役員変更登記の手続き|重任・辞任の必要書類と期限、過料のリスク

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「役員は自分ひとりだから登記はいらない」と思っていたら、ある日、法務局から通知が届いた——ひとり社長の会社で意外と多いのが、役員変更登記の出し忘れです。取締役や監査役に変更があったときの登記は、会社の義務として定められていて、期限も決まっています。この記事では、重任・辞任・新任それぞれの場合に何を用意し、いつ、どこに出すのかを、判断の順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 役員の重任・辞任・新任などの変更があったときは、原則としてその変更の日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ役員変更登記を申請します。
  • 任期満了で同じ人が再び選任される「重任」も登記が必要で、変更がないように見えても任期ごとに手続きが発生します。
  • 登記を怠ると会社法上の過料が科されることがあり、長期間登記がない会社はみなし解散の対象になる場合があるため、任期管理をカレンダー化しておくことが有効です。

役員変更登記はいつまでに申請する?期限は変更の日から2週間

役員に変更があった場合、会社は原則として変更の日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ登記を申請することとされています。起算日は「登記した日」ではなく「変更が生じた日」です。定時株主総会で選任し直したなら総会の日、辞任なら辞任の効力が生じた日が基準になります。

2週間を過ぎてしまった場合でも、登記自体は受け付けてもらえます。遅れたからといって申請できなくなるわけではないので、気づいた時点ですぐ準備を始めるのが現実的な対応です。ただし遅延の事実は登記記録から分かるため、後述する過料の通知につながることがあります。

期限の管理でつまずきやすいのは、任期満了のタイミングを社長自身が把握していないケースです。定款に書かれた任期と、直近の選任日を確認し、次回の満了時期を今日のうちにカレンダーへ入れておくと抜けにくくなります。

「重任」とは?変わっていないのに登記が必要な理由

重任とは、任期満了により役員としての地位がいったん終了し、同じ人が同じ日に再び選任されて就任することをいいます。顔ぶれも肩書きも変わらないので「何も変わっていない」と感じますが、法律上は退任と就任が同時に起きているため、登記事項に変動が生じます。ここが登記漏れの最大の原因です。

取締役の任期は原則として選任後2年以内に終了する事業年度の定時株主総会の終結の時まで、監査役は4年が原則とされています。株式の譲渡制限がある、いわゆる非公開会社では、定款で最長10年まで伸長できる仕組みがあります。設立時に「任期10年」にしている会社は少なくないため、まずは定款の役員の任期の条項を確認してください。

任期を10年にしていると、10年に一度しか手続きが来ない分、完全に忘れてしまいがちです。反対に2年にしておくと手間は増えますが、役員構成を見直す機会が定期的に来るという面もあります。どちらが向くかは、株主や役員の入れ替わりが想定されるかどうかで判断するとよいでしょう。

ケース別:重任・辞任・新任で必要になる書類

どのケースでも共通して用意するのが、登記申請書と、選任を決議した株主総会議事録、そして株主リストです。取締役会を設置している会社で代表取締役を選定した場合は、取締役会議事録も必要になります。議事録は日付・出席者・決議内容が分かるように作成します。

重任・新任の場合は、就任する本人の就任承諾書を添えます。加えて、取締役会を設置していない会社の取締役が就任するときなどは印鑑証明書が求められ、そうでない場合は住民票の写しなどの本人確認証明書を添付する扱いになることがあります。どの書類が必要かは会社の機関設計によって変わるため、法務局が公開している記載例と添付書面の一覧で、自社の類型に当てはめて確認してください。

辞任の場合は、本人が作成した辞任届を添付します。辞任する人が代表取締役で、登記所に印鑑を提出している場合には、辞任届への押印や印鑑証明書の添付について個別の取扱いがあるため、事前確認をおすすめします。死亡による退任なら死亡届出書や戸籍の記載事項証明書など、事実を確認できる書面が必要です。

申請の手順:いつ・何を用意して・どこに出すか

手順は次の順番で進めます。まず、定款で任期と機関設計(取締役会の有無、監査役の有無)を確認します。次に、株主総会を開いて役員を選任し、議事録と株主リストを作成します。就任する人からは就任承諾書を、辞任する人からは辞任届を受け取ります。ここまでが総会当日までの準備です。

