合同会社の意思決定の仕組み|社員総会・議決権と機関設計の考え方

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

合同会社をつくると、「株主総会は開かなくていいの?」「取締役会は?」「出資額が多い人の意見が強くなるの?」という疑問が出てきます。合同会社は株式会社と違い、法律が決めた会議体がほとんどなく、意思決定のルールを定款で自分たちが設計する会社形態です。この記事では、法律上の原則がどうなっていて、どこを定款で変えられるのか、ひとり社長の場合と複数人の場合で何が変わるのかを、設計の順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 合同会社に株主総会や取締役会にあたる法定の機関はなく、業務執行は原則として社員(出資者)の過半数、定款変更などの重要事項は原則として総社員の同意で決まります。
  • 合同会社の議決権は原則として出資額ではなく「社員1人につき1議決権」で数え、出資比率に応じた議決権や議決権のない社員を置くことも、定款に定めることで設計できます。
  • 「社員総会」は法律上の必須機関ではありませんが、定款に開催方法や決議要件を書いておけば、会議体として運用し議事録を残すことができます。

合同会社に株主総会や取締役会はあるのか

結論から言うと、合同会社には株式会社の株主総会・取締役会にあたる法定の機関はありません。株式会社は「出資者(株主)」と「経営者(取締役)」を分ける前提で、会議体と決議要件が法律に細かく決められています。一方、合同会社は出資した人がそのまま経営に関わることを前提にした形態で、法律は最小限のルールだけを置き、あとは定款に任せています。

合同会社では、出資者のことを「社員」と呼びます。従業員という意味ではないので、ここは最初に押さえておきたいところです。そして、この社員が原則としてそのまま業務執行権を持ちます。つまり「株主総会で取締役を選ぶ」という段取り自体がなく、社員が集まって決める、というシンプルな構造になっています。

ただし「会議体がない」=「何も決めなくていい」ではありません。誰が何をどう決めるかを決めていないと、複数人で始めたときに必ず揉めます。合同会社の機関設計とは、実質的に「定款に意思決定ルールを書き込む作業」だと考えてください。

誰がどこまで決められるのか|3つの階層で整理する

合同会社の意思決定は、大きく3つの階層に分けて考えると整理しやすくなります。第一に、日常の業務執行。これは原則として業務を執行する社員の過半数で決まります。仕入れ、発注、採用、契約の締結といった日々の判断がここに入ります。

第二に、会社の基礎に関わる事項。定款の変更、新しい社員の加入、持分の譲渡などは、原則として総社員の同意が必要とされています。つまり、1人でも反対すれば通りません。少数でも拒否権を持つ、というのが合同会社のデフォルトです。

第三に、対外的な代表行為。契約書に会社として署名する人は代表社員です。代表社員を定款や社員の互選で定めた場合は、その人が会社を代表します。この3階層のうち、第一と第二は定款で要件を変えられる部分が多く、ここが機関設計の中心になります。迷ったら、まず「この決定はどの階層か」を分類することから始めてください。

合同会社の議決権はどう決まるのか|頭数か、出資比率か

合同会社でもっとも誤解が多いのが議決権です。株式会社では1株1議決権が基本なので、出資が多い人ほど発言力が強くなります。合同会社は違い、原則は「社員1人につき1議決権」です。出資額に大きな差があっても、定款に何も書かなければ頭数で数えることになります。

これは、少額出資の社員と多額出資の社員が同じ重みを持つということです。資金を多く入れた側にとっては想定外になりがちなので、出資比率と決定権を一致させたい場合は、定款に「議決権は出資の価額に応じる」といった趣旨の定めを置きます。逆に、技術や労力で参加するメンバーの発言力を確保したいなら、頭数のままにしておく選択もあります。

判断の順番としては、①出資額に差があるか、②将来メンバーを増やす予定があるか、③実際に手を動かす人と資金を出す人が別か、の順で見てください。①に差があり③も分かれるなら、出資比率型か、後述する議決権の個別設定を検討する価値があります。全員が同額出資で同じように働くなら、頭数のままで支障が出にくい構成です。

無議決権社員や社員総会は設計できるのか

「合同会社 無議決権」で検索される背景には、資金だけ出してもらい経営には関与しない人を入れたい、というニーズがあります。合同会社では、定款に定めることで、特定の社員の議決権を制限したり、業務執行に加わらない社員(業務を執行しない社員)として位置づけたりする設計が可能とされています。業務執行社員を定款で限定すれば、それ以外の社員は日常の業務決定に加わらない形になります。

