定款の写しの取り方|なくした場合の再取得と他社の定款の調べ方
銀行口座の開設、補助金の申請、許認可の手続き。会社をつくったあと、あちこちで「定款の写しを出してください」と言われます。ところが、いざ探すと手元にない。そもそも定款はどこに保管されているのか、なくしたらどこで再取得できるのか。この記事では、定款の写しの作り方(原本証明の付け方)、紛失したときの再取得先、そして他社の定款を調べる方法までを、実際に動く順番で整理します。
この記事の結論
- 定款の写しは、手元の定款原本をコピーし、末尾に「この写しは原本と相違ありません」と記載して会社名・代表者名・日付を入れて押印する(原本証明)という形で会社自身が作成するのが基本です。
- 定款を紛失した場合は、株式会社なら設立時に認証を受けた公証役場で謄本を請求できることがあり、公証役場で取得できないときは登記申請の添付書類として法務局に保存されているものの閲覧を検討します。
- 他社の定款は原則として公開義務がなく、上場企業などが自社サイトのIR・コーポレートガバナンスのページで任意に公開しているものを見る方法が現実的です。
そもそも定款はどこにある?会社に保管されているのが原本です
定款は、会社の「基本ルールを書いた書類」です。役所が発行してくれる証明書ではなく、会社自身が作って保管するもの、という点がまず大事な前提になります。登記事項証明書(登記簿謄本)のように法務局の窓口で誰でも取れる、というものではありません。
株式会社の場合は、設立のときに公証人の認証を受けます。このとき、認証済みの定款(原本)は複数部つくられ、会社の保管用・登記申請用・公証役場の保存用に分かれるのが一般的です。つまり会社の本店には、認証済みの定款が1部ある状態が本来の姿です。合同会社は公証人の認証が不要なので、発起人・社員が作成した定款を会社で保管し、登記申請用の分を法務局に提出しています。
電子定款で設立した場合は、紙の冊子ではなくPDFファイルの形になっています。設立を依頼した司法書士や行政書士、税理士から受け取ったCD-ROMやUSBメモリ、あるいはメール添付のPDFが定款そのものです。「紙が見当たらない」というときは、まず設立時のデータを探してみてください。
なお、会社法では定款を本店(必要に応じて支店)に備え置くことが定められています。どこにしまったか分からない状態は、手続きのたびに困るだけでなく、備置の観点からも整えておきたいところです。
定款の写しの作り方|コピーに「原本証明」をつける
提出先から求められる「定款の写し」は、ほとんどの場合、会社が作った原本のコピーに原本証明を付けたものを指します。役所や公証役場が発行する特別な用紙があるわけではありません。
手順はシンプルです。まず、手元の定款原本(認証済みのもの、または電子定款のPDF)を、表紙から末尾まで、認証文や公証人の記載も含めて省略せずコピーします。次に、コピーの最終ページの余白、またはコピーの後ろに1枚紙を足して、「この写しは原本と相違ありません」「令和◯年◯月◯日」「本店所在地」「商号」「代表取締役◯◯◯◯」と記載し、会社実印(代表者印)を押します。複数枚にわたる場合は、ホチキス留めのうえ各ページの継ぎ目に契印を押すか、袋とじにして押印する形が一般的です。
電子定款しかない場合は、PDFをそのまま印刷して同じように原本証明を付けます。電子署名の情報は紙に印刷すると見えなくなるため、提出先によっては電子署名が確認できるPDFデータそのものの提出や、公証役場が発行する書面の謄本を求められることがあります。どの形で必要かは、提出前に提出先に一度確認しておくと二度手間になりません。
提出先が銀行なのか、補助金の事務局なのか、許認可の窓口なのかによって、求められる厳密さが変わります。「コピーでよい」「原本証明付きの写し」「公証役場発行の謄本」のどれかを先に聞いてから作業を始める、という順番がいちばん早道です。
定款をなくした場合の再取得|公証役場と法務局、どちらを先に当たるか
紛失に気づいたら、次の順番で当たってみてください。①設立を依頼した専門家や、設立時の書類一式が入った封筒・データ、②株式会社なら認証を受けた公証役場、③それでも出てこなければ法務局(登記所)に保存されている登記申請の添付書類、という順です。実務上は①で解決することが少なくありません。
②の公証役場は、株式会社(および一般社団法人・一般財団法人など認証が必要な法人)が対象です。認証した定款は公証役場で一定期間保存されており、会社などの請求により謄本の交付を受けられる場合があります。どの公証役場で認証したか分からないときは、設立当時の本店所在地を管轄する都道府県の公証役場に問い合わせるところから始めます。請求できる人の範囲、必要な書類(登記事項証明書、代表者の本人確認書類、印鑑証明書など)、保存されている年数は役場に確認してください。
③の法務局は、設立登記の申請書に添付された定款が「登記簿の附属書類」として保存されているケースです。閲覧には利害関係の疎明が必要とされ、保存期間にも限りがあります。合同会社のように公証人の認証がない法人では、この方法が候補になります。実際に閲覧できるか、どんな書類が必要かは、管轄の法務局に事前に電話で確認してから出向くのが確実です。
どうしても原本が見つからず、公証役場にも法務局にも残っていない場合は、株主総会(または社員総会)で現行の定款内容を確認・整備し、現在有効な定款として作り直す対応をとることがあります。過去の変更経緯をどう扱うかは登記内容とのすり合わせが必要になるため、司法書士に相談しながら進めることをおすすめします。
「定款の再発行」はできる?よくある誤解の整理
