電子帳簿保存法の事務処理規程|テンプレートの使い方と必要な場面

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「電子帳簿保存法の対応で、事務処理規程というものが要るらしい」——検索してここにたどり着いた方は、たぶんそこで止まっているはずです。事務処理規程は、メールやWebでやりとりした請求書などの電子データを、あとから勝手に直せない状態で保存していることを社内ルールで示すための文書です。国税庁がひな形を公開しているので、ゼロから書く必要はありません。この記事では、規程が必要になる場面、いらないかもしれない場面、ひな形をどこだけ直せばいいのかを、順番に整理します。

この記事の結論

  • 電子帳簿保存法の事務処理規程とは、電子取引データを訂正・削除しないための社内ルールを定めた文書で、タイムスタンプや訂正削除履歴が残るシステムを使わない場合に、改ざん防止措置の手段として備え付けるものです。
  • 国税庁が法人用・個人事業者用のひな形(サンプル)を公開しているため、会社名・適用日・責任者・保存場所などを自社の実態に合わせて書き換えるところから始めるのが現実的です。
  • 訂正削除の履歴が残るクラウドサービスだけで電子取引データを完結させている場合など、システム側で改ざん防止措置を満たしているときは事務処理規程を備えない選択もあり得ますが、自社の運用に当てはまるかは国税庁の資料や税理士に確認してください。

電子帳簿保存法の事務処理規程とは何か

事務処理規程は、正式には「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」といった名前で呼ばれる社内文書です。メールに添付された請求書PDF、Web通販の領収書、クラウド請求書サービスで受け取ったデータなど、紙を介さずにやりとりした取引情報を、受け取ったあとに書き換えたり消したりしないための手順を、文章にして残しておくものと考えてください。

電子帳簿保存法では、電子取引のデータを保存するときに「本物であること(真実性)」と「あとから見つけられること(可視性)」の両方が求められる、という考え方が土台にあります。事務処理規程は、このうち真実性を担保する方法のひとつとして位置づけられています。言い換えると、システムでガチガチに固める代わりに、ルールと運用で示す、という選択肢です。

ここで大事なのは、規程を作ること自体がゴールではない点です。規程に「訂正や削除をする場合は責任者の承認を得る」と書いたなら、実際にその手順で運用し、記録を残している状態にしておく必要があります。作って印刷して引き出しにしまったままでは、意味が薄れてしまいます。

事務処理規程が必要なのはどんな場面か

まず判断の順番を決めましょう。①自社に電子取引があるか → ②そのデータをどこに保存しているか → ③その保存先は訂正・削除の履歴が残る仕組みか、の順に見ていきます。①でメールもWeb取引も一切ない会社はほとんどないので、実質は②と③が分かれ道です。

③で「共有フォルダやパソコンのフォルダにPDFを置いているだけ」「クラウドストレージに入れているが履歴の管理までは意識していない」という場合、改ざん防止措置をシステムで示すのは難しくなります。このタイプの会社は、事務処理規程を備え付けて運用でカバーする方法が現実的な選択肢になります。ひとり社長や、経理担当が一人だけの小さな会社は、たいていここに当てはまります。

また、タイムスタンプを付けるサービスを導入したものの、対象がインボイス関連の一部データだけ、といったケースもあります。取引の入口が複数ある(メール、EDI、ECサイト、アプリ)会社ほど、すべてを同じ仕組みでそろえるのは難しいものです。抜けが出る部分については規程でカバーする、という組み合わせも考えられます。

事務処理規程が「不要」と言われるのはどういう会社か

「電子帳簿保存法 事務処理規程 不要」で検索される背景には、システム側で改ざん防止措置を満たせば規程を備えなくてもよい、という説明があります。具体的には、データを受け取ったあとに速やかにタイムスタンプを付す運用をしている場合や、訂正・削除を行った事実と内容が記録として残る(あるいは訂正・削除ができない)クラウドサービス内でデータを保存している場合です。

ただし「うちはクラウド会計を使っているから不要」と早合点しないほうが安全です。確認したいのは、電子取引データの入口がすべてそのサービスを通っているかどうか。社長個人のメールに届いた請求書、ECサイトからダウンロードした領収書、チャットで送られてきた見積書などが別の場所に散らばっているなら、その部分は仕組みでカバーできていないことになります。

もうひとつ、システム対応が間に合わない事業者向けの取り扱い(いわゆる猶予の措置)についても触れておきます。相当の理由があると認められ、データのダウンロードの求めなどに応じられる場合に、保存時の要件が緩和される考え方が示されています。とはいえ自社が該当するかの判断は難しいため、要件の詳細は国税庁の資料を確認し、迷う場合は税理士に相談してください。作っておいて損のない文書なので、判断がつかないうちは規程を整えておく、という進め方も無理がありません。