続いて登記申請書を作成し、添付書類を揃えて、本店所在地を管轄する法務局へ提出します。窓口持参のほか、郵送や、登記・供託オンライン申請システムを使った申請にも対応しています。申請時には登録免許税がかかり、資本金の額や申請内容によって金額が変わるため、法務局や国税庁の案内で最新の金額を確認してください。

代表取締役が交代する場合は、あわせて印鑑届書の提出を検討します。会社実印を引き継がず新たに届け出るなら、新代表者の個人の印鑑証明書が必要になります。登記完了後は、登記事項証明書を取得して、銀行口座の届出内容や取引先への通知、許認可を受けている場合は所管窓口への届出もあわせて進めると二度手間になりません。

登記しないとどうなる?過料とみなし解散のリスク

登記すべき事項を期間内に登記しなかった場合、会社法上、代表者個人に対して過料が科されることがあります。過料は刑事罰の「罰金」とは性質が異なり、前科にはなりませんが、通知は会社ではなく代表者個人宛に届きます。金額は事案によって裁判所が判断するため、一律ではありません。

もう一つ見落とせないのが、みなし解散の制度です。最後の登記から長期間(株式会社では12年とされています)何の登記もされていない会社は、法務大臣の公告と通知を経て、解散したものとみなされる扱いがあります。任期10年の会社が重任登記を忘れると、この期間に近づきやすいので注意が必要です。制度の詳細や手続の流れは、法務省の案内で確認してください。

実務上の影響もあります。登記事項証明書は金融機関の口座手続や、補助金・許認可の申請で提出を求められることがあり、記載内容が現状と食い違っていると、そこで手続が止まってしまいます。放置するほど必要書類が増える傾向があるので、気づいた時点で着手するのが結果的に一番早い対応です。

自分で申請するか、司法書士に依頼するか

判断の順番としては、まず「機関設計がシンプルか」を見ます。取締役が自分ひとり、株主も自分だけ、変更内容が重任のみ、という会社であれば、法務局の記載例を見ながら自分で申請している人もいます。法務局では登記手続の相談窓口が設けられていることが多いので、事前に予約して書類を見てもらう方法もあります。

一方で、次のいずれかに当てはまるなら、司法書士への依頼を検討する場面です。代表取締役の交代が絡む、役員の一部が辞任して同時に新任が入る、何年も登記をしていなくて過去の総会分をまとめて登記する必要がある、株主が複数いて議事録の作り方に迷う、といったケースです。添付書類の判断が会社ごとに変わるため、誤りがあると補正のやり取りが発生します。

登記の代理は司法書士の業務です。任期管理や議事録の作り方も含めて相談できますし、役員報酬の変更や社会保険の届出が同時に絡む場合は、税理士・社会保険労務士と分担して進めることになります。判断に迷う点や、期限を過ぎてしまった場合の進め方については、早めに司法書士へご相談ください。

よくある質問

役員変更登記の期限を過ぎてしまいました。どうすればいいですか。

期限を過ぎても登記の申請自体は可能ですので、必要書類を揃えて速やかに申請してください。遅延により代表者個人に過料が科されることがありますが、放置すると未登記期間がさらに延びてしまいます。複数年分をまとめて登記する場合は書類が複雑になりやすいため、司法書士への相談を検討してください。

役員が自分ひとりの会社でも、重任登記は必要ですか。

はい、取締役が一人であっても任期満了と再選が生じていれば、重任の登記が必要とされています。まず定款で任期を確認し、直近の選任日から満了時期を計算してください。変わっていないように見えても登記事項が動く点が、見落とされやすいところです。

辞任届に実印は必要ですか。

役職や会社の状況によって取扱いが異なり、特に代表取締役が辞任する場合には押印や印鑑証明書について個別の扱いがあります。自社のケースでどの書面が必要かは、法務局の添付書面の案内を確認するか、司法書士にご確認ください。

役員変更登記にかかる費用はどれくらいですか。

登記には登録免許税がかかり、資本金の額や申請内容によって金額が変わります。司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生します。金額は法務局・国税庁の案内や、依頼先の司法書士事務所の公式サイトで最新の情報を確認してください。

あわせて読みたい

「会社設立・登記」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。