複数人で合同会社を設立する|夫婦・家族で作る場合の決め事と出資比率
合同会社は1人でもつくれますが、夫婦や家族、友人と一緒に立ち上げるケースも多くあります。複数人で設立するときにいちばん効くのは、設立前に「誰がいくら出して、誰が決めて、利益をどう分けて、抜けるときどうするか」を文章にしておくことです。この記事では、人数の考え方から出資比率・議決権の決め方、家族で設立する場合に定款へ入れておきたい取り決めまで、手を動かす順番で整理します。
この記事の結論
- 合同会社は社員(出資者)1名以上で設立でき、人数の上限はなく、2人以上でも設立できます。
- 合同会社では出資額にかかわらず原則として社員1人1議決権とされ、議決権や利益配分は定款で別の定めを置くこともできます。
- 夫婦・家族で設立する場合は、代表社員、業務執行社員の範囲、利益配分、退社・相続時の持分の扱いを、設立時の定款と合意書で決めておくと後の争いを避けやすくなります。
合同会社の設立は何人必要? 1人でも2人以上でもつくれます
合同会社を設立するために必要な人数は、出資者である「社員」が1名以上です。ここでいう社員は従業員のことではなく、お金を出して会社の持分を持つ人、つまり株式会社でいう株主に近い立場を指します。人数の上限は定められていないため、夫婦2人、親子3人、友人4人といった構成でも設立できます。
法人が社員になることもできます。ただし法人が社員になる場合は、実際に業務を行う「職務執行者」を選んで登記する必要があるなど、手続きが個人だけの場合より一段増えます。まずは「個人だけで作るのか、法人も入れるのか」を先に決めてください。
なお、合同会社でも従業員を雇うことはできます。社員(出資者)ゼロで従業員だけ、という構成は成り立ちませんが、社員1〜2名+従業員数名という会社は普通にあります。人を雇うと労働保険や社会保険の手続きが発生するので、雇用の予定があるなら設立時点で頭に入れておきましょう。
出資比率・議決権・利益配分は別ものとして決める
複数人で設立するときの最大のポイントは、合同会社では出資比率と議決権が自動的には連動しない、という点です。会社法の原則では、社員の議決権は出資額にかかわらず1人1個とされ、定款変更などの重要事項は総社員の同意によるとされています。つまり、9割出した人と1割出した人が、原則としては同じ1票になります。
この原則が自社に合わないなら、定款で「議決権は出資比率による」「一定の事項は代表社員が単独で決定できる」といった定めを置くことが考えられます。反対に、家族経営で意思決定を全員一致にしたいなら、原則のままのほうが安心という判断もあります。どちらが正しいということはなく、資金を出した人に決定権を寄せたいのか、全員の納得を優先したいのかで選びます。
利益の分配も、出資比率どおりにする必要はありません。定款で分配割合を定めることができるため、「資金は一方が多く出すが、実務は他方が担うので配分は折半にする」といった設計も可能です。ただし、家族間で実態と離れた配分をすると税務上の取り扱いが問題になることがありますので、配分ルールを決める前に税理士へ相談しておくと安全です。
夫婦・家族で設立するなら、設立前にこの5つを決める
家族での設立は意思疎通が早い反面、口約束のまま進みやすいのが弱点です。設立前に決めておきたいのは、次の5つです。①代表社員を誰にするか、②業務執行社員を全員にするか一部に絞るか、③出資額と利益配分、④報酬をいくらにするか(決め方のルールを含む)、⑤やめるとき・亡くなったときの持分の扱い。この順に話し合うと、抜け漏れが出にくくなります。
合同会社では、原則として社員全員が業務執行社員となり、会社を代表します。全員が代表では動きにくい場合は、定款で業務執行社員を特定の人に限り、その中から代表社員を定めます。たとえば「夫婦2人が社員だが、対外的な契約は代表社員1名が行う」という形です。業務を分担しない配偶者を社員に入れるかどうかも、ここで整理しておきます。
役員報酬にあたる社員への報酬は、期の途中で自由に増減させると経費として扱われない部分が出ることがあります。事業年度の開始後一定期間内に決めて、その期は同額で支払うのが基本的な考え方です。家族に報酬を払う場合は、実際の職務内容と金額のバランスも見られることがあるため、決定の経緯を議事録に残しておいてください。
揉めないために定款へ入れておきたい取り決め
いちばん効くのは「出るとき」のルールです。合同会社の社員が退社すると、原則として持分の払戻しを受けることになり、まとまった資金が会社から出ていく可能性があります。定款で、退社の申出は何か月前までにするか、払戻額の計算方法をどうするか、持分を他の社員へ譲渡する場合の手続きをどうするかを決めておくと、突然の資金流出を避けやすくなります。
