法人の振込手数料を安くする方法|削減の手順と見直しどころ

・法人口座・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

毎月の支払いが増えてくると、一件ごとは小さな振込手数料も、年間で見るとまとまった金額になります。しかも振込手数料は、値上げ交渉のような相手のある話ではなく、自社の支払いの組み方と口座の使い分けだけで下げられる余地がある費目です。この記事では、いまの手数料を洗い出すところから、どの順番で手を打つかまでを、ひとり社長や少人数のバックオフィス担当者向けに整理します。

この記事の結論

  • 法人の振込手数料を安くする第一歩は、直近3か月の振込明細を「件数・相手先・振込経路(窓口/ATM/ネットバンキング)」で棚卸しし、高い経路を使っている支払いを特定することです。
  • 手数料は一般に「窓口>ATM>インターネットバンキング」「他行宛>同一銀行宛」の順に高くなる傾向があるため、経路をネットバンキングに寄せ、相手先の多い銀行に口座を合わせるだけでも削減できます。
  • ネット銀行系の法人口座には、条件に応じて他行宛振込が一定回数まで無料になる仕組みを設けているところがあり、支払用口座として併用する方法もあります(回数や条件は各行の公式サイトで最新の内容をご確認ください)。

法人の振込手数料が高いと感じたら、まず何を調べる?

最初にやることは、値下げの検討ではなく現状把握です。直近3か月分の入出金明細をダウンロードし、振込手数料の行だけを抜き出して、件数・金額・支払先・使った経路(窓口、ATM、インターネットバンキング)を一覧にします。会計ソフトを使っているなら「支払手数料」の補助科目で抽出すると早く終わります。

この一覧を眺めると、たいてい偏りが見つかります。毎月同じ取引先に複数回振り込んでいる、金額の小さい経費精算を一件ずつ振り込んでいる、担当者が窓口やATMで処理している、といったパターンです。削減余地はこの偏りの中にあります。

あわせて、振込金額が一定額を境に手数料区分が変わる銀行が多い点も確認しておきます。区分の境目や具体的な金額は銀行ごとに異なるため、取引銀行の公式サイトの手数料一覧で最新のものを確認してください。

削減は順番がある:経路→集約→口座構成の順に手を打つ

手を打つ順番は、効果が出るのが早くて社内の負担が小さいものからです。第一に振込経路の見直し、第二に支払いの集約、第三に口座構成の見直し、という順序で考えると迷いません。

第一段階の経路見直しは、その月からでも効きます。窓口やATMでの振込をやめ、法人向けインターネットバンキングに一本化するだけで、同じ相手・同じ金額でも手数料区分が下がることが一般的です。ネットバンキング自体に月額の利用料がかかる銀行もあるので、利用料と削減額を並べて比べます。

第二段階が支払いの集約、第三段階が口座そのものの構成です。口座の追加開設や解約はいちばん手間がかかるので、先の二つをやり切ってから検討したほうが、判断材料も揃います。

支払いをまとめる:支払日の統一と総合振込の使い方

同じ取引先に月内で何度も振り込んでいるなら、締め日と支払日を決めて一本化します。「月末締め・翌月末払い」のように社内ルールを決め、取引先にも請求書の提出期限を伝えておくと、振込件数そのものが減ります。件数が減れば手数料も減り、経理の確認作業も軽くなります。

件数が多い会社では、複数の振込をまとめて送信する「総合振込」の仕組みが用意されていることがあります。データをまとめて送る方式のため、一件ずつ振り込むより一件あたりの手数料が抑えられる設定になっている銀行が多く、給与や外注費の支払いが毎月まとまってある会社と相性がよいといえます。利用条件や申込方法は銀行ごとに異なるため、取引銀行に確認してください。

小口の経費精算も見直しどころです。都度振込をやめて月1回の精算日にまとめる、法人カードや経費精算の仕組みで立替そのものを減らす、といった運用にすると、振込件数を構造的に減らせます。ただし立替払いの精算を遅らせると従業員の負担になるので、月1回以上の頻度は確保しておきたいところです。

振込手数料を無料に近づける口座の組み方

他行宛より同一銀行宛のほうが手数料が低い(または無料)という構造は、多くの銀行に共通します。そこで、支払先の多い銀行を調べ、最も相手先が集中している銀行に自社の口座を持つと、同行宛の比率が上がって全体の手数料が下がります。取引先が特定の地方銀行に集中しているなら、その銀行に支払用口座を持つ判断もあり得ます。

ネット銀行系の法人口座には、預金残高や利用状況などの条件に応じて、他行宛振込が月に一定回数まで無料になる仕組みを設けているところがあります。条件・回数・対象となる振込の種類は各行で異なり、変更されることもあるため、必ず各行の公式サイトで最新の内容を確認してください。

