記帳代行の費用相場|法人が丸投げするときの料金の決まり方
「記帳代行って結局いくらなの?」という疑問は、金額だけを探しても答えが出にくいものです。記帳代行の料金は、仕訳の数・資料の渡し方・決算申告まで含むかどうか、といった条件の組み合わせで決まるからです。この記事では、料金が何によって変わるのかという仕組みを整理したうえで、依頼先の選び分けと、比較できる見積もりの取り方を順番に説明します。具体的な金額は各社の公式サイトや見積もりで確認する前提で、判断の材料をそろえていきましょう。
この記事の結論
- 記帳代行の料金は、月あたりの仕訳数、領収書や通帳をどんな形で渡すか、決算申告や消費税申告まで含むかどうかで主に決まります。
- 依頼先は税理士事務所・記帳代行専門会社・商工会や商工会議所などがあり、決算申告まで一括で任せたい法人は税理士事務所が基本の選択肢になります。
- 相場を調べるより、自社の仕訳数と資料の形をそろえて2〜3社に同じ条件で見積もりを依頼するほうが、実際に払う金額に早くたどり着けます。
記帳代行の費用は何で決まるのか
記帳代行の料金表を見ると、多くの場合「月の仕訳数◯件まで」という区切りで段階的に価格が設定されています。仕訳数とは、通帳の入出金・現金の支出・売上の計上といった、会計データとして入力される1行ごとの件数のことです。取引が多い会社ほど入力の手間が増えるため、ここが料金の土台になります。
次に効いてくるのが、資料をどんな形で渡すかです。領収書を封筒にまとめて郵送する、月ごとに仕分けしてスキャンする、銀行やクレジットカードのデータ連携を済ませておく、といった違いで作業量が変わります。こちらで整えるほど安くなる方向に働き、封筒に入れて丸投げするほど手間賃が乗る、と考えると分かりやすいでしょう。
三つ目が、どこまでを頼むかという範囲です。月々の記帳だけなのか、試算表の作成や説明まで含むのか、決算書の作成と法人税の申告まで頼むのか。さらに消費税の申告、年末調整、給与計算、源泉所得税の手続きなどは別料金として設定されていることが多く、合計額はここで大きく動きます。
「1仕訳いくら」と「月額いくら」の違い
記帳代行の料金の出し方には、大きく2つのパターンがあります。ひとつは1仕訳あたりの単価に件数を掛ける従量制、もうひとつは仕訳数の上限を決めた月額固定制です。従量制は取引が少ない月の負担が軽くなる一方、繁忙期に金額が読みにくくなります。固定制は予算が立てやすい反面、取引が少ない月は割高に感じることがあります。
どちらが向くかは、取引量の波で判断します。毎月おおむね同じ件数なら月額固定制、季節で売上が大きく動く業種や、案件単位で動く業種なら従量制も検討の余地があります。ただし固定制でも上限件数を超えると超過分が加算される契約が一般的なので、「上限を超えたらどうなるか」は契約前に必ず確認しておきたいところです。
なお「安い」と表示されている料金は、記帳のみで決算申告を含まない前提だったり、資料をデータで渡すことが条件だったりします。表示価格だけを横に並べても比較にならないため、後述する条件をそろえた見積もりが必要になります。
依頼先はどう選び分けるか(税理士・記帳代行会社・商工会)
まず前提として、法人税の申告書の作成を業として代理できるのは税理士です。記帳代行専門の会社は入力作業を担いますが、申告まで一括で任せたい場合は税理士事務所と契約するか、記帳代行会社と提携する税理士に別途依頼する形になります。ここを最初に押さえると、選択肢が整理しやすくなります。
判断の順番としては、①決算申告まで丸投げしたいか → はいなら税理士事務所を軸に検討、②入力作業だけを外に出して申告は既存の顧問税理士に任せたいか → はいなら記帳代行専門会社、③小規模で地域の支援も受けたいか → 商工会・商工会議所の記帳指導や記帳代行の利用条件を確認、という流れが分かりやすいでしょう。商工会等は会員向けのサービスとして提供されていることが多く、対象者や取扱範囲が地域ごとに異なります。利用できるかどうかは、地元の商工会・商工会議所に直接問い合わせてください。
もうひとつ、クラウド会計を自社で使い、税理士にはチェックと決算申告だけを頼む「自計化」という選択もあります。社内に入力できる人がいて、取引がシンプルなら、記帳代行分の費用を抑えられる可能性があります。逆に、社長一人で営業も現場も回している会社では、自分で入力する時間のコストのほうが高くつくこともあります。
見積もりを取る前に用意するもの
