法人で使える無料・低価格の会計ソフト|無料プランと買い切りの注意点

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくったばかりで、売上もまだ数件。それなのに会計ソフトに毎月お金を払うのは気が重い——そう感じて「会計ソフト 法人 無料」と検索する方はとても多いです。結論から言うと、法人向けにも無料で試せる形や、費用を抑えた選択肢は存在します。ただし「無料で始められること」と「決算まで無料で終わること」は別の話です。この記事では、無料プラン・買い切り型・エクセルという3つの選択肢を、法人の実務に耐えるかどうかという視点で比べ、どの条件ならどれを選ぶかの順番を整理します。

この記事の結論

  • 法人向け会計ソフトには無料で試せる期間や機能制限付きのプランもありますが、決算書や法人税申告まで含めて無料で完結できるとは限らないため、年間を通した使い方で判断します。
  • 買い切り型の会計ソフトは支払いが一度で済む一方、税制改正や制度対応のたびに新しいバージョンを買い直す前提になることが多く、長く使うほど総額では差が縮まります。
  • 取引が月数件で預金口座も1つなら当面はエクセルでも回りますが、取引が増える、人を雇う、消費税の申告が必要になる、のいずれかが見えた時点でソフトへの移行を検討するのが現実的です。

法人が無料で使える会計ソフトは本当にあるのか

「法人向けで完全に無料の会計ソフト」を探すと、実際には3つのタイプに分かれます。一定期間だけ全機能を使える無料お試し、機能や仕訳件数に制限をつけた無料プラン、そして有志が公開しているフリーソフトやオープンソースの会計システムです。いずれも「お金を払わずに帳簿をつけ始める」ことはできます。

問題は、そのまま決算まで走り切れるかどうかです。法人は個人事業と違い、貸借対照表と損益計算書に加えて株主資本等変動計算書や勘定科目内訳明細書なども必要になり、これらを出力できるかはソフトによって差があります。無料プランでは決算書の出力や過去データの閲覧が制限されている場合もあるため、申し込む前に「決算書が出せるか」「何年分のデータを保持できるか」を各社の公式サイトで確認してください。

もうひとつ見落としやすいのが、無料の範囲でも料金体系そのものは変わりうる、という点です。料金やプラン内容は改定されることがあるため、この記事では具体的な金額に触れません。比較の際は必ず提供元の最新情報をご確認ください。

無料プランで足りる会社、足りない会社の分かれ目

無料プランや安価なプランで当面足りるのは、だいたい次のような会社です。取引先が数社で請求書の発行も月に数枚、経費の支払いは法人カード1枚と口座1つ、従業員はおらず役員報酬だけ、そして消費税は当面申告の対象にならない見込み。この条件がそろっていれば、仕訳の量が少ないので機能制限にぶつかりにくくなります。

逆に、次のどれかに当てはまると無料の枠では窮屈になりがちです。従業員を雇って給与計算と社会保険の処理が発生する、在庫を持って売上原価を計算する、複数の口座やカードを使い分けている、インボイス制度に対応した請求書を継続的に発行している、部門別や案件別に利益を見たい。こうした処理は仕訳数が一気に増え、給与や請求といった周辺機能との連携の有無が作業時間を大きく左右します。

判断の順番としては、①今期の仕訳がおおよそ何件になりそうか、②決算と申告を自分でやるのか税理士に頼むのか、③1年以内に人を雇う予定があるか、の3つをこの順に確認します。①が少なく②が自分で、③が「ない」なら無料枠から始めて構いません。どれか1つでも逆なら、最初から有料プランを前提に選んだほうが結局は手戻りが少なくなります。

買い切り型の会計ソフトは法人に向くのか

買い切り型(パッケージ型)は、一度購入すればその後の支払いが発生しない形式です。毎月の固定費を増やしたくない、インターネットに接続しない環境で使いたい、自社のパソコンにデータを置いておきたい、といった希望がある会社には合理的な選択肢になります。

注意したいのは、会計は制度が動き続ける分野だという点です。消費税の扱い、電子帳簿保存法に関する要件、帳票のレイアウトなどが変われば、ソフト側の対応も必要になります。買い切り型では、その対応が新しいバージョンの購入や有償アップデートという形になることが多く、「一度買えば一生使える」とは考えないほうが安全です。数年単位で見ると、クラウド型の継続課金との差は思ったより小さくなることがあります。

もう一点、買い切り型はデータが手元のパソコンに保存されるため、バックアップと引き継ぎを自分で管理する必要があります。パソコンの故障、買い替え、税理士とのデータ受け渡しをどうするかまで含めて考え、社内に「ファイルを管理できる人」がいるかを基準にすると判断しやすくなります。