相続も忘れがちです。合同会社では、社員が亡くなった場合、原則としてその社員は退社となり、相続人は当然には社員になりません。会社を家族に引き継ぎたいなら、定款に「社員が死亡した場合、相続人が持分を承継して社員となる」旨の定めを置くかどうかを検討します。逆に、相続人に入ってきてほしくない事情があるなら、あえて定めを置かない選択もあります。
夫婦の場合は、離婚時の持分の扱いも話題になります。持分は財産分与の対象として議論されることがあり、会社の経営と私生活の問題が直結します。定款だけでなく、社員間の合意書という形で「一方が退社する場合の手順」を別途書面にしておくと、話し合いの土台になります。取り決めの有効性や書き方は事案によって変わるため、弁護士や司法書士に目を通してもらうと安心です。
複数人で設立するときの手続きの流れ
手順は1人で設立する場合と大きくは変わりませんが、社員全員が登場する場面が増えます。まず、商号・本店所在地・事業目的・出資額・社員の氏名住所・業務執行社員と代表社員・事業年度を決め、定款を作成します。合同会社の定款は公証人の認証が不要ですが、社員全員が記名押印(電子定款なら電子署名)します。ここで印鑑証明書の準備も進めます。
次に、決めた出資金を代表社員などの個人口座へ払い込み、通帳の該当ページの写しなどで払込証明書を作ります。複数人の場合は、誰がいつ払い込んだかが記録から分かるようにしておくと、後の確認が楽です。その後、本店所在地を管轄する法務局へ設立登記を申請します。登記が完了したら、登記事項証明書と印鑑証明書を取得し、法人口座の開設や税務署・都道府県・市区町村への届出に進みます。
登録免許税などの費用や必要書類の細かい様式は変更されることがあります。申請前に法務局の案内や公式サイトで最新の情報を確認し、迷う点があれば司法書士に相談してください。従業員を雇う予定があるなら、労働保険・社会保険の手続き先と期限も、このタイミングで確認しておくと後がスムーズです。
社員として入れるか、従業員として雇うか、外注にするか
家族に手伝ってもらう場合、関わり方には大きく3つあります。社員(出資者)として入れる、従業員として雇用する、業務委託として外注する、です。判断の順番としては、まず「会社の意思決定に参加してほしいか」を見ます。参加してほしいなら社員、業務だけ担ってほしいなら従業員か外注です。
次に「継続的に指揮命令のもとで働くか」を見ます。勤務時間や進め方をこちらが指示するなら雇用が自然で、雇用すれば労働保険や社会保険の手続きが必要になります。独立して自分の裁量で仕事をするなら業務委託という整理もありますが、実態が雇用に近いのに契約書だけ業務委託にしていると、後から雇用と扱われることがあります。
家族への支払いは、税務上の取り扱いが個人事業の場合と法人の場合で異なります。金額の妥当性や職務の実態が問われる場面もあるため、支払いの形を決める前に税理士へ相談し、労働保険・社会保険の手続きについては社会保険労務士に確認しておくことをおすすめします。制度の要件は改正されることがあるので、所管官庁の最新資料もあわせてご確認ください。
よくある質問
合同会社の設立は何人必要ですか?
出資者である社員が1名以上いれば設立でき、人数の上限はありません。夫婦2人、家族3人といった複数人での設立も可能です。社員は従業員とは別の概念で、社員が1人でも従業員を雇うことはできます。
夫婦で合同会社を設立する場合、出資比率は折半にすべきですか?
折半でなければならないという決まりはありません。合同会社では議決権は原則として社員1人1個とされ、利益配分も定款で別に定められるため、出資比率だけで力関係が決まるわけではないからです。配分の決め方によって税務上の取り扱いが問題になる場合もあるので、税理士に確認しながら決めてください。
社員のうち1人だけを代表にすることはできますか?
できます。定款で業務執行社員を特定の社員に限り、その中から代表社員を定める形が一般的です。誰が業務執行社員・代表社員になるかは登記事項に関わるため、登記の書き方は法務局の案内を確認するか、司法書士に相談すると確実です。
家族の1人が抜けたいと言い出したらどうなりますか?
社員が退社すると、原則として持分の払戻しが生じ、会社から資金が出ていく可能性があります。退社の申出時期や払戻額の計算方法を定款や社員間の合意書で事前に決めておくと、話し合いがしやすくなります。実際の手続きや金額の算定は個別性が高いため、弁護士や税理士に相談することをおすすめします。