電子帳簿保存法に対応するスキャナー・複合機の選び方

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「紙の領収書を捨てたいから、電子帳簿保存法に対応したスキャナーを買いたい」。そう考えて検索したものの、メーカーのページには「電帳法対応」とだけ書かれていて、結局どこを見て選べばいいのか分からない——という声をよく聞きます。スキャナ保存で問われるのは、実は機器の性能だけではありません。読み取った画像をどこに、どういう状態で保存するか、あとから探せるか、直したときに履歴が残るか。この記事では、機器・保存先・運用ルールの三つに分けて、小さな会社が迷いやすい判断の順番を整理します。

この記事の結論

  • スキャナ保存で機器に求められるのは主に「一定以上の解像度」「カラー階調」「読み取った内容を確認できる画面と印刷手段」で、専用機でなくても複合機やスマホのカメラで条件を満たせる場合があります。
  • 機器選びより先に決めるべきは保存先で、タイムスタンプの付与か、訂正・削除の履歴が残る(または訂正削除できない)システムのどちらかで真実性を確保する必要があります。
  • Boxなどの汎用クラウドストレージは、バージョン履歴や検索の仕組みが要件に合うかを個別に確認する必要があり、対応可否は各社の公式情報で最新の状態を確かめてください。

電子帳簿保存法のスキャナ保存で、機器に求められる条件は?

スキャナ保存の要件は、大きく「真実性(あとから改ざんされていないこと)」と「可視性(あとから探して読めること)」に分かれます。このうち機器そのものに関わるのは可視性のほうで、一定以上の解像度で読み取れること、カラーで階調を表現できること、そして保存した画像をディスプレイとプリンタで速やかに出力できることが軸になります。

よく「電帳法対応スキャナー」という表現を見かけますが、これは機器だけで法令を満たすという意味ではありません。読み取り性能が条件を満たしていることに加えて、保存先のシステムと社内の運用ルールがそろって初めて、スキャナ保存として扱える形になります。機器の箱に書かれた「対応」という言葉を、そのまま「これを買えば終わり」と読まないほうが安全です。

なお、解像度や階調の具体的な数値、書類の区分ごとの取り扱いは改正が入ることがあります。導入前に国税庁が公表している電子帳簿保存法の一問一答や取扱通達を確認し、判断に迷う部分は顧問税理士に相談してください。

スキャナー・複合機・スマホ、どれを選ぶ?判断の順番

まず見るのは、月にどれくらいの枚数を、誰がスキャンするかです。経理担当が社内でまとめて処理し、領収書が毎月それなりの枚数たまるなら、原稿を束で流せるシート給紙型のドキュメントスキャナーが向きます。レシートのような小さい紙や、折れた紙が混ざる場合は、原稿の厚みや幅の許容範囲、重送検知の有無を仕様表で確認しておくと、あとで詰まりに悩まされにくくなります。

次に、外出の多い社員がいるかどうか。営業や現場スタッフが立て替え精算をする会社なら、経費精算アプリでスマホ撮影して申請する流れのほうが現実的です。スマホのカメラでも、読み取った画像が条件を満たし、保存先のシステムが要件に対応していれば運用できる場合があります。ここは「機器を買う」より「精算の流れを変える」という話になります。

すでに複合機を置いているなら、三番目の選択肢として複合機の活用を検討します。ただし複合機は「スキャンしてPDFをメールやフォルダに送る」までしかできない機種もあり、そこから先の保存と検索をどうするかが残ります。判断の順番としては、①保存先のシステムを先に決める、②そのシステムに取り込みやすい機器を選ぶ、の順にすると、買ってから困る展開を避けやすくなります。

複合機で電子帳簿保存法に対応するときの確認ポイント

複合機を使う場合、見るべきは読み取り性能よりも「取り込みの導線」です。スキャンした書類を、保存先のクラウドサービスへ直接送れる連携機能があるか。フォルダ送信やメール送信しかできない場合、誰かが毎回ファイルを移し替える手間が発生し、その作業が抜けると保存漏れにつながります。

もうひとつは、ファイル名と検索のしかたです。スキャナ保存では、取引年月日・取引金額・取引先といった項目で探せる状態にしておくことが求められます。複合機から出てくるファイル名が連番だけだと、あとから誰かが手作業で情報を付け直すことになります。OCRで項目を読み取って自動で振り分けるサービスを併用するか、ファイル名の付け方を社内ルールとして決めておくかの、どちらかは必要です。

既存の複合機がリース中なら、新しく専用スキャナーを買うより、複合機に連携用のオプションを追加できるかをリース会社や販売店に聞くのが先です。機能の有無と追加の可否は機種と契約によって違うため、料金や条件は各社の公式サイトや担当者に直接確認してください。

Boxなどのクラウドストレージだけで要件を満たせる?