ただし、議決権を制限しても、定款変更や持分譲渡など法律が総社員の同意を求めている事項については、定款で別段の定めを置かない限りその人の同意が必要になります。ここを見落とすと「議決権はないはずなのに、定款変更で止まる」という事態になります。制限を設けるなら、どの事項について誰の同意を要するのかまで定款に書き切るのが実務上の要点です。

社員総会についても同様です。法律上の必須機関ではありませんが、定款に「社員総会を置く」「毎年◯月に開催する」「招集は代表社員が行う」「決議は議決権の過半数による」といった規定を置けば、会議体として運用できます。社員が3人以上いる、あるいは今後増える見込みがあるなら、総会規定を入れておくと決め方が安定します。条文の書き方は影響が大きいため、司法書士に確認しながら進めると安心です。

ひとり社長の合同会社は、どこまで気にすればいいか

社員が自分1人だけの合同会社なら、日常の意思決定で誰かの同意を取る必要はありません。自分が唯一の社員であり、業務執行社員であり、代表社員でもあるからです。会議も招集も不要で、この身軽さは合同会社を選ぶ大きな理由の一つです。

ただし、記録がゼロでよいわけではありません。役員報酬の決定、事業年度の変更、本店移転、目的の追加といった会社の基礎に関わる事項は、決定した日付と内容を「同意書」や「決定書」として書面に残しておくと、登記や税務の場面で説明しやすくなります。特に役員報酬の扱いは税務上の論点になりやすいので、金額と決定時期については税理士に確認してください。

また、将来的に共同経営者を迎える、家族に持分を持たせる、外部から出資を受けるといった可能性があるなら、その時点で定款変更が必要になります。1人のうちは何も起きませんが、2人目が入った瞬間に「総社員の同意」の重みが効いてきます。設立時の定款に、加入手続と議決権の考え方だけでも入れておくと、後の手間が減ります。

設立前後にやること|定款への書き込みと記録の残し方

設立前にやることは、定款の作成です。合同会社の定款は公証人の認証が不要なので、設立準備の段階で内容を詰めておきます。書き込む項目としては、業務執行社員を誰にするか、代表社員を誰にするか、議決権の数え方、社員の加入・退社の手続、社員総会を置くかどうか、業務執行の決定要件、の6点を最低限チェックしてください。判断に迷う項目があれば、後から変えるより最初に決めたほうが手間がかかりません。

設立時には、定款、出資の履行を証する書面、代表社員の就任承諾に関する書類などを準備し、本店所在地を管轄する法務局に設立登記を申請します。業務執行社員と代表社員は登記事項に関わるため、ここで決めた内容が公示されます。必要書類の詳細や様式は法務局の案内を確認してください。

設立後は、重要な決定をするたびに書面を残す習慣をつけます。日付、決定事項、同意した社員、という3点が入っていれば形式は問われにくく、A4一枚でも構いません。登記が必要な変更(代表社員の変更、本店移転、目的変更など)は期限内の申請が求められるため、決定書と登記申請をセットで動かすと漏れが出にくくなります。定款の条文設計や登記手続で迷ったときは司法書士に、報酬や社員の所得の扱いについては税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問

合同会社でも株主総会の議事録は必要ですか。

合同会社に株主総会はないため、株主総会議事録という書類は作りません。代わりに、社員の同意書や業務執行社員の決定書といった形で記録を残すのが一般的です。定款で社員総会を置いている場合は、その議事録を作成しておくと後の説明がしやすくなります。

出資額が多い社員の意見を通りやすくできますか。

定款に「議決権は出資の価額に応じる」といった趣旨の定めを置くことで、出資比率に連動させる設計が可能とされています。何も定めなければ社員1人につき1議決権が原則なので、出資額に差があるなら設立時に決めておくのが安全です。条文の表現は影響が大きいため、司法書士に確認しながら作成してください。

合同会社に取締役や監査役を置くことはできますか。

合同会社には取締役・監査役という法律上の役職はなく、登記されるのは業務執行社員と代表社員です。社内的に「取締役」という肩書きを名刺などで使う運用をしている会社もありますが、登記上の地位とは別物になります。対外的な誤解を避けたい場合は、代表社員という表示を併記する方法がよく使われます。

社員が2人で意見が割れたらどうなりますか。

業務執行の決定は原則として過半数によるため、2人で意見が割れると決まらない状態になります。この膠着を避けたいなら、業務執行社員を1人に絞る、特定の事項は代表社員が決められると定款に書く、といった設計をあらかじめ入れておく方法があります。すでに対立が起きている場合は、弁護士に相談することを検討してください。

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