ネット系事業の事業目的の書き方|EC・YouTube・SNS・アプリの記載例
会社をつくるとき、定款に書く「事業目的」で手が止まる人はとても多いです。とくにネット系の事業は、業種名が定まっていないものが多く、「YouTubeの収入って何て書けばいいの?」「せどりは物販でいいの?」と迷いがちです。この記事では、EC・動画配信・SNS運用・アプリ開発・オンラインサロンなど、ネット系事業の事業目的の書き方を、そのまま参考にできる記載例と、書く順番の考え方に分けて整理します。
この記事の結論
- ネット系事業の事業目的は、サービス名(YouTube、Instagramなど)ではなく「動画コンテンツの企画、制作及び配信」のような一般名詞で書くのが基本です。
- ECもせどりも根っこは物販なので「インターネットを利用した各種商品の販売」でまとめ、扱う商材に許認可が必要な場合だけ別項目を立てます。
- 事業目的は登記後も変更できますが、変更には登記申請と登録免許税がかかるため、開業時に「1〜2年以内に手をつけそうな事業」までは入れておくと後が楽です。
そもそも事業目的とは?ネット系事業でとくに迷う理由
事業目的は、会社が何をする会社なのかを定款と登記簿に記載するものです。会社は原則として、ここに書かれた範囲で活動することが想定されています。取引先や金融機関、許認可の窓口は登記簿の事業目的を見るため、実態と大きくずれていると、口座開設や契約の場面で説明を求められることがあります。
ネット系事業が迷いやすいのは、事業の輪郭が新しく、世の中で決まった呼び方がまだ固まっていないからです。「YouTubeの広告収入」「インフルエンサーとしてのPR案件」「noteの有料記事」——これらは日常語では通じますが、定款の文言としてはもう少し抽象度を上げた書き方が一般的です。
もうひとつの理由は、ネット系の人ほど事業が横に広がりやすいことです。動画から始めてグッズ販売、オンライン講座、コンサルティングへ——という流れはよくあります。だからこそ、最初から少し広めに書いておく発想が役立ちます。
ネット系事業の事業目的を書く3つのルール
第一に、サービス名・プラットフォーム名を直接書かないことです。「YouTubeへの動画投稿」と書くと、サービス名が変わったり別の媒体に移ったりしたときに、実態とずれてしまいます。「動画コンテンツの企画、制作、配信及び広告収入の獲得」のように、一般的な言葉に置き換えます。「AI」のような技術名も、「人工知能(AI)を活用した」と補記する形で使われることが多いですが、技術トレンドが変わる可能性を考えると、後段の事業内容の方を丁寧に書いておくと安定します。
第二に、具体と包括を組み合わせることです。柱になる事業は具体的に書き、最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」という一文を置きます。この一文があることで、柱の事業に付随する細かい活動をいちいち書き足さずに済みます。
第三に、数を増やしすぎないことです。10個も20個も並ぶと、何の会社か分からず、かえって取引先や金融機関に説明が必要になることがあります。目安として、柱2〜3個+周辺3〜5個+附帯条項、くらいに収めると読みやすくなります。許認可が必要な事業は、所管官庁が求める文言があることもあるため、該当しそうなら事前に窓口や専門家に確認してください。
事業別の記載例|EC・せどり・ネット販売
ECサイト運営も、せどり(仕入れて転売する形態)も、ネットショップも、法的な性格としてはいずれも物品の販売です。まとめて次のような書き方がよく使われます。「インターネットを利用した各種商品の販売業」「ECサイトの企画、構築、運営及び管理」「各種商品の輸出入及び販売」。自社で商品をつくるなら「◯◯の企画、製造及び販売」を足します。
注意したいのが、扱う商材によって別の手続きが関わる場合です。中古品の売買を反復して行う形態では古物商の許可が必要になることがあり、その場合「古物営業法に基づく古物商」といった項目を入れておくと、許可申請の際にスムーズです。酒類、医薬品・化粧品、食品、中古品などは、それぞれ所管が異なりますので、扱う予定があるなら開業前に所管官庁の案内を確認しておきましょう。
越境ECや海外仕入れを考えているなら、「輸出入業」を最初から入れておくと、後から追加する手間が省けます。今すぐ始めない事業でも、1〜2年以内に手をつけそうなら入れておく、という基準で判断すると迷いにくくなります。
事業別の記載例|YouTube・動画配信・SNS・インフルエンサー
動画やSNSで収益を得る事業は、「コンテンツをつくること」と「広告・PRで対価を得ること」の2軸で考えると整理できます。記載例としては、「動画、音声その他各種コンテンツの企画、制作、配信及び販売」「インターネットを利用した広告及び宣伝に関する事業」「SNSアカウントの運用代行及びコンサルティング」「インフルエンサーマーケティングに関する企画、仲介及び運営」などが挙げられます。