口座を増やす場合は、役割を決めてから開設します。たとえば「売上の入金とメイン資金は既存の銀行、日々の支払いはネット銀行」といった二本立てです。口座が増えると通帳残高の確認や会計処理の手間も増えるので、ネットバンキングのデータを会計ソフトに自動連携できるかどうかも、選ぶときの基準に入れておくとよいでしょう。

なお、融資を受けている、または今後の借入を見込んでいる会社では、取引実績のあるメインバンクへの入出金を極端に細らせない配慮も必要です。手数料の削減額と、金融機関との関係のどちらを優先するかは、会社の状況によって変わります。

振込手数料は「どちらが負担するか」も交渉材料になる

振込手数料を誰が負担するかは、当事者間の取り決めによります。取引の慣行として支払側が負担する例が多い一方、契約書や取引基本契約で「振込手数料は受注者負担」と定めているケースもあります。新しい取引を始めるときは、見積書や契約書の段階で負担者を明記しておくと、後のトラブルを避けやすくなります。

ただし、一方的に手数料分を差し引いて支払うといった対応は、取引の力関係によっては下請代金の取扱いに関わる論点になることがあります。契約や取引条件の変更を検討する場合は、事前に相手方の同意を得て書面に残すこと、判断に迷う場合は弁護士に確認することをおすすめします。

また、支払手数料の会計処理や、インボイス制度のもとでの手数料分の取扱いは、負担者や金額の扱い方によって処理が変わることがあります。仕訳の方法に迷ったら、顧問税理士にご確認ください。

見直し後に決めておきたい社内ルール

削減の効果を続かせるには、ルールとして残すことが大切です。「振込はネットバンキングのみ」「支払日は毎月◯日にまとめる」「新しい取引先の口座は開設時に銀行名を記録する」といった短いルールを、経理マニュアルや社内の共有ドキュメントに書いておきます。担当者が変わっても運用が戻らなくなります。

ネットバンキングを使う場合は、承認者と操作者を分ける、IDやワンタイムパスワードの管理者を決めるといった体制もあわせて整えます。ひとり社長で分けられない場合でも、パソコンのセキュリティ対策と、振込先の登録内容を定期的に見直す運用は用意しておきたいところです。

最後に、半年に一度は同じ棚卸しをやり直します。銀行の手数料体系や無料回数の条件は変わることがあり、自社の支払先の構成も変わっていきます。定期的に見直すこと自体を予定表に入れておくと、気づかないうちに手数料が膨らむ状態を避けられます。

判断に迷ったら専門家に相談を

振込手数料の削減自体は社内で進められますが、手数料の負担区分を契約で変える、取引先への支払条件を変更する、といった場面では法務の視点が要ります。契約書の文言や取引条件の見直しは、弁護士に相談すると安心です。

支払手数料の勘定処理、インボイス制度や電子帳簿保存法に関わる証憑の保存方法については、要件の細部が所管官庁の資料で定められています。一般的な考え方はこの記事で触れましたが、自社の処理が適切かどうかは顧問税理士にご確認ください。顧問がいない場合は、会計ソフトの導入支援を行っている税理士に、口座構成とあわせて相談する方法もあります。

よくある質問

法人の振込手数料を無料にすることはできますか?

すべての振込を無料にするのは難しいものの、同一銀行宛の振込や、ネット銀行系の法人口座で条件を満たした場合の一定回数まで無料となる仕組みを組み合わせることで、無料に近づけられることがあります。条件や回数は銀行ごとに異なり変更もされるため、各行の公式サイトで最新の内容を確認してください。

窓口とインターネットバンキングでは手数料はどれくらい違いますか?

具体的な金額は銀行ごとに異なるため一概には言えませんが、一般に「窓口>ATM>インターネットバンキング」の順で手数料が低くなる設定が多く見られます。取引銀行の手数料一覧を見比べたうえで、ネットバンキングの月額利用料がある場合は、それを差し引いても削減できるかで判断してください。

手数料を安くするために法人口座を増やしても差し支えありませんか?

複数の法人口座を持つこと自体は一般的に行われており、支払用と入金用で使い分ける会社も少なくありません。ただし口座が増えると残高管理や会計処理の手間も増えるため、会計ソフトとの連携可否や、融資を受けている銀行との取引実績への影響も含めて検討することをおすすめします。

振込手数料を取引先負担にしても差し支えありませんか?

負担者は当事者間の取り決めによるため、契約書や見積書で明記し、相手方の同意を得たうえで運用するのが基本です。一方的に差し引く対応は取引の力関係によっては問題となる場合があるため、判断に迷うときは弁護士にご確認ください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。