法人口座はどう選ぶか|ネット銀行とメガバンクの違いと、決め方の順番

・法人口座・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

法人口座は、一度決めると引き落としや請求書の口座を全部書き換えることになるため、あとから変えるのが面倒な部類に入ります。とはいえ最初から完璧に選ぶ必要はありません。決め方の順番さえ間違えなければ、あとは足せば済みます。

この記事の結論

  • 設立直後は、審査に通りやすく振込手数料の安いネット銀行を1行目に選ぶのが現実的です。
  • 取引先に大手企業が多い場合や融資を見込む場合は、2行目としてメガバンク・地銀を後から足します。
  • 会計ソフトへの明細連携に対応しているかどうかは毎月の経理工数に直接効くため、開設前に確認しておきます。

この記事の書き手について編集部(株式会社田中)で実際に法人口座を選定し、ネット銀行とメガバンクの併用に至るまでの検討内容をもとに書いています。

決め方の順番:手数料 → 審査 → 連携

法人口座選びで迷う原因の多くは、比べる軸が多すぎることにあります。金利、手数料、アプリの使いやすさ、支店の有無、融資、外貨——すべてを同時に比べようとすると決まりません。

実務上は、①毎月かかるお金(振込手数料・口座維持手数料)②そもそも開設できるか(審査)③会計ソフトに明細が自動で流れるか(連携)、の順に見ると早く決まります。設立直後の会社にとって、金利や融資条件は当面ほとんど効いてきません。

逆に振込手数料は、月に何十件も支払いがある会社では年間で無視できない差になります。各行の手数料は公式サイトに掲載されているので、自社の月あたりの振込件数を掛けて、年額に直して比べてみてください。金額そのものより、件数を掛けたときの差で見るのがこつです。

ネット銀行とメガバンク、どちらを1行目にするか

設立直後は、ネット銀行を1行目にするのが現実的です。オンラインで完結し、振込手数料が低く、開設までの期間も比較的短いためです。

一方で、取引先が大企業や官公庁の場合、指定の振込先としてメガバンクや地銀の口座を求められることがあります。また、将来的に融資を受けるなら、取引実績を積む口座は別に必要になります。

そのため「ネット銀行を1行目、必要になったらメガバンク・地銀を2行目」という順番が、多くの会社にとって無駄が少ない組み方です。最初から2行開こうとすると、どちらの審査準備も中途半端になりがちです。

ネット銀行の振込手数料を、実際に比べてみる

振込手数料は各行が公式サイトで公開しているので、自分で比べられます。ここでは、法人口座でよく候補に挙がるネット銀行2行の手数料を並べます。

見るべきは「他行宛」です。同行宛が無料なのは多くのネット銀行で共通なので、差がつくのは他行宛の1件あたりの金額と、件数が増えたときの優遇の有無です。

なお、住信SBIネット銀行は社名が変わっています。検索では旧名で出てくることも多いので、同じ銀行だと分かるようにしておくと混乱しません。

銀行同行宛の振込手数料他行宛の振込手数料口座維持手数料
楽天銀行52円(税込)3万円未満 150円/3万円以上 229円(税込)年額 無料
PayPay銀行0円145円(税込)このページに記載なし
GMOあおぞらネット銀行無料一律100円(税込)/件公式の手数料一覧に項目なし
ドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行)0円振込金額にかかわらず145円(税込)月額基本料金0円
出典:楽天銀行:https://www.rakuten-bank.co.jp/business/howto/interest.html/PayPay銀行:https://www.paypay-bank.co.jp/business/fee/transfer.html/GMOあおぞらネット銀行:https://gmo-aozora.com/business/contents/fee.html/ドコモSMTBネット銀行:https://www.netbk.co.jp/contents/hojin/charge/・2026-09-21確認

審査で見られること、落ちやすいケース

法人口座の審査では、事業の実体があるかどうかが確認されます。会社の所在地、事業内容、代表者の情報、そして事業の裏づけとなる資料が主な確認対象です。

落ちやすいのは、事業実体が確認しにくいケースです。たとえば登記上の住所がバーチャルオフィスだけで他に活動の跡が見えない、ホームページや事業内容の説明が用意できていない、事業目的が広すぎて何をする会社か分からない、といった状態です。

