資本金を変更するには|増資・減資の手続きと見せ金が問題になる理由

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

資本金は設立時に決めて終わりではなく、あとから増やすことも減らすこともできます。ただし、増資と減資では手続きの重さがまったく違い、減資は債権者保護手続きが必要になるため時間がかかります。また「一時的にお金を借りて資本金を見せる」いわゆる見せ金は、資本金の払込みとして認められない扱いになることがあり、後々トラブルの種になります。この記事では、増資・減資それぞれの流れと、見せ金の何が問題なのかを整理します。

この記事の結論

  • 資本金はあとから増やす(増資)ことも減らす(減資)こともでき、どちらも株主総会などの決議と法務局への変更登記が必要です。
  • 増資は比較的シンプルですが、減資は官報公告など債権者保護手続きが必要で、準備から完了までおおむね1か月以上かかるのが一般的です。
  • 見せ金は払込みの実態がないと判断されると資本金の払込みとして認められないことがあり、登記や取引、融資審査で問題になるおそれがあります。

そもそも資本金はあとから変更できるのか

できます。資本金の額は登記事項なので、変更するには会社の意思決定(株主総会決議や取締役の決定など)を行い、法務局に変更登記を申請する流れになります。設立時に決めた金額が一生固定されるわけではありません。

よくあるのは、設立時は無理のない金額でスタートして、事業が軌道に乗ってから増資するパターンです。許認可の要件で一定の財産的基礎が求められる場合や、取引先・金融機関から会社の規模感を見られる場面で、増資を検討する会社もあります。

逆に、資本金が大きいことで税務上の取扱いが変わる区分に入ってしまい、負担を軽くする目的で減資を検討するケースもあります。ただし税務上の区分や効果は会社の状況によって異なるため、具体的な判断は税理士にご確認ください。

増資と減資、どちらを検討すべきか迷ったときの見方

まず「何のために変更したいのか」を言葉にしてみてください。資金が必要なのか、見た目の信用力を上げたいのか、税務上の区分を変えたいのか、株主構成を変えたいのか。目的が違えば、手段も変わります。

手元資金を増やしたい、出資者を迎えたい、許認可の財産要件を満たしたいという目的なら、増資の検討が自然です。一方、資本金の額そのものを下げたい、累積した損失を資本金で整理したいという話であれば減資の領域になります。

注意したいのは、増資は「資本金が増える=現金が増える」とは限らない点です。自己資本の中で振り替える方法もあれば、新たに出資を受ける方法もあります。また減資も、現金が株主に戻る場合(有償減資)と、帳簿上の数字だけを動かす場合(無償減資)で意味がまったく違います。どちらを指しているのか、相談前に整理しておくと話が早くなります。

増資の手続きはどう進めるか

中小企業でよくあるのは、新しく株式を発行して出資を受ける「募集株式の発行」です。大まかな流れは、①募集事項(発行する株式の数、払込金額、払込期日など)を決める、②引受けの申込みと割当てを行う、③払込期日までに指定口座へ払い込む、④払込みから2週間以内に法務局へ変更登記を申請する、という順番です。

用意するものは、株主総会議事録(または取締役会議事録・取締役の決定書)、募集株式の引受けの申込みを証する書面、払込みがあったことを証する書面(通帳の該当ページの写しなど)、資本金の額の計上に関する証明書などが一般的です。登記は本店所在地を管轄する法務局に申請します。登録免許税は増加する資本金の額に応じて計算されるため、最新の取扱いは法務局の案内でご確認ください。

既存株主がひとり、かつその人が追加出資するだけなら比較的シンプルです。しかし新しい出資者が入る場合は、持株比率が変わり議決権のバランスが動きます。ひとり社長の会社で外部から出資を受けるときは、何%までなら手放してよいのかを先に決めてから進めるほうが安全です。株式の内容や種類を工夫する余地もあるため、株主が増える増資は司法書士や弁護士に設計を相談することをおすすめします。

減資の手続きが増資より重い理由

減資(資本金の額の減少)には、原則として株主総会の特別決議と、債権者保護手続きが必要です。資本金は会社債権者にとっての担保的な意味を持つ数字なので、それを減らすときは「文句があれば言ってください」と債権者に知らせる期間を設ける仕組みになっています。

