定款認証の委任状の書き方|代理人に頼む場合の押印と綴じ方
株式会社をつくるとき、公証役場での定款認証には原則として発起人全員が出向く必要があります。とはいえ、全員の予定を合わせるのは現実的でないことも多く、実務では「委任状を作って代理人に行ってもらう」方法がよく使われます。この記事では、委任状に何を書き、どこに誰の印を押し、定款を付ける場合はどう綴じるのかを、作る順番に沿って整理します。
この記事の結論
- 定款認証の委任状は、発起人が「この定款の認証手続きを代理人に委任する」ことを書いた書面で、発起人の実印を押し、印鑑証明書を添えて公証役場に提出するのが一般的です。
- 発起人が複数いる場合は、全員分の委任状(連名または個別)を用意し、それぞれが実印を押して各自の印鑑証明書を添付します。
- 委任状に定款の内容を添付する形式をとるときは、委任状と定款を一体の書面として綴じ、境目に契印を押す(または袋とじにして製本テープにまたがる形で押印する)のが基本です。
定款認証で委任状が必要になるのはどんなときか
公証役場での定款認証は、本来は発起人本人が公証人の面前で手続きをするものです。発起人が一人なら自分が行けば済みますが、発起人が複数いる場合や、本人が遠方・多忙で出向けない場合には、代理人に手続きを任せるために委任状を用意します。
実務でよくあるのは、次の三つのパターンです。①発起人の一人が代表して行き、他の発起人から委任を受ける、②司法書士や行政書士などの専門家に手続きを依頼する、③発起人全員が行けないため、家族や社員など第三者に頼む。①のケースがもっとも多く、この場合は「行かない発起人」の分だけ委任状を作ればよいことになります。
委任状は、公証役場に提出する書類の一部です。認証を受ける公証役場によって、様式の希望や添付書類の扱いに細かな違いがあることがあります。作り始める前に、認証を予定している公証役場へ電話やメールで「代理人が行く予定である」と伝え、必要書類の確認をしておくと手戻りが減ります。
委任状に書く項目と、書き方の基本
委任状に決まった書式はありませんが、盛り込む内容はおおむね共通しています。①委任状というタイトル、②代理人の住所・氏名、③委任する事項(この定款の認証に関する一切の権限を委任する旨)、④委任の対象となる会社の商号、⑤作成日、⑥委任者である発起人の住所・氏名と押印、という構成です。住所と氏名は、印鑑証明書の記載どおりに書くのが原則です。
委任事項は「別紙定款の認証手続きに関する一切の件」「原始定款の認証及びその受領に関する一切の件」といった形で書きます。認証済み定款の謄本を受け取る行為まで含めておくと、当日の受け渡しで困りません。細かな文言は公証役場から雛形をもらえることも多いので、まずは尋ねてみるのが早道です。
日付の入れ忘れ、住所の番地表記の省略(「1-2-3」と書いてしまうなど)はよくある差し戻し原因です。印鑑証明書を手元に置き、番地や「丁目」「番」「号」の表記までそろえて書くようにしてください。
押印は実印で。印鑑証明書との関係を押さえる
委任状の押印は、発起人個人の実印(市区町村に登録した印鑑)で行い、その印鑑証明書を添付するのが一般的な取り扱いです。認め印では受け付けられないことが多いため、登録済みの印鑑かどうかを先に確認しておきましょう。印鑑登録をしていない場合は、市区町村での登録から始める必要があります。
印鑑証明書は、発行から一定期間内のものを求められるのが通例です。期間の目安は公証役場の案内に従ってください。早く取りすぎて期限切れになるより、公証役場の予約日が決まってから取得するほうが安全です。
外国に居住していて印鑑登録がない発起人については、サイン証明(署名証明)などで代える扱いがとられることがあります。この場合は取り扱いが個別に異なるため、早い段階で公証役場と、必要に応じて司法書士に相談してください。
発起人が複数いる場合の委任状の作り方
発起人が複数いるときは、「出席しない発起人全員分」の委任があることが必要です。作り方は二通りあり、①発起人ごとに一枚ずつ委任状を作る(個別方式)、②一枚の委任状に全員が連名で署名押印する(連名方式)のどちらでも差し支えないのが一般的です。
