有期雇用の契約書|契約期間・更新の有無の書き方と注意点
契約社員やパート、アルバイトなど「期間の定めあり」で人を雇うとき、いちばんトラブルになりやすいのが契約期間と更新まわりの書き方です。口頭で「たぶん続けてもらうよ」と伝えていたのに、契約書には何も書いていない。この状態が、あとから更新を巡る食い違いにつながります。この記事では、有期雇用の契約書で契約期間・更新の有無をどう書くか、更新時に何をするかを、書く順番に沿って整理します。
この記事の結論
- 有期雇用の契約書には、契約期間(開始日と終了日)、更新の有無、更新する場合の判断基準を、この3点セットで必ず書き分けて記載します。
- 「更新の有無」は「更新する場合がある」「更新しない」などから選び、更新する可能性があるなら、その判断に使う具体的な項目(勤務成績、会社の経営状況、業務量など)まで書きます。
- 更新の上限を設けるかどうかは最初の契約時点で決め、契約書と労働条件通知書の双方で同じ内容にそろえ、更新のたびに新しい契約書を取り交わすのが基本です。
有期雇用(期間の定めあり)の契約書は、何を書けば足りるのか
有期雇用の契約書では、無期雇用と同じ項目(仕事の内容、勤務場所、始業終業時刻、賃金、休日など)に加えて、期間に関する情報を書く必要があります。具体的には、契約期間、更新の有無、更新する場合の判断基準の3つです。ここが空欄だったり「応相談」で済ませていたりすると、更新するつもりだったのか、しないつもりだったのかが後から検証できなくなります。
また、有期雇用では「更新の上限の有無と内容」「無期転換を申し込める権利が発生する場合の案内」なども、明示が求められる事項として整理されています。求められる明示事項は改正で追加されることがあるため、最新の様式は厚生労働省が公開しているモデル労働条件通知書で確認してください。
順番としては、①契約期間を決める → ②更新の可能性があるかを決める → ③あるなら判断基準と上限を決める → ④様式に落とす、という流れで考えると迷いにくくなります。先に様式を埋めようとすると、判断基準の欄で手が止まります。
契約期間の書き方|開始日と終了日を日付で書く
契約期間は「◯年◯月◯日から◯年◯月◯日まで」と、開始日と終了日を日付で書きます。「1年間」「当面の間」といった書き方は、いつ終わるのかが人によって読み方が変わるため避けます。月末が土日祝でも、終了日は日付で固定しておくと混乱しません。
期間の長さは、業務の実態に合わせて決めます。プロジェクト単位なら終了見込みに合わせる、季節業務なら繁忙期に合わせる、といった考え方です。有期労働契約の1回あたりの期間には法令上の上限があり、専門的な知識を持つ人や一定年齢以上の人などで扱いが異なる場合があります。長めの期間を設定したいときは、労働基準法の定めを確認するか、社会保険労務士に相談してください。
試用期間を設ける場合も、有期契約では扱いが紛らわしくなりがちです。「最初の3か月を試用期間とする」のか「最初の3か月を有期契約とし、その後あらためて契約する」のかで意味が変わります。どちらの整理にするかを決め、契約書の文言も一方に寄せておきます。
「更新の有無」はどう書く? 3つの書き方と選び方
更新の有無の欄は、実務上おおむね次のいずれかで書きます。(1)自動的に更新する、(2)更新する場合があり得る、(3)契約の更新はしない。迷ったら、まず「この人の仕事は、契約終了日以降も続く見込みがあるか」を考えてください。続く見込みがないなら(3)、見込みはあるが確約できないなら(2)、が自然な選択です。
(1)の「自動更新」は、契約書にそう書くと、会社側が更新しない判断をしたときに説明が難しくなります。毎年更新する運用を想定していても、実務では(2)の「更新する場合があり得る」を選び、判断基準を明記したうえで、更新のたびに新しい契約書を取り交わす形にするほうが、双方にとって状況が見えやすくなります。
(3)の「更新しない」と書いた場合は、その運用を守ることが前提になります。書面では「更新しない」としながら実際には何度も更新していると、契約書の記載と実態がずれ、更新への期待があったと評価される場面が出てきます。書き方と運用は必ずセットで考えてください。
更新の判断基準と更新上限|曖昧にしないための書き方
「更新する場合があり得る」と書いたら、次は何を見て判断するかを書きます。よく使われるのは、契約期間満了時の業務量、勤務成績・勤務態度、能力、会社の経営状況、担当している業務の進捗状況などです。抽象的な一語だけでなく、複数の項目を並べておくと、更新しない判断をしたときの説明がしやすくなります。
更新の上限を設ける場合は、「更新は通算◯回まで」「通算の契約期間は◯年まで」といった形で、最初の契約の時点から書いておきます。途中から上限を新設したり、上限を短くしたりする場合は、あらかじめ理由を説明することが求められる場面があります。上限を設けるかどうかは、後から変えると説明が難しくなるため、最初に決めてください。
有期契約が更新されて通算の契約期間が一定の年数を超えると、働く人から無期労働契約への転換を申し込める仕組みがあります(無期転換ルール)。この申込権が発生する契約更新のタイミングでは、その旨と転換後の労働条件を明示する取り扱いが求められています。自社の契約が該当しそうな時期に入ってきたら、通算期間の数え方を含めて社会保険労務士に確認しておくと安心です。
労働条件通知書と雇用契約書、契約社員にはどちらを出す?
