創業融資を返せないときどうなるか|滞納・廃業・倒産時の扱い

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

創業融資の返済日が近づいているのに、口座にお金が足りない。売上が思ったように立たず、来月も再来月も見通しが立たない。そんなときに一番よくないのは、何も言わずに引き落としを落とすことです。この記事では、返済が難しくなったときに実際に何が起きるのか、どの順番で手を打てばいいのか、廃業や破産を考える段階になったら誰に相談すればいいのかを整理します。

この記事の結論

  • 創業融資の返済が難しくなったら、滞納する前に借入先(日本政策金融公庫や金融機関、信用保証協会付き融資なら取引銀行)へ連絡し、返済条件の変更(リスケジュール)を相談するのが最初の一手です。
  • 滞納が続くと期限の利益を失って残額の一括請求に進むことがあり、信用保証協会付き融資では保証協会が代位弁済したうえで、協会から求償権に基づく請求を受ける流れになります。
  • 法人が廃業・破産しても経営者保証を付けていれば社長個人に請求が及びますが、経営者保証に関するガイドラインに沿った話し合いで整理できる場合もあるため、早い段階で弁護士や中小企業の支援機関に相談してください。

創業融資が返せないと気づいたら、まず何をするか

最初にやることは、借入先への連絡です。順番としては、①いつの返済が難しいのかを特定する、②直近数か月の資金繰り表をつくる、③借入先の担当窓口に電話して状況を伝える、という流れになります。連絡が早いほど、相談できる選択肢は広く残ります。

逆に、連絡せずに引き落とし日を迎えて残高不足になると、その時点で「延滞」として記録が残り、以後のやりとりは督促を起点に進みがちです。同じ「返せない」でも、事前に相談した場合と、黙って落ちた場合とでは、その後の対応の空気がかなり変わります。

資金繰り表は立派なものでなくてかまいません。月ごとに「入ってくるお金」「出ていくお金」「月末残高」を並べた表で十分です。どの月にいくら足りないのかが数字で示せると、相談の場で具体的な話ができます。

滞納が続くと何が起きるか|督促から期限の利益喪失、代位弁済まで

返済が遅れると、まず電話や書面での督促が来ます。この段階はまだ「今回の分をどうするか」という話で、遅れた分を入れて元に戻せるケースもあります。ただし延滞している期間については、約定の遅延損害金が発生する取り扱いが一般的です。

延滞が重なると、契約に基づいて「期限の利益の喪失」という扱いになることがあります。これは、毎月分割で返せばよいという約束が失われ、残額をまとめて請求される状態です。分割で払えないから遅れているのに一括請求になるので、実務上は自力での解決が難しくなります。

信用保証協会の保証が付いた融資では、金融機関が保証協会に請求し、協会が金融機関へ代わりに弁済する「代位弁済」が行われることがあります。ここで借金が消えるわけではなく、その後は保証協会が求償権を持つ債権者となり、協会との間で返済の話し合いをしていくことになります。日本政策金融公庫からの直接の借入の場合は、公庫が引き続き債権者として対応します。

事業を続けられるなら|返済条件の変更(リスケジュール)を相談する

事業自体に見込みがあり、返済額さえ下がれば回るという状態なら、まず検討するのは返済条件の変更です。一定期間だけ元金の返済を据え置いて利息のみにする、毎月の返済額を下げて期間を延ばす、といった見直しが相談の対象になります。応じてもらえるかは個別の判断になるため、確約されたものではありません。

相談に行くときに用意しておきたいのは、直近の試算表または決算書、今後半年から1年程度の資金繰り表、そして「なぜ返せなくなったのか」「どう立て直すのか」を説明できる材料です。売上が落ちた理由が一時的なものか構造的なものかで、話の組み立ては変わります。ここは顧問税理士がいれば一緒に整理してもらうと早いです。

判断の順番としては、(1)まだ滞納していない → 借入先へ条件変更の相談、(2)すでに滞納している → 借入先へ連絡しつつ支援機関へも相談、(3)どう計算しても返済原資が出ない → 廃業や法的整理も含めて専門家に相談、と考えると整理しやすくなります。複数の借入先がある場合は、どこか一社だけに相談しても全体が回らないことがあるので、全借入の一覧をつくってから動くほうが確実です。

