合同会社の持分譲渡|売却の手続き・契約書・税金の注意点

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「合同会社は売却できますか」という質問をよくいただきます。答えは、できます。ただし株式会社の株式譲渡とは仕組みが違い、持分を譲る側と受け取る側だけでは話が完結しません。他の社員の同意、定款の変更、場合によっては登記まで、ひとつながりの手続きになります。この記事では、合同会社の持分譲渡を検討し始めた段階の方に向けて、何をどの順番で確認すればよいか、契約書に何を書くか、税金はどう考えるかを整理します。

この記事の結論

  • 合同会社の持分譲渡は、原則として他の社員全員の同意(業務執行社員でない社員の場合は業務執行社員全員の同意)が必要で、定款に別段の定めがあればそちらが優先されます。
  • 持分譲渡そのものは登記事項ではありませんが、譲渡によって業務執行社員や代表社員が変わる場合は、変更の日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請します。
  • 個人が持分を譲渡した場合の利益は株式等の譲渡に準じて扱われることがあり、時価と離れた価額での譲渡は別の課税関係が生じることもあるため、事前に税理士へ確認することをおすすめします。

合同会社は売却できる?持分譲渡という方法

合同会社のオーナーが会社を手放したい、あるいは第三者に引き継ぎたいという場合、中心になるのが「持分譲渡」です。持分とは、社員(出資者)が会社に対して持っている地位そのもので、株式会社でいう株式に近いものです。これを譲り渡すことで、会社の器や取引先との契約関係、許認可の一部をそのまま残したまま、実質的な所有者を変えることができます。

ただし株式会社と大きく違う点があります。株式会社では原則として株式は自由に譲渡でき、譲渡制限がある場合でも会社の承認機関が決めるという建て付けです。一方、合同会社は社員どうしの信頼関係を前提にした組織のため、持分を譲るには他の社員の同意が必要とされています。ひとり社員の会社であれば同意を取る相手がいないので身軽ですが、複数社員の会社では、まず社内の合意形成が第一関門になります。

会社を手放す方法は持分譲渡だけではありません。事業だけを切り出す「事業譲渡」、社員を退社して出資の払戻しを受ける方法、株式会社に組織変更してから株式を譲渡する方法などもあります。どれを選ぶかは、買い手が何を欲しがっているか(会社の器か、事業か、許認可か)、簿外の負債リスクをどちらが負うか、で変わります。買い手が会社ごと引き継ぎたいのであれば持分譲渡、負債や過去の税務リスクを引き継ぎたくないのであれば事業譲渡、というのが大まかな分かれ目です。

持分譲渡に必要な同意|まず定款を開く

最初にやることは、自社の定款を開いて「持分の譲渡」に関する条項を探すことです。会社法では、社員が持分の全部または一部を他人に譲渡するには他の社員全員の承諾が必要とされ、業務を執行しない社員については業務執行社員全員の承諾で足りるとされています。ただし、これらは定款で別段の定めを置くことができるため、定款に「代表社員の承諾があれば譲渡できる」といった規定があれば、そちらに従うことになります。

同意が取れることを確認したら、書面に残します。実務では「総社員の同意書」という形で、譲渡人・譲受人・対象となる持分・譲渡に同意する旨を記載し、社員全員が記名押印するのが一般的です。後の登記や、将来トラブルになったときの証拠として重要になりますので、口頭やチャットでの合意だけで先に進めないようにしてください。

もうひとつ見落としやすいのが定款変更です。合同会社では社員の氏名・住所や出資の目的・価額が定款の記載事項とされているため、社員が入れ替わると定款そのものを書き換える必要があります。定款変更は原則として総社員の同意によります。つまり、持分譲渡の同意と定款変更の同意を、同じタイミングでまとめて取っておくと二度手間になりません。

手続きの順番|いつ・何を用意して・どこに出すか

進め方を時系列で並べます。まず準備段階として、定款・社員名簿・直近の決算書・借入や保証の状況・許認可の有無を手元にそろえます。買い手が第三者であれば、この資料をもとに会社の中身を確認する作業(デューデリジェンス)が入りますので、早めに整えておくと交渉がスムーズです。次に価格と引き渡し条件を交渉し、大枠が固まった段階で他の社員の同意取得に進みます。

合意ができたら、持分譲渡契約書を締結し、総社員の同意書と変更後の定款を作成します。譲渡代金の支払いと、社員名簿・定款の書き換えのタイミングを契約書で明確にしておくことが大切です。実務では、代金入金を確認した日を効力発生日とし、同日付で定款変更と役員変更の効力が生じる形にすることが多いです。

最後に対外的な手続きです。持分譲渡そのものは登記事項ではありませんが、譲渡にともなって業務執行社員や代表社員が交代する場合は、変更の日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請します。あわせて、税務署・都道府県税事務所・市区町村への異動届、銀行口座の代表者情報の変更、社会保険関係の届出、許認可がある場合は所管窓口への届出や事前相談が必要になることがあります。許認可については、持分が動いただけで手続きが不要なものと、役員変更の届出が要るもの、事前の承認が要るものに分かれますので、業種の所管官庁の案内を確認してください。

合同会社の持分譲渡契約書に入れておきたい項目

持分譲渡契約書は、決まった書式があるわけではありません。ただ、後から揉めるポイントはだいたい決まっているので、次の項目は入れておくと安心です。譲渡人と譲受人の特定、対象となる持分の内容(出資の価額、全部か一部か)、譲渡価額と支払方法・支払期日、効力発生日、他の社員の同意を得ていることの確認、定款変更と社員名簿の書き換えに協力する義務。

