法人住民税・事業税の申告|eLTAXでの提出と法人税との違い

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

決算が終わって申告書を作り始めると、「税務署に出すもの」と「県や市に出すもの」が別々にあることに気づきます。国税はe-Tax、地方税はeLTAX。似た名前のシステムが二つあり、同じ決算書をもとに、別のルートで、別の期限管理をしていくことになります。この記事では、ひとり社長や小さな会社のバックオフィス担当者が、地方税の申告をeLTAXでどう進めるかを、順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 法人の決算申告は、法人税・消費税を税務署へ(e-Tax)、法人住民税・法人事業税を都道府県と市区町村へ(eLTAX)、二つのルートで提出します。
  • eLTAXを使うには、事前に利用届出を行って利用者IDを取得し、電子証明書(法人の商業登記電子証明書やマイナンバーカード等)を準備しておく必要があります。
  • 申告期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内で、国税・地方税とも同じタイミングになるため、決算スケジュールはまとめて組むのが現実的です。

法人税・消費税は税務署、法人住民税・事業税は都道府県と市区町村

会社の決算申告は、大きく国税と地方税に分かれます。国税は法人税と地方法人税、それに消費税(課税事業者の場合)で、提出先は納税地を所轄する税務署です。地方税は法人住民税と法人事業税(および特別法人事業税)で、提出先は事務所のある都道府県と市区町村になります。東京都の23区内だけに事務所がある場合は、都税事務所への提出にまとまるのが一般的です。

つまり、決算書は一つでも、申告書は「税務署あて」「都道府県あて」「市区町村あて」と複数できあがります。ここを一つのものだと思っていると、税務署に出したから終わり、という取りこぼしが起きます。地方税は、赤字で法人税額がゼロでも、法人住民税の均等割の申告・納付が生じるのが基本です。

電子申告のシステムも国税と地方税で分かれています。国税はe-Tax(国税電子申告・納税システム)、地方税はeLTAX(エルタックス、地方税ポータルシステム)です。名前が似ていますが別のシステムで、利用者IDも別に取得します。まずはこの「二系統ある」という構造を頭に入れておくと、以降の作業が迷いにくくなります。

eLTAXを使い始めるまでの準備(利用届出・電子証明書)

eLTAXで申告するには、最初に利用届出(新規)を行い、利用者IDを取得します。eLTAXの公式サイトから、専用ソフト「PCdesk」などを使って届出を提出する流れです。届出では、法人名・所在地・法人番号などの基本情報のほか、どの提出先(都道府県・市区町村)に申告するかを登録します。ここで登録した提出先が、以後の申告データの送り先になります。

あわせて電子証明書を準備します。法人の場合、法務局が発行する商業登記電子証明書を使う方法と、代表者個人のマイナンバーカードを使う方法などがあります。商業登記電子証明書は法務局への申請が必要で、発行までに日数がかかることがあるため、申告期限の直前に動き出すと間に合わないおそれがあります。設立後、落ち着いたタイミングで手配しておくと安心です。

マイナンバーカードを使う場合は、ICカードリーダーまたは対応スマートフォンが必要になります。どの方式が使えるかは環境によって変わるため、eLTAXの公式サイトで動作環境と必要な機器を確認してから準備してください。税理士に申告を依頼している場合は、税理士の電子証明書で代理送信してもらう形もあります。

eLTAXでの提出手順|いつ・何を用意して・どこに出すか

手順は次の順に進めると整理しやすくなります。まず決算を確定させ、株主総会等で承認を受けます。次に法人税の申告書を作成し、そこで確定した所得金額をもとに法人事業税・法人住民税の申告書を作成します。地方税は法人税の計算結果を使うため、国税→地方税の順で作るのが自然です。

用意するものは、確定した決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書)、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、そして法人税申告書の控えです。地方税の申告書には、法人税の所得金額や税額を転記する欄があるため、法人税側が固まっていないと完成しません。事務所が複数の自治体にある場合は、従業者数など分割基準の資料もそろえておきます。

提出は、PCdeskまたはeLTAX対応の申告ソフトで申告データを作成し、電子署名を付与して送信します。送信後は「受付通知(メッセージ)」がeLTAXのメッセージボックスに届くので、必ず内容を確認し、受付結果をPDF等で保存しておきます。送ったつもりでエラーになっている、というのが電子申告で最も多いつまずきです。納付は、eLTAXの電子納税(共通納税システム)を使うほか、納付書での窓口納付などの方法があります。利用できる納付手段は自治体や時期によって異なるため、eLTAXおよび各自治体の公式サイトで確認してください。

e-TaxとeLTAXは別物|二つをどう回すか

国税の法人税・消費税はe-Tax、地方税の法人住民税・事業税はeLTAXです。利用者識別番号(e-Tax)と利用者ID(eLTAX)は別に取得します。どちらから先に手をつけるか迷ったら、電子証明書の準備を最初に、次にe-Tax、次にeLTAXという順が進めやすいでしょう。電子証明書は両方で共通して使えることが多く、ここが一番時間のかかる部分だからです。

