見積書・納品書・注文書は電子帳簿保存法でどこまで保存するか
請求書と領収書は保存する、というところまでは多くの会社が整理できています。迷うのはその手前と後ろ、つまり見積書・注文書・発注書・注文請書・納品書・送り状です。「これも全部データで残さないといけないの?」「失注した見積書は?」という質問は、実際とても多く寄せられます。この記事では、どこまでが保存の対象になりやすいのか、その判断をどういう順番で考えればいいのかを整理します。
この記事の結論
- 見積書・注文書・発注書・注文請書・納品書は、取引に関して作成・授受した書類として国税関係書類に含まれると整理されることが一般的で、紙で受け取れば紙、データで受け取れば電子取引データとしての保存が求められます。
- メールに添付されたPDFの発注書やメール本文に金額・数量が書かれたやりとりは「電子取引」に当たると整理されることが多く、印刷して紙で保管するだけでは要件を満たさない場合があります。
- 失注した見積書や単なる送り状など、取引の成立や金額と結びつかない書類は保存対象から外れる余地がありますが、判断に迷うものは残しておくほうが安全で、最終的には税理士に確認してください。
そもそも電子帳簿保存法で保存対象になる書類はどこまでか
電子帳簿保存法は、帳簿と書類の保存方法についてのルールです。ここでいう書類には、請求書や領収書だけでなく、取引に関して作成したり受け取ったりした注文書・契約書・送り状・納品書・見積書といったものが含まれると説明されるのが一般的です。つまり、請求書と領収書だけ気にしていればよい、という整理にはなりません。
ただし「保存対象に含まれ得る」ことと、「すべてを同じ厳密さで残さなければならない」ことは別です。実務では、その書類が取引の内容や金額を裏づけるものかどうかで重みが変わります。金額・数量・取引先・日付が書かれていて、売上や仕入の根拠になり得るものほど、残しておく必要性が高いと考えてください。
もう一つ大事な分かれ道が、紙で受け取ったのかデータで受け取ったのかです。紙で受け取った見積書はそのまま紙で保管しても差し支えないのが原則で、スキャナ保存の要件を満たせばデータ化して紙を処分する選択もできます。一方、最初からデータで受け取ったものは、電子取引データとしての保存が求められる領域に入ります。
メールで受け取った発注書・注文書はどう扱うか
電子帳簿保存法の話で最もつまずきやすいのがここです。取引先からメールにPDFが添付されて届いた発注書や注文書は、紙をもらっていないので「電子取引」として扱われると整理されることが一般的です。この場合、印刷して紙のファイルに綴じるだけでは要件を満たさないとされる場面があります。
添付ファイルだけでなく、メール本文に「単価◯◯で◯個お願いします」と書かれているケースも要注意です。本文自体が取引情報を伝えている場合、そのメールそのものを保存対象として扱う考え方があります。実務では、該当するメールをPDF化するか、メールソフトの検索性を保ったまま所定のフォルダに残す運用にしている会社が多く見られます。
判断に迷ったら、次の順に見てください。①そのやりとりに金額か数量が書かれているか、②それが実際の取引につながったか、③紙の原本を別に受け取っているか。①と②がイエスで③がノーなら、電子取引データとして保存する前提で運用を組むのが無難です。
見積書は「契約に至らなかったもの」まで残すのか
よく検索されるのが、失注した見積書の扱いです。考え方としては、取引が成立しなかった見積書は、その後の売上や仕入の計算に結びつかないため、保存対象から外れる余地があるとされています。実際、社内ルールで「受注に至った見積書のみ保存」と決めている会社もあります。
ただし、注意点が二つあります。一つは、成立しなかったつもりでも後から一部だけ発注されるケースがあること。もう一つは、価格の根拠や取引先との交渉経緯を示す資料として、税務以外の場面で必要になることがあることです。値引きの理由や特別単価の経緯を説明できないと困る場面は、実務でしばしば起こります。
そこで現実的な落としどころは、「見積書は一律で電子取引フォルダに保存し、受注分と失注分をフォルダかファイル名で分ける」という運用です。捨てる判断をするより、残して分類するほうが手間もリスクも小さくなります。自社の取引量に照らして厳密さを調整したい場合は、税理士に相談してルールを文書化しておくとよいでしょう。
納品書・送り状・注文請書はどこまで必要か