自分が出演する形(いわゆるYouTuber・配信者・インフルエンサー)の場合は、「芸能プロダクション業」「タレント、モデル及びアーティストのマネジメント業」を入れる例もあります。将来、他の演者をマネジメントする可能性があるなら検討の価値があります。ライブ配信の投げ銭やメンバーシップ収入も、コンテンツ配信と広告の項目でおおむねカバーできる考え方が一般的です。
グッズ販売をするなら、前の章の物販の項目を必ず併記しておきましょう。動画だけ書いてグッズ販売を始める、という流れは実際によくあります。また、出版・写真集・電子書籍を視野に入れるなら「書籍、電子書籍その他出版物の企画、制作及び販売」を足しておくと幅が出ます。
事業別の記載例|アプリ開発・AI・オンラインサロン・情報発信
アプリやWebサービスをつくる場合は、「コンピュータソフトウェア及びスマートフォンアプリケーションの企画、開発、販売及び保守」「インターネットを利用した各種情報提供サービス及び情報処理サービス」あたりが基本形です。受託開発もするなら「システム開発の受託」を、SaaS型なら「クラウドサービスの提供」を加えます。
AIを活用する事業は、「人工知能(AI)に関する技術の研究、開発及びコンサルティング」「人工知能を活用したソフトウェアの開発及び提供」といった書き方がよく見られます。ただしAIは適用範囲が広いため、AIで何をするのか(受託開発なのか、自社プロダクトなのか、コンサルなのか)を別項目で具体化しておくと、登記簿を見た人に伝わりやすくなります。
オンラインサロンやオンライン講座、有料コミュニティは、「会員制コミュニティの企画、運営及び管理」「セミナー、講演会及び各種イベントの企画、運営」「教育、研修に関する事業」などで表現されます。有料記事や情報商材に近い形なら、「インターネットを利用した情報提供サービス」でカバーする考え方が一般的です。コンサルティングを併走させるなら「経営に関するコンサルティング業」も忘れずに。
組み合わせ方と、後から変更したくなったときの手順
実務的な組み立ての順番は、①メインの収入源を1〜2個、②すでに副収入がある事業、③1〜2年以内に始めそうな事業、④許認可が絡むもの(該当すれば)、⑤最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」、という流れです。たとえば動画発信を柱にするなら、コンテンツ制作→広告・PR→物販→コミュニティ運営→附帯条項、という並びになります。並び順に法的な優劣はありませんが、先頭が会社の顔になるため、名刺代わりになる事業を上に置くと収まりがよくなります。
事業目的は、後から変更できます。手順としては、株主総会(ひとり会社なら株主である自分)で定款変更を決議し、議事録を作成したうえで、本店所在地を管轄する法務局に変更登記を申請します。変更登記には登録免許税がかかり、司法書士に依頼すれば報酬も発生します。金額は改正や依頼先で変わるため、法務局の案内や依頼先の見積もりで最新の情報を確認してください。
つまり、変更は可能だけれどタダではない、というのが実態です。だからこそ設立時に少し広めに書く価値があります。一方で、関係のない事業を並べすぎると会社の輪郭がぼやけますので、「自分が本当にやりそうか」で線を引いてください。
事業目的の文言は、許認可の要否、将来の資金調達、取引先の審査など、思わぬところに影響することがあります。扱う商材や事業内容に迷いがある場合、また許認可が絡みそうな場合は、定款を確定させる前に司法書士や行政書士に、税務の取り扱いが気になる部分は税理士に相談しておくと安心です。設立登記の場面では司法書士が相談先になります。
よくある質問
事業目的に「YouTube」と書いてもいいですか?
書けないわけではありませんが、特定のサービス名は将来変わる可能性があるため、「動画コンテンツの企画、制作及び配信」「インターネットを利用した広告事業」といった一般的な表現に置き換えるのが一般的です。実態はこれらの文言でおおむねカバーできる考え方が取られています。
せどりをする場合、事業目的はどう書けばよいですか?
基本は「インターネットを利用した各種商品の販売業」などの物販の表現で書きます。中古品を反復して売買する形態では古物商の許可が関わることがあるため、その場合は「古物営業法に基づく古物商」を入れておくと申請時に進めやすくなります。要否は所管の窓口でご確認ください。
事業目的は何個くらい書けばよいですか?
決まった上限はありませんが、柱2〜3個に周辺事業を3〜5個、最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」を加える形が読みやすい構成です。数が多すぎると何の会社か伝わりにくくなり、説明を求められることがあります。
設立後に事業目的を追加するにはどうすればよいですか?
株主総会で定款変更を決議し、議事録を作成のうえ、管轄の法務局に変更登記を申請します。登録免許税や、司法書士に依頼する場合の報酬が発生しますので、費用は法務局の案内や依頼先の見積もりで最新の情報をご確認ください。