「電子帳簿保存法 box 対応」といった検索が多いのは、すでに社内で使っているストレージをそのまま使えないか、という発想からだと思います。汎用のクラウドストレージで検討する場合、確認したいのは三点です。第一に、ファイルの訂正・削除の履歴が残るか、あるいは削除できない設定にできるか。第二に、取引年月日・金額・取引先で検索できる状態にできるか。第三に、保存した書類を画面と紙の両方で速やかに出せるか。

バージョン履歴が残る機能を持つサービスでも、プランや設定によって挙動が変わることがあります。また、管理者が履歴ごと消せる設定になっていると、真実性の確保という観点では説明が難しくなります。ストレージ単体で判断せず、ワークフローや文書管理の機能を組み合わせる前提で考えたほうが現実的です。

各サービスが公表している電子帳簿保存法への対応状況は、機能追加や法改正で変わります。検討の際は、サービス提供元の公式ドキュメントで最新の対応範囲と必要な設定を確認し、自社の書類の種類に当てはまるかどうかを顧問税理士にも見てもらうと安心です。

無料のシステムで始められる?有料と分かれる条件

結論から言うと、書類の量が少なく、扱う取引先も限られているうちは、無料枠のあるクラウドサービスや会計ソフトに付属する証憑保存機能で回る場合があります。ひとり社長で、月に処理する領収書が数十枚程度、精算するのも自分だけ、というケースです。この規模なら、まずは手元の会計ソフトに証憑を紐づけて保存する機能があるかを確認するところから始めるのがおすすめの順番です。

有料のシステムに移る分岐点は、だいたい次のどれかに当てはまったときです。①経費精算をする社員が増えて、申請と承認の流れが必要になった、②電子取引データ(メールで届く請求書など)と紙のスキャンを一元管理したくなった、③保存容量やユーザー数の上限に当たった、④監査や税務調査を意識して、操作ログを残したくなった。このうち二つ以上に当てはまるなら、無料の仕組みを継ぎ足すより、一度まとめて設計し直すほうが結果的に楽です。

無料で使えるかどうかの条件やプラン内容は変更されることがあるため、必ず各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。「無料だから要件を満たさない」わけでも「有料だから満たす」わけでもなく、真実性と可視性の仕組みが備わっているかどうかで見ることが大切です。

導入の手順と、決めておきたい社内ルール

進め方としては、まず扱う書類を棚卸しします。紙で受け取る領収書・請求書、メールやWebで受け取るPDF、自社が発行する控え。この三つを紙に書き出すと、どこをスキャナ保存にして、どこを電子取引データの保存として扱うかが見えてきます。次に保存先のシステムを決め、そのうえで機器を選ぶ。最後に社内ルールを文書にする、という順です。

社内ルールで決めておきたいのは、誰がいつまでにスキャンするか、ファイル名の付け方、原本の紙をどう扱うか、修正が必要になったときの手順の四つです。特に「スキャンしたら紙はすぐ捨ててよいのか」は現場でよく迷う点なので、自社の運用としてどうするかを明文化しておくと、担当者が替わっても崩れません。

制度の詳細な要件や、自社の書類がどの区分に当たるかは、国税庁の公表資料を確認したうえで、顧問税理士に相談しながら決めることをおすすめします。機器やサービスの選定そのものは自社で進められますが、「この保存方法で問題ないか」という判断は、税務の専門家に見てもらったほうが後々の安心につながります。

よくある質問

家庭用のプリンタ複合機に付いているスキャン機能でも、電子帳簿保存法のスキャナ保存に使えますか。

読み取りの解像度や階調が条件を満たしていれば、機器の種類にかかわらず使える場合があります。ただし機器だけでは足りず、保存先のシステムで真実性と検索の要件を満たす必要があるため、そこをセットで検討してください。具体的な要件は国税庁の資料で確認し、迷う場合は税理士にご相談ください。

スキャンしたあと、紙の領収書は捨ててもよいのでしょうか。

要件を満たす形で保存できていれば、原本の紙を廃棄する運用が認められる場合があります。一方で、読み取り漏れやファイルの破損に備えて一定期間は保管するという社内ルールにしている会社もあります。自社の判断を決める前に、税理士に確認したうえで文書化しておくと安心です。

タイムスタンプは必ず必要ですか。

タイムスタンプを付与する方法のほかに、訂正や削除の履歴が残る、あるいは訂正削除ができないシステムで保存するという考え方もあります。どちらの方法を取るかで選ぶサービスが変わるため、先に方針を決めてから機器やストレージを選ぶとスムーズです。

会計ソフトの証憑保存機能と、専用の文書管理サービスはどちらを選べばよいですか。

扱う書類が会計に紐づくものだけで、処理する人も限られているなら、まず会計ソフトの機能で足りるか試すのが順当です。経費精算の承認フローが必要になったり、契約書など会計以外の書類もまとめたくなったりした段階で、専用サービスの検討に移ると判断しやすくなります。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。