法人口座の手数料を比較|振込手数料・口座維持費・入金手数料の見方
法人口座を選ぶとき、多くの人がまず「振込手数料が安いところ」を探します。ただ、実際に毎月出ていくお金は、振込手数料だけでは決まりません。口座維持費、インターネットバンキングの利用料、入金や出金にかかる費用、振込の無料回数の条件など、見るべき項目はいくつかに分かれています。この記事では、比較すべき手数料の種類を整理したうえで、自社の取引パターンからランニングコストを概算し、候補を絞っていく順番を説明します。具体的な金額は各行で異なり、改定もあるため、最終確認は必ず公式サイトで行ってください。
この記事の結論
- 法人口座のランニングコストは「振込手数料」「口座維持費・Web利用料」「入金・出金手数料」「その他サービス利用料」の4つに分けて比較すると漏れが出にくくなります。
- 振込手数料は単価だけでなく、同行宛か他行宛か、無料回数の有無とその条件(残高や利用状況など)まで合わせて見る必要があります。
- 月あたりの振込件数・入出金の方法・現金を扱うかどうかを先に書き出し、その取引パターンを各行の料金表に当てはめて概算するのが、最も確実な比較方法です。
法人口座の手数料は、まず4種類に分けて比較する
法人口座のランニングコストを比べるとき、いきなり各行のサイトを見比べると、項目名がばらばらで混乱しがちです。先に自分の中で分類の枠を作っておくと、どの銀行の料金表でも同じ見方ができるようになります。
分け方としては、(1)振込手数料、(2)口座維持費・インターネットバンキングの基本利用料、(3)入金・出金にかかる手数料、(4)その他のサービス利用料(総合振込やデータ伝送、外貨、トークンや電子証明書の発行など)、の4つが扱いやすい枠です。ネット系の銀行では口座維持費という項目自体がない場合もあれば、都市銀行ではインターネットバンキングの契約プランごとに月額が設定されている場合もあります。
このうち、実際の負担の大きさは会社によって順番が入れ替わります。取引先への支払いが多ければ(1)が中心になりますし、売上を現金で受け取る業種なら(3)が無視できません。まずは4つの枠に情報を埋めてから、自社にとって重い項目を見る、という順番にしてください。
振込手数料の比較は「宛先」「金額区分」「無料回数の条件」の3点
振込手数料を比べるときに最初に見るのは、同一銀行宛か他行宛かの区別です。多くの銀行で同行宛のほうが低く設定されており、取引先の多くが特定の銀行に口座を持っているなら、同じ銀行を選ぶことでコストが下がることがあります。請求書や支払先リストを見て、振込先がどの銀行に集中しているかを確認してみてください。
次に金額区分です。一定金額を境に手数料が変わる設計が一般的なので、自社の1件あたりの支払額がどの区分に入るかで、実際の負担が変わります。単価表の安いほうの数字だけを見て比較すると、実態とずれることがあります。
三つめが「他行振込手数料が無料」とうたわれている場合の条件です。無料になる回数の上限、その回数が誰にでも適用されるのか、それとも残高や他サービスの利用状況に応じて増減するのか、無料枠を超えた分の単価はいくらか。ここまで読んで初めて比較になります。条件は改定されることがあるため、各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。
口座維持費とWeb利用料は「毎月必ず出ていく固定費」として見る
振込手数料は取引がなければ発生しませんが、口座維持費やインターネットバンキングの月額利用料は、使わない月でも発生します。設立直後で取引がまだ少ない時期ほど、この固定費の有無が体感コストを左右します。
確認したいのは、まず口座維持費そのものの有無、次にインターネットバンキングが基本契約に含まれるのか別料金なのか、そして複数プランがある場合に何が違うのかです。プランの差は、振込の無料回数、一括振込(総合振込)などの機能、利用できる利用者IDの数といった点に出ることが多いので、自社に必要な機能はどれかを先に決めておくと選びやすくなります。
加えて、セキュリティ用のトークンや電子証明書の発行・更新に費用がかかる場合があります。金額の大小よりも、「更新のたびに発生するのか」「予備を追加するといくらか」といった発生の仕方を確認しておくと、後から想定外の支出になりにくいです。
