創業融資の相談先の選び方|税理士・行政書士・商工会議所の違い

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

創業融資を考えはじめると、まず出てくるのが「これ、誰に相談すればいいんだろう」という疑問です。税理士、行政書士、商工会議所、自治体の窓口、金融機関そのもの。どれも「創業融資の相談に乗ります」と書いてあるので、違いが分かりません。この記事では、それぞれが得意とする範囲と、相談する順番の決め方を整理します。読み終えたときに「自分はまずここに行けばいい」が決まる状態を目指します。

この記事の結論

  • 創業融資の相談先は、事業計画の数字と融資後の経理まで見てもらいたいなら税理士、書類作成の手間を減らしたいなら行政書士、無料で全体像をつかみたいなら商工会議所や自治体の創業支援窓口、という切り分けが基本です。
  • 日本政策金融公庫の創業融資は本人が直接申し込めるため、専門家への相談は「申し込めるかどうか」ではなく「計画の精度を上げ、面談で説明できる状態にするため」に使うものと考えると選びやすくなります。
  • 迷ったら、まず商工会議所や自治体の無料窓口で全体像と必要書類を確認し、そのうえで資金計画や返済計画の詰めが必要だと感じた段階で税理士に相談する、という順番が負担の少ない進め方です。

創業融資の相談先にはどんな種類があるのか

創業融資の相談先は、大きく四つに分けられます。ひとつめは金融機関そのもの。日本政策金融公庫や、信用保証協会の保証を使う制度融資を扱う地方銀行・信用金庫などです。ふたつめは税理士。みっつめは行政書士や中小企業診断士といった、書類作成や計画策定を支援する専門家。よっつめが商工会議所・商工会・自治体の創業支援窓口、よろず支援拠点などの公的な相談窓口です。

この四つは競合しているというより、担当している工程が違います。金融機関は最終的な審査をする側、公的窓口は入口の交通整理、税理士と行政書士はその間の準備を手伝う立場、というイメージで捉えると混乱しません。

もうひとつ知っておきたいのは、日本政策金融公庫の創業融資は本人が直接申し込める制度だという点です。専門家を通さないと申し込めないわけではありません。ですから相談先を選ぶときの問いは「誰に頼めば通るか」ではなく「自分の弱いところを誰に補ってもらうか」になります。

税理士に創業融資を相談すると何をしてもらえるのか

税理士の強みは、数字を扱う部分です。創業融資の審査では、売上の見込みをどう計算したのか、原価や人件費をどう置いたのか、返済原資はどこから出るのか、といった点が見られます。この数字の組み立てと、その根拠の説明の仕方を一緒に整理してもらえるのが、税理士に相談する最大の意味だと考えてよいでしょう。

もうひとつは、融資が実行されたあとの話です。借入金の会計処理、返済と利息の扱い、資金繰り表の更新、決算や申告。創業融資は借りて終わりではなく、その後の試算表を金融機関に見せる場面も出てきます。顧問契約を前提に相談できる相手がいると、その流れが途切れません。

向いているのは、飲食店や小売など初期投資が大きい業種、複数人で始めるため人件費の見通しが必要なケース、すでに顧問税理士を探している段階の人です。逆に、事業規模が小さく数字の構造が単純で、すぐに顧問を付ける予定がないなら、後述の公的窓口から入るほうが負担は軽くなります。なお、税務の取り扱いは個別の事情で変わることがありますので、判断が必要な部分は税理士にご確認ください。

行政書士・中小企業診断士など他の専門家との違い

行政書士は、許認可の申請書類や各種書類の作成を業務としています。創業融資の場面では、事業計画書などの書類をまとめる作業を手伝ってもらえることがあります。飲食業の営業許可、建設業や運送業の許認可など、開業そのものに許認可が絡む場合は、許認可と創業準備をまとめて相談できる点が利点になります。

中小企業診断士は、事業の内容そのものを整理する役割が中心です。市場の見方、競合との違い、なぜこの立地・この価格なのか、といった「計画の物語」の部分を一緒に考えてもらいたいときに向きます。数字より先に、事業の説明がうまく言葉にならないという段階の人は、こちらが合うことがあります。

どこに頼むか迷ったら、自分の不安がどこにあるかで決めるのが早いです。数字の根拠が不安なら税理士、書類と許認可の手間が不安なら行政書士、事業の説明そのものが固まっていないなら中小企業診断士や公的窓口。対応範囲は事務所ごとに幅がありますので、依頼前にどこまで見てもらえるか、報酬がどう決まるかを確認してください。費用は事務所によって異なりますので、各事務所の公式サイトや初回相談で最新の条件をご確認ください。

