消費税課税事業者選択届出書の書き方と提出期限|法人の手順
設立したばかりの法人は、条件を満たせば消費税の納税義務が免除される「免税事業者」になることがあります。ただ、設備投資が大きい年や、輸出中心の事業などでは、あえて課税事業者になったほうが結果的に有利になる場面もあります。そのときに出すのが「消費税課税事業者選択届出書」です。この記事では、どんなときに検討するのか、いつまでに、どこへ、何を書いて出すのかを、順番どおりに整理します。
この記事の結論
- 消費税課税事業者選択届出書は、免税事業者にあたる法人があえて消費税の課税事業者になるために、納税地の所轄税務署へ提出する書類です。
- 提出期限は原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までで、設立初年度から適用したい法人はその事業年度の末日までに提出する扱いとされています。
- いったん選択すると原則として2年間は免税事業者に戻れないため、提出前に還付見込みと今後の売上見通しを税理士に確認しておくと安全です。
消費税課税事業者選択届出書とは?どんな法人が出すのか
消費税は、基準期間(原則として2期前の事業年度)の課税売上高が一定額以下などの条件にあてはまる事業者について、納税義務が免除される仕組みがあります。設立したばかりの法人は2期前の売上がないため、資本金の額などの条件次第で、はじめの事業年度から免税事業者として扱われることがあります。
この免税の扱いを自分から外して、課税事業者として消費税の申告と納税(場合によっては還付)を行うために出すのが「消費税課税事業者選択届出書」です。名前が似た書類に「消費税課税事業者届出書(基準期間用・特定期間用)」がありますが、こちらは売上が基準を超えて自動的に課税事業者になったことを知らせる届出で、目的が違います。あえて選ぶのか、条件を満たして自動的になるのか、で使う用紙が変わる点に注意してください。
検討する典型的な場面は、開業初年度に店舗の内装や機械など大きな設備投資をして、支払った消費税が受け取った消費税を上回りそうなケース、輸出売上が中心で売上に消費税が乗らないケースなどです。いずれも「払った消費税のほうが多い」状態になると、申告によって差額が還付されることがあります。ただし、実際に還付になるかどうかは取引内容や計算方法によって変わるため、税理士に試算してもらったうえで判断するのが安全です。
提出期限はいつまで?設立初年度と2期目以降で考え方が違う
原則の期限は、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日までです。たとえば3月決算の法人が、翌期(4月1日から始まる事業年度)から課税事業者になりたい場合は、その前日である3月31日までに提出する、という考え方になります。期首を1日でも過ぎると、その期からの適用は認められないのが原則で、後から「やっぱり還付を受けたい」と言っても遡れません。
一方、設立したばかりの法人が最初の事業年度から課税事業者になりたい場合は、その事業年度の末日までに提出すれば、その事業年度から適用を受けられる扱いとされています。設立日にはまだ「前の課税期間」が存在しないためです。とはいえ、決算直前まで放置すると記入内容の確認や税務署とのやり取りが間に合わないことがあるので、設立登記が終わって取引が動き出したタイミングで判断しておくのが現実的です。
期限の数え方は、事業年度の変更をした場合や、合併・分割があった場合などで例外的な扱いになることがあります。自社の決算月と設立日をカレンダーに並べて、「いつまでに出すか」を先に決めてから書類作成に入ってください。最新の取扱いは国税庁の消費税関係の届出書の案内で確認できます。
書き方は?届出書の主な記入項目を上から順に
用紙は国税庁のサイトからPDFで入手できます。上部には提出日、納税地(本店所在地)、電話番号、法人名、法人番号、代表者の氏名と住所を記入します。納税地は登記上の本店所在地を書くのが基本で、ここが提出先の税務署の判断にもつながります。
本文でいちばん大事なのが「適用開始課税期間」の欄です。いつから課税事業者になるかを、自〇年〇月〇日・至〇年〇月〇日の形で書きます。設立初年度から適用するなら設立日から事業年度末まで、翌期からなら翌期の期首から期末までです。その下に、その課税期間の基準期間(設立初年度など基準期間がない場合はその旨)と、基準期間の課税売上高を記入する欄が続きます。金額がない場合は0と書くか、指示に従って記載します。
さらに、事業内容、設立年月日、事業年度、資本金の額などを記入する欄があります。最後に、提出する理由として「事業を開始した日の属する課税期間から適用を受ける」といった該当項目にチェックを入れます。書き終えたら、適用開始課税期間と事業年度がずれていないか、法人番号が登記のものと一致しているかを声に出して読み合わせると、差し戻しを減らせます。
どこに出す?提出先・提出方法と、控えの残し方
提出先は、納税地(本店所在地)を所轄する税務署です。所轄がどこかは国税庁のサイトの「税務署の所在地案内」で住所から調べられます。提出方法は、窓口への持参、郵送、e-Taxによる電子送信のいずれかです。
窓口に持参する場合は、届出書を2部用意し、1部に収受印をもらって控えとして持ち帰ります。郵送の場合も2部と、切手を貼った返信用封筒を同封すると控えが返送されます。e-Taxで送信した場合は、受信通知(メッセージボックスに届く記録)が提出した証拠になるので、PDFで保存しておきましょう。
