法人口座の審査に通すために、申し込み前にそろえておくもの

・法人口座・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社の登記が終わって、いよいよ法人口座、というところで足止めされる人は少なくありません。個人の口座と違い、法人口座の開設には審査があり、書類がそろっていても「事業の中身が見えない」という理由で時間がかかることがあります。この記事では、申し込みボタンを押す前にそろえておきたいものと、その並べ方を、順番に整理します。

この記事の結論

  • 法人口座の審査では、登記事項証明書・定款・代表者の本人確認書類に加えて、「何の事業で、誰からお金が入るのか」を示す資料の有無が結果を左右します。
  • 申し込み前に、事業内容が分かるウェブサイトや資料、取引先との契約書や見積書、事務所の実在を示す資料の3点をそろえておくと、審査時の照会に答えやすくなります。
  • 1行の審査に通らなかった場合でも他の金融機関で開設できることがあるため、ネット銀行・都市銀行・地方銀行や信用金庫を並行して検討し、落ちた理由を推測して資料を足してから再申込するのが現実的です。

なぜ法人口座は審査があるのか

法人口座は、個人の口座に比べて資金の出入りが大きく、第三者への譲渡や不正利用の入口になりやすいという事情があります。そのため金融機関は、口座を作ろうとしている会社が実際に事業をしているか、代表者は誰か、どういうお金が動く予定かを確認します。これは犯罪収益移転防止法にもとづく確認を含むもので、どの金融機関でも避けて通れない手続きです。

つまり審査で見られているのは、会社の「良し悪し」ではなく「実在と説明のつきやすさ」です。設立したばかりで売上がなくても、事業の中身がきちんと説明できれば開設に至ることがあります。逆に、書類は整っていても事業内容が漠然としていると、追加の照会が入って時間がかかりがちです。

この前提を押さえると、準備すべきものは自然と決まります。形式的な必要書類と、事業実態を示す資料の二本立てで用意する、と考えてください。

申し込み前にそろえる必要書類(形式面)

まず、どの金融機関でもほぼ共通して求められるものから押さえます。登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、定款の写し、法人番号が分かるもの、代表者の本人確認書類、法人の印鑑証明書や届出印です。登記事項証明書と印鑑証明書は発行から一定期間内のものを求められることが多いので、申し込みの直前に法務局または登記所の証明書発行請求で取得しておくと安心です。

設立直後は、法人番号指定通知書や、税務署へ提出した法人設立届出書の控えが手元にあるはずです。これらも事業の開始を裏づける資料になるので、コピーをまとめておきましょう。オンライン申込の場合は、書類をスマートフォンで撮影またはスキャンし、四隅が切れていない鮮明な画像で提出できるよう準備しておきます。

書類の内容が食い違っていると、それだけで確認に時間がかかります。会社名の表記(株式会社の前後)、本店所在地の番地やビル名、代表者の氏名の旧字体などが、登記と申込フォームで一致しているかを、提出前に一度読み合わせてください。

審査で差がつくのは「事業実態が分かる資料」

形式書類は誰でもそろえられるため、実際に差がつくのはこちらです。おおまかに3点あります。第一に、事業内容が分かるもの。会社のウェブサイト、サービス紹介資料、名刺、パンフレットなどです。ページが一枚でもかまいませんが、何を売っていて、誰が代表で、どこに所在しているかが書かれている状態が望ましいです。

第二に、取引の存在が分かるもの。取引先との業務委託契約書、発注書、見積書、請求書の控えなどです。まだ受注前であれば、商談中の相手とのやりとりや提案書でも、説明の材料になります。第三に、事務所の実在が分かるもの。賃貸借契約書、オフィスの写真、郵便物の受取状況などです。自宅兼事務所の場合はその旨を隠さず説明したほうがスムーズです。

バーチャルオフィスやレンタルオフィスを本店にしている場合、金融機関によっては確認が厚くなることがあります。その場合は、実際の作業場所や連絡先、契約書の写しを添えて、事業の動きが見えるようにしておくとよいでしょう。

どの金融機関から申し込むか、迷ったときの順番

選択肢は大きく、ネット銀行、都市銀行、地方銀行・信用金庫の3つです。迷ったら、次の順に自社の状況を当てはめてください。まず「取引先から銀行名を指定されているか」。指定や慣行があるなら、そこを最優先にします。次に「将来、融資や補助金の入金口座を想定しているか」。地域で腰を据えて事業をするなら、地方銀行や信用金庫に早めに接点を持っておく意味があります。

