創業融資の運転資金と設備資金|内訳の決め方と見積書の準備

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

創業融資の申込書には「設備資金いくら、運転資金いくら」と書く欄があります。ここで多くの人がつまずくのは、金額そのものより「なぜその額なのか」を説明できないことです。この記事では、設備資金と運転資金の分け方、内訳の積み上げ方、見積書や賃貸契約書などの根拠資料の集め方を、申込までの順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 創業融資の設備資金は「買うもの一つひとつの見積書の合計」、運転資金は「開業後に毎月出ていく固定費と仕入の数か月分」で組み立てるのが基本です。
  • 運転資金は、売上が安定するまでの期間をどう見積もるかで決まり、開業後3〜6か月分の経費をひとつの目安として計算する考え方がよく使われます。
  • 設備資金には見積書、店舗や事務所を借りるなら賃貸借契約書(または重要事項説明書・条件書)が根拠資料として求められることが多く、申込前に取り寄せておくと進行が早くなります。

創業融資の運転資金とは?設備資金との違い

設備資金とは、事業に使う「モノ」を買うためのお金です。店舗の内装工事、厨房機器、車両や機械、パソコン、什器、ソフトウェアなど、購入すると手元に残り、長く使うものが該当します。金額が一つひとつ確定しやすく、見積書という形で根拠を示せるのが特徴です。

運転資金とは、事業を回していくために継続的に出ていくお金です。家賃、人件費、仕入代金、水道光熱費、通信費、広告費などが中心になります。買った瞬間に消えていくお金なので、「何にいくら」ではなく「毎月いくらかかり、それが何か月分必要か」という形で説明します。

この二つを混ぜて申請すると、審査する側から見て根拠が追えなくなります。申込書の記入でも実際の資金計画でも、まず全部の必要資金を書き出し、「これはモノか、毎月出ていくお金か」で二つの箱に仕分けるところから始めてください。

内訳を決める順番:設備資金から先に固める

先に決めるのは設備資金です。理由は単純で、設備は見積書という外部の資料で金額が確定するからです。まず開業に必要な設備をリスト化します。店舗型なら内装工事・厨房設備・空調・看板・レジ、事務所型ならパソコン・什器・ソフトウェア、車を使う事業なら車両と架装、といった具合です。

リストができたら、それぞれについて業者から見積書を取ります。ここで「一式」とだけ書かれた見積書しかないと、内訳が説明できず追加で質問を受けることがあります。可能であれば項目ごとに金額が分かれた見積書を依頼してください。

設備資金が固まると、自己資金からいくら出せるか、残りをいくら借りるかが見えてきます。その上で運転資金を積み上げると、全体の借入希望額が根拠のある数字になります。逆に「だいたい○百万円借りたい」から逆算して内訳を埋めると、質問されたときに答えられなくなりがちです。

運転資金は何ヶ月分が目安?計算の考え方

運転資金の考え方はシンプルです。「開業後、毎月出ていくお金の合計」×「売上が軌道に乗るまでの月数」で計算します。月々の支出には、家賃、人件費(自分の生活費にあたる役員報酬も含めて考えます)、仕入、水道光熱費、通信費、広告費、リース料、借入の返済額などを入れます。

何か月分にするかは業種によって変わります。開業初月から現金売上が立つ飲食や小売は短め、受注から入金まで時間がかかるBtoBの受託業や、認知が広がるまで時間のかかる事業は長めに見る、というのが基本的な発想です。一般には3〜6か月分を一つの目安として計算する考え方がよく使われますが、これは決まりではなく、自分の事業の入金サイクルから説明できる月数を選ぶことが大切です。

加えて、売掛金と買掛金のズレも忘れないでください。月末締め翌月末入金なら、売上が立ってから現金が入るまで二か月近くかかることがあります。その間も仕入代金や給与の支払いは発生します。「入金は遅く、支払いは早い」分のギャップを、運転資金として上乗せしておくと計画が現実的になります。

見積書・賃貸契約書など、根拠資料の集め方

設備資金の根拠になるのが見積書です。申込のタイミングでは正式な発注前でかまわないので、購入予定の業者から見積書を取り、社名・日付・品目・金額が入った状態で保管します。相見積もりを取っている場合は、採用予定のものを提出し、他は手元に残しておくと説明しやすくなります。中古品や個人からの購入を予定している場合は、金額の根拠が示せる資料(販売ページの控えなど)を用意しておきます。