市販の申告ソフトや会計ソフトの多くは、法人税の申告データから地方税の申告データを連動させる機能を持っています。手入力の転記ミスを減らせるため、毎期自社で申告する予定なら、ソフトの対応範囲を確認しておくと作業が楽になります。ソフトの機能や料金は各社で異なりますので、各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

なお、給与支払報告書や住民税の特別徴収に関する手続きも、eLTAXから行うのが一般的です。年末調整後の1月に提出する給与支払報告書は、決算申告とは別のスケジュールですが、同じeLTAXの利用者IDを使います。バックオフィスの年間カレンダーを作るときは、決算申告と1月の法定調書・給与支払報告書をセットで書き込んでおくと抜けにくくなります。

提出先が複数になるケース|支店・営業所がある場合

事務所や事業所が二つ以上の都道府県・市区町村にある場合、法人事業税と法人住民税は、それぞれの自治体に分けて申告します。判断の順番としては、まず「どこに事務所等があるか」を確定し、次に「その自治体それぞれに提出先登録があるか」をeLTAXで確認し、最後に分割基準(一般に従業者数などが使われます)で税額を按分する、という流れになります。

登記上の本店しかなくても、実際に事業を行っている場所が別にあれば、そちらでも申告が必要になることがあります。自宅を本店にしていて、実際の作業場所が別の市にある、といったケースは判断が分かれやすいところです。迷ったら、該当する自治体の税務担当窓口か税理士に確認してください。

事務所を移転したり、支店を新設・廃止したりしたときは、申告とは別に、各自治体への異動届出が必要になります。eLTAXでも異動届出の提出に対応している自治体があります。提出先の追加・削除はeLTAXの利用者情報の変更手続きで行うため、実態が変わったらその都度メンテナンスしておくと、申告期に慌てずに済みます。

期限・延長・つまずきやすいポイント

申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。3月決算なら5月末、9月決算なら11月末が目安になります。国税も地方税も同じタイミングなので、決算スケジュールは「決算確定→株主総会→法人税・消費税→地方税→納付」を一本の線で組むのが現実的です。期限日が土日祝にあたる場合の取扱いなど、細かい点は国税庁・各自治体の案内を確認してください。

株主総会が期限に間に合わない事情がある場合などに、申告期限の延長の特例を申請できる制度があります。国税側と地方税側でそれぞれ手続きが必要になるのが通常で、また期限を延長しても納付が遅れた分については利子税・延滞金の扱いが生じることがあります。適用できるかどうかは会社の状況によるため、税理士に確認したうえで判断してください。

つまずきやすいのは、①電子証明書の有効期限切れ、②eLTAXの提出先登録が実態と合っていない、③送信後の受付通知を確認していない、④赤字だから地方税も不要と思い込む、の四つです。特に④は、法人住民税の均等割は所得がなくても発生するのが基本なので、注意が必要です。申告と納付は別の手続きなので、送信後に納付まで終わったかもチェックしましょう。

自社でやるか、税理士に頼むか

判断の順番としては、まず「取引量」、次に「消費税の課税事業者かどうか」、最後に「時間をどこに使いたいか」を見ます。取引がごく少なく、消費税の免税事業者で、決算書の作成に不安がないなら、市販ソフトを使って自社で電子申告する選択もあります。一方、消費税の申告が絡む、在庫や固定資産がある、複数自治体に事務所がある、といった場合は、判断が必要な論点が増えます。

税務の取扱いは、同じ支出でも状況によって結論が変わることがあります。この記事の内容は一般的な考え方の整理であり、個別の判断を保証するものではありません。制度の詳細な要件は、国税庁・総務省・各自治体・eLTAXの公式資料で最新の情報を確認してください。

決算申告の進め方や、申告期限の延長の特例を使うべきかどうか、提出先となる自治体の範囲などで迷ったときは、税理士に相談することをおすすめします。初回の決算だけ依頼して手順を確認し、翌期から自社で回す、という進め方をしている会社もあります。

よくある質問

赤字でも法人住民税・事業税の申告は必要ですか。

赤字で法人税額がゼロでも、地方税の申告は必要になるのが基本で、法人住民税の均等割は所得がなくても生じます。申告をしないと自治体から照会が来ることもあります。自社の状況での取扱いは、各自治体の案内を確認するか、税理士にご確認ください。

e-TaxとeLTAXは、どちらか一方だけでは足りませんか。

e-Taxは国税(法人税・消費税など)、eLTAXは地方税(法人住民税・事業税など)のシステムで、提出先が異なるため両方を使うことになります。利用者IDもそれぞれ別に取得します。会計ソフト側で両方に対応していれば、データを連動させて作成できる場合があります。

eLTAXの利用届出は、設立後いつまでに出せばよいですか。

期限が決まっているものではありませんが、電子証明書の取得に日数がかかることがあるため、最初の決算申告の直前ではなく、余裕をもって準備するのが安心です。設立時の異動届出を各自治体に提出するタイミングで、あわせて検討しておくとよいでしょう。

送信したかどうかは、どこで確認できますか。

eLTAXのメッセージボックスに届く受付通知で確認します。エラーになっていると受付されていないため、送信後は必ず結果を開いて内容をチェックし、受付結果を保存しておいてください。申告と納付は別手続きなので、納付が完了しているかも合わせて確認しましょう。

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