比較できる見積もりをもらうには、条件をそろえて伝えることが近道です。問い合わせの前に、次の情報を手元にまとめておきましょう。直近数か月分の通帳の入出金件数(おおよそで構いません)、法人カードや電子マネーの利用件数、月の売上請求書の枚数、仕入・経費の領収書の枚数、従業員数と給与計算の有無、消費税の課税事業者かどうか、現在使っている会計ソフトの有無です。
そのうえで、資料の渡し方も一緒に伝えます。「紙の領収書を月1回郵送」「スキャンしてクラウドに上げる」「銀行とカードはデータ連携済み」では見積もりが変わります。もし連携を増やす余地があるなら、その前提でも試算してもらうと、費用を下げる余地が見えます。
依頼先には、同じ内容を書いたメールを2〜3社に送るのが実務的です。口頭で条件が揺れると比較になりません。返ってきた見積もりは、月額・決算申告料・消費税申告料・年末調整などのオプションに分けて表にすると、年間いくらかかるのかが見えてきます。
契約前に確認したい5つのポイント
第一に、年額での総額です。月額だけを見ていると、決算月にまとまった申告報酬が発生して想定外になりがちです。記帳の月額×12+決算申告+消費税申告+年末調整、という形で一年分を出してもらいましょう。
第二に、仕訳数の上限と超過時の扱い。第三に、資料の締切と納品のタイミング(何日までに渡せば、いつ試算表が出るか)。第四に、担当者と連絡手段(チャットが使えるか、質問に何営業日で返ってくるか)。第五に、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応をどちらがどこまで担うかの分担です。電子取引データの保存や適格請求書の確認をどう回すかは会社ごとに事情が違うため、要件の詳細は国税庁など所管官庁の資料もあわせて確認してください。
あわせて、解約や乗り換えのときに会計データを引き渡してもらえるかも聞いておくと安心です。会計ソフトの契約名義が事務所側になっていると、あとでデータを持ち出しにくいことがあります。将来、自社で入力に切り替える可能性があるなら、最初に確認しておきたい点です。
費用を抑えたいときに、先に手をつける順番
料金は作業量で決まるので、作業量を減らせば下がる余地があります。手をつける順番としては、①事業用の銀行口座とクレジットカードを分けて生活費と混ぜない、②ネットバンキングとカードのデータ連携を設定する、③現金払いをできるだけ減らす、④請求書や領収書の保存場所を一か所に決める、の順が取り組みやすいでしょう。現金取引が多いほど手入力が増え、費用にも跳ね返ります。
逆に、安さだけで選ぶと後から困ることもあります。入力は終わっていても、試算表の内容について質問できない、決算前にしか連絡が取れない、といった状態では、数字を経営に使えません。金額と、相談できる頻度・スピードのバランスで判断してください。
料金の目安は事務所や地域、会社の状況によって幅があります。この記事の考え方をもとに自社の条件を整理したら、実際の金額は各事務所の公式サイトや見積もりで確認するのが確実です。そのうえで、記帳の範囲・決算申告・消費税やインボイスの扱いをどう設計するかは会社ごとに判断が分かれますので、契約前に税理士に相談し、自社に合った形を一緒に決めることをおすすめします。
よくある質問
記帳代行は丸投げできますか?
領収書や通帳のコピーをまとめて渡す形で受けている事務所は多くあります。ただし、渡す資料が整理されていないほど作業量が増え、その分が料金に反映されることが一般的です。どこまで自社で整えるかによって金額が変わるため、見積もり時に資料の渡し方を具体的に伝えてください。
記帳代行だけを頼んで、申告は自分でできますか?
入力だけを外部に任せ、申告は自社で行う形も可能です。ただし法人税の申告書は判断を伴う部分が多く、消費税の扱いも会社によって異なります。作成したデータのチェックや申告については、税理士に相談したうえで進めるほうが安心です。
商工会の記帳代行は誰でも使えますか?
商工会・商工会議所の記帳に関するサービスは、会員向けや小規模事業者向けとして提供されていることが多く、対象や取扱範囲は地域によって異なります。法人が利用できるか、決算申告まで含むかも一律ではありません。お住まいの地域の商工会・商工会議所に直接確認してください。
クラウド会計を使えば記帳代行は不要になりますか?
銀行やカードの連携で入力の手間はかなり減りますが、勘定科目の判断や決算に向けた整理は残ります。社内に入力できる人がいて取引がシンプルなら自社対応も選択肢ですが、時間を本業に使いたい場合は外注のほうが結果的に負担が軽いこともあります。