定款認証が不要なケース|合同会社・持分会社や組織変更の場合
「定款は公証役場で認証してもらうもの」と聞いて、合同会社をつくるつもりの方が公証役場に電話し、「うちでは扱いません」と言われて戸惑う——これはよくある行き違いです。定款の認証が求められるのは、会社の種類と手続きの種類で決まっています。この記事では、自分のケースで認証がいるのかを順番に確かめられるように、判断の基準と、認証が不要な場合の進め方を整理します。
この記事の結論
- 定款の認証が必要とされるのは主に株式会社・一般社団法人・一般財団法人を新しく設立するときで、合同会社・合名会社・合資会社といった持分会社の設立では認証は不要とされています。
- 株式会社であっても、設立後に定款を変更する場合は株主総会の決議と議事録で足り、変更のたびに公証人の認証を受ける必要はないとされています。
- 株式会社から合同会社への組織変更、新設分割・新設合併・株式移転による設立など、既存の会社を土台とする手続きでは、設立時と同じ意味での定款認証は求められないのが一般的な取り扱いです。
まず確認:定款認証が必要なのはどんなときか
定款認証とは、作成した定款が正当な手続きでつくられたことを公証人に確認してもらう手続きです。設立時に作成する定款(原始定款)について、法律で認証が効力の要件とされている法人類型があり、代表例が株式会社です。株式会社は、公証人の認証を受けた定款でなければ効力を生じないとされているため、設立登記の前に公証役場での手続きが入ります。
一方で、すべての法人・すべての手続きに認証が必要なわけではありません。判断は「①どの種類の法人か」「②新しくゼロから設立するのか、既存の会社を組み替えるのか」「③設立時の定款か、設立後の変更か」の3点をこの順に見ると整理しやすくなります。
この3点のうち、①が持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)であれば、その時点で認証は不要と考えて差し支えないケースがほとんどです。①が株式会社でも、②が組織変更や新設分割など、③が設立後の変更であれば、認証の話は出てきません。
合同会社など持分会社の定款に認証は不要
合同会社(LLC)、合名会社、合資会社は「持分会社」とまとめて呼ばれます。これらを設立するとき、定款は必ず作成しますが、公証人の認証を受けることは求められていません。社員(出資者)が自ら定款を定め、署名または記名押印すれば、そのまま設立登記に使えるのが通常の流れです。
そのため、合同会社の設立では公証役場に行く工程がまるごとなくなります。定款を作ったら、出資金を払い込み、法務局に設立登記を申請する、という流れになります。電子定款にするか紙にするかで印紙の扱いが変わる点は株式会社と同じ考え方ですので、紙で作る場合の収入印紙の要否は法務局や専門家に確認してください。
注意したいのは、「認証が不要=定款の中身は自由でよい」ではないことです。商号、目的、本店所在地、社員の氏名・住所、出資の目的と価額、業務執行社員の定めなど、登記や運営の前提になる事項は、後から揉めないよう最初にきちんと書いておく必要があります。認証というチェックが入らない分、内容の作り込みは自分側の責任になると考えてください。
組織変更・新設分割・新設合併・株式移転の場合
株式会社を合同会社に変える、あるいは合同会社を株式会社に変える手続きを「組織変更」といいます。この場合、組織変更計画の中で変更後の会社の定款にあたる内容を定めますが、新しく会社を設立するわけではなく法人格は続いているため、設立時の定款認証にあたる手続きは求められないのが一般的な取り扱いです。
新設分割・新設合併・株式移転で新しい株式会社ができる場合も同じ考え方で、分割計画書や合併契約書などの中で新会社の定款内容を定め、公証人の認証を経ずに登記へ進むのが通常です。これらは既存の会社の意思決定(株主総会の特別決議など)と債権者保護手続を経ている点が、ゼロからの設立と異なります。
ただし、組織再編は債権者への公告・催告、反対株主の買取請求、効力発生日の設定など、スケジュール管理の難度が高い手続きです。認証が不要だから簡単、ということではありません。計画書の記載事項が足りないと登記が通らないため、早い段階で司法書士に相談しながら日程表を組むことをおすすめします。
設立後の定款変更・特例有限会社はどうなるか
