記帳代行サービスの比較|法人が外注先を選ぶときの判断軸

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

記帳代行は「どこが安いか」で選ぶと、あとで税務申告や月次決算の場面でつまずきやすい業務です。比較サイトを何周しても決まらないのは、比較する軸が定まっていないからかもしれません。この記事では、法人が記帳代行の外注先を選ぶときに、どの順番で何を見ればよいのかを整理します。

この記事の結論

  • 記帳代行の外注先は、税務申告まで一括で任せたいか、記帳だけを切り出したいかで、まず候補の型が分かれます。
  • 比較するときは料金だけでなく、証憑の渡し方、会計ソフトの指定、納品までの日数、税務申告の対応範囲の4点を同じ条件で並べて確認します。
  • 記帳代行会社は税務申告書の作成・代理を行えないため、申告まで必要な場合は税理士または税理士法人との契約が前提になります。

記帳代行サービスの比較は、まず「型」を3つに分けるところから

記帳代行と一口に言っても、提供している主体はいくつかの型に分かれます。ひとつは税理士事務所・税理士法人が顧問業務の一部として記帳を引き受ける型。TKC系の会計事務所や辻・本郷税理士法人のような大手税理士法人、エフアンドエムのように会計事務所と連携してバックオフィス支援を行う会社などが、ここに近い立ち位置です。

もうひとつが、記帳入力そのものを専門に請け負う代行会社の型です。メリービズやストリームド、記帳代行ドットコムのように、領収書や通帳データを預かって仕訳データに変換することを主軸にしているサービスがこれにあたります。税務申告は自社の顧問税理士に任せ、入力作業だけを切り出したい会社と相性がよい型です。

三つ目が、クラウド会計ソフトと一体になった型です。freeeや弥生の周辺には、そのソフトの利用を前提にした記帳代行・記帳支援のメニューやパートナー事務所の紹介があります。すでに使っているソフトから動かしたくない場合は、この型から探すと移行の手間が減ります。料金体系や提供内容は各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

最初に決めるのは「申告まで含めるか」。ここで候補が半分に絞れる

比較の一歩目は、価格表を並べることではありません。自社が外注したいのは記帳だけなのか、法人税申告書の作成や税務相談まで含めてなのかを決めることです。税務申告書の作成や税務代理は税理士の独占業務とされているため、記帳代行専門の会社に申告までを任せることはできません。

顧問税理士がすでにいて、月々の入力だけが重荷になっているなら、記帳専門の代行会社かクラウド会計連携型が候補になります。逆に、これから会社をつくる、あるいは顧問がいない状態なら、記帳と申告を同じ窓口にまとめられる税理士事務所型のほうが、やり取りの手間は少なくなりがちです。

判断に迷うときは、一年のうちで自分が一番困る場面を思い浮かべてみてください。毎月の入力でつまずいているのか、決算期に何を出せばいいか分からなくなるのか。前者なら記帳の切り出し、後者なら申告込みの契約から見ていくと、候補が自然に絞れます。

見積もりを取るとき、同じ条件で並べるべき4項目

複数社を比べるなら、次の4項目を同じ言い方で聞いてください。第一に証憑の渡し方です。紙の領収書を郵送するのか、スキャンやスマホ撮影で送るのか、銀行口座やカードの明細を自動連携できるのか。ここが自社の運用と合わないと、外注したのに社内作業が減らないという結果になります。

第二に会計ソフトの指定です。先方指定のソフトしか使えないのか、自社が使っているソフトにそのまま入力してくれるのか。ソフトを乗り換える場合は、過去データの移行と、社員が画面に慣れる時間も見ておきます。第三に納品までの日数です。月次で翌月いつまでに仕訳が上がるのかは、資金繰りの把握や融資面談の準備に直結します。

第四に対応範囲の線引きです。仕訳入力だけなのか、証憑と帳簿の突合、固定資産の管理、給与や年末調整、請求書発行の代行まで含むのか。追加作業が発生したときにどう課金されるのかも、契約前に書面で確認しておくと後で揉めにくくなります。料金の水準は会社ごとに異なるため、必ず自社の取引量を伝えたうえで見積もりを取りましょう。

「記帳代行 AI」「オンライン記帳代行」をどう評価するか

近年は、領収書の読み取りや仕訳の自動推測にAI・OCRを使うサービスが増えています。オンライン完結型は、書類の郵送が不要で、地方の会社でも都市部の事業者に依頼できる点が利点です。取引のパターンが定型的で、電子データでのやり取りが多い会社ほど、この型の効果を感じやすい傾向があります。

