き方が加わるだけです。この記事では、記載すべき項目を優先順に並べ、勤務時間がバラバラなケースと扶養内希望のケースの書き方、そして作成から交付までの手順を順番に整理します。
この記事の結論
- パート・アルバイトにも労働条件の書面での明示は必要で、雇用契約書1通にまとめて署名を取り、控えを本人に渡す形が実務では扱いやすいです。
- 勤務時間がシフトで変わる場合は、基本となる時間帯と1週間あたりの目安、シフトの決め方と通知時期を書き、確定した時間は毎回のシフト表で示す形が一般的です。
- 扶養内で働きたい希望があっても契約書に「扶養内」とは書かず、1週間の所定労働時間や上限の目安として書き、税や社会保険の扱いは本人と専門家に確認してもらいます。
雇用契約書と労働条件通知書、パート・アルバイトはどちらを作る?
労働条件通知書は、会社が労働条件を書面で明示するための書類で、雇い入れるときに交付が求められます。雇用契約書は、会社と本人が合意した内容を示し、双方が署名・押印する書類です。目的が違うため、法律上求められているのは「明示」の部分ですが、実務では両方を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」を1通作り、2部作成して双方が保管する形がよく使われます。
どちらにするか迷ったら、次の順で考えると決めやすいです。まず、本人の合意を記録として残したいか。シフトや契約期間でトラブルになりやすいパート・アルバイトでは、合意の記録が残る雇用契約書形式のほうが後で助かります。次に、運用の手間。人数が多く様式を統一したい場合は、厚生労働省が公開しているモデル様式をベースに、自社用の項目を足していくと作りやすいです。
「アルバイト用の簡易な様式でいいのでは」と考える方もいますが、項目を省くと明示不足になりかねません。短時間・短期間の人ほど認識のズレが起きやすいので、様式はそのままで、記入量を減らす工夫(シフト表を別紙とする、就業規則の条文を参照する)にとどめるのが無難です。
パート・アルバイトの雇用契約書に必ず入れる項目
まず、書面で明示することが求められている中心的な項目から埋めます。具体的には、契約期間(期間の定めの有無、あるなら開始日と終了日)、有期契約の更新の有無と更新の判断基準、就業の場所と従事する業務の内容、始業・終業の時刻と休憩時間、所定時間外労働の有無、休日と休暇、賃金の決定・計算・支払い方法と締切日・支払日、昇給に関すること、退職に関する事項(解雇の事由を含む)です。パート・アルバイトでも、この骨格は正社員と変わりません。
2024年4月以降は、就業場所と業務の「変更の範囲」の明示、有期契約で更新上限がある場合はその内容、無期転換の申込機会や転換後の労働条件についての明示が加わっています。店舗が複数あって将来異動の可能性があるなら「変更の範囲:当社の各店舗」のように幅を書いておくと、後の異動時に説明しやすくなります。詳しい要件は厚生労働省の資料を確認してください。
加えて、パートタイム・有期雇用で働く人には、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口(担当部署・担当者名)を文書で明示することが求められています。「賞与:なし」「退職手当:なし」と書くこと自体は問題にはならず、書かないことのほうがトラブルになります。有無をはっきり書き、支給する場合は支給時期や判断基準も添えます。
勤務時間がバラバラ・シフト制のときの書き方
シフト制で毎週の時間が変わる場合でも、「シフトによる」の一言だけで済ませるのは避けたいところです。実務では、①基本となる勤務時間帯の枠(例:始業9:00〜終業22:00の間でシフトにより決定、休憩60分)、②1週間または1か月あたりの所定労働時間・所定労働日数の目安(例:週3日程度、週18時間程度)、③シフトの決め方と通知の時期(例:前月20日までに本人の希望を提出、当月25日までに翌月のシフト表を交付)を書き、確定した勤務時間はシフト表で示す、という組み立てにします。
記載例としては「始業・終業の時刻:シフトにより次のいずれか。①9:00〜13:00 ②13:00〜17:00 ③17:00〜21:00(休憩は6時間超の勤務の場合45分)」のようにパターンを並べる方法もあります。パターン化できる職場ならこちらのほうが本人にも分かりやすく、賃金計算もしやすいです。時間帯が読めない職場は、枠+目安時間+通知時期の形が向いています。
忘れやすいのが、シフトが減ったときの扱いです。「業務の都合によりシフトを変更することがある」だけだと、収入が読めず不満の原因になります。最低限の勤務日数・時間の目安を書くか、シフト確定後の会社都合の取消しはどう扱うかを決めておくと、説明しやすくなります。取り扱いに迷う場合は社会保険労務士に相談してください。
「扶養内で働きたい」と言われたときの記載の考え方