エクセルで法人の帳簿をつけるのはありか

取引が月に数件で、現金取引がなく、決算は税理士にまとめて依頼する——この条件なら、期中はエクセルで取引を記録し、決算時にまとめて仕訳を起こす運用も現実にはあります。費用をかけずに始められ、表計算に慣れていれば入力も速いという利点があります。

一方で、エクセルには複式簿記のチェック機能がありません。貸借が合わない、同じ取引を二重に入れた、といった誤りが最後まで気づかれないことがあります。また、帳簿を電子データで保存する場合の要件は電子帳簿保存法に関わるため、どの形で保存すれば要件を満たすのかは国税庁の資料を確認するか、税理士にご相談ください。自己流のファイル管理のまま数年分をためると、あとから整理する手間が大きくなります。

実務的なおすすめの進め方は、「エクセルは一時的な手段」と割り切ることです。設立初年度の数か月だけエクセルで凌ぎ、売上の入金が安定した時点でソフトに移す。その際、エクセル側の列を日付・相手先・金額・摘要・勘定科目の順で作っておくと、ソフトへの取り込みやすさが上がります。

費用を抑えつつ選ぶときの比較の順番

価格だけを並べて選ぶと、あとから「必要な機能が別料金だった」となりがちです。比較は次の順番をおすすめします。第一に、決算書と法人税申告に必要な帳票が出せるか。第二に、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込めるか。第三に、税理士と同じデータを見られるか。第四に、給与・請求・経費精算といった周辺機能へ広げられるか。最後に価格、という順です。

第三の「税理士と共有できるか」は、費用対効果に直結します。顧問税理士がいる、あるいは今後依頼する予定があるなら、先に「どのソフトなら対応できますか」と聞いてしまうのが早道です。税理士側が使い慣れたソフトに合わせるだけで、資料の受け渡しや質問のやり取りが減ります。

また、価格を比べるときは月額だけでなく「1年間の総額」と「2年目以降の条件」を見てください。初年度が割引される形式、年払いと月払いで条件が異なる形式など、提供の仕方は各社で違います。金額は変わりうるので、最終的には各社の公式サイトで最新の料金とプラン内容を確認したうえで決めてください。

乗り換えを前提に、最初の1年をどう設計するか

費用を抑えたい会社ほど、「あとで乗り換える」ことを最初から想定しておくと安心です。具体的には、仕訳データをCSVなどの汎用形式で書き出せるか、領収書や請求書の原本(またはスキャンデータ)をソフトとは別の場所にも保管しているか、この2点を最初に確認します。これができていれば、ソフトを変えても過去が消えません。

乗り換えのタイミングとして選びやすいのは、期首です。期の途中で変えると、同じ年度のデータが2つのソフトに分かれてしまい、決算のときに突き合わせが必要になります。今のやり方に不満があっても、決算月をまたぐまで待ったほうが作業は楽です。

なお、どの形式の帳簿をどう残すか、消費税の取り扱いをどうするかは、会社の状況によって扱いが変わることがあります。判断に迷う部分や、申告に直結する論点については、税理士にご確認ください。設立直後の段階で一度相談しておくと、その後のソフト選びもぶれにくくなります。

よくある質問

法人でも無料の会計ソフトだけで決算まで終えられますか。

取引が少なく、決算書の出力に対応したプランであれば、形式的に帳簿と決算書を作ること自体は可能な場合があります。ただし法人税の申告書作成は会計ソフトとは別の作業になることが多く、無料の範囲で完結するとは限りません。対応範囲は提供元の公式サイトで確認し、申告の要否や内容は税理士にご相談ください。

買い切り型とクラウド型、どちらが安く済みますか。

使う年数と、制度改正への対応をどう扱うかで変わります。買い切り型は支払いが一度で済む反面、対応のたびに新しいバージョンが必要になることが多く、数年使うと差は縮まる傾向があります。金額は改定されることがあるため、各社の公式サイトで最新の条件を比べてください。

エクセルで作った帳簿は法人の帳簿として認められますか。

複式簿記の要件を満たし、必要な期間保存されていれば帳簿として扱われることがありますが、電子データで保存する場合は電子帳簿保存法に関わる要件の確認が必要です。詳細は国税庁の資料を確認するか、税理士にご相談ください。取引が増えたらソフトへの移行を検討すると安全です。

無料プランから有料プランに変えるべきタイミングはいつですか。

従業員を雇う、消費税の申告が視野に入る、口座やカードが複数になる、のいずれかが起きたときが目安です。仕訳の件数が増えると入力の手間とミスの確率が上がるため、自動取込や税理士とのデータ共有ができる環境に切り替えると負担が下がります。切り替えは期首に合わせると決算時の手間が減ります。

あわせて読みたい

「会計・税務」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。