労働条件を書面などで明示することは法令上求められている一方、契約書として双方が署名・記名押印する形式そのものは法令が求めているものではありません。実務では、「労働条件通知書兼雇用契約書」として1枚にまとめ、会社と本人が両方署名する形がよく使われます。有期雇用では更新のやり取りが発生するため、合意した記録が残る形にしておくほうが安全です。
電子交付も、本人が希望し、出力して書面にできる方法であれば認められる形が整備されています。メール添付やクラウド型の契約サービスを使う場合は、本人の希望を確認した記録と、受け取った記録が残るようにしてください。サービスを比較する際は、電子契約の保存方法や、労務管理システムとの連携の有無を見ると選びやすくなります。料金や機能は変わるため、各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。
なお、契約書に書いた内容と、就業規則やパートタイム・有期雇用労働者向けの規程の内容が食い違うと、どちらが適用されるかで争いになります。人を採用する前に、規程側で有期雇用者の扱い(賞与、退職金、休暇など)を整理しておくと、契約書を書くときに迷いません。
更新するとき・更新しないときの手順
更新するときは、契約期間が終わる前に、新しい契約期間の契約書(労働条件通知書兼雇用契約書)を用意し、本人と取り交わします。前の契約から変わる点(賃金、勤務時間、業務内容、更新上限の残り回数など)があれば、変更点として明確に伝えます。期間満了後に「なんとなく働き続けている」状態は、あとで条件を確認できなくなるので避けてください。
更新しないとき(雇止め)は、一定の条件に当てはまる有期契約について、期間満了日より前に予告することが求められる取り扱いがあります。予告の要否や日数の考え方は、更新回数や通算期間によって変わるため、厚生労働省の資料で基準を確認するか、社会保険労務士に相談してください。本人から理由の証明を求められたときに提示できるよう、判断の経緯を残しておくことも大切です。
何度も更新を重ねていたり、更新手続きが形だけになっていたりすると、雇止めが認められにくくなる場面があります。更新のたびに面談し、契約書を取り交わし、判断基準に沿って評価を伝える——この運用の積み重ねが、いざというときの説明材料になります。
契約期間の上限、更新上限の設定、無期転換への対応、雇止めの進め方は、会社の状況によって適切な組み立てが変わります。有期雇用を初めて導入するとき、更新が重なってきたとき、雇止めを検討するときは、社会保険労務士や弁護士に個別に相談し、自社の契約書の文言を点検してもらうことをおすすめします。
よくある質問
雇用契約書に「自動更新」と書いてもよいですか?
書くこと自体はできますが、会社が更新しない判断をしたときに、契約書の記載と食い違うため説明が難しくなります。実務では「更新する場合があり得る」としたうえで判断基準を明記し、更新のたびに契約書を取り交わす運用が取りやすい形です。運用方針に迷う場合は社会保険労務士にご相談ください。
契約期間は「1年間」という書き方でも大丈夫ですか?
開始日と終了日を日付で書くほうが確実です。「1年間」だけでは起算日や終了日の解釈が分かれることがあり、更新手続きのタイミングもずれます。「2026年4月1日から2027年3月31日まで」のように日付で固定してください。
更新の上限は、あとから設定できますか?
途中から上限を新たに設けたり短くしたりする場合は、あらかじめ理由を説明することが求められる取り扱いがあります。更新への期待という観点でも扱いが難しくなるため、上限を設けるなら最初の契約時点で決めておくのが基本です。個別の事情がある場合は専門家に確認してください。
契約社員には労働条件通知書と雇用契約書のどちらを渡せばよいですか?
労働条件の明示が求められているので、最低限は労働条件通知書が必要です。有期雇用では更新の合意を残したいため、「労働条件通知書兼雇用契約書」として双方が署名する形にしておくと、後から確認しやすくなります。