電子定款の作り方|PDFへの電子署名とオンライン認証・提出の手順

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくると決めて最初にぶつかる壁が、定款です。紙で作るか電子で作るかによって、用意するもの・かかる費用・公証役場とのやりとりが変わります。この記事では、電子定款をWordの原案からPDFにして電子署名を付け、公証役場でオンライン認証を受け、法務局へ提出するまでの流れを、順番どおりに整理します。自分でやるか、専門家や会社設立サービスに任せるかの判断基準もあわせて書きました。

この記事の結論

  • 電子定款は、Wordなどで作った定款原案をPDFに変換し、マイナンバーカードなどの電子証明書でPDFに電子署名したものを指し、紙の定款で必要になる収入印紙の貼付が不要とされています。
  • 作成から認証までの流れは、①定款原案の作成 ②公証役場との事前チェック ③PDF化と電子署名 ④オンラインでの送信(申請用総合ソフトなど)⑤ウェブ会議または来訪での認証、の順に進みます。
  • 電子署名用のICカードリーダーやソフトの準備が負担になる場合は、電子定款に対応した司法書士・行政書士や会社設立サービスに依頼する方法もあり、自分で揃える手間と費用を比べて決めるのが現実的です。

電子定款とは何か|紙の定款と何が違うのか

電子定款とは、紙に印刷して押印する代わりに、PDFにした定款へ発起人(または代理人)が電子署名を付けたものです。中身の条文そのものは紙の定款と同じで、違うのは「どうやって本人の意思を示すか」という部分です。紙なら実印と印鑑証明書、電子ならマイナンバーカードなどの電子証明書が、その役割を担います。

もっとも分かりやすい違いは印紙です。紙で作成した定款には収入印紙を貼る取り扱いですが、電子データで作成した定款には印紙の貼付が不要とされています。この点が、電子定款が選ばれる大きな理由になっています。金額や取り扱いの細部は国税庁の資料や公証役場でご確認ください。

一方で、電子定款には電子証明書・ICカードリーダー・電子署名に対応したPDFソフトといった準備が必要です。株式会社の場合は公証人の認証が必要で、合同会社の場合は定款認証が不要とされているため、同じ「電子定款」でもその後の流れが変わります。まず自分がどちらの形態で設立するかを確認してから読み進めてください。

電子定款のメリット・デメリット|自分で作るか外注するかの判断基準

メリットは、印紙が不要になること、郵送や持参の手間が減ること、データで保管・修正しやすいことです。特に公証役場とのやりとりをメールとウェブ会議で完結できる場合、移動時間が大きく減ります。デメリットは、初期の環境づくりに手間がかかること、ソフトの操作でつまずくと一気に時間を取られることです。

判断の順番はシンプルです。まず「マイナンバーカードと、その署名用電子証明書のパスワードを持っているか」を確認します。持っていない、または有効期限が切れているなら、まず市区町村での手続きからになります。次に「ICカードリーダー(またはカード読み取りに対応したスマートフォン)と、電子署名に対応したPDFソフトを用意できるか」を確認します。ここで二つ以上つまずくなら、外注を検討してよい段階です。

さらに、設立を急いでいる、条文の書き方に自信がない、発起人が複数いて全員の電子署名が必要、という条件が重なるほど、司法書士・行政書士や電子定款に対応した会社設立サービスに任せる価値が上がります。反対に、ひとりで設立し、時間に余裕があり、PCの設定作業が苦にならないなら、自分で進めても無理はありません。費用は各社・各事務所の公式サイトで最新の料金をご確認ください。

手順①:Wordで定款原案を作り、公証役場に事前チェックしてもらう

最初にやるのは、条文の作成です。Wordなどの文書ソフトで、商号、目的、本店所在地、発行可能株式総数、発起人の氏名・住所、事業年度といった項目を記載していきます。法務局や公証役場、公証人連合会が示す記載例を土台にすると、書き漏れを防ぎやすくなります。目的の書き方は許認可の有無に影響することがあるため、許認可業種の場合は先に所管部署へ確認しておくと安心です。

原案ができたら、PDFにして電子署名を付ける前に、必ず公証役場の事前チェックを受けます。ここが実務上いちばん大事なポイントです。電子署名を付けたあとに条文を直すと、署名を付け直すことになるためです。多くの公証役場はメールでの原案送付に対応しているので、管轄(本店所在地を管轄する法務局管内)の公証役場に、まず電話かメールで連絡します。

このとき、発起人の本人確認書類の準備方法、認証をウェブ会議で行うか来訪するか、手数料の支払い方法も合わせて聞いておきます。公証役場ごとに案内の仕方が少しずつ違うので、最初の問い合わせで流れを一通り確認しておくと、その後が楽になります。

手順②:PDF化して電子署名を付ける(定款 pdf 電子署名のやり方)

原案がOKになったら、WordファイルをPDFに変換します。変換後は、文字化けや改行のずれ、ページの抜けがないか必ず目視で確認してください。ここでレイアウトが崩れたまま署名すると、やり直しになります。