契約書に「扶養内」と書くのは避けたほうがよいです。扶養の判定は税と社会保険で基準が異なり、本人の配偶者の状況や他社での収入にも左右されるため、会社が契約書で保証できる性質のものではありません。書くべきなのは労働条件のほう、つまり1週間の所定労働時間、所定労働日数、時間外労働の有無です。
進め方としては、まず本人に「どの範囲に収めたいのか」を確認します。そのうえで、会社側は所定労働時間と時間給から想定される月の収入の見込みを共有し、超えそうな月は事前に相談する運用を決めます。契約書には「1週間の所定労働時間は◯時間とし、変更する場合は双方協議のうえ書面で定める」「時間外労働:原則なし(繁忙期に本人の同意を得て行う場合がある)」のように書くと、後から時間が伸びたときに整理しやすくなります。
社会保険の加入は、所定労働時間や勤務日数、企業規模などの条件で判断され、条件に当てはまれば本人の希望とは関係なく加入手続きが必要になることがあります。「扶養内にしたいので加入しない」という取り扱いはできない場合があるため、自社が対象になるかは日本年金機構や年金事務所の案内を確認し、判断に迷うときは社会保険労務士に確認してください。税の扶養の扱いについては税理士や本人の勤務先・税務署に確認してもらう形が安全です。
作成から交付までの手順(いつ・何を用意して・どこに出すか)
タイミングは、働き始める前です。採用を決めたら、初日までに書面を渡すのが基本です。用意するものは、①労働条件通知書兼雇用契約書(2部)、②就業規則(ある場合。参照条文を示す)、③シフトの運用ルールを書いた別紙やシフト表のサンプル、④本人から提出してもらう書類の案内(本人確認書類、給与振込口座、扶養控除等申告書、マイナンバーなど)です。
当日の流れは、内容を一緒に読み合わせ、勤務時間・賃金・シフトの決め方・更新の有無の4点をとくに口頭で確認してから、双方が署名します。1部を本人に渡し、1部を会社で保管します。電子交付も、本人が希望し、出力して書面にできる方法であれば認められる場合がありますが、メールで送って終わりにせず、受領確認を残しておくと安心です。
提出先は行政ではなく本人です。雇用契約書は役所に出すものではありませんが、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿とあわせて事業所に保管する必要があります。別に必要になるのは、雇用保険や社会保険の資格取得手続き(加入条件に当てはまる場合)で、こちらはハローワークや年金事務所(または年金機構の電子申請)に期限内に提出します。
更新・条件変更のときに何をするか
有期契約を更新するときは、その都度あらためて書面を作ります。前回と同じ内容でも、契約期間の欄だけ書き換えた新しい契約書を作り、署名を取り直すのが基本です。更新を重ねる場合は、通算の契約期間や更新回数を管理する表を作っておくと、無期転換の申込機会の案内が必要になる時期を見落としにくくなります。
時間給を上げた、シフトのパターンを変えた、勤務地を移したといった変更も、口約束で終わらせず、変更点だけを記した書面(労働条件変更通知書や覚書)を作って双方で持ちます。とくに賃金と所定労働時間の変更は、社会保険の手続きに影響することがあるため、変更した月が分かる形で記録を残してください。
契約を更新しない場合は、判断基準として契約書に書いた事由に沿って説明できるかを確認します。更新を繰り返してきた人の雇止めは慎重な判断が必要になる場面があり、対応を誤るとトラブルにつながります。判断に迷う段階で、社会保険労務士や弁護士に相談することをおすすめします。自社の様式を一度整えてしまえば以後は使い回せますので、最初のひな形づくりのときに専門家に目を通してもらうのも有効です。
よくある質問
アルバイトでも雇用契約書は必要ですか。口頭ではだめでしょうか。
契約自体は口頭でも成立しますが、労働条件のうち主要な項目は書面で明示することが求められています。短期や週1日の勤務でも同じ扱いになるため、雇用契約書または労働条件通知書を用意して交付してください。
シフト制で勤務時間が決まらない場合、労働条件通知書にはどう書けばよいですか。
勤務できる時間帯の枠、1週間または1か月あたりの所定労働時間・日数の目安、シフトの決め方と通知の時期を書き、確定した時間はシフト表で示す形が一般的です。時間帯がパターン化できる職場なら、複数のパターンを列挙する書き方も分かりやすいです。
「扶養の範囲内」と契約書に書いてもよいですか。
扶養の判定は税と社会保険で基準が異なり、本人の家庭の状況にも左右されるため、契約書には所定労働時間や日数として書くほうが実務的です。加入条件に当てはまれば社会保険の手続きが必要になる場合があるので、判断は社会保険労務士や年金事務所に確認してください。
雇用契約書のテンプレートはどこで手に入りますか。
厚生労働省が労働条件通知書のモデル様式を公開しており、短時間労働者向けの様式もあります。まずはそれをベースに、自社のシフト運用や相談窓口の欄を足して使うのが確実です。最新の明示事項に対応しているかは、公開元の資料で確認してください。