定款変更の手続き|株主総会の決議・費用と登記が必要になる場合
「会社の目的に事業を追加したい」「本店を移したい」「役員の任期を伸ばしたい」。設立後にこうした必要が出てきたら、定款の変更が必要になります。定款はあとから変更できますが、手順としては原則として株主総会の特別決議が必要で、変更した内容によっては法務局への登記も発生します。この記事では、変更を決めてから登記が終わるまでの流れを、判断の順番に沿って整理します。
この記事の結論
- 定款は設立後でも変更できますが、原則として株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要で、決議した内容は株主総会議事録に残します。
- 定款を変更しても、登記事項でない項目(事業年度や株主総会の招集地など)の変更であれば登記は不要で、会社の中で議事録と定款を更新すれば足りることがあります。
- 商号・目的・本店・役員の任期・発行可能株式総数など登記事項を変更した場合は、原則として変更後2週間以内に本店所在地の管轄法務局へ変更登記を申請します。
定款はあとから変更できる?まず確認する3つのこと
定款は会社の「基本ルール」をまとめた書類で、設立後に変更することもできます。実務でよくあるのは、事業の追加(目的の変更)、本店移転、商号変更、役員の任期変更、発行可能株式総数の増加、事業年度の変更、株式の譲渡制限の見直しなどです。設立時に急いで作った定款が実態と合わなくなってきた、というケースも少なくありません。
手続きに入る前に、まず3つを確認します。1つ目は、いま手元にある定款が最新版かどうか。過去に一度変更しているのに原始定款しか保管していない会社は意外とあります。2つ目は、変更したい項目が登記事項に含まれるか。3つ目は、株主が誰で、議決権をどれだけ持っているかです。
この3つが分かると、「株主総会をどう開くか」「登記が必要か」「いつまでに動くか」がほぼ決まります。逆に、ここを飛ばして書類だけ作り始めると、決議の要件を満たしていない、添付書類が足りないといったやり直しが起きやすくなります。
設立にかかる法定費用
どちらの形態でもかかる、国が定めた費用です。設立代行サービスの手数料は、これとは別にかかります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税(設立登記) | 資本金の額の1,000分の7。15万円に満たないときは1件につき15万円 | 資本金の額の1,000分の7。6万円に満たないときは1件につき6万円 |
| 定款の認証手数料 | 資本金100万円未満 3万円/100万円以上300万円未満 4万円/300万円以上 5万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 定款の謄本(同一の情報の提供) | 1枚につき250円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 収入印紙(紙の定款の場合) | 4万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
定款変更の手続きの流れ|株主総会から登記までの順番
流れは大きく4段階です。①変更する条文の案を作る、②株主総会を招集して決議する、③議事録を作成し定款を最新版に更新する、④登記事項であれば法務局へ変更登記を申請する。この順番は入れ替えられません。登記は「決議があったこと」を前提に受け付けられるため、議事録が先に必要です。
①では、現在の条文と変更後の条文を並べて書き出すのがおすすめです。たとえば目的を追加するなら、既存の号をそのまま残して新しい号を加えるのか、全面的に書き換えるのかで条文の形が変わります。本店移転なら、定款に市区町村までしか書いていない場合は同一市区町村内の移転では定款変更が不要なこともあり、まず自社の定款の書き方を見る必要があります。
②の株主総会は、取締役会を置かない会社なら取締役の決定で招集できるのが一般的です。株主が社長ひとりだけなら、書面決議(株主全員の同意による決議の省略)の形をとることも会社法上認められています。ひとり社長の会社では、実際にはこの書面による方法が使われることが多い場面です。
定款変更は特別決議|決議要件と議事録の書き方
定款の変更は、原則として株主総会の特別決議です。特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決されます。定款でこれより厳しい要件を定めている会社もあるため、自社の定款の「株主総会の決議」の条文を先に確認してください。
議事録には、開催日時・場所、出席した株主の議決権数、議案の内容、決議の結果、議長と出席取締役の氏名を記載します。目的の変更なら「変更後の目的」を条文の形でそのまま書いておくと、登記申請のときに内容が一致して分かりやすくなります。書面決議で行う場合は、提案の内容と株主全員が同意した旨を記録に残します。
議事録は会社に備え置く書類です。登記申請で法務局に提出する際も原本の写しなどを添付するため、押印や署名の取り扱いを含めて、作成後に社内で保管場所を決めておきましょう。株主が複数いる会社では、反対意見が出そうな議案かどうかを事前に見極めておくと進めやすくなります。