次に電子署名です。一般的な方法は、マイナンバーカードの署名用電子証明書を使い、ICカードリーダーでカードを読み取って、電子署名に対応したPDFソフトからPDFに署名を付けるというものです。署名用電子証明書のパスワードは、カード受け取り時に設定した英数字混在のもので、一定回数間違えるとロックされ市区町村での手続きが必要になるため、落ち着いて入力してください。

発起人が複数いる場合は、原則として全員分の電子署名が必要になります。全員がマイナンバーカードと環境を用意するのが難しいときは、発起人全員から委任を受けた代理人(司法書士・行政書士など)が電子署名を行う方法もあります。どの方式を取るかは、認証を受ける公証役場に事前に伝えて確認しておきましょう。なお、CD-Rに定款データを収める方式を案内されることもありますが、現在はオンライン送信で完結する運用が広がっています。CD-Rが必要かどうかも、事前確認の際に聞いておくのが確実です。

手順③:オンラインで送信し、ウェブ会議(テレビ電話)で認証を受ける

電子署名を付けたPDFは、法務省が提供する「申請用総合ソフト」などを使って、管轄の公証役場あてにオンラインで送信します。ソフトのインストールと利用者登録、電子証明書の設定が必要になるため、作業日の前日までに環境を整えておくと落ち着いて進められます。操作方法は法務省の案内ページに手順が示されているので、画面を見ながら進めるのが結局いちばん早い方法です。

送信後は、公証役場と日程を調整し、ウェブ会議(いわゆるテレビ電話方式)または来訪で認証を受けます。ウェブ会議の場合、当日は本人確認書類を画面に提示できるよう手元に用意し、通信が安定した静かな場所から接続します。使用するツールや接続方法は公証役場からの案内に従ってください。

認証が終わると、電子定款の謄本データなどを受け取ります。受け取り方法(オンラインでのダウンロード、または書面の交付)も役場により案内が異なります。手数料の支払い方法とタイミングも当日までに確認しておきましょう。金額は公証人手数料令などで定められているため、日本公証人連合会や公証役場の案内で最新の情報をご確認ください。

手順④:法務局へ設立登記を申請するまで

認証済みの定款がそろったら、設立登記の準備に進みます。一般的には、発起人の決定書や就任承諾書、払込みを証する書面、印鑑届出書などを整え、本店所在地を管轄する法務局へ設立登記を申請します。申請日が会社の設立日として扱われるため、希望日がある場合は法務局の開庁日を踏まえて逆算します。

登記申請そのものも、オンライン申請と書面申請のどちらかを選べます。電子定款で進めてきた流れのままオンラインで申請する方法もありますが、添付書類の扱いや操作に慣れが必要なため、初めてなら書面申請のほうが分かりやすいこともあります。ここは「自分がどちらの手順書を最後まで読み切れそうか」で選んで構いません。

登記が完了したら、登記事項証明書と印鑑証明書を取得し、法人口座の開設、税務署・都道府県・市町村への届出、社会保険の手続きへと進みます。設立はゴールではなく、ここからバックオフィスの立ち上げが始まります。順番を紙に書き出しておくと、抜けが減ります。

迷ったときの相談先|専門家に頼むという選択

定款の目的の書き方、発起人が複数いる場合の署名のまとめ方、許認可や資本金の設計は、あとから変更すると登記や手続きのやり直しにつながることがあります。判断に迷う部分が一つでも残っているなら、着手前に相談したほうが結果的に早く安く済むことが多いです。

定款作成と設立登記の全体については司法書士に、設立後の税務や資本金・事業年度の考え方については税理士に、従業員を雇う予定があるなら社会保険労務士に相談するのが一般的な振り分けです。電子定款の代理署名に対応しているかどうかは事務所によって異なるので、問い合わせの際に確認してください。

この記事は一般的な流れの説明であり、個別の取り扱いを保証するものではありません。制度や運用は変わることがあるため、最新の要件は法務省・国税庁・日本公証人連合会などの公的資料で確認し、判断に迷う点は司法書士や税理士にご相談ください。

よくある質問

電子定款にすると印紙はどうなりますか?

紙で作成した定款には収入印紙を貼る取り扱いですが、電子データで作成した定款には印紙の貼付が不要とされています。これが電子定款を選ぶ主な理由の一つです。具体的な取り扱いは国税庁の資料や公証役場でご確認ください。

定款認証はZoomなどのウェブ会議でできますか?

公証役場では、ウェブ会議(テレビ電話方式)による定款認証の運用が行われています。使用するツールや接続方法、本人確認の進め方は公証役場ごとの案内に従う必要があるため、原案を送る段階で希望を伝え、対応可否を確認してください。

マイナンバーカードがなくても電子定款は作れますか?

電子署名には電子証明書が必要で、多くの場合マイナンバーカードの署名用電子証明書が使われます。カードがない、または証明書の期限が切れている場合は、市区町村での手続きを先に行うか、代理人による電子署名に対応した司法書士・行政書士へ依頼する方法を検討してください。

合同会社でも定款認証は必要ですか?

合同会社は、株式会社と異なり公証人による定款認証が不要とされています。ただし定款の作成自体は必要で、電子で作成すれば印紙の扱いは同様に考えられます。設立登記の必要書類は法務局の案内で確認し、不安があれば司法書士にご相談ください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。