テンプレート(サンプル)をどこから入手し、どこを直すか

ひな形は国税庁のウェブサイトで、電子帳簿保存法の特設ページから入手できます。法人用と個人事業者用が分かれているので、自社に合うほうを選んでください。Word形式で配布されているため、そのまま上書き編集できます。市販の書式集やクラウドサービスが配っているテンプレートもありますが、まずは所管官庁が示しているものを土台にするのが分かりやすい方法です。

直す箇所は、だいたい次の5つに集約されます。(1)会社名・規程の名称、(2)施行日(適用開始日)、(3)対象となる取引や書類の範囲、(4)管理責任者・担当者の役職名、(5)データの保存場所と保存期間の書き方です。ひとり社長の会社なら、管理責任者も担当者も代表取締役ひとり、という書き方で構いません。無理に組織図を作る必要はありません。

逆に、あまり手を入れないほうがよいのが、訂正・削除の原則禁止と、例外的に行う場合の申請・承認・記録の流れです。ここが規程の中心なので、自社では回らないからと削ってしまうと、何のための文書か分からなくなります。運用できないと感じたら、文章を削るのではなく、承認者を身近な人に変える、記録の様式を簡素にする、といった方向で調整しましょう。

作成から運用開始までの手順

手順は、いつ・何を用意して・どこに置くか、の順で考えると迷いません。まず時期ですが、電子取引が発生している以上、思い立った時点で着手し、適用開始日を「作成の翌月1日」など切りのよい日に設定するのが扱いやすいです。期首に合わせたい場合は、次の事業年度の初日を施行日にする方法もあります。

用意するものは、国税庁のひな形(Word)、自社の電子取引の棚卸しメモ、保存場所の一覧の3つです。棚卸しメモは難しく考えず、「誰が」「どこから」「どんなデータを」受け取っているかを箇条書きにするだけで十分です。メール、ECサイト、クラウド請求書、チャット、といった入口ごとに書き出すと抜けに気づけます。

完成したら、税務署などに提出する種類の文書ではなく、社内に備え付けて必要なときに提示できるようにしておくのが基本です。紙で印刷してファイルに綴じる、あるいはPDFにして社内の共有フォルダに置き、経理まわりの手順書と同じ場所から開けるようにしておきましょう。あわせて、保存フォルダの命名ルール(日付・取引先・金額を含める等)も一緒にメモしておくと、検索性の面でも運用が楽になります。

作ったあとに崩れやすいポイントと、見直しのタイミング

よくあるのは、規程では「共有サーバーのこのフォルダに保存する」と書いたのに、実際は担当者のデスクトップや個人のメールボックスに残ったまま、という状態です。月次の締め作業の中に「今月受け取った電子データがすべて所定のフォルダに入っているか確認する」という一行を足しておくと、ずれに気づきやすくなります。

もうひとつは、人が増えたときです。ひとり社長のときに作った規程は責任者=社長で完結していますが、経理担当者を採用したら、誰が承認し誰が記録するのかを書き直す必要があります。役員の変更、会計ソフトの乗り換え、請求書の受け取り方の変更(郵送からメールへ、など)も見直しのきっかけです。

見直したら、改定日と改定内容を規程の末尾に残しておきましょう。「いつからこのルールで運用していたか」が後から追えることが、この文書の価値を支えます。なお、どこまでの対応が自社に求められるかは、取引の種類や規模によって変わります。判断に迷う部分や、インボイス制度と絡めた保存方法については、顧問の税理士に自社の状況を見せたうえで確認することをおすすめします。

よくある質問

事務処理規程は税務署に提出する必要がありますか。

一般には、提出して承認を受ける種類の書類ではなく、社内に備え付けておくものとされています。税務調査などで求められたときに提示できる状態にしておくことが前提です。提出の要否に関する最新の取り扱いは、国税庁の電子帳簿保存法のページを確認してください。

ひとり社長の会社でも事務処理規程は作ったほうがよいですか。

電子取引データをフォルダに保存しているだけで、訂正削除の履歴が残る仕組みを使っていないなら、作っておく意味があります。管理責任者も担当者も代表者一人で問題なく、ひな形の役職名を書き換えるだけで形にできます。数十分で整えられるので、後回しにするより先に済ませてしまうほうが楽です。

国税庁のテンプレートをそのまま使っても大丈夫ですか。

会社名・施行日・責任者・保存場所といった自社固有の情報を埋めれば、土台としては十分に使えます。ただし、書いた内容と実際の運用が食い違っていると意味が薄れるため、自社で回せる手順になっているかだけは確認してください。不安があれば税理士に一度目を通してもらうと安心です。

紙で受け取った請求書も事務処理規程の対象になりますか。

この規程が主に想定しているのは、メールやWebなど電子でやりとりした取引データです。紙で受け取った書類をスキャンして保存する場合は、別の要件の考え方が関わってきます。紙と電子が混在している会社は、どちらの扱いになるかを整理したうえで、詳細は国税庁の資料や税理士に確認してください。

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