店舗や事務所を借りるなら、賃貸借契約書が重要な資料になります。契約前であれば、物件の条件書や重要事項説明書、不動産会社が出す初期費用の内訳(敷金・礼金・仲介手数料・前家賃など)で代替できることがあります。家賃は運転資金の計算の土台にもなるので、金額が確定した資料を早めに押さえておくと、資金計画全体が固まります。

車両や機械をリースにするか購入にするかで、設備資金と運転資金の振り分けが変わります。購入なら設備資金、リースなら毎月のリース料として運転資金側に入るのが基本的な整理です。どちらが事業に合うかは資金繰りと税務の両面が関わるため、扱いの判断は税理士にご確認ください。

日本政策金融公庫の創業融資で気をつけたい書き方

日本政策金融公庫の創業計画書には、必要な資金と調達方法を書く欄があり、左側に設備資金・運転資金の内訳、右側に自己資金と借入金を記入して、左右の合計を一致させる形式になっています。左右が合わないまま提出すると、その時点で説明を求められます。電卓で合計を確認してから提出してください。

内訳欄は、できるだけ具体的に書きます。「設備資金 内装工事 ○○工務店」「厨房機器 ○○商会」のように、何を誰から買うのかが分かる書き方にすると、添付した見積書とひも付きます。運転資金も「仕入・家賃・人件費 ○か月分」のように、何か月分かを明示しておくと、計算の考え方が伝わります。

様式や必要書類は変更されることがあるため、最新の記入例と提出書類の一覧は日本政策金融公庫の公式サイトで確認してください。制度の要件や対象については、各金融機関や所管の窓口が公開している資料が一次情報になります。

申込前にやること:準備の順番とチェックポイント

順番としては、①必要な設備を書き出して見積書を取る、②物件の条件書または賃貸借契約書を用意する、③月々の固定費と仕入を一覧にする、④売上が立つまでの月数を決めて運転資金を計算する、⑤自己資金でまかなう分と借りる分を分けて合計を合わせる、という流れになります。ここまでできてから創業計画書を書くと、数字を書き換える手間がかなり減ります。

注意したいのが資金使途です。設備資金として借りたお金を別の用途に使うと、資金使途と異なる利用として扱われることがあります。借入後は、何にいくら使ったかが分かるよう、領収書や請求書、通帳の記録を整理して保管してください。設備の購入資料は、その後の経理処理でも使います。

購入した設備は、金額や内容によって一度に経費にせず、複数年にわたって費用計上する扱いになることがあります。創業時の資金計画と税務上の処理は別の話なので、判断に迷う点は税理士に、契約条件や保証の内容については金融機関の担当者に、それぞれ確認しながら進めるのが安全です。

よくある質問

創業融資の運転資金は何ヶ月分まで申請できますか。

決まった上限が公表されているわけではなく、事業内容と入金サイクルから説明できる範囲が基準になります。一般には3〜6か月分を目安に計算する考え方が使われますが、受注から入金までが長い業種ではより長い期間で説明することもあります。根拠となる月次の支出一覧を添えて説明できるかどうかが重要です。

見積書はまだ発注前でも大丈夫ですか。

申込時点では発注前の見積書で提出するのが一般的です。社名・日付・品目・金額が記載されたものを用意し、「一式」だけの表記は避けて項目ごとの内訳が分かる形で依頼すると説明がしやすくなります。必要な書類の形式は金融機関によって異なるため、担当窓口で確認してください。

物件がまだ決まっていない場合、家賃はどう書けばいいですか。

候補物件の条件書や募集資料をもとに、想定家賃として計算し、その根拠資料を添えるのが現実的です。契約が決まり次第、賃貸借契約書に差し替えて提出することになります。家賃は運転資金の計算の土台になるので、エリアと広さの条件を早めに絞り込んでおくと計画が安定します。

設備資金と運転資金は、後から内訳を変えられますか。

借入後に資金使途を変更すると、当初の申請と異なる利用として扱われることがあります。計画が変わりそうな場合は、自己判断で流用せず、まず金融機関の担当者に相談してください。使途ごとの支払い記録を残しておくと、説明が必要になったときに対応しやすくなります。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。