廃業・倒産するとき、創業融資の残債はどう扱われるか

法人が事業をやめても、法人名義の借入がそのまま消えるわけではありません。会社を清算する場合、資産を換価して債権者に配当し、足りない部分は残ります。債務超過で自力清算ができないときは、破産などの法的整理を選ぶことになり、この手続きは弁護士に依頼して進めるのが一般的です。

法人と個人は法律上は別人格なので、原則として法人の債務を社長個人が当然に負うわけではありません。ただし創業期の融資では経営者本人が連帯保証人になっていることが多く、その場合は保証契約に基づいて個人にも請求が及びます。手元の金銭消費貸借契約書や保証に関する書類を確認してください。

廃業を考え始めた段階でやっておきたいのは、資料をそろえることです。契約書、返済予定表、直近の決算書と試算表、預金通帳、売掛金と買掛金の一覧、リース契約、賃貸借契約。これらがあると、相談を受ける側が状況を早く把握でき、取れる選択肢の説明も具体的になります。

なお、廃業の際は取引先への支払いや従業員の給与・社会保険の扱いなど、融資以外の論点も同時に動きます。順序を誤ると関係者への影響が大きくなるため、着手前に弁護士・社会保険労務士に相談しておくことをおすすめします。

連帯保証人・経営者保証はどうなるか

連帯保証人は、主債務者が返せないときに「代わりに払ってください」と請求される立場です。連帯保証では、先に会社に請求してくれと主張できる権利が制限されるため、会社が払えない状態になれば保証人へ直接請求が来ることがあります。家族や第三者に保証人になってもらっている場合は、その人にも影響が及びます。

一方で、経営者本人の保証については「経営者保証に関するガイドライン」という自主的なルールがあり、一定の要件のもとで保証債務の整理について債権者と話し合う枠組みが用意されています。手元に残せる財産の範囲や、その後の再チャレンジについても、このガイドラインの考え方が参照されることがあります。適用可否は個別事情によるため、弁護士や中小企業の支援機関に確認してください。

また、近年は経営者保証を求めない形の融資制度も広がっています。これから借りる段階の方は、保証の有無と条件を契約前に必ず確認し、内容が分からないまま署名しないようにしてください。制度の詳細や最新の取扱いは、日本政策金融公庫・各金融機関・信用保証協会の公式サイトで確認できます。

どこに相談すればいいか|窓口の使い分け

まだ滞納しておらず、条件変更で乗り切れそうなら、相談先は借入先そのものです。日本政策金融公庫であれば取引のある支店、民間金融機関であれば融資担当者。ここが出発点になります。

公的な支援窓口としては、各都道府県の「中小企業活性化協議会」や、商工会議所・商工会、よろず支援拠点などがあります。返済条件の見直しや事業の再生、円滑な廃業に向けた相談を受け付けており、どの手続きに進むべきかの交通整理を手伝ってもらえます。利用条件や受付方法は各窓口の公式サイトで確認してください。

法的整理や保証債務の整理が視野に入る段階なら弁護士、決算・税務の整理や資金繰り表の作成は税理士、従業員の雇用や社会保険の手続きは社会保険労務士、会社の清算登記は司法書士が担当領域です。一人で抱えて連絡を止めてしまうのが一番選択肢を狭めます。返済に不安を感じた時点で、税理士や弁護士など適切な専門家に早めに相談してください。

よくある質問

創業融資を返せないと、すぐに差押えや破産になりますか。

通常はまず督促があり、そこから期限の利益の喪失や法的手続きへ段階的に進みます。滞納する前に借入先へ連絡して条件変更を相談すれば、別の道が残ることもありますので、早めの連絡をおすすめします。

会社を廃業すれば、日本政策金融公庫からの創業融資は返さなくてよくなりますか。

廃業しただけで債務が消えるわけではなく、残債は清算や法的整理の手続きの中で扱われます。経営者が連帯保証をしている場合は個人にも請求が及ぶことがあるため、廃業を決める前に弁護士に相談してください。

社長が自己破産すると、連帯保証人になっている家族はどうなりますか。

連帯保証人は主債務者とは別に保証債務を負うため、主債務者が破産しても保証人への請求が残る扱いになることがあります。保証契約の内容によって結論が変わるので、契約書を持って弁護士に確認してください。

リスケジュール(返済条件の変更)をすると、その後は借りられなくなりますか。

条件変更の事実は取引先金融機関に記録として残り、その後の資金調達の判断材料になります。ただし滞納を放置するより状況が整理しやすくなる面もあるため、どちらが自社にとって現実的かを税理士や支援機関と検討してください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。