流れは、①株主総会で減少する資本金の額と効力発生日を決議する、②官報に公告し、分かっている債権者には個別に催告する、③異議を述べる債権者がいれば弁済や担保提供などの対応をする、④異議申述期間(1か月以上必要)が満了し効力が発生したら法務局へ変更登記を申請する、という順です。

ポイントは、官報公告の申込みから掲載までに日数がかかることと、異議申述期間を1か月以上確保しなければならないことです。「今月中に資本金を下げたい」という急な依頼には応えにくい手続きだと考えてください。期末までに効力を発生させたいなら、逆算して2か月前後の余裕をみて動くのが現実的です。必要書類は株主総会議事録、公告および催告をしたことを証する書面などが中心になりますが、ケースによって異なるため司法書士にご確認ください。

見せ金の何が問題なのか

見せ金とは、設立や増資のときに一時的に他人や関係者から資金を借りて口座に入金し、払込みがあったように見せたうえで、登記が済んだ直後に引き出して返してしまうような行為を指します。形式的には通帳に入金記録が残りますが、会社に資本として残る実態がありません。

こうした払込みは、実質的に払込みがなかったものとして扱われることがあり、資本金の額や登記の内容が事実と異なる状態になりかねません。関与した役員の責任が問われたり、会社法上の罰則(公正証書原本不実記載等を含む)の問題として議論されたりする場面もあります。取引先や金融機関に対しても、決算書と資本金の整合が取れないことは説明がつきにくくなります。

注意したいのは、「払い込んだお金を事業で使うこと」自体は何も問題がないという点です。資本金は事業に使うためのお金ですから、家賃や仕入れ、備品の購入に充てるのは通常のことです。問題になるのは、借りたお金を右から左に動かしただけで、返済によって会社に資金が残らない構造です。資金が足りないなら、無理に資本金を大きく見せるより、現実的な金額で設立し、必要になった時点で増資するほうが説明しやすくなります。

資本金を変更する前に確認しておきたいこと

増資で資本金の額が上がると、税務上の区分や各種制度の適用関係が変わることがあります。消費税の納税義務の判定、法人住民税の均等割の区分、中小企業向けの特例の適用などは、資本金の額によって取扱いが分かれる場面があります。金額をいくらにするかは、登記の話だけでなく税務の話でもあるため、決める前に税理士にご相談ください。

また、許認可を持っている会社は、資本金の変更が許可要件や届出義務に影響する場合があります。建設業や人材派遣、旅行業など、財産的基礎が要件になっている業種では特に確認が必要です。所管官庁の資料で最新の要件をご確認ください。

登記が完了したら、登記事項証明書を取得し、取引先・金融機関への届出、定款の記載との整合(発行可能株式総数の上限に余裕があるか)、株主名簿の更新まで一通り済ませておくと後が楽です。登記手続きそのものは司法書士、税務上の影響は税理士、株主間の取り決めや出資契約の内容は弁護士と、担当が分かれます。どこから相談すればよいか迷ったら、まず目的を書き出したうえで司法書士か顧問税理士に声をかけ、必要に応じて専門家をつないでもらうのが現実的な進め方です。

よくある質問

資本金はあとから増やせますか?

増やせます。株主総会などで募集事項を決めて出資を受け、払込みが完了したら法務局に変更登記を申請します。払込みから2週間以内に登記するのが原則なので、スケジュールには余裕を持ってください。

減資にはどれくらい時間がかかりますか?

債権者が異議を述べるための期間を1か月以上設ける必要があり、官報公告の手配も含めると、準備から登記完了までおおむね2か月前後を見込むケースが多いです。期末に合わせたい場合は早めに司法書士へ相談してください。

資本金として払い込んだお金は使ってもよいのですか?

資本金は事業のための資金なので、家賃や仕入れ、備品購入などに使うことは通常の運用です。問題になるのは、借りた資金を一時的に入金して登記後すぐ返すような、会社に資金が残らない形です。

資本金を変更すると税金はどう変わりますか?

資本金の額によって消費税の納税義務の判定や法人住民税の均等割の区分、中小企業向け特例の適用関係が変わることがあります。影響は会社の状況によって異なるため、金額を決める前に税理士にご確認ください。

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