「定款を再発行してほしい」という相談は多いのですが、住民票や登記事項証明書のように、窓口で何度でも同じ証明書が出てくる仕組みではありません。定款は会社が作る書類なので、原則として会社が保管しているものが唯一の原本です。
一方で、公証役場に保存されている認証済み定款については、謄本の交付という形で再取得できることがあります。これは「再発行」というより「保存されている記録の写しをもらう」手続きに近いものです。設立から年数が経っている場合、保存期間との関係で取得できないこともあります。
また、設立後に定款変更(商号変更、目的の追加、本店移転など)をしている会社では、公証役場に残っているのはあくまで設立時の定款です。その後の変更は株主総会議事録などで積み上がっていくため、「現在の定款」は会社が変更内容を反映して管理しておく必要があります。設立時の定款だけを取り寄せても、提出先が求める最新版にならない点に注意してください。
この機会に、定款のPDFと、これまでの定款変更に関する株主総会議事録を同じフォルダにまとめておくと、次に求められたときに数分で対応できます。紙の原本は金庫や書類ケースへ、データはクラウドストレージへ、という二本立てが扱いやすい運用です。
他社の定款は見られる?楽天グループなど上場企業の調べ方
取引先や競合の定款を見たい、という場面もあります。結論から言うと、会社の定款は誰でも閲覧できる公開情報ではありません。会社法上、定款の閲覧・謄写を請求できるのは株主や債権者など一定の関係者とされており、無関係の第三者が自由に見られる仕組みにはなっていません。
現実的な調べ方は、上場企業が自社サイトで任意に公開しているものを探す方法です。多くの上場企業は、IR情報や「コーポレートガバナンス」「株主・投資家情報」のページに定款のPDFを掲載しています。楽天グループ株式会社のような有名企業の定款を探す場合も、まずは公式サイトのIR・コーポレートガバナンスの項目を見るのが早い手順です。掲載の有無や場所は会社によって異なるため、サイト内検索で「定款」と入れて探してみてください。
定款そのものが見つからない場合でも、商号・本店・目的・発行可能株式総数・役員などの基本情報は、法務局で取得できる登記事項証明書や、登記情報提供サービスで確認できます。事業目的や機関設計を知りたいだけなら、登記情報で足りることが多いです。上場企業なら、有価証券報告書に会社の概況や株式の状況が記載されているため、あわせて参照すると全体像がつかめます。
自社の定款を書くときの参考にしたい、という目的であれば、他社の定款を集めるより、公証役場や専門家が示す一般的な記載例を土台にするほうが安全です。他社の条項をそのまま写すと、自社の機関設計や登記内容と食い違う条文が混ざることがあります。
提出先別・どの形で用意すればいいかの判断基準
銀行口座の開設では、登記事項証明書とあわせて定款の写しを求められることがあります。この場合は原本証明を付けたコピーで足りるケースが多いものの、金融機関ごとに扱いが異なるため、必要書類の一覧を先に取り寄せて確認してください。窓口に行ってから作り直すのは時間の無駄になります。
補助金・助成金や許認可の申請では、申請要領に「定款の写し(原本証明のあるもの)」「直近の定款」といった指定が書かれていることがあります。ここで見るべきは、①写しでよいか謄本が必要か、②最新の内容が反映されているか、③申請する事業が定款の目的に含まれているか、の3点です。③が欠けていると、定款変更と目的追加の登記が先に必要になることがあります。
許認可の種類によっては、事業目的の記載内容が審査対象になります。目的の追加が必要そうだと感じたら、申請の直前ではなく、準備段階で司法書士に相談しておくと、登記のスケジュールも含めて逆算できます。
定款の紛失、目的の追加、機関設計の変更など、登記と結びつく論点は自己判断で進めると後から修正が効きにくくなります。判断に迷う場面では、登記まわりは司法書士、税務上の取り扱いは税理士、契約や株主間の取り決めに関わる部分は弁護士と、内容に応じて専門家に確認しながら進めてください。
よくある質問
定款はどこでもらえますか?法務局で取得できますか?
定款は登記事項証明書のように法務局の窓口で誰でも取得できる書類ではありません。会社が保管している原本が基本で、株式会社であれば設立時に認証を受けた公証役場で謄本を請求できる場合があります。法務局に保存された登記申請の添付書類を閲覧する方法もありますが、利害関係の疎明や保存期間の条件があるため、管轄の法務局に事前に確認してください。
定款のコピーを提出するとき、原本証明は必要ですか?
提出先によります。単なるコピーで足りる場合もあれば、「この写しは原本と相違ありません」の一文と会社名・代表者名・日付・代表者印を入れた原本証明を求められる場合もあります。作業を始める前に、提出先の必要書類一覧で指定を確認するのが確実です。
電子定款しかない場合、写しはどう作ればいいですか?
PDFを印刷し、紙の定款と同じように原本証明を付けるのが一般的な対応です。ただし電子署名の確認が必要な提出先では、PDFデータそのものや公証役場発行の書面の謄本を求められることがあります。どの形式が必要かを先に問い合わせておくと、やり直しを避けられます。
設立後に商号や目的を変更しました。公証役場の謄本で足りますか?
公証役場に保存されているのは設立時に認証を受けた定款であり、その後の変更は反映されていません。最新の内容を示す必要がある場合は、変更を反映した現行定款を会社側で整えて写しを作る形になります。変更の経緯や登記内容との整合が不安なときは、司法書士に確認しながら進めてください。