迷ったら、次の順で決めてください。発起人が離れた場所にいて郵送でやり取りする必要があるなら、個別方式のほうが同時進行できて早く進みます。全員が同じ場所で書類にサインできるなら、連名方式のほうが枚数が減って管理が楽です。いずれの場合も、押印はそれぞれの実印で行い、印鑑証明書も人数分そろえます。
発起人の一人が代理人になるパターンでは、その人は「委任を受ける側」なので、自分あての委任状は不要です。ただし本人としての本人確認書類や印鑑証明書は求められることがあるため、持ち物として別に確認しておきましょう。
定款を添付するときの綴じ方・袋とじ・契印
委任状に「別紙定款のとおり」と書いて定款を添付する形式をとる場合、委任状と定款は一体の書面として扱われるため、バラバラにならないよう綴じます。方法は二つあり、①ホチキス留めしてページの見開き部分すべてに契印を押す、②袋とじ(製本テープで背を包む)にして、テープと表紙・裏表紙にまたがるように押印する、のいずれかです。
ページ数が多いときは袋とじのほうが押印箇所が少なく、実務的に扱いやすい方法です。押す印は、委任状に押したものと同じ印(発起人の実印)をそろえるのが基本で、発起人が複数いれば全員分を同じ位置付近に押します。押し忘れが一か所でもあると作り直しになるので、綴じ終わったら最後にページをめくりながら確認してください。
なお、電子定款で認証を受ける場合は、定款そのものはPDFに電子署名を付して送信する扱いになるため、紙の綴じ方の話とは前提が変わります。電子定款の委任状をどう扱うかも公証役場ごとに案内があるので、電子で進めるのか紙で進めるのかを先に決めてから、委任状の形式を確認するとスムーズです。
復代理・当日の持ち物・よくあるつまずき
委任を受けた代理人が、さらに別の人に手続きを任せることを復代理といいます。復代理を使うには、もとの委任状に「復代理人を選任する権限」が含まれていることが前提になるのが通常です。専門家に依頼して、その事務所の補助者が窓口に行くようなケースがこれにあたります。後から慌てないよう、委任事項に復代理人選任の権限を入れておくか、公証役場に取り扱いを確認しておきましょう。
当日は、委任状と発起人の印鑑証明書のほか、代理人本人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)と認め印を求められることが一般的です。認証済み定款の謄本の必要部数や手数料の支払い方法は、公証役場の案内に従ってください。金額は各公証役場・公証人連合会の公式の案内で最新の情報を確認しましょう。
よくあるつまずきは、住所表記の不一致、押印の押し忘れ、印鑑証明書の期限、そして商号や本店所在地が定款と委任状でずれているケースです。作り終えたら、定款と委任状を並べて商号・発起人名・住所を一字ずつ突き合わせる時間を取ってください。
定款の内容そのものに不安がある場合や、発起人に海外居住者・法人が含まれる場合は、取り扱いが個別に異なることがあります。設立登記まで見据えて進めたいときは、司法書士に相談したうえで書類を整えると安心です。
よくある質問
定款認証の委任状に決まった書式はありますか。
法律で定まった書式はなく、委任者・代理人・委任事項・商号・日付が分かる形であれば足りるのが一般的です。ただし公証役場が雛形を用意していることが多いので、まずは認証を受ける役場に問い合わせて、その様式に沿って作るのが確実です。
発起人が複数のとき、委任状は一枚にまとめてよいですか。
一枚に全員が連名で署名押印する形でも、発起人ごとに一枚ずつ作る形でも差し支えないのが通常です。郵送でやり取りするなら個別、全員が集まれるなら連名、と決めるとよいでしょう。いずれも各自の実印での押印と印鑑証明書の添付が求められます。
委任状の押印は認め印でもよいですか。
実印での押印と印鑑証明書の添付を求められるのが一般的です。印鑑登録をしていない場合は、市区町村での印鑑登録から進める必要があります。取り扱いは公証役場に事前確認してください。
代理人がさらに別の人に頼むことはできますか。
復代理人を選任する権限が委任状に書かれていれば認められる扱いが一般的です。専門家に依頼する場合は、その事務所の担当者が窓口に行くこともあるため、委任事項に復代理人選任の権限を入れておくか、公証役場に確認しておくと安心です。