控えは、後から金融機関や税理士に「いつから課税事業者か」を示す場面で使います。設立時の登記事項証明書や、法人設立届出書、青色申告の承認申請書などと同じフォルダにまとめ、提出日を書いた一覧をつくっておくと、決算のときに迷いません。届出書の提出そのものに手数料はかかりませんが、郵送費などの実費は自社負担です。
出したあとの注意点|2年間の縛りと、やめるときの手続き
課税事業者選択届出書を出すと、原則として適用開始の課税期間から2年間は免税事業者に戻れないとされています。初年度は設備投資で還付になっても、2年目は売上が伸びて納税になる、という展開は珍しくありません。1年目だけを見て判断せず、2年分の収支をざっくり並べて比べてから出すかどうかを決めてください。
さらに、一定額以上の固定資産(調整対象固定資産や高額特定資産と呼ばれるもの)を取得した場合には、縛りの期間がさらに延びたり、簡易課税制度を選べる時期が制限されたりする取扱いがあります。建物や大型設備の購入を予定しているなら、購入前に税理士へ相談しておくと、後から想定外の納税が生じる事態を避けやすくなります。
課税事業者をやめたいときは「消費税課税事業者選択不適用届出書」を、やめようとする課税期間の初日の前日までに提出します。こちらも期限を過ぎるとその期はやめられません。選択届出書を出した時点で、「いつまで続けるつもりか」「やめるならいつ不適用届出書を出すか」をメモに残しておくのがおすすめです。
インボイス登録との関係|選択届出書が要るケース・要らないケース
インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、登録を受けた事業者は消費税の課税事業者として扱われます。そのため、インボイス登録を目的に課税事業者になる場合は、登録申請書の提出だけで足り、課税事業者選択届出書を別に出す必要がない取扱いになる場面があります。両方出す必要があるかは、登録を受ける時期や経過的な措置の適用有無によって変わります。
判断の順番としては、まず「取引先からインボイスの発行を求められているか」を確認します。求められているならインボイス登録の検討が先で、課税事業者になること自体は登録に伴って決まります。求められていないけれど還付を受けたい、という動機であれば、課税事業者選択届出書のルートを検討する、という整理になります。
どちらのルートでも、いったん課税事業者になれば申告と納税、帳簿・請求書の保存といった実務が発生します。会計ソフトの設定を課税事業者向けに切り替え、税区分を正しく登録するところまでを一連の作業としてスケジュールに入れておくと、決算期に慌てずに済みます。制度の詳細な要件は国税庁のインボイス制度に関する案内で確認してください。
迷ったときの判断の順番と、専門家への相談
最後に、判断の順番を整理します。(1)自社が今どちらか(免税か課税か)を基準期間の売上と資本金の条件から確認する、(2)課税事業者になる動機を「還付を受けたい」か「インボイスを発行したい」かで切り分ける、(3)2年分の消費税の見込みを試算する、(4)出すと決めたら期限から逆算して提出日を決める。この順に見ていくと、必要な書類が自然に決まります。
消費税は、選択のタイミングを1日間違えるだけで、その期の還付が受けられなくなることがある分野です。また、簡易課税との比較、調整対象固定資産の扱い、インボイス登録との重なりなど、自社の状況によって結論が変わる論点が多く含まれます。
提出前に、直近と翌期の売上・仕入の見通しをまとめた資料を用意して、税理士に相談することをおすすめします。設備投資の予定、輸出取引の有無、主な取引先がインボイスを求めているかどうかを伝えると、短い時間でも精度の高いアドバイスを受けやすくなります。手続き自体は自社でできますが、「出すべきかどうか」の判断は専門家と一緒に決めるのが安心です。
よくある質問
消費税の課税事業者選択届出書は、いつまでに出せばいいですか。
原則は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までです。設立したばかりの法人が最初の事業年度から適用を受けたい場合は、その事業年度の末日までに提出すればよいとされています。期限を過ぎるとその期からの適用は認められないのが原則なので、決算月から逆算して早めに準備してください。
「課税事業者選択届出書」と「課税事業者届出書」は何が違いますか。
選択届出書は、免税事業者にあたる法人があえて課税事業者になるために出す書類です。一方の課税事業者届出書は、基準期間や特定期間の課税売上高が基準を超えて自動的に課税事業者になったことを税務署に知らせるためのもので、目的も様式も異なります。自社がどちらに当てはまるか分からない場合は、税務署か税理士に確認しましょう。
一度課税事業者を選んだら、いつから戻れますか。
原則として適用開始から2年間は免税事業者に戻れない取扱いとされています。戻る場合は「消費税課税事業者選択不適用届出書」を、やめようとする課税期間の初日の前日までに提出します。高額な固定資産を取得した場合は、縛りの期間がさらに延びることがあるため、事前に税理士へご確認ください。
インボイス登録をすれば、課税事業者選択届出書は出さなくてよいのですか。
インボイスの登録を受けた事業者は課税事業者として扱われるため、登録申請だけで足りる場合があります。ただし、登録を受ける時期や経過的な措置の適用によって取扱いが変わることがあります。国税庁の案内を確認し、判断に迷うときは税理士に相談してください。