株式会社を設立したあと、商号を変えたい、事業目的を追加したい、本店を移したい、といった場面では定款を変更します。この変更は株主総会の特別決議で行い、議事録を残すことで足りるとされており、変更のたびに公証人の認証を受け直す必要はありません。登記事項に関わる変更であれば、決議のあと法務局に変更登記を申請します。
いわゆる「有限会社」として残っている会社(特例有限会社)も同様で、既に存在している会社ですから、定款を変更する際に認証は必要ありません。なお、特例有限会社が商号を変更して株式会社へ移行する手続きは、新規設立ではなく商号変更として扱われるため、この場面でも設立時の定款認証は登場しないのが通常の理解です。
一方で、認証が不要でも「原本をきちんと保管する」ことは変わりません。現在の定款がどれなのか分からなくなる会社は少なくありません。変更のたびに最新版を作り直し、決議した株主総会議事録とセットで保管しておくと、許認可申請や融資の審査、口座開設の際にすぐ出せます。
認証が不要なケースの進め方と、書類の残し方
認証がないケースの手順は、おおむね「定款(または計画書)を作る→社内の決定手続を行う→必要な払込みや公告等を済ませる→法務局に登記を申請する」という流れになります。合同会社の設立なら、定款作成、出資金の払込み、払込証明書や代表社員の就任承諾書などをそろえて、本店所在地を管轄する法務局へ設立登記を申請します。
組織変更や新設分割の場合は、計画書の作成、株主総会等の決議、債権者保護手続、効力発生日の到来、という順番があり、公告期間を確保する必要があります。効力発生日から登記申請までの期限も決まっているため、逆算してスケジュールを引くことが大切です。必要書類の細かい構成は事案ごとに変わるので、法務局の登記手続案内や司法書士に確認してください。
書類の残し方としては、定款・議事録・計画書・払込みの記録を、日付順にまとめて電子と紙の両方で保管しておくと安心です。会社として作成・受領した書類の保存方法については、電子帳簿保存法など関連する制度の考え方もありますので、要件の詳細は国税庁など所管官庁の資料を確認するか、税理士に相談してください。
迷ったときの確認先
自分のケースが「認証がいるのかいらないのか」でどうしても判断がつかない場合、公証役場に事前相談すると、そもそも扱う手続きかどうかを含めて教えてもらえます。登記に必要な書類の構成は法務局の登記手続案内で確認できます。いずれも事前予約制のことが多いので、日程には余裕を持たせてください。
費用が発生する手続きについては、公証役場や法務局の公式サイトで最新の金額を確認してください。専門家に依頼する場合の報酬も事務所ごとに異なりますので、見積もりを取って比べるとよいでしょう。
組織変更や組織再編、特例有限会社の株式会社化など、手続きの順番を間違えると登記がやり直しになる場面では、早めに司法書士に相談するのが現実的です。税務上の扱いが絡む場合は税理士にも並行して確認しておくと、後からの修正を減らせます。
よくある質問
合同会社の定款は公証役場で認証してもらわなくてよいのですか。
合同会社をはじめとする持分会社の設立では、公証人による定款認証は求められていないとされています。定款を作成して社員が署名・押印し、出資金の払込みを済ませたうえで、法務局に設立登記を申請する流れが一般的です。紙で作成する場合の印紙の要否など細かい点は、法務局や司法書士に確認してください。
株式会社の定款を変更するときも認証が必要ですか。
設立後の定款変更は、株主総会の特別決議と議事録で足りるとされており、そのたびに公証人の認証を受け直す必要はないとされています。登記事項に関わる変更であれば、決議後に法務局へ変更登記を申請します。最新の定款と議事録は必ずセットで保管しておきましょう。
株式会社から合同会社に組織変更する場合、定款認証は必要ですか。
組織変更は新たな会社を設立する手続きではなく法人格が続くため、設立時の定款認証にあたる手続きは不要とされるのが一般的です。ただし組織変更計画の作成、株主総会の決議、債権者保護手続など、期間を要する工程があります。日程の組み方を含めて司法書士に相談することをおすすめします。
新設分割で新しい会社をつくる場合はどうなりますか。
新設分割や新設合併、株式移転で新会社が設立される場合、新会社の定款の内容は分割計画書や合併契約書などの中で定められ、公証人の認証は経ないのが通常の取り扱いです。とはいえ記載事項に漏れがあると登記が進まないため、計画書の段階で専門家のチェックを受けると安心です。