税務調査が入る確率と基準|法人が狙われやすいケースの見方

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「うちみたいな小さな会社にも税務調査って来るの?」——法人をつくって最初の決算を終えたあたりで、多くの人が一度は検索する疑問です。結論から言うと、売上がいくら以上なら来る、何年経ったら来る、といった公表された「基準値」はありません。ただ、どういう申告が確認の対象になりやすいかという考え方の筋道はあります。この記事では、確率の話をむやみに不安にならずに受け止めるための見方と、今日から手を打てる備えを整理します。

この記事の結論

  • 税務調査の対象になる売上金額や確率の明確な基準は公表されておらず、「◯円以上なら必ず来る」という線引きは存在しません。
  • 調査対象は、申告内容と他の資料との食い違い、期ごとの数字の不自然な動き、現金商売や多額の経費計上といった「説明が必要な点」の有無から選ばれると一般に言われています。
  • 赤字法人や設立間もない会社でも調査が行われることはあり、重要なのは調査の有無を気にすることより、帳簿と証憑を説明できる状態に保つことです。

税務調査が入る確率は公表されていない|法人が知っておきたい前提

まず前提として、「法人が税務調査を受ける確率は◯%」という形で使える確かな数字を、この記事では扱いません。調査の件数や実施状況に関する資料は国税庁から公表されていますが、年度や調査の種類によって集計の範囲が異なり、個々の会社の「来る確率」にそのまま当てはめられるものではないからです。最新の状況を知りたい場合は、国税庁の公表資料を直接確認してください。

もうひとつの前提は、「税務調査=不正を疑われている」ではない、ということです。申告内容の確認のために行われる任意調査が大半で、連絡を受けた時点で何かを決めつけられているわけではありません。慌てて資料を作り直すより、既にある帳簿と証憑をそろえる方が建設的です。

そのうえで、どういう申告が確認の優先度を上げやすいのか、という一般的な考え方は整理できます。以下はあくまで「説明を求められやすい論点」として読んでください。

税務調査はいくらから?売上規模より「数字の説明がつくか」

「税務調査 いくらから」という検索が多いのは、売上に閾値があるという前提で考えているからだと思います。実際には、売上規模そのものより、申告された数字が他の情報と整合しているかの方が論点になりやすいです。取引先が提出する法定調書や支払調書、金融機関や取引の記録など、税務署側は申告書以外の情報も持っています。それらと申告内容がかみ合わないときに、確認の必要が生じます。

とはいえ、売上規模がまったく無関係というわけでもありません。取引金額が大きくなれば、一つの処理の誤りが与える影響額も大きくなります。規模が大きい法人ほど確認の対象になりやすい傾向がある、という説明は一般によく聞かれます。

判断の順番としては、①売上や利益が前期から大きく動いていないか、②動いているなら理由を一言で説明できるか、③その理由を裏づける資料が手元にあるか、の順に自社を見てみてください。この3つが言えるなら、規模の大小はそこまで気に病む必要はありません。

狙われやすいとされるケース|この条件に当てはまるなら資料を先に整える

一般に「説明を求められやすい」と言われるケースを挙げます。まず、現金のやりとりが多い商売です。飲食、小売、美容、建設の一部など、現金売上の比率が高い業態は、売上の計上もれがないかという観点での確認が入りやすいとされます。該当する場合は、日々のレジ記録や売上日報を月次で締め、通帳の入金と突き合わせておく習慣が効きます。

次に、利益に対して経費の構成が不自然に見える場合です。交際費、外注費、旅費交通費などが前期比で大きく増えたとき、その増加に対応する事業上の理由と相手先が説明できるかが問われます。特に外注費は、実態として給与に近いのではないかという論点が出ることがあり、契約書や作業実績の記録があるかどうかで説明のしやすさが変わります。

三つめは、社長個人と会社のお金の境目が曖昧なケースです。役員貸付金が膨らんでいる、私的な支出が会社の経費に混ざっている、といった状態は、個人への利益供与と扱われることがあります。思い当たる場合は、早めに税理士に相談して整理の方針を決めておくのが安全です。

なお「業種ランキング」の形で順位づけされた情報が出回ることがありますが、集計の前提が不明なものも多く、自社の状況を判断する材料にはしにくいです。自社の業態で何が論点になりやすいかを、顧問税理士に聞く方が確実です。

赤字でも税務調査は来る?赤字法人・設立間もない会社の考え方

「赤字だから法人税が出ない、だから調査は来ない」と考える人がいますが、赤字でも調査が行われることはあります。理由はいくつかあります。源泉所得税や消費税は、法人税が赤字でも申告・納付の対象になり得ますし、赤字の中身そのもの——つまり計上された損失が事業に対応するものかどうか——が確認の論点になるからです。