加えて重要なのが、表明保証と呼ばれる条項です。売り手が「開示した決算書に重大な誤りがないこと」「未払いの租税や社会保険料がないこと」「開示していない保証債務や係争がないこと」などを約束し、違っていた場合の補償を定めます。小さな会社の取引でも、簿外債務や未払残業代が後から出てくることは珍しくありません。買い手側は特に、この条項の書きぶりを軽く扱わないほうがよいです。

代表社員が変わる場合は、会社の借入に付いている経営者保証の扱いも契約で整理します。保証人を交代させるには金融機関の同意が必要で、自動的に引き継がれるわけではありません。契約書に「金融機関の同意取得を条件とする」といった形で条件を置くか、いつまでに誰が交渉するかを決めておきます。契約書のひな形をそのまま使うと自社の事情に合わないことがありますので、金額が大きい取引や争いのリスクがある取引では、弁護士または司法書士に内容を見てもらうことを検討してください。

合同会社の持分譲渡と税金|個人・法人それぞれの考え方

税務は取引の当事者によって扱いが変わります。個人が持分を譲渡して利益が出た場合、合同会社の持分は税法上「株式等」に含まれるものとして、株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税の対象になると扱われることが一般的です。取得に要した金額(出資額など)や譲渡にかかった費用を差し引いた額が課税対象の考え方になりますが、取得費の資料が残っていないケースもあるため、出資時の書類は早めに探しておいてください。

法人が持分を譲渡する場合は、譲渡益・譲渡損が法人の所得計算に取り込まれます。また、譲渡価額が時価と大きく離れている場合には、単純な売買として扱われず、贈与や給与、寄附金といった別の課税関係が生じることがあります。親族間やグループ内での持分の移動は、まさにここが論点になりやすいところです。「いくらなら適正か」は会社の純資産や収益力から検討することになり、評価方法の選択自体が専門的な判断になります。

持分譲渡の代わりに「退社して出資の払戻しを受ける」方法を選ぶと、税務上の扱いが譲渡とは変わり、配当とみなされる部分が生じることがあります。同じように会社から離れるという結果でも、手続きの選び方で税負担が変わる可能性があるということです。譲渡価額を決める前、そして契約書に署名する前の段階で、税理士に具体的な数字を見せて相談しておくと、後から想定外の課税に驚くことを避けやすくなります。

よくあるつまずきと、迷ったときの判断の順番

つまずきやすいのは、順番の取り違えです。契約書を先に交わしてしまい、後から他の社員の同意が取れないと分かる、というケース。あるいは代金を受け取ってから定款変更と登記を放置してしまい、登記上はまだ前の代表社員のまま、という状態です。原則として、同意の見込み確認 → 契約 → 定款変更 → 代金決済 → 登記・各種届出、の流れで進めてください。

方法選びで迷ったら、次の順に見ます。第一に、買い手が「会社の器ごと」欲しいのか「事業だけ」欲しいのか。器ごとなら持分譲渡が候補です。第二に、許認可や長期の契約が会社に紐づいていないか。紐づいているなら、事業譲渡だと取り直しが必要になることがあり、持分譲渡が向くことがあります。第三に、簿外リスクの所在。過去の経理に不安があるなら、買い手は事業譲渡を選びたがる傾向があります。

将来的に外部から出資を受けたり、複数の投資家に持分を分けたりする構想があるなら、持分譲渡の前に株式会社への組織変更を検討する余地もあります。組織変更には官報公告や登記を伴い、時間と費用がかかりますので、スケジュールと合わせて考えてください。いずれの道を選ぶにしても、持分譲渡は会社法・登記・税務が絡み合う手続きです。契約書と会社法上の手続きは弁護士または司法書士へ、価額の妥当性と課税関係は税理士へ、従業員がいる場合の労務の引き継ぎは社会保険労務士へ、早い段階で相談しておくことをおすすめします。

よくある質問

合同会社の持分譲渡に登記は必要ですか?

持分譲渡そのものは登記事項ではないため、社員が入れ替わっただけでは登記申請は不要です。ただし、譲渡にともなって業務執行社員や代表社員が交代する場合は、変更の日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請します。必要書類や記載方法は法務局の案内を確認するか、司法書士に相談してください。

ひとり社員の合同会社でも、持分譲渡に同意は必要ですか?

社員が自分ひとりであれば、同意を求める他の社員が存在しないため、同意手続きの相手はいません。ただし定款変更は必要で、社員の氏名・住所や出資に関する記載を書き換えることになります。代表社員が変わる場合は、あわせて変更登記も検討してください。

合同会社の持分を親族に無償で譲ることはできますか?

当事者の合意と他の社員の同意があれば、無償や低額での譲渡自体は可能です。ただし時価と大きく離れた価額での移転は、贈与などとして課税関係が生じることがあり、会社の純資産や収益力をもとにした評価が論点になります。実行前に税理士へ具体的な数字を示して確認することをおすすめします。

持分譲渡と事業譲渡は、どちらを選べばよいですか?

買い手が会社の器ごと引き継ぎたい、許認可や既存契約を維持したい場合は持分譲渡が候補になります。一方、過去の負債や税務リスクを引き継ぎたくない場合は、対象を限定できる事業譲渡が選ばれることが多いです。それぞれ税務上の扱いも異なるため、条件を整理したうえで税理士・弁護士に相談してください。

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