見落としやすい入金・出金・その他の手数料
入金側の手数料は意識されにくい項目です。ATMでの入金、窓口での入金、他行からの振込を受け取るとき、硬貨を含む現金を扱うときなど、場面ごとに扱いが分かれます。小売や飲食のように現金の売上がある会社は、月何回入金に行くかを想定して、そこにかかる費用を必ず計算に入れてください。
出金も同様です。ATMが使えるか、使える時間帯や曜日で差があるか、他行ATMではどうなるか。役員や従業員が立替経費を精算する頻度が高い会社では、ここが積み上がります。
そのほか、給与振込や総合振込などのデータ伝送サービス、口座振替(自動引落)の利用、外貨建ての送金、通帳や取引明細の再発行なども費用が発生することがあります。今すぐ使わなくても、事業が動き出せば必要になる機能があるなら、そのときの料金も先に見ておくと、口座を作り直す手間を避けられます。
自社の取引パターンで概算する|比較の具体的な手順
比較の精度を上げるいちばん簡単な方法は、先に自社の取引パターンを紙に書き出すことです。用意するのは、直近数か月の通帳やネットバンキングの明細、支払先の一覧、そして今後半年くらいの取引見込みです。これがない設立直後の会社は、想定でかまいません。
書き出す項目は、月あたりの他行振込の件数と1件あたりのおおよその金額、同行宛振込の件数、現金入金の回数、ATM出金の回数、給与振込の人数、口座振替を使うかどうか。ここまで揃えば、各行の料金表に当てはめて「うちの場合の月額」が出せます。2〜3行分を同じ書式で計算し、横に並べると差がはっきりします。
計算するときは、事業が拡大した場合の想定も一つ作っておくと安心です。振込件数が今の倍になったとき、無料回数を超えて単価が効いてくるのはどの口座か。今の規模で最も安い口座と、増えたときに有利な口座が違うこともあります。なお料金は改定される可能性があるため、この計算はあくまで比較のためのもので、最終的には各銀行の公式サイトの最新の料金表で確認してください。
「手数料が安い」だけで決めないほうがいい理由
ランニングコストは重要ですが、法人口座は手数料以外の要素で日々の手間が変わります。たとえば、会計ソフトと明細を連携できるか、複数の担当者に権限を分けて使えるか、振込の承認フローを設定できるか。経理を自分以外の人に任せる予定があるなら、この点は費用と同じくらい効いてきます。
また、将来的に融資の相談をする可能性や、取引先からの信用、窓口で相談できる支店が近くにあるかどうかも判断材料です。ネット中心の銀行と、店舗を持つ銀行を1つずつ持ち、用途で使い分けている会社もあります。口座を複数持つ場合は、その分だけ固定費と管理の手間が増える点も合わせて考えてください。
実務上の落としどころとしては、まずメインの1口座を取引パターンに合わせて選び、必要が出てきた段階で2つめを検討する、という順番が扱いやすいはずです。口座の使い分けや経理処理の方法、どこまでを経費として扱うかといった点で判断に迷う場合は、顧問の税理士に相談しながら決めると安心です。
よくある質問
法人口座で振込手数料が無料になる銀行はありますか。
一定回数までの振込手数料を無料とする取扱いを設けている銀行はありますが、回数の上限や適用条件、無料枠を超えた場合の単価は銀行ごとに異なります。条件は変更されることもあるため、各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。
法人口座の維持費は毎月かかりますか。
口座維持費を設けていない銀行もあれば、インターネットバンキングの利用料という形で月額が発生する銀行もあります。取引の有無にかかわらず発生する固定費なので、口座を開く前に料金表で確認しておくと安心です。
ネット銀行と都市銀行、どちらを選ぶべきですか。
振込件数が多く現金をほとんど扱わないならネット中心の銀行が計算上有利になりやすく、現金の入出金が多い、窓口で相談したいといった事情があれば店舗のある銀行が向きます。両方を用途で使い分ける会社もありますが、その場合は固定費と管理の手間が増える点も考慮してください。
口座を途中で別の銀行に変えるのは大変ですか。
取引先への口座変更の連絡、口座振替の再設定、給与振込の登録し直しなど、事務作業がまとまって発生します。手間を考えると、最初にメイン口座を取引パターンに合わせて選んでおくほうが負担は小さくなります。