対策は難しいことではなく、申込前にホームページ・事業計画・取引先との契約書や請求書など、事業をしている証拠を揃えておくことです。審査は各行が個別に判断するため、1行落ちても他行では通ることがあります。落ちた場合に備えて、申込は1行ずつ間隔を空けて行うのが無難です。

会計ソフトとの連携は、開設前に確認する

見落としやすいのが、会計ソフトへの明細連携です。連携に対応していれば入出金明細が自動で取り込まれ、仕訳の候補まで出ます。対応していなければ、毎月CSVを手で取り込むか、最悪は通帳を見ながら手入力することになります。

使う会計ソフトが決まっているなら、そのソフトの「連携できる金融機関一覧」を先に見て、候補を絞るほうが早いです。銀行側の一覧より、会計ソフト側の一覧のほうが実態に合っていることが多いためです。

API連携の有無も確認しておくと、将来的に入出金データを自社のツールから直接扱いたくなったときに詰まりません。ただし、これは必要になってから考えても間に合う項目です。

口座と一緒に決めておくと、あとが楽なこと

法人口座は単体で完結せず、支払いと記録の入り口になります。そのため、口座を決めるときに「支払い手段」と「記録の置き場所」を一緒に決めておくと、あとから組み直す手間がなくなります。

支払い手段とは法人カードのことです。経費をカードに寄せておくと、明細がそのまま経費の記録になります。口座振替と現金払いが混ざるほど、あとで突き合わせる作業が増えます。

記録の置き場所とは会計ソフトのことです。口座とカードの両方を会計ソフトに繋いでおけば、毎月やることは「取り込まれた明細を確認する」だけになります。ここまでを最初の数週間で作ってしまうと、その後の経理はほとんど手がかかりません。

よくある失敗と、その避け方

ひとつめは、屋号や代表者の個人口座で法人の取引を続けてしまうことです。あとから分けようとすると、どの入出金が法人のものかを遡って仕分ける作業が発生します。法人口座が開くまでの立替分は、記録を残しておいて後日精算する形にしておくと整理しやすくなります。

ふたつめは、審査に落ちたあと、間を置かずに次々と申し込んでしまうことです。準備が足りないまま申込を重ねても結果は変わりにくいので、落ちた場合はホームページや事業内容の説明を整えてから次に進むほうが確実です。

みっつめは、会計ソフトとの連携を確認しないまま開設してしまうことです。連携できない口座を使い続けると、毎月の入力作業が積み上がります。口座を変えるのは後からでもできますが、引き落としの設定をすべて変更する手間がかかるため、最初に確認しておくほうが楽です。

設立直後にやることの順番

口座開設は、登記が完了して履歴事項全部証明書(登記簿謄本)と印鑑証明書が取れるようになってからです。この2つがないと申込ができません。

住所をバーチャルオフィスにする予定がある場合は、口座審査への影響を考えて、住所を決める段階で口座のことも一緒に考えておくと手戻りがありません。

口座が開いたら、法人カードと会計ソフトを紐づけて、そこから先は明細が自動で溜まる状態にします。ここまで作ってしまえば、毎月の経理は「確認する」だけの作業になります。

よくある質問

法人口座は何行くらい持つべきですか?

設立直後は1行で足ります。取引先の指定や融資の必要が出てきた段階で2行目を足すのが、手間の少ない順番です。複数行を同時に開こうとすると、どちらの審査準備も薄くなりがちです。

バーチャルオフィスの住所でも法人口座は開けますか?

開けないと決まっているわけではありませんが、事業の実体が確認しにくいと審査で不利になることがあります。ホームページや契約書など、事業をしている裏づけを揃えてから申し込むことをおすすめします。

審査に落ちたらどうすればいいですか?

審査基準は各行が個別に判断するため、1行で落ちても他行で通ることがあります。落ちた理由は通常開示されないので、事業内容の説明資料やホームページを整えたうえで、別の銀行に申し込むのが現実的です。

個人事業主の口座をそのまま使ってはいけませんか?

法人は個人とは別の人格なので、法人の取引は法人名義の口座で行うのが原則です。個人口座を使い続けると、会計処理が煩雑になり、税務上の説明も難しくなります。具体的な判断は税理士にご確認ください。

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