AI議事録の精度が上がらないときの対処|話者識別と専門用語の設定

・会議・情報共有・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

AI議事録ツールを入れたのに、文字起こしがぐちゃぐちゃで結局手で直している。話者が「話者1」「話者2」と入れ替わる。自社の製品名や取引先名がまるで別の言葉に化ける。こうした「うまくいかない」は、たいていツールの性能ではなく、入口の音声と設定でかなり改善します。この記事では、精度が上がらないときに何を、どの順番で直せばよいかを整理します。

この記事の結論

  • AI議事録の精度が低いときは、①音声の入り方 ②話者の分け方 ③用語登録 ④会議の進め方、の順に見直すと原因を切り分けやすくなります。
  • 話者識別がずれる主因は、1本のマイクに複数人の声が混ざること。オンライン会議は各自が自分の端末から入る、対面は話者ごとに音声を分ける工夫が効きます。
  • 専門用語や社名の誤変換は、ツールの単語登録(辞書)に読み仮名つきで事前登録し、議題や参加者名を会議前に共有しておくと減らせます。

AI議事録の精度が上がらない原因は、だいたい4つに分かれる

「AI議事録が使えない」と感じるとき、症状は人によってバラバラに見えますが、原因は大きく4つに整理できます。①音声そのものが聞き取りづらい(マイク・雑音・音割れ)、②誰が話したかを分けられていない(話者識別・話者分離)、③固有名詞や専門用語をツールが知らない、④会議の進め方が文字起こしに向いていない、の4つです。

直す順番も、この番号の順がおすすめです。音声が濁っていれば、どれだけ辞書を整えても結果は変わりません。逆に、音声がクリアになるだけで話者識別も用語認識もまとめて改善することがあります。まずは録音データを自分で聞き返して、「人間が聞いても聞き取りにくいか」を確かめてください。

人間が聞いて聞き取れないなら、原因は①です。人間なら分かるのにAIが間違えるなら、②〜④を疑います。この切り分けをせずに設定をいじると、時間だけが消えていきます。

まず音声を直す:マイク・環境・録音方法の見直し

最初に見るのはマイクです。ノートPC内蔵マイクは、キーボードの打鍵音や空調音、机への反響を一緒に拾いがちです。外付けのヘッドセットやピンマイク、会議室用のスピーカーフォンに替えるだけで、文字起こしの質が変わることがあります。会議室に据え置きのマイクがある場合は、話者との距離が遠すぎないかを確認してください。

次に環境です。空調の真下、廊下に面したドアの近く、複数の会議が同時に行われるオープンスペースは不利です。オンライン会議なら、発言しない人のマイクをミュートにするだけで、生活音やタイピング音の混入がかなり減ります。

録音方法も見直します。スマートフォンを会議室の真ん中に置いて全員の声を1本で拾う方式は、手軽な反面、遠い席の声が小さく、話者の区別もつきにくくなります。オンライン会議ツールの録音機能や、AI議事録ツールを会議に参加させる方式が使えるなら、そちらのほうが安定しやすい傾向があります。使える機能や対応会議ツールは各社で異なるため、公式サイトの仕様を確認してください。

話者識別・話者分離がずれるときの直し方

「話者1」「話者2」が途中で入れ替わる、2人の発言が1人にまとめられる。これが話者識別(話者分離)の失敗です。最大の原因は、複数人の声が1本のマイクに重なって入ることと、発言が短く被っていることです。

対策の順番はこうです。まず、オンライン会議なら参加者が同じ部屋に集まらず、各自が自分の端末・自分のマイクから入る。これだけで音声チャンネルが分かれ、識別しやすくなります。同じ部屋から複数人が入る場合は、ハウリングを避けるため1台だけスピーカーを出し、他はイヤホンにするなどの工夫が必要です。

対面会議の場合は、発言の頭に名前を言う運用が効きます。「田中です、この件ですが」と切り出すだけで、後から文字起こしを読んだときに人間が割り当て直せます。ツールによっては参加者名を事前に登録したり、声のサンプルを登録して識別精度を高めたりする機能があります。対応状況は製品ごとに違うので、設定画面とヘルプを一度ひととおり見ておくと無駄が減ります。

それでもずれる場合は、完璧な自動識別を諦め、「発言内容は自動、話者の割り当ては会議後に3分で直す」という分担にしたほうが早いこともあります。

専門用語・社名・略語を正しく認識させる設定

自社製品名、取引先名、業界の略語、人名。これらは一般的な言葉ではないため、そのままでは誤変換されやすい部分です。多くのAI議事録ツールには、単語登録(用語辞書・カスタム辞書)の機能があります。ここに「表記」と「読み」をセットで登録しておくのが基本です。