商工会議所・自治体の創業支援窓口はどう使うか

商工会議所や商工会、自治体の創業支援センター、よろず支援拠点といった公的な窓口は、創業融資の相談の入口として使いやすい場所です。多くが無料または低廉な費用で相談を受け付けており、創業計画書の書き方、日本政策金融公庫や制度融資の違い、必要書類の一覧といった基本的な部分をひととおり確認できます。

商工会議所には、経営指導を受けたうえで利用できる融資制度が用意されている場合もあります。また、市区町村が実施する特定創業支援等事業の支援を受けると、証明書の交付を通じて一部の手続き上の優遇につながることがあります。内容は自治体ごとに異なりますので、お住まいの・開業予定の市区町村の公式サイトで確認してください。

公的窓口の弱点は、担当者との相性や継続性です。担当が毎回変わることもありますし、融資後の経理まで面倒を見てくれるわけではありません。入口として使い、深掘りが必要になった段階で有料の専門家に切り替える、という使い分けが現実的です。

相談する順番と、相談前に準備しておくもの

順番に迷ったら、次の流れを目安にしてください。第一に、公庫や自治体の公式サイトで制度の概要と申込書類を自分で一度見る。第二に、商工会議所などの無料窓口で全体像と自分のケースでの論点を確認する。第三に、数字や書類に不安が残る部分を専門家に相談する。第四に、金融機関の窓口に申し込む。先に専門家を探すより、この順のほうが「何を頼みたいか」がはっきりしてから相談できます。

相談に行く前に手元にそろえておくと話が早いものは、創業する事業の概要をまとめたメモ、開業に必要な設備や仕入れの見積もり、自己資金がいくらあるかが分かる通帳、これまでの職務経歴、そして借入がある場合はその明細です。公庫の創業計画書のフォーマットは公式サイトから入手できますので、空欄のままでも印刷して持って行くと、どこが書けないかが可視化されます。

相談先を選ぶときは、創業融資の支援実績があるか、どこまでの範囲を担当するか、融資後の付き合いをどう考えているか、この三点を最初に聞いてみてください。なお、融資の可否は金融機関の審査によって決まるもので、専門家に依頼したから通るというものではありません。「通します」と言い切る相手には、その根拠を確認したほうがよいでしょう。

判断に迷ったら専門家に相談を

創業融資は、事業計画・資金繰り・税務・場合によっては許認可や労務が絡み合う領域です。ひとつの窓口ですべてが解決するわけではなく、自分の状況に応じて相談先を組み合わせていくことになります。

資金計画や返済計画、融資後の経理・申告まで含めて見てもらいたい場合は税理士に、許認可や書類作成の負担を減らしたい場合は行政書士に、それぞれ早めに相談することをおすすめします。従業員を雇う予定があるなら社会保険や雇用保険の手続きについて社会保険労務士に、契約書や事業形態の法的な論点があるなら弁護士に確認しておくと、開業後に慌てずにすみます。

制度の要件や取り扱いは改正されることがあります。金額や条件については、日本政策金融公庫、各自治体、所管官庁の公式サイトで最新の情報をご確認ください。

よくある質問

創業融資は専門家に頼まないと申し込めませんか。

日本政策金融公庫の創業融資などは、本人が直接申し込める制度です。専門家への相談は、事業計画の数字を詰めたり、面談で説明できる状態に整えたりするために使うもの、と考えるとよいでしょう。

税理士と行政書士、どちらに相談すればよいですか。

売上や返済の見通しなど数字の根拠に不安があり、融資後の経理や申告も相談したいなら税理士が向きます。許認可の申請や書類作成の手間を減らしたい場合は行政書士が候補になります。対応範囲は事務所ごとに違うので、事前に確認してください。

商工会議所に相談すると融資が有利になりますか。

経営指導を受けたうえで利用できる融資制度が用意されている場合はありますが、融資の可否は金融機関の審査で決まります。まずは無料で全体像と必要書類を確認する場として使い、必要に応じて有料の専門家に切り替えるのが現実的です。

相談は創業前と創業後、どちらのタイミングがよいですか。

創業融資は開業前や開業間もない時期を対象とする制度が多いため、事業内容の見通しが立った段階で早めに相談するほうが選択肢が残ります。対象となる時期の条件は制度ごとに異なるので、公庫や自治体の公式サイトでご確認ください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。