法人の決算申告を自分でやる|e-Taxと申告ソフトの進め方
ひとり社長や小さな会社では、「決算申告まで自分でやれないか」と考える方が少なくありません。結論から言えば、取引がシンプルな会社なら、会計ソフトと申告ソフト、e-Tax・eLTAXを使って自分で進める道はあります。ただし、提出先は税務署だけではなく、期限を過ぎると不利な扱いを受けることもあります。この記事では、決算日から申告までの流れを時系列で追いながら、どこで判断に迷いやすいか、どんな会社なら自分でやりやすいかを整理します。
この記事の結論
- 法人の決算申告は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、税務署(法人税・消費税)と都道府県・市区町村(地方税)のそれぞれへ申告する必要があります。
- 自分で行う場合は、会計ソフトで決算書を固めたうえで、法人税の申告書はe-Taxまたは申告ソフト、地方税はeLTAXから電子申告するのが一般的な流れです。
- 売上の種類が少なく、在庫や固定資産、外貨取引などが少ない会社ほど自分で完結しやすく、判断の分かれる論点がある年だけ税理士に相談する方法もあります。
法人の決算申告を自分でやる前に、全体像と期限を押さえる
法人の決算申告は、1つの書類を1か所に出して終わりではありません。大きく分けて、税務署に出す法人税(および地方法人税)の申告、消費税の課税事業者であれば消費税の申告、そして都道府県税事務所と市区町村に出す地方税(法人住民税・法人事業税)の申告があります。まず「自分の会社はどこに何を出すのか」を紙に書き出すところから始めると、抜けが起きにくくなります。
期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。3月決算なら5月末、9月決算なら11月末が目安になります。納付の期限も同じタイミングになるため、資金の準備も合わせて考えておく必要があります。
注意したいのは、申告書を作る前に決算を確定させる手続きがあることです。決算書を作り、株主総会(ひとり会社なら株主が1人の総会)で承認を受けたうえで申告する、という順番になります。期限直前に会計処理の迷いが出ると間に合わないため、決算日から1か月を「帳簿を締める期間」、残り1か月を「申告書を作る期間」と決めておくと進めやすくなります。
決算日から申告までの手順:いつ・何を用意して・どこに出すか
まず決算日を過ぎたら、その事業年度の帳簿を締めます。売上と仕入の計上漏れ、未払費用や前払費用、減価償却費、棚卸資産の計上、役員報酬や社会保険料の処理などを確認し、試算表の残高が説明できる状態にします。通帳残高と帳簿残高が一致しているか、売掛金・買掛金の中身が相手先別に言えるか、をチェックポイントにすると漏れに気づきやすくなります。
次に決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)を作成し、株主総会で承認します。会社法上の手続きなので、議事録も残しておきます。あわせて、申告書に添付する勘定科目内訳明細書と法人事業概況説明書を用意します。これらは決算書の数字を相手先別・内容別に分解したものなので、帳簿がきちんと整理されていれば埋められます。
最後に申告書を作成して提出します。法人税は税務署へe-Taxで、地方税は都道府県税事務所と市区町村へeLTAXで送信するのが一般的な流れです。消費税の課税事業者であれば、消費税の申告書も税務署に提出します。送信後は受信通知(メッセージボックスの記録)を必ず保存し、納付まで済ませて一区切りです。
e-Taxで法人税を申告するには?WEB版とソフト版の違い
e-Taxには、ブラウザから使うWEB版と、パソコンにインストールして使うe-Taxソフトがあります。法人の場合、まず電子申告の利用者識別番号を取得し、法人の電子証明書(商業登記電子証明書やマイナンバーカード等、利用できるものは国税庁の案内を確認してください)を準備するところから始まります。この初期設定に時間がかかりやすいので、決算期末の前に済ませておくと安心です。
WEB版は、届出や納税手続きなど扱える手続きが決まっており、法人税の申告書一式をここだけで作り切ろうとすると使いにくい場面があります。別表や添付書類が多くなる法人税申告では、インストール型のe-Taxソフト、または市販・クラウドの申告ソフトで申告データを作り、e-Taxで送信する形が現実的です。どの方式が自社の手続きに対応しているかは、国税庁のe-Tax公式サイトで最新の案内を確認してください。
地方税はeLTAX(エルタックス)という別の仕組みを使います。国税と地方税で入り口が違う点は、初めての人がつまずきやすいところです。なお、資本金の規模など一定の条件に当てはまる法人は電子申告が義務とされる制度があります。自社が対象かどうかは、国税庁・地方税共同機構の資料で確認しておきましょう。