登録するリストは、いきなり網羅しようとせず、過去の議事録で実際に間違えられた言葉から作ります。直近数回分の文字起こしを開き、手で直した箇所をコピーしていけば、自社に本当に必要な辞書が10〜20語で出来上がります。そこから運用しながら足していくほうが続きます。

登録のコツは3つ。読み仮名は実際に社内で発音しているとおりに入れる(正式名称の読みと違うことがあります)、アルファベットの略語はカタカナ読みも併せて登録する、同音異義で迷いやすい語は文脈がわかる長めの単位で登録する、です。

会議の前に、議題・参加者名・登場しそうな固有名詞をメモとして共有しておくのも地味に効きます。ツールによっては会議情報やアジェンダを読み込ませて要約精度を上げられるものもあるため、使える機能があるかを確認してみてください。

会議の進め方を変える:AIに拾わせやすい話し方のコツ

文字起こしの精度は、話し方でも変わります。特に効くのは、発言が重ならないことです。全員が同時に相槌を打つ、被せて話す、といった場面が多い会議は、人間が聞いても書き起こしづらく、AIも同じように苦戦します。司会を置き、指名して発言してもらう形にするだけで結果が変わります。

もうひとつは、結論を言葉にすることです。「ではその方向で」ではなく「A案で進めます。担当は営業部、期限は今月末です」と口に出す。要約機能は、議事録に書かれるべき決定事項が発言として存在しないと、うまく取り出せません。決定の瞬間に声に出す習慣は、AIを使わない議事録でも役立ちます。

会議の冒頭で「この会議は文字起こしツールで記録します」と伝え、参加者の了解を得る運用も整えておきましょう。外部の方が参加する会議では特に、事前に一言伝えておくとトラブルを避けやすくなります。録音データの保存場所や保存期間、社外共有の可否は、社内ルールとして決めておくと安心です。

それでも精度が上がらないときの見切りと使い分け

ひととおり試しても改善しない場合、そのツールが自社の会議形式に合っていない可能性があります。乗り換えを検討するときは、料金より先に「自社の会議のかたち」に合うかを見てください。オンライン中心か対面中心か、参加人数、外国語が混ざるか、専門用語の量、録音の持ち込み(既存の音声ファイルのアップロード)に対応しているか。この条件で候補を絞ってから、各社の公式サイトで最新の料金や機能を確認するのが順序です。

無料トライアルがあるなら、いちばん条件の悪い会議で試すのがコツです。うまくいく会議で試しても差が出ません。雑音が多い、人数が多い、専門用語だらけ、という会議で比べると、実力差が見えます。

そして、AIの出力をそのまま正式な議事録にしないことです。文字起こしは下書き、確定版は人が確認して残す。この二段構えにしておけば、精度が多少足りなくても業務は回ります。取締役会の議事録など、法令や定款で作成・保存が求められる書類は、記載事項や署名の扱いに決まりがあるため、形式については司法書士や弁護士に確認しておくと安心です。

また、会議の録音データや議事録に個人情報・取引先情報が含まれる場合、保存や外部サービスへのアップロードの扱いが問題になることがあります。自社のルール作りに不安があるときは、弁護士や、労務に関わる内容であれば社会保険労務士に相談してみてください。判断に迷う論点を早めに整理しておくと、後からの作り直しを避けられます。

よくある質問

AI議事録の話者識別がまったく合いません。どうすればいいですか。

まず、複数人が1本のマイクを共有していないかを確認してください。オンライン会議なら各自が自分の端末から入るだけで改善することが多いです。対面の場合は、発言の頭に名前を言う運用にして、会議後に人が割り当てを直す前提で使うほうが現実的です。

専門用語の誤変換を減らすには、何語くらい登録すればよいですか。

最初から網羅する必要はありません。過去数回の議事録で実際に手直しした言葉だけを、読み仮名つきで10〜20語ほど登録するところから始めるのが続けやすい方法です。運用しながら追加していけば、自社に必要な辞書が自然に育ちます。

AI議事録をそのまま正式な議事録として保存してもよいですか。

文字起こしは下書きとして扱い、内容を人が確認したうえで確定版を残す運用が無難です。株主総会や取締役会の議事録のように、法令や定款で記載事項が定められている書類もあるため、形式については司法書士や弁護士にご確認ください。

会議を録音してAIに文字起こしさせるとき、参加者への告知は必要ですか。

社外の方が参加する会議では特に、冒頭で記録することを伝えて了解を得ておくとトラブルを避けやすくなります。録音データの保存場所や保存期間、社外共有の可否も社内ルールとして決めておきましょう。個人情報の取り扱いに不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。