登記が必要になる場合と、不要な場合の見分け方
「定款変更=登記」ではありません。判断は、変更した項目が登記事項かどうかで分かれます。登記が必要になる代表例は、商号、本店所在場所、事業の目的、発行可能株式総数、役員の任期に関する定め(任期を変えた結果として登記の取り扱いが変わる場合)、株式の譲渡制限の定め、公告方法などです。これらは登記簿に載っている情報なので、変更したら登記も直します。
一方、事業年度(決算期)の変更、株主総会の招集に関する社内的な定め、基準日の定めなどは、登記事項に含まれないことが一般的です。この場合は株主総会の決議と議事録、最新版の定款の整備で手続きが完了します。ただし決算期の変更は税務署などへの届出や申告期間の扱いに影響するため、変更前に税理士に確認しておくと安心です。
登記が必要な場合、変更登記は原則として変更が生じた日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ申請します。提出するのは、変更登記申請書、株主総会議事録、株主リスト(株主の氏名・住所・議決権数などをまとめたもの)などが基本形で、変更内容に応じて追加書類が求められることがあります。最新の様式と添付書類は法務局の案内で確認してください。
定款変更の費用はどう考える?自分でやる場合の判断基準
費用は大きく2つに分かれます。1つは登記事項を変更した場合にかかる登録免許税などの実費、もう1つは司法書士に依頼した場合の報酬です。登録免許税は変更した登記事項の種類によって定められており、複数の項目を同時に変更すると扱いが変わることもあります。金額は法務局の案内で、報酬は各事務所の公式サイトで最新のものを確認してください。定款変更そのものに公証人の認証は不要で、認証が必要なのは設立時の原始定款です。
自分でやるか依頼するかは、次の順で見ると決めやすいです。まず、登記が不要な変更(事業年度など)なら、議事録と定款の更新だけなので自社で対応できる範囲に収まりやすいです。次に、登記が必要でも、目的の追加や本店移転など内容が単純で株主が自分ひとりであれば、法務局の記載例を見ながら自分で申請している会社もあります。
反対に、株主が複数いて利害調整が必要、株式の内容や譲渡制限を変える、種類株式を導入する、他の登記(増資や役員変更)と同時に進める、といったケースは条文の書き方が結果に影響します。この場合は登記の専門家である司法書士に相談したほうが、やり直しのリスクを抑えられます。判断に迷うときは、変更したい条文の案を持って相談すると話が早く進みます。
変更後にやること|定款の保管と関係先への反映
登記が終わっても、作業は残っています。変更後の内容を反映した定款(現行定款)を作り直し、議事録とセットで保管します。金融機関や取引先から「現在の定款」を求められたときに、原始定款しか出せないと説明の手間が増えます。変更のたびに版を更新し、いつの決議による変更かを分かるようにしておくのが実務的です。
商号や本店を変更した場合は、登記のあとに税務署・都道府県・市区町村への異動届出、社会保険や労働保険の関係先、銀行口座、請求書や契約書の表記など、反映が必要な先が広がります。インボイス(適格請求書)の登録事項に関わる変更もあるため、請求書の記載と登録内容がずれないか確認しておきましょう。制度上の要件の詳細は、国税庁など所管官庁の資料で確認してください。
最後に、変更した理由と経緯をメモに残しておくと、数年後に別の変更をするときに役立ちます。定款は一度整えれば終わりではなく、事業の形が変わるたびに見直す書類です。税務や労務への影響が絡む変更については税理士や社会保険労務士、登記や条文の書き方については司法書士に相談しながら進めると安心です。
よくある質問
定款変更に株主総会は必ず必要ですか?
定款の変更は、原則として株主総会の特別決議によって行うこととされています。株主が社長ひとりだけの会社でも決議自体は必要で、その場合は株主全員の同意による書面決議の形で記録を残す方法がとられることが一般的です。自社の定款に決議要件の特則がないか、先に確認してください。
定款を変更したら、いつまでに登記すればよいですか?
変更した内容が登記事項に含まれる場合は、原則として変更が生じた日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請します。期限を過ぎても申請自体は受け付けられますが、遅れによる不利益が生じることがあるため、決議後は早めに動くのが安全です。
定款変更は自分でできますか?
事業年度の変更のように登記が不要なものや、目的の追加・本店移転など内容が単純で株主がひとりの場合は、法務局の記載例を参考に自社で進めている会社もあります。株式の内容を変える、株主が複数いる、他の登記と同時に行うといったケースは、条文の書き方が後の運用に影響するため司法書士への相談を検討してください。
定款変更の費用はどのくらいかかりますか?
登記事項を変更する場合は登録免許税などの実費がかかり、金額は変更した登記事項の種類によって定められています。司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生します。いずれも変動しうるため、法務局の案内と各事務所の公式サイトで最新の金額を確認してください。