また、繰越欠損金は将来の黒字と相殺される性質を持つため、赤字の内容が正しいかは後年度にも影響します。「今年は税額ゼロだから適当でいい」という処理は、数年後に効いてくることがあります。

設立間もない会社についても同様です。何年目から調査が来る、という決まった時期はありません。初回の決算から、売上の計上時期、役員報酬の決め方、設立費用の処理など、確認されやすい論点はひと通りあります。最初の決算で型をつくっておくと、その後が楽になります。

今日からできる備え|帳簿・証憑・説明メモの3点セット

備えの中心は、特別なことではなく「後から説明できる状態」をつくることです。第一に、帳簿と証憑のひも付けです。会計ソフトの仕訳と、請求書・領収書・契約書が突き合わせられるように、月次でまとめて保存します。電子でやりとりした請求書や領収書の保存については電子帳簿保存法の考え方が関わるため、具体的な要件は国税庁の資料を確認するか、税理士に確認してください。

第二に、イレギュラーな取引のメモです。高額な資産を買った、大口の値引きをした、役員報酬を期中に変更した——こうした出来事は、理由と経緯を数行書いて、その期のフォルダに一緒に置いておきます。数年後の自分が思い出せないことを、調査の場で思い出すのは難しいからです。

第三に、月次決算を回すことです。年に一度まとめて処理する運用だと、数字の不自然さに自分で気づけません。毎月、売上・粗利・主要経費を前月と前年同月で見比べ、動いた項目に説明をつける。これを続けていれば、調査の連絡が来ても、資料を探し回る時間がぐっと減ります。

調査の連絡が来たらどうする?最初にやることの順番

税務調査は、原則として事前に連絡が入ります(事案によって例外的な扱いもあります)。連絡を受けたら、まず日程・対象期間・対象税目を確認し、メモに残してください。その場で即答せず、「顧問税理士と調整して折り返します」と伝えて構いません。

次に、顧問税理士へ連絡します。税理士が税務代理権限証書を提出している場合、連絡や立ち会いの窓口を税理士が担うことがあります。顧問がいない場合は、この段階で税理士に相談し、立ち会いを依頼するかどうかを決めます。対象期間の申告書、総勘定元帳、請求書・領収書、通帳、契約書などを期ごとにまとめておくと進行が早くなります。

当日は、聞かれたことに事実で答えるのが基本です。分からないことを推測で答えると、後で訂正が必要になります。「確認して回答します」で構いません。見解が分かれる論点が出たときは、その場で結論を出さず、税理士を交えて検討する流れにするのが現実的です。

迷ったら税理士に相談を

税務調査の対象になりやすいかどうかは、業種、取引の形、過去の申告内容によって論点が変わります。この記事で挙げた考え方は一般的な整理であり、個々の会社の処理が適切かどうかの判断は、申告内容を見た上でないとできません。

役員貸付金が増えている、外注費の扱いに自信がない、現金売上の管理方法を決めかねている——こうした心当たりがあるなら、調査の連絡を待たずに税理士へ相談してください。処理の方針を先に決めておく方が、後から説明を組み立てるより負担が小さく済みます。顧問契約の形や立ち会い対応の範囲は事務所ごとに異なるため、契約前に確認しておくとよいでしょう。

よくある質問

法人を設立して何年目から税務調査が来ますか?

何年目から、という決まった時期は公表されていません。設立間もない会社に調査が入ることもあれば、長く来ないこともあります。年数を気にするより、各期の帳簿と証憑を説明できる状態に保っておくことが現実的な備えです。

赤字の法人には税務調査は来ませんか?

赤字でも調査が行われることはあります。消費税や源泉所得税は法人税の赤字とは別に扱われますし、繰越欠損金として将来に影響するため、赤字の内容自体が確認されることもあります。

売上がいくら以上だと税務調査の対象になりますか?

「◯円以上」という公表された基準はありません。規模が大きいほど確認の対象になりやすい傾向はあるとされますが、金額そのものより、申告された数字と他の資料の整合性や、数字の動きに説明がつくかが論点になりやすいです。

税務調査の連絡が来たら、税理士に立ち会ってもらうべきですか?

税務の論点について説明が必要になる場面が多いため、顧問税理士がいれば連絡して対応を相談するのが一般的です。顧問がいない場合も、立ち会いを依頼できるか税理士に相談してみてください。対応範囲や費用の考え方は事務所ごとに異なるため、事前に確認しましょう。

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