法人税の申告ソフトはどう選ぶ?迷ったときの見る順番
申告ソフトを選ぶときは、次の順に見ると絞り込みやすくなります。第一に、法人税・地方税・消費税のどこまで対応しているか。第二に、今使っている会計ソフトの決算数値を取り込めるか。第三に、e-Tax・eLTAXへの電子申告に対応しているか。第四に、勘定科目内訳明細書や事業概況説明書まで作れるか。ここが揃っていないと、結局どこかを手入力することになります。
次に自社の事情を重ねます。減価償却資産が多い会社なら償却資産の管理がしやすいもの、消費税の課税事業者なら税区分の集計が確認しやすいもの、というように、自分が毎年つまずきそうな箇所を基準にします。無料で使える国税庁のe-Taxソフトで完結させる方法もありますが、別表の作成をどこまで自力でやれるかで向き不向きが分かれます。
料金やプラン内容は各社で変わるため、必ず各サービスの公式サイトで最新の情報を確認してください。判断に迷ったら、まず体験版や無料期間で「自社の決算書の数字を実際に入れてみる」のがいちばん早い比較方法です。画面の用語が理解できるかどうかが、そのまま自力申告の可否の目安になります。
自分でやれる会社・税理士に相談したほうがよい会社の見分け方
自分で進めやすいのは、売上の種類が少なく、取引先も限られ、在庫や固定資産が少ない会社です。役員が1人で従業員がいない、現金取引がほとんどない、借入や補助金がない、といった条件が重なるほど、判断すべき論点が減ります。日々の記帳が月次で追いついていることも大切な条件です。
一方で、次のような事情がある年は、税理士への相談を検討したほうが安心です。設立初年度で処理の前提が固まっていない、繰越欠損金や税額控除を使いたい、不動産や高額な設備を取得した、株主や役員が変わった、消費税の課税事業者になった初年度、外注や海外との取引が増えた、といったケースです。これらは扱いを誤ると、後から修正が必要になることがあります。
現実的な折衷案として、記帳と決算書作成は自社で行い、申告書のチェックだけ専門家に依頼する方法もあります。また、期限に間に合わない場合の取り扱いや、期限後申告の影響については個別事情で変わるため、早めに税務署または税理士に相談してください。「今年は自分で、論点が出た年だけ相談する」と決めておくと、無理なく続けやすくなります。
申告が終わったあとにやること
電子申告の送信が完了したら、受信通知と申告書の控えをPDFなどで保存します。金融機関の融資審査や補助金の申請で、申告書の控えと受付結果の提示を求められることがあるためです。紙に印刷するかどうかは自由ですが、少なくともデータは会社の共有フォルダなど、翌年も探せる場所に置いておきます。
納付も忘れずに行います。電子納税、ダイレクト納付、クレジットカード納付など複数の方法があり、利用できる手段や手続きは国税庁・各自治体の案内で確認してください。地方税は自治体ごとに納付先が分かれるため、税務署への納付だけで終わらせないよう注意が必要です。
帳簿や証ひょうの保存についても確認しておきましょう。電子取引のデータ保存など、電子帳簿保存法に関する取り扱いは改正が重なっている分野です。要件の詳細は国税庁の資料を確認し、判断に迷う部分は税理士にご確認ください。決算が終わった直後は、翌期の記帳ルールを見直す良いタイミングでもあります。
よくある質問
法人の決算申告は本当に自分でできますか?
取引がシンプルで、日々の記帳が月次で追いついている会社であれば、会計ソフトと申告ソフト、e-Tax・eLTAXを使って自分で進めることは可能です。ただし、繰越欠損金や税額控除、消費税の判定など判断が分かれる論点がある年は、税理士に確認したほうが安心です。
決算申告の期限はいつですか?
原則として、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に申告と納付を行います。申告の前に決算書を作成し株主総会で承認する手続きが必要なので、決算日から逆算してスケジュールを組んでおくと間に合いやすくなります。
e-Taxだけで法人税の申告は完結しますか?
法人税は国税なのでe-Tax、地方税(法人住民税・法人事業税)はeLTAXと入り口が分かれます。e-TaxのWEB版で扱える手続きは限られるため、別表が多い法人税申告ではe-Taxソフトや市販の申告ソフトで作成して送信する形が一般的です。対応範囲は国税庁の公式サイトで確認してください。
赤字でも決算申告は必要ですか?
利益が出ていない年でも、法人は申告が必要とされるのが原則です。また、法人住民税には所得に関わらず課される部分があり、申告を怠ると不利な扱いを受けることがあります。自社の扱いについては、税務署または税理士にご確認ください。