一方で、自動化が向かない取引もあります。現金商売で紙の証憑が多い、業種特有の勘定科目の使い分けがある、部門別や案件別に集計したいといった場合は、人の手による確認が入る体制かどうかを聞いておくと安心です。読み取り結果を誰が最終チェックするのかは、必ず確認したい点です。

また、電子データで受け取った請求書や領収書の保存方法については、電子帳簿保存法の考え方が関わります。外注先がどの形式で保存し、自社はどこまで保管が必要になるのか、要件の詳細は国税庁の資料を確認するか、税理士に相談してください。インボイス制度に関連する記載事項の確認をどちらが担うのかも、あわせて決めておくとよいでしょう。

依頼までの流れと、渡す資料の準備

進め方はおおむね共通しています。まず、直近の月の取引量を数えます。銀行の入出金件数、クレジットカードの明細件数、月にたまる領収書と請求書の枚数、これだけあれば見積もり依頼の材料になります。年商や従業員数よりも、この件数のほうが実務量を正しく伝えられます。

次に、2〜3社に同じ条件で見積もりを依頼します。このとき、使用中の会計ソフト、決算月、顧問税理士の有無、いつから開始したいかを添えます。返ってきた内容を、料金だけでなく前章の4項目で並べて比較してください。開始月は期首か、少なくとも月初に合わせると、途中からの引き継ぎによる混乱を避けやすくなります。

契約が決まったら、渡す資料を揃えます。一般には、預金通帳の写しまたはネットバンキングの明細、クレジットカードの利用明細、売上に関する請求書の控え、経費の領収書・請求書、給与の支払データ、前期の決算書と総勘定元帳といったあたりです。加えて、社内で「誰が月末に何を送るか」を一人決めておくと、運用が止まりにくくなります。

よくある失敗と、契約前のチェックポイント

ありがちなのが、安さで選んだ結果、質問への回答が遅く、決算直前に不明点がまとめて返ってくるケースです。月次で不明な取引をどう確認するのか、チャットなのかメールなのか、返答の目安はどのくらいかを、契約前に聞いておきましょう。担当者が固定なのか、都度替わるのかも確認したい点です。

もうひとつは、解約時にデータが手元に残らないというトラブルです。会計データの所有者は自社であること、解約時にどの形式で受け取れるのかを、あらかじめ書面で確認しておくと安心です。先方指定のソフトを使う場合ほど、この点が重要になります。

評判を調べるときは、レビューの星の数よりも「どんな規模・業種の会社が、どの業務を任せて、何が改善したか」が書かれているものを読むと参考になります。自社と条件が違う会社の感想は、そのまま当てはまらないことが多いためです。可能であれば、同業の経営者に直接聞くのが一番確かです。

最終的な判断は、税理士と一度すり合わせてから

記帳の外注は、単なる作業の切り出しに見えて、月次決算の精度や税務申告の準備、金融機関に見せる資料の質にまでつながります。どこまでを外に出し、どこを社内に残すかの線引きは、会社の成長段階によっても変わります。

顧問税理士がいる場合は、候補に挙げたサービスを伝えて、データ連携ができるか、申告時に追加作業が発生しないかを事前に確認してください。顧問がいない場合は、記帳と申告をまとめて相談できる税理士・税理士法人に、まず一度話を聞いてみるのが近道です。

消費税の取扱いや、電子データの保存方法、役員報酬などの論点は、状況によって判断が分かれます。「これで大丈夫か」と思ったときは、自己判断で進めず、税理士にご確認ください。

よくある質問

記帳代行会社と税理士事務所、どちらに頼むべきですか。

すでに顧問税理士がいて入力作業だけを減らしたいなら記帳代行会社、申告や税務相談まで一つの窓口にまとめたいなら税理士事務所が向きます。記帳代行会社は税務申告書の作成や税務代理を行えないため、申告が必要な法人は別途税理士との契約が前提になります。

記帳代行の料金はどのくらいかかりますか。

料金は仕訳件数、証憑の渡し方、対応範囲によって大きく変わるため、一律の相場を示すことはできません。自社の月間取引件数を数えたうえで、複数社に同じ条件で見積もりを依頼し、各社の公式サイトで最新の料金体系を確認してください。

クラウド会計ソフトを使っていれば記帳代行は不要ですか。

自動連携で仕訳の候補は作られますが、勘定科目の判断や証憑との突合、決算に向けた整理は人の確認が必要になる場面があります。入力に時間を取られている、月次の数字が締まらないという状態が続くなら、外注を検討する価値があります。

途中で記帳代行を乗り換えることはできますか。

可能ですが、会計データの引き継ぎ形式と、期の途中か期首かで手間が変わります。契約前に解約時のデータ返却方法を確認し、乗り換えるなら期首や決算後のタイミングに合わせると混乱を抑えやすくなります。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。