納品書は、いつ何がいくつ納品されたかを示す書類で、請求内容の裏づけになります。請求書と内容が完全に一致しているなら保存の必要性は下がるようにも見えますが、検収のタイミングや数量違いの確認で参照することが多いため、受け取ったデータはそのまま残しておくのが実務的です。とくに月末締めで請求がまとまる取引では、納品書が唯一の個別記録になります。
送り状については、荷物の配送を示すだけで金額情報を含まないものと、金額や品目が記載されたものとで扱いが変わり得ます。単なる配送伝票の控えは取引書類としての重みが小さい一方、出荷内容と金額が印字された送り状は納品書に近い性格を持ちます。書式の中身を見て判断してください。
注文請書は、注文を受けた側が「その内容で承ります」と返す書類で、契約の成立を示す性格を持ちます。取引金額と条件が明記されるため、保存しておく意味は大きい書類です。PDFをメールで返送する形式が増えていますが、その場合は送信した側にとっても電子取引データとして保存対象になると整理されるのが一般的です。
実際の保存は、何をいつどこに置く形で組めばよいか
まず準備するものは、①電子取引データを置く共有フォルダ(またはクラウドストレージ・会計ソフトの保存機能)、②ファイル名のルール、③社内で共有する簡単な運用メモの三つです。特別なシステムがなくても、フォルダとルールがあれば始められます。
運用は、書類を受け取った、または送ったその日のうちに保存するのが基本です。ファイル名は「日付_取引先名_金額_書類種別」の形にしておくと、日付・金額・取引先で探せる状態がつくれます。フォルダは年度ごと、その下を書類種別か取引先で分けると、後から見つけやすくなります。
あわせて、データを勝手に書き換えられない状態にしておくことも求められます。訂正削除の履歴が残る仕組みを使うか、それが難しければ「訂正や削除を行う場合の手順」を定めた事務処理規程をつくって運用する方法が案内されています。規程のひな形は国税庁のサイトで公開されていますので、最新の様式と要件はそちらを確認してください。
保存期間は法人税や消費税のルールに沿って考えることになり、書類の種類や会社の状況によって変わります。何年分をどこに置くか決めるときは、税理士に確認したうえで社内ルールに落とし込むと安心です。
自社のルールを決めるときの判断の順番
ここまでを一本の流れにまとめます。ある書類を前にしたら、①データで受け取った(送った)か紙かを確認し、②金額・数量・取引先・日付といった取引情報が含まれるかを見て、③実際の取引に結びついたかを確認する。この順に見れば、多くのケースで扱いが決まります。
データで受け取っていて取引情報があり、取引にもつながったものは、電子取引データとして保存する前提で扱います。紙で受け取ったものは紙で保管するか、スキャナ保存の要件を確認したうえでデータ化します。取引情報が乏しいもの(単なる配送伝票や挨拶メールなど)は、社内で不要と判断する余地がありますが、判断基準をメモに残しておくと後から説明しやすくなります。
制度の要件は改正されることがあり、詳細は国税庁が公開している一問一答や取扱通達で確認するのが確実です。そのうえで、自社の取引の形(メール中心か、取引先のWebポータル経由か、紙の郵送が多いか)に合わせた運用は、顧問税理士と一緒に決めることをおすすめします。ルールを一度つくってしまえば、日々の判断はぐっと楽になります。
よくある質問
メールで届いた見積書PDFを印刷して紙で保管すれば足りますか
データで受け取ったものは電子取引として扱われると整理されることが一般的で、印刷した紙だけでは要件を満たさない場合があります。元のPDFをそのまま保存し、日付・取引先・金額で検索できる状態にしておくのが基本です。具体的な運用は税理士に確認してください。
失注した見積書も保存しないといけませんか
取引が成立しなかった見積書は保存対象から外れる余地があるとされています。ただし後から一部発注になることや、価格の経緯の説明に使うことがあるため、実務上は一律で残してフォルダを分ける運用が扱いやすいです。
送り状(配送伝票)は電子帳簿保存法の対象になりますか
金額や品目が記載され取引内容を示すものは、納品書に近い書類として扱われることがあります。一方、配送状況を示すだけで取引情報を含まないものは重みが小さいと考えられます。書式の中身を見て判断し、迷うものは残しておくと安心です。
注文請書をメールで送った側も保存が必要ですか
電子取引は受け取った側だけでなく送った側にも保存が求められると整理されるのが一般的です。送信したPDFと送信日時が分かる形で残しておきましょう。詳細な要件は国税庁の資料を確認し、判断に迷う場合は税理士にご相談ください。