そのどちらにも当てはまらず、まずは入出金と経費支払いを回したいだけであれば、オンラインで完結しやすい銀行から申し込むという判断になります。会計ソフトとの連携や、振込・カードの使い勝手も比較材料です。手数料や条件は改定されるため、各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

現実的な進め方としては、本命1行と、並行してもう1行に申し込んでおくことです。1行に絞って待っている間、売上の入金先がないまま時間が過ぎるのは避けたいところです。開設後に使わない口座が残った場合は、解約の手続きをとれば整理できます。

申し込みから開設までの流れと、当日の答え方

流れはおおむね、書類準備 → 申込フォームまたは店頭での申込 → 書類提出 → 審査・確認の連絡 → 開設通知とキャッシュカード等の郵送、という順です。日数は金融機関と時期によって幅があるので、余裕をもって動きます。店頭申込の場合は、事前に電話で必要書類を確認してから来店すると二度手間になりません。

確認の電話や面談では、「どんな事業で、誰からお金が入り、どこへ払うのか」を、短く具体的に言えるようにしておきましょう。たとえば「ウェブ制作を法人向けに受託していて、月末締め翌月末入金です。支払いは外注のデザイナーと、クラウドサービスの利用料が中心です」といった形です。抽象的な「コンサルティング」「各種事業」といった説明だけだと、追加の照会につながりやすくなります。

定款の事業目的が幅広すぎる場合も、実際に何をしているのかを補足できる資料があると話が早く進みます。目的の記載を今後変更する予定があるなら、その旨も伝えておくとよいでしょう。

審査に通らなかったときに、次にやること

金融機関は、開設できなかった理由を具体的に説明しないのが一般的です。ですから、こちらで仮説を立てて手を打つことになります。よくある切り口は、事業内容の説明が足りない、所在地の実在が確認しにくい、資本金や事業目的と実態がかみ合って見えない、連絡がつきにくかった、といったところです。

対応としては、ウェブサイトや事業計画の資料を整える、契約書や請求書などの実績を足す、固定の連絡先を用意する、といった順で埋めていきます。そのうえで、別の種類の金融機関(ネット銀行で難しかったなら地域の金融機関、その逆も)に申し込むと、見られ方が変わることがあります。同じ先への再申込は、資料が増えてからにするのが無難です。

なお、口座がない間も、売上の入金先として一時的に代表者個人の口座を使うと、法人と個人のお金が混ざって後の経理が複雑になります。どうしても必要な場合は、立替として記録を残し、処理の仕方を税理士に確認しておくと安心です。

登記内容や事業目的の見直しが必要そうなら司法書士、事業実態の説明資料や会計処理の組み立てに不安があるなら税理士に、早い段階で相談してみてください。設立直後の一度の相談で、その後の手戻りが大きく減ることがあります。

よくある質問

設立したばかりで売上がなくても、法人口座は開設できますか。

売上の実績がないこと自体が開設できない理由になるとは限りません。事業内容が分かる資料や、これから取引する相手との契約書・見積書などがあると、説明がしやすくなります。取り扱いは金融機関ごとに異なるため、申込先の案内を確認してください。

法人口座の必要書類は何をそろえればよいですか。

一般的には、登記事項証明書、定款の写し、法人番号が分かるもの、代表者の本人確認書類、法人の印鑑証明書や届出印などです。これに加えて、事業内容が分かる資料や事務所に関する資料を求められることがあります。細かい指定は金融機関ごとに違うので、公式サイトで最新の一覧を確認しましょう。

バーチャルオフィスの住所だと審査に通らないのでしょうか。

通らないと決まっているわけではありませんが、実在の確認が厚くなることはあります。実際の作業場所、契約書の写し、取引の記録などをあわせて提出できるよう準備しておくと、説明がしやすくなります。

一度断られたら、同じ銀行にもう申し込めませんか。

再度の申し込み自体ができないわけではありませんが、前回と同じ資料のままでは結果が変わりにくいと考えられます。事業内容の説明資料や取引の記録を足したうえで、別の種類の金融機